Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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第5節 ここに在りし人意の始
Chapter-01


 カツン、カツン、カツン、カツン…………

 金属の床に靴音を立てて、暗い通路を進んでいく。

「ここしか残っているものがないって、入ってきたけど、一体何があるっていうんだろう」

 立香が、それを声に出して言った。

「今の所、見当もつかないな、なぜ此処なのか……」

 隣を歩いていたダ・ヴィンチが言う。

 やがて、施設の更に内部に続く、重厚な扉の前に辿り着く。

 ここは ────

 

 ─────────、エリア51。

 

 

 時間はそれよりいささか遡る。

 万国カルデア天文台、管制室。

 異聞世界(レイヤー)のカルデアスが設置されているホール、並べられていた4つのコフィンが開き、立香達が姿を表した。

「あ、戻ってきた」

 それを出迎えたのは、ネモ・キャスターからの分身体であるネモ・ガールマリーンの1人だった。

 もちろん彼女だけではなく、万国カルデア天文台のスタッフが、モニタールームから出てきて、

「お疲れさまでした」

 と、労いの声をかけてくれた。

 ただ、その中に立香達と交流のある人物、アニムスフィア姉妹、万華美玉彦といったメンツの姿はない。

「いえ、設備を使わせてもらって、ありがとうございました」

 マシュが、万国カルデア天文台のスタッフに礼を言った。

「あ、それでさ、すぐに活動を開始するから、このままストーム・ボーダーの方にって。休憩時間は、ストーム・ボーダーの中で用意するからって」

 出迎えのネモ・ガールマリーンは、立香達にそう伝える。

「事実上の連戦だね……大丈夫?」

 ブーディカが少しだけ表情を険しくして、立香に問う。

「うん、……大丈夫!」

 立香は、弾ませる声を作ってそう言った。

 

 

「私や星守さんもついていって、いいんでしょうか?」

 ストーム・ボーダーにつながる全閉式のタラップ通路を歩いている最中、玉彦はセレスタに訊ねる。

「あー……まぁ、お願いされた、って言うのもあるけど」

「お願い?」

 セレスタの答えに、玉彦は、怪訝そうな表情をして聞き返す。

ブーディカ(ははうえ)も行くことになるんです、私も一緒に行きたいんです、だから玉彦さんをノウム・カルデアとの同行メンバーに加えてくれませんか?』

「……って……」

 セレスタがそう説明して、玉彦とともに、彼の後ろを歩いていたエスィルトを振り返る。

「エスィルト、君なぁ……そう言うことはまずマスターである私に言い(たま)えよ」

 玉彦は、怒ったように眉を歪ませつつも、どちらかと呆れたように、エスィルトに対してそう言った。

「あはは、えっと、玉彦さんに言っても、私には私の職務があるからー、とか、そんな感じになっちゃうような気がして。ほら、東洋では『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』って言うじゃないですか」

 エスィルトは、誤魔化すように笑ってから、そう言った。

「それはそれで所長を馬扱いしているという事で、問題発言なんだが……」

 玉彦は、エスィルトにそこまで言った後、視線をセレスタに移す。

「もちろん、あなたに対しては、組織内の指揮権を持つ所長としての正式な命令よ。護衛のサーヴァントを召喚しているスタッフは、私を除けばあなたぐらいしかいないんだから。ここは異聞(こっちの)世界側のカルデアからの戦力としてね」

 セレスタはそう言った。

「星守さんの方は?」

「あっちはもっと単純。元々ノウム・カルデアの案内役としては、小樽に案内して終わり、じゃなかったから。もっとも、タスカが同道を希望しているのは同じっぽいけど」

 玉彦が聞くと、セレスタがそう答えた。

「やれやれ」

 玉彦は苦笑しつつ、言う。

「自分で言うのもなんですが、私は勇者パーティーに加わる(たち)の人間ではないと思っていたんですがね」

「そぅお? でも、汎人類史(あっち)キリシュタリア(そっくりさん)は、なかなか大した魔術師だったらしいけど?」

 セレスタが聞き返すように言う。

 すると、玉彦は、自嘲の混じった苦笑になって、

「話は私も聞かせてもらいました。まったく私とは別人ですよ。私はしがない公務員、管理職ですから」

 と、言った。

「そこまで卑下することはないと思うんだけどな」

 セレスタは、腑に落ちないような表情でそう言った。

 

