Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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前回「セレスタのパートナーサーヴァント」で
デオンとアストルフォを取り違えていました(訂正済)。


Chapter-03

 扉が開いた時、その正面に、人形(ひとがた)をした、しかし、見た目には人間に程遠い、暖色寄りの幾何学模様をしたそれが、拳銃を構え、立っていた。

 

「ようこそ、待っていたよ、藤丸立香」

 

 その人間のようなものは、そう言って、拳銃の引き金を ────

 

 パンッ

 

「ブーディカ!!」

 立香が声を上げる。

「…………いや、今のは、音だけ……?」

 ブーディカは、唖然として立ち尽くし、目を(まる)くしている。

「驚かせて済まなかったね。ちょっとした悪ふざけのつもりだったんだ」

 先程まで、人間のシルエットをしていた何かは、銀髪に白い衣装の青年の姿に変わっていた。

「いや、驚かせたのはオモチャの銃よりカタチの方か。君達が地球人類である事を失念していた。君達にはこの姿の方が解りやすいだろう」

 ここから先の通路には、照明も点灯していた。それは充分な光量とは言い難かったが、青年の姿を見て取る事はできた。

「マリスビリー……前所長……────」

 唖然とした様子のマシュが、漏らすような口調で、その名前を呼んだ。

「…………?」

 それに対して、マリスビリーは、僅かに怪訝そうな、微かに驚いたような表情をする。

「姿はマシュだが……構成は異聞帯のサーヴァント? それも “デミ” ですらない……これはどういう事だい?」

「お生憎様」

 セレスタが言い、それまでダ・ヴィンチ達より後ろにいたのが、ブーディカのすぐ後ろまで、マリスビリーに近寄ってくる。

「第8の異聞帯(ロストベルト)異聞世界(レイヤー)が現れたのよ。そこで彼女は、今の姿になった」

「ああ、その事は気付いているよ」

 マリスビリーは言う。目を細めて微笑んだような表情になる。

「白紙化した地球に定着しかけている事も……これは確かに私の計画にかなりの迂回と遅延を発生させることにはなっているが、修正可能な範囲だ」

 余裕があるように、そこまで言うものの、

「だから、単純に、マシュの存在が変わっている事に驚いているんだ。異聞世界(レイヤー)のお嬢さん」

 と、マリスビリーは、目を開き直してそう言った。

 セレスタは、皮肉っぽくニヤニヤと笑っている。

「君はマシュを無垢な存在として育てたようだが、立香ちゃんと出会って彼女も成長した」

 ダ・ヴィンチが言った。

「…………無垢、でした。無垢だから、先輩という存在が強すぎて、先輩のように有りたいと……その結果です。後悔は……していません」

 マシュが、吐露するようにそう言った。

「そう、か」

 マリスビリーは、僅かに困ったような表情をしたが、すぐに落ち着いた笑顔に戻る。

「…………今更自己紹介の必要はないと思うが、名乗るのと名乗らないのでは印象が大きく違う。私はマリスビリー・アニムスフィア。カルデアスの設計者にして、カルデアの創立者だ」

