Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-03

「この先に進むのも、警戒して行ったほうが良さそうね」

 オルガマリーが言う。

「今まではセイバーとアーチャー以外は、崩壊しかけた霊基に悪性情報が取り憑いたシャドウサーヴァントだったけど、今のライダーは違った。汚染は受けていたようだけど、霊基の強度的にはしっかりとしたサーヴァントだった」

 そこまで言って、オルガマリーは周囲を見渡すような仕種をする。

「今までと違うのはあなた達だけじゃなく、特異点全体のようだわ」

「それは……異聞世界の冬木市と衝突(コリジョン)を起こしているからですか?」

 立香がオルガマリーに訊ねた。

 視界の中に、なぎ倒されているトロリーバスの架線柱が入ってくる。

「確かにそれはあるでしょうね」

 オルガマリーは、それを肯定するものの、

「けれどそれだけじゃないわ。それだけじゃシャドウサーヴァントの変質まで説明できないもの。別の異変が起きている、と考えた方がいいでしょう」

 と、険しい表情で言った。

「別の異変……」

 立香が呟く。

「だから、今になって異聞(あっちの)世界のカルデアスに浮かび上がってきた……」

「そう言う異変があったのなら、早く言いなさいよ!」

 オルガマリーが、軽く驚いたような表情になって、声を上げる。

「いや、そこまで説明する前に、さっき途中で遮られたと言うかなんというか」

「…………ッ」

 苦笑しながら言う立香に対し、オルガマリーは言葉を詰まらせた。

「とにかく……すでに来たことのある特異点のつもりで、油断はできないということですね」

 マシュが真剣な表情で言う。

「そう言うことよ、注意して進みなさい」

 オルガマリーが言った。

 そして、立香達は移動を再開する。

 迂回路に選んだ路地も、多少、瓦礫が路面を覆っている場所もあったが、

「大丈夫、これぐらいなら乗り越えられるよ」

 そう、立香が言う

「炎もないし、魔力溜まりの気配もない。ま、これぐらいなら突破しても大丈夫でしょう」

 オルガマリーもそう言った。

「ああ、待って待って、あたしが先に様子を見るから」

 ブーディカがそう言い、立香達より前に出て、瓦礫の上に乗る。

「大丈夫そう……じゃ、ないな」

「え?」

 遠くを見やったブーディカの言葉に、立香とマシュが反応する。

 ゴワァッ

 立香達からも見えた。少し離れた建物の裏側から、炎の柱のようなものが立ち上がった。

「あれは、サーヴァントの宝具……!」

 ブーディカがそう言って構える。星麗禰が身軽に飛び上がって、ブーディカの隣に立った。すでに短刀も抜いている。

「ま、待って! 今のは、多分……」

 立香が、慌てた声を出す。

「知ってるの?」

「うん。多分その人は大丈夫だと思うから」

 ブーディカが聞き返すと、立香はそう答える。

「立香がそう言うなら……先制攻撃はやめとくけど……」

 ブーディカは、そこまで複雑そうな表情で言ってから、

「ほら」

 と、瓦礫を登ろうとする立香に手を貸した。

 引っ張り上げてもらって、立香が瓦礫を乗り越える。

「でも、ここからはあたし達が先行するよ」

 ブーディカは、表情を緩ませることなく、先程炎の柱のようなものが立ち上った方角を見て、そう言った。

「星麗禰、アンタもいいよね」

「うん」

 ブーディカの問いかけに、星麗禰は短く返事をする。

「よし、じゃあ、行こうか」

 そうして、進んでいくと……────

「!」

 ブーディカが、槍を握る手に力を入れる。

 ビルに沿う道路の先に、その姿が見えた。立ち尽くしているように見えたが、視界内に入ると、あちらも気付いたように身体ごと振り返る。

「おっと、待て、待て、そっちに立香とマシュがいるなら俺達は敵同士じゃねぇよ」

 臨戦態勢のブーディカと星麗禰を見て、そのサーヴァントが、軽く驚いた様子で声を出す。

「クー・フーリンさん!」

 マシュが表情を明るくして、その名前を呼ぶ。

 だが、立香は、

「前にここで会ったクー・フーリン? それとも賢人グリム?」

 と、問いかけた。

「そのどっちでもある、だ。まぁ、これもオーディンの差し金、というか、最初からの思惑だろうよ」

 クー・フーリンは、そう言って、やれやれ、といった様子で軽くため息を()く。

「『人理がどうなるか不明だが、ここに守り手を噛ませておけば助けになるっぽい』。そう考えたんだろうな。で、オレを名代にしやがった。他所(よそ)の国の神様がなんでオレを、とは思うんだが、ま、テメェのところの親族に乗り移るのは体裁が悪い、とでも思ったんだろ」