 

「おお、戻ってきたな! 任務達成、よくやってくれた!」

 立香達がストーム・ボーダーの管制室に入ると、ゴルドルフが満面の笑みで出迎えてくれた。

 ダ・ヴィンチもその場にいる。

「では────」

「まって」

 さらに言おうとしたゴルドルフの言葉を、ブーディカが遮った。

「あたしと星麗禰はいいけど、立香達を休ませてやっておくれよ」

 ブーディカが言う。

「マシュもだ。だいぶ心に重いことがあったし、サーヴァントでもこれは効く」

「いえ、私は……」

 マシュは、反論するかのようにしつつも、曖昧に声に出す。

「む、それは解っているとも」

 ゴルドルフが言う。

「だが、個室に戻ってくつろぐという気分でもあるまい。管制室の座席に腰を下ろして休んでいるといい。豪勢な御馳走を用意している余裕はないが、せめてティータイムは入れてもいいだろう」

「は、はい、じゃあ、お言葉に甘えます」

 立香がそう言い、マシュと2人して、管制室内のゲスト用シートの場所まで行って、そこに腰を下ろした。

転移孔(ゲート)、どうなっていますか?」

 身体の力を抜くようにしつつも、立香はそう問いかける。

「あ、ああ、それが気になってたら、落ち着かねーか」

 手ずからお茶を準備しに行ったゴルドルフに代わって、ネモ・キャスターが言う。

「外の様子を画面に映してくれ」

 ネモ・キャスターがガールマリーン達に指示すると、3Dモニターに万国カルデア天文台の本部施設と、その真上にある、エネルギーが渦巻く目のような存在が映し出される。

 そして、その “目” の中心には、冬木では薄っすらとしか見えていなかった、青い宝石のような球体の姿が見えた。

「あれが、カルデアス、なんですか」

 マシュが、誰かに訊ねるようにつぶやいた。

「ああ、私達が……汎人類史のカルデア基地の管制室から見ていたカタチとは違うが、シバによる観測結果は一致している」

 ダ・ヴィンチがそう言うと、

「こっちでも観測しているわよ」

 と、その場に来ていたセレスタが言った。

 傍らにはオルガマリー ──── 異聞世界(レイヤー)のオルガマリーも立っている。

異聞世界(こっち)のカルデアスと()()()()()()疑似天体。そんなものがポンポンあってたまるか」

「つまり、間違いなく汎人類史のカルデアス、ということだ」

 セレスタの言葉を受けて、ダ・ヴィンチが断言した。

 続いて、ネモ・キャスターが説明する。

「転移孔は、今の所安定してる。流石はソロモン王の権能でこしらえたものだけのことはあるぜ。もっとも、ずっとこのままっていう保証は無ぇ。今のうちに通るっきゃないが……そっちはプロフェッサー達が電算室で進入法を計算中だ。汎人類史カルデアス(向こう)に着くまで、立香達はゆっくりしてていいぜ」

 ネモ・キャスターの言うネモ・プロフェッサーも、こちらは大きく差異があるわけではないが、ネモ・キャスターの分身体の方だ。

 そこへ、お茶の準備を終えたゴルドルフが、トレイに一式を載せて戻ってきた。

「ほら、少しだがスイーツも用意したぞ。甘いものは疲労回復に効くからな」

「あ、いただきます」

 立香は、先にお菓子の皿に手を伸ばしてから、お菓子を口に運びつつ、カップを持ち上げる。

「プロフェッサーから報告がありました」

 そのゴルドルフのところまでやってきて、ムニエルがそう告げる。

「計算完了、転移孔への突入準備完了だそうです」

「思ったより早かったな」

 傍らにいたネモ・キャスターが言う。

「まぁ、これだけ安定してりゃ当然か。あのクー・フーリン(キャスター)の土台のおかげで、ほとんどそのまま抜き取れたしな」

 それを聞いていたダ・ヴィンチは、

 ── 世界からの修正力があまりない? 神代の魔術王の(わざ)といっても限度はあるはずだけど……ここが異聞世界(レイヤー)だからか、それとも異聞(この)世界の性質なのか……

 と、心の中で呟いていたが、直後に、ハッと我に返る。

「考え込んでいる場合じゃなかった。ネモ・キャスター、行動開始! 他の皆も席について!」

 ダ・ヴィンチが仕切るかのようにそう告げた。

「しかし、カルデアスというのは極小の疑似環境モデルだろう? そこに行くということは、私達も小さくなるということじゃないのかね?」

 ゴルドルフが、どこか腑に落ちないといったように問いかける。

「それは違うわ」

 オルガマリーが言う。

「汎人類史のカルデアスが地球のコピーだというのなら、ケースの中身はあくまで “そう見えているだけ”。それは遠くの物体(もの)が小さく見えているのと同じ。実際には、概念的なサイズそのものに差異はない ────」

 オルガマリーは、そこまで自信あり気に言ったのだが、

「── で、あってたかしら?」

 と、急に不安気な表情になって、そう続けた。

「いや、その説明であっているよ」

 ダ・ヴィンチが、まず肯定し、そして説明する。

「空に浮かぶ星は小さいが、その星自体が小さいわけじゃない。実際にあの転移孔、つまりワープゲートを抜けて、その星の場所に辿り着けば、本来の大きさを知覚できる、というワケさ」

「…………」

 立香は、自分ではその話のすべてを理解しきれていない気がしていたが、やがてハッとある事に気がつく。

「向こうに……カルデアスに汎人類史のテクスチャが残っているんなら、異聞(今の)世界を消さなくても、汎人類史はカルデアスに移植したまま続ける事ができるんじゃ……」

「概念的にはありね、それ」

 呟くように言った立香の言葉に、セレスタが反応する。

 だが、その表情は険しい。

「ただ、それは期待薄。方法や論理じゃなくて、マリスビリーの思想と手段の問題として」

「え…………」

 声を漏らした立香だけではなく、ノウム・カルデアの首脳陣が、驚いたようにセレスタを凝視する。

「まぁ、それも、行ってみればはっきりするんじゃないかしら?」

「結局、それが手っ取り早いってことか」

 セレスタの言葉に、ネモ・キャスターが言う。

「いいかい、司令官さん?」

 ネモ・キャスターは、ゴルドルフに視線を向けて、問いかけた。

「うむ! 異論はない! 我々の世界から奪われたものがあるというのなら、それがどうなっているのか確認する権利はあるはずだ。これよりカルデアスへ向かう!」

「進路確定、ストーム・ボーダー、全速前進!」

 ストーム・ボーダーのメインスラスターが全開にされる。

 その尖った舳先から、転移孔の目の中に飲み込まれ ────

 虚数潜航の時と同じような、時空間の壁を跳躍する時のような感覚があったかと思うと、直後に、明るい空間に出た。

「ちょっと、待てよ……」

 どこか憔悴した様子で、ネモ・キャスターが声を出す。

 他の、ノウム・カルデアのメンバーは、より強烈に愕然とした様子で、言葉を出せずにいた。

「アンタ達の主張の通りなら、ここには異聞(あたし達の)世界に似た、文明世界があるはずなんだろう!? 地球の海も、そのまんまで……」

 ネモ・キャスターが言いながら見る外の光景は ──── 海もない漂白された地表から、無数の空想樹が生えているという、汎人類史出身のノウム・カルデアスタッフには信じられないものだった。