 そこまで言って、少し呆れたような表情になる。

うち(ケルト)の神様と違って思慮深い……というか、細かいところに気を遣って苦労してそうな大神だこと」

「それで、さっきビル越しに、炎の柱のようなものが見えたんだけど……」

 まだ完全には警戒を解かないブーディカの背後から、立香が問いかける。

「ああ、あれを見つけられたのか」

 急に、クー・フーリンの表情が険しくなった。

「ここでアサシンのサーヴァントに見つかってな。前のときと違ってゾロゾロお仲間連れてきやがって」

 そこまで言って、クー・フーリンは、口元で不敵に笑い、

「ま、オレの宝具で一掃してやったけどな」

 と、言った。

 先ほど炎の柱のように見えたのは、『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』だった、と、そこまでは、立香とマシュの感じたとおりだった。

「ただ、 ────」

 そこで、クー・フーリンの表情が(にわか)に険しくなる。

「こいつは、どういう事だ?」

 クー・フーリンが杖で指し示した方向には、別の、女性に見える、全身黒尽くめに特徴的なマスクの、人の姿をしたものが立っていた。

 百貌のハサン、その姿は立香も知っている。

 だが ────

「!?」

 動きを止め、ピクリともしないそれを見て、立香とマシュの表情が、驚愕を伴って凍りつく。

 その百貌のハサンの姿は、頭の左半分から左肩にかけて、まるで砕けたようになっている。何より異様だったのは、その砕けた断面から、中が中空になっている事だった。

「やっこさん本体に止めを差したつもりが、こんな事になった。一体、どうなってるんだ?」

 クー・フーリンも、険しい表情をしたまま、困惑の声を出す。

「偽物を動かす魔術の類も存在しなければ、誰かがなりすましていた()()ってわけでもねぇ」

 立香とマシュはすぐに答えられなかった。

『なるほど』

 そこへ、通信越しにセレスタが割り込んでくる。

『また裏付けがひとつ取れたわね……立香、マシュ、よく見ておきなさい。これがマリスビリーがやろうとしている事の本質よ』

「これが……」

 立香が声を漏らす。

「これで……どうしようって言うんだい? 中身がカラッポの存在が本質、って……」

 ブーディカが、怪訝さと戦慄の混じった表情で言った。

『汎人類史のオルガマリー。あなたはこれを知っていたはずよ。少なくとも薄々には』

「それは……」

 

『物事には表と裏がある。だが私は裏を評価しない』

『天体の巡りと同じさ。ただ見えているものだけが真理だ』

『私は人間(こうぞう)を愛している。愛しているから観察し、解体し、学び尽くした』

『現代医学は人体の設計図を握っている。 ―― それでも修復の技術は不充分だ。理屈を知っていても、壊れた途端に元へ戻せない』

『カタチを再現しただけでは、それを人間と認めない』

『それは、変だろう?』

『ならば、解っている通りに動く “もの” を用意すればいいのに』

『心が入っていない? そもそも心とは反応だ。反応は作れる。制御もできる』

『過程も、内側も、要らない』

 

『物事は表だけあればいい』

 

『その結論を退ける(さか)しさが、豊かな感受性が、人間をここまで苦しめた』

『愛している人間(もの)が苦しんでいるなら解決したい。それが私の生きる理由だ』

『そもそも人の手で修復できない「本質(たましい)」なんて、未来の保障の何の役にも立たない』

『ああ、まったく本当に ────』

 

『── 中身を欲しがるのは、この宇宙の悪いクセだ』

 

「そうよ」

 オルガマリーが言う。

「それは、言ってしまえば外見だけをコピー&ペーストしたもの。中身のない、ただそこにあって、行うべき行動をするだけのもの。それを本物として扱い、実像として ──── 現実として、事象として出力する。それがマリスビリー・アニムスフィアの宇宙論」

『そんな冷たい惑星(カルデアス)にされてたまるか』

 オルガマリーの、説明とも独白とも言えるような言葉の直後に、セレスタが唾棄するように言った。

『西洋魔術師が魂というものの本質を理解していないだけ。あるときは過剰に絶対視し、あるときは異様に軽視する。()()()()()()()()()()。けれど今は違う。あるべき魂の価値観を私は知った』