「そんな……──── これは……──── どうして…………」

 汎人類史の出身者で、最初にどうにか声を漏らしたのは、立香だった。

「我々は確かにカルデアスに降下したな?」

 ゴルドルフが、愕然としつつも、立香よりは落ち着いた声を出す。いや、それは現実逃避を試みる言葉なのかもしれないが。

「我々の、元の汎人類史のテクスチャが、カルデアス地球の表面と入れ替わっている、という話だったな?」

 そこで、ゴルドルフも感情の堰が切れたかのように、やや荒れた口調に変わる。

「これでは漂白された、白紙の地球と同じではないか! いや、それよりも恐ろしい ──── 見渡す限りに空想樹が生えている! 説明を求む、技術顧問!」

 指名されたダ・ヴィンチだったが、

「…………説明が欲しいのは私も同じだ。だって、カルデアス地球の姿がこれだとしたら、2つの地球で行われたことは置換ではなくて……所謂……上書き保存に……」

 そこまで、呟くように言ったダ・ヴィンチだったが、

「そうだ……」

 と言って、アニムスフィア姉妹の方を振り返る。

「2人なら、なにが起こってるのか……解るんじゃないのかい?」

「…………上書き保存、という貴方の推測はありえない、そうは言えるんだけど……」

 怪訝そうな表情をしながら、セレスタが言う。

「そうだね、単純に上書きなんかしたら、白紙化の時に情報の衝突(コリジョン)でもっと酷いことになっていたはずだ」

 ダ・ヴィンチはそれを認める。

「…………正直なところを言うわ。私は、汎人類史のテクスチャを、マリスビリーが()()()()()()()保存している、とは思っていなかった……けれど……表面が()()だなんて……ごめんなさい、ちょっと私にも解らない」

 セレスタは、説明しつつ、段々と困惑した表情になっていった。そしてそこまで言うと、オルガマリーを振り返る。

「お姉ちゃんは、なにか心当たりたる?」

「そう言われても……私にも、こんなの、説明できるわけないじゃない……」

 訊ねられたオルガマリーも、困惑しきった表情でそう言った。

「そうだ……空想樹の様子はどうなってる?」

 憔悴を隠しきれないまま、ダ・ヴィンチが問いかける。

「こちらへの反応はありません。内部の熱源は今までの空想樹と変わらないけれど、外皮が完全に硬化していますね」

 ムニエルがそう報告し、

「なんか、冷凍冬眠してるみたいに見えまーす」

 と、ガールマリーンの1人が付け加えた。

「空想樹は本来、世界を縫い付けておくための針のようなもの……その役目を終えて、石化したって事かしら……どっちにしても、刺激しない方が得策だとは思うけど……」

 怪訝そうにモニターを見ながら、セレスタが言った。

「電算室のプロフェッサーから報告があった」

 ネモ・キャスターが、険しい表情で言う。

「アンタ達には言いにくいことだが、地表の分析結果……この惑星上に継続している文明はないって事だ。生命の反応も観測されてない」

「つまり、カルデアス地球も完全な “白紙” って事か……」

 ダ・ヴィンチが言う。

「立香」

「う、うん、大丈夫」

 ブーディカに声をかけられて、立香がそう返す。

「貴方がもし、今の状況に少しでも安堵を覚えてしまった、というのなら、それは別に気に病まなくていいわよ」

 ブーディカの声掛けと、立香の反応を見て、セレスタが言った。

「さっきも言った通り、汎人類史のテクスチャが()()()()()保存されている可能性は低かった。ただ、流石にこんな事になっているとは想定外だった、だけ」

 セレスタはそう言ったが、立香の表情は曇ったままだ。

「一応、まだ文明の名残のようなものは存在していた、らしい。それを今、解析している」

 ネモ・キャスターが言った。

「マム! 観測装置に、明らかに……私達の世界に近い土地の……狭い領域の反応が見つかりました」

 ガールマリーンの1人が、そう報告してくる。

「よくやった。それで、場所は?」

 ネモ・キャスターは、報告の続きを促した。

「北緯37度14分00秒、西経115度48分30秒! 北米大陸……私達の知っている通りなら、ネバダ州がある場所でーす!」

「なんだって? それは本当かい!?」

 ガールマリーンの報告を聞いて、ダ・ヴィンチは素っ頓狂な声を出した。

「…………」

「そこに、何かある……あったというの?」

 オルガマリーが問いかけてくる。

「ああ、汎人類史では、そこにあったのは ────」

 ダ・ヴィンチは頷き、言う。

「アメリカ合衆国、秘密空軍基地、通称エリア51」

 





ネモ・ガールマリーン
https://x.com/kaonohito2/status/2027826295753871473

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「⁠一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。

ネモ・ガールマリーンの衣装について

  • 原作マリーンと同じ短パン
  • スカートにしたら?
  • ちょい色気のあるショーパンにならない?
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