「…………」

「…………」

「…………?」

 セレスタの演説のような言葉に、オルガマリーと、それにマシュも複雑そうな表情をして、セレスタから視線を外している。立香は、それを不思議そうに見た。

『だから断言する。マリスビリーは人を愛してなんかいない。モノコックのボディだけ家に飾ってそのクルマを所有してますみたいなやつに愛を語られてたまるか』

 強い調子で、セレスタは言いきった。

「この……その、なんだ、ちっこいのは?」

『ちっこい言うな!』

 どこか唖然とした様子で問いかけるクー・フーリンの言葉に、セレスタが反射的に声を荒げた。

「こちらは……その、異聞世界のカルデアの所長で……」

 少し引きつった表情を(ほぐ)すように意識しつつ、立香は説明する。

『セレスタ・II(2)型・ヒストプルーフリッド・アニムスフィアよ。宜しく、ケルトの英雄…………って言うと、そこには2人いることになるわね』

「いやぁ……クー・フーリンと並べられちゃうと流石に気恥ずかしいね。あたしはせいぜい、 “ちょっと腕の立つ母さん” ぐらいだよ」

 セレスタの自己紹介に続く言葉に、くすぐったそうに笑いながら、ブーディカが言う。

「いやいや、そういう女のひと睨みがこえーんだ」

 クー・フーリンは、まずは苦笑交じりに軽口を言ってから、

「しかし、異聞世界の、というのは、どういう事だ?」

 と、立香の方を向いて訊ねる。

「立香?」

 ブーディカが、心配そうな表情を立香に向ける。

「ううん、大丈夫、説明する」

 立香は、軽く苦笑しながら言い、クー・フーリンの方を向いて、事情を説明し始める。

「──────── なるほどな。だいたい解った」

 経緯を聞いて、クー・フーリンは特別険しくもないが、笑うでもなくそう言った。

「あなた、オーディンに遣わされたんでしょう? 別の世界にすり替わっていいの?」

 オルガマリーが、驚きに、僅かな呆れの混じった表情で、クー・フーリンに訊ねる。

「それは最初に言ったはずだぜ。『人理がどうなるかは不明』だと。地球(せかい)の歴史が途絶えるのはまずいが、()()()()()()()()()()()()にはこだわらない。そもそも、オーディンもすでに “旧き神々” だしな。それはそれこそアンタ達現代西洋魔術師がよく知ってるはずだぜ」

 オルガマリーに視線を向けつつも、あっさりとした口調で、クー・フーリンはそう言った。

「それで」

 クー・フーリンが、視線を立香に向け直す。

「この後はどうするんだ? ただ、特異点を攻略すればいいっていうわけじゃないんだろ?」

「えっと、厳密には、何が起こっているのかはわからないんだけど……」

 立香が、困ったように声を出す。

「ああ、大聖杯を押さえなきゃならないのは解りきってる。なにせこの聖杯戦争の監督役が戻ってきたからな」

「聖杯戦争の監督役が戻ってこられたんですね!?」

 クー・フーリンの言葉に、マシュが声を出す。

「ああ、ソイツが聖杯戦争に参加していたサーヴァントに令呪を与えた」

 クー・フーリンが、さらに説明を続ける。

「令呪を?」

 立香が、鸚鵡返しに聞き返す。

「なるほど、それで、シャドウサーヴァント化してたのが、サーヴァント本来の霊基を取り戻したってわけね」

 オルガマリーが、納得の言葉を出した。

「そういうことだ。もっとも ──── どういうわけか、令呪に従うサーヴァントと、令呪に従うまでもなく霊基を保ってたサーヴァントがいてな。ほとんどはソイツら同士で潰しあって終わった、らしい。そのガランドウのアサシンが言ってた分にはな」

「どういう……ことでしょう……」

 マシュが疑問の言葉を出す。

「あたしと似たようなもんだ」

 ブーディカが言った。

「ここには異聞(こっちの)世界の冬木が衝突(コリジョン)した。そしてそこでも聖杯戦争をやっていた。だから、異聞世界側のサーヴァントが、霊基を強く保ってたことで、令呪を拒んだんだ」

「令呪を拒む? そんな事ができるの!?」

 オルガマリーが、素っ頓狂な声を出したが、

「いえ……そうだ、そうです! 異聞(この)世界のサーヴァントは、厳密には聖杯に呼ばれるわけじゃないから……」

 と、それを聞いたマシュが、お互いの世界の召喚詠唱の差分から感じていた部分を、言葉にした。

『そう。異聞(こっちの)世界のサーヴァントは、重要なのは召喚者との間にできた縁。それがない相手には、令呪を使われても効果は限定的になる、と考えてもいいのでしょうね』

 セレスタが、マシュの言葉を補った。

「それで……その監督役が与えた、令呪の命令って?」

 立香が、視線をクー・フーリンに向け直し、訊ねる。

「ああ、令呪の内容は『大聖杯の守護』。ただな、やっこさんにしては、妙に慌てていた、らしい」

「慌てていた?」

 クー・フーリンの言葉に、立香が問い返す。

「アサシンのやつがポロッとこぼしただけだから、どこまで信じていいのかはわからないがな」

 クー・フーリンは、念を押すように言った。

「いえ……そもそも、その監督役というのは、どのような(かた)なのですか?」

 マシュが問いかける。

「2004年の聖杯戦争の監督役と言ったら、ヤツしかいないだろ」

 笑みのない真顔で、クー・フーリンは言う。

「言峰綺礼」

 その名前に、立香とマシュが声を出さずに驚愕の表情をする。

「英霊ラスプーチンの霊基で好き勝手してやがる『異星の使徒』だ」

「言峰神父が……」

 立香が、漏らすようにその名前を反芻する。

「これで引導を渡してやれるな ────」

 妙に楽しそうな笑顔で、そこまで言ったクー・フーリンだったが、そこでやや険しい表情に変わる。

「── と言いたいところだが、これで答え合わせができちまっただろ?」

 異聞世界のカルデアスに表示された冬木特異点。

 特異点に入り込み、慌てて動いている言峰。

「大聖杯に、なにかが起きている……」

 立香が呟くように言う。

「大聖杯を押さえた上で、やっこさんをふん捕まえて、何をやったのか、何をやらかしたのか、聞き出す必要がある、ってこった」

 

 






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