「汎人類史の、ね」

 改めて名乗るマリスビリーに対して、セレスタがすぐにツッコむように付け加えた。

 マリスビリーは、目を細めながら、視線を立香達に向ける。

「藤丸立香にダ・ヴィンチ、君達ははじめましてだね、それに、そちらのお嬢さんは……」

「セレスタ・アニムスフィア。異聞世界(レイヤー)のマリスビリーの娘よ。ああ、オルガマリーはいて、次女ね」

「なるほど」

 セレスタの名乗りに、マリスビリーは、納得したのか、それとも最初からそれは解っていたのか、どちらにもとれるような様子を見せる。

 一方、それを聞いていた立香は、

 ── あれ? どうして……

 と、疑問を感じていた。

「私に敵意を向けているお嬢さん、それは解いてくれていい」

 立香達側の最前列で、険しい表情をしつつ槍を手にして構えていたブーディカに、マリスビリーは涼しい表情で言う。

「私に戦闘の意思はない。今の私は、ここまで来た人間に対するガイド役だ。説明以外の意図はない」

「ブーディカ」

 立香に言われ、ブーディカは構えを緩めるものの、怪訝そうな表情をマリスビリーに向け続ける。

「油断はしないよ?」

「うん。それはお願い」

 ブーディカの言葉に、立香はそう言った。

「私には『戦う力がない』、という事でもあるのだけど。完全に警戒を解けと言われても、()()()()無理か」

 マリスビリーは、笑みをつくって言ってから、視線を立香達に向け直す。

「……なぜカルデアス(この地球)の人類は滅びたのか、なぜこの基地だけ残っているのか。その疑問に答えられる場所に案内しよう」

「まぁ、案内をしてくれるなら手間が省ける。何より、彼の話に興味があるよ」

 ダ・ヴィンチが言った。

「では、行こうか。道すがら、互いの理解を深めるのもいい」

 マリスビリーがそう言うと、その彼を先頭にして、通路を奥に進み始めた。

「藤丸立香」

 歩きながら、マリスビリーは立香に声をかける。

「ここまでの工程(たび)は楽しかったかい?」

「お前!」

 マリスビリーのその問いかけに、ブーディカが激昂し、マリスビリーの襟首に掴みかかる。

「!?」

 マリスビリーを掴みかけたその腕は、すっと突き抜け、空を切る。

「だから言ったろう? 私には戦う力がない、と」

 マリスビリーは、どうということもないように、澄ました顔でそう言った。

「ここにいるキミは、映像のようなもの、か」

 ダ・ヴィンチが言った。

「そうか、現状は、立香(きみ)にとってそれほど辛い選択の結果か。7つの異聞帯との戦いで負った傷よりも、遥かに深い……」

 マリスビリーが、笑顔にも見えるニュートラルな表情で、淡々とそう言うと、

「それが解っているのなら、言わないで貰えますか、マリスビリー前所長」

 と、少し憤った表情を見せて、マシュが言う。

「そいつ、結構デリカシーないからね」

 隊列の後ろの方から、セレスタが言ってきた。

 ただ、言われても、マリスビリーは涼しい様子で澄まし顔をしている。

「私からも聞いていいかな?」

 ダ・ヴィンチが、マリスビリーに問いかける。

「キミの本当の目的を教えてくれないか。カルデアスを造った本当の意味を」

 すると、マリスビリーは、微笑んだ表情で、

「もう知っているのでは? 完全な未来保障の為にカルデアスは造られた」

 と、すらりと答える。

 だが、それを聞いてダ・ヴィンチは、笑いもせずに、重ねて問いかける。

「それは人類を……いや、世界を自分好みに変える、という事と同義かな?」

 すると、そこでマリスビリーは、ようやく軽く動揺したような表情を見せ、

「──── ハンマーで頭を殴られた気持ちだ。ある意味ではそうかも知れない」

 と、言った。

「私はそれまでの人間の、いや、宇宙の在り方に疑問を持っていた」

 そこからは独白するかのように、マリスビリーは言う。

 すると、

「他者の内側というものが理解できなかった」

 と、セレスタの声が割り込んできた。

「自分の想いで酷く苦しんだくせに、他人が同じように心を持っている事を自然なことだと考えられなかった。外のカタチを見る事で全てを知れると思い込んでいた」

 セレスタの言葉に、マリスビリーは、軽く驚いた表情をした。だが、その表情の変化も、すぐに元の済ました表情に戻る。

「かなり悪意を感じさせる言い方だが、本質をついているとは言える。私は『表と裏』という構造に価値を見いだせなかった」

「だから、中身は不要、だと……」

 マリスビリーの言葉に、立香が聞き返すように言った。

「そうだよ。それが誰にとっても無駄がないのだから」

「それで、世界をそう作り変えようとしている……」

 マリスビリーが答えると、立香は更にそう言う。

「そう受け取ってもらって構わない、のだろうね」

 マリスビリーはそう言った。

 ──── 更に、通路を進んでいく。

「君達のことだ、カルデアス地球の人類と文明について、解析はできているね?」

 マリスビリーが切り出す。

「100年の間、信じられない程の発展を遂げた、と」

 立香が答える。

 すると、マリスビリーは、口元で笑っているかのような表情で言い始めた。

「そう。人種、領土、技術、エネルギー、食糧、人権、医療、災害。それら全てが()()()()のおかげで解決した。資源に悩まされない、健康に悩まされない、隣人に悩まされない、災害に悩まされない。そんな世界が、その物質が構成する “(ライン)” で実現した。それは機械間の伝導物質にもなったし、人同士を繋げる事もできた。それによって、人間は真に、()()()()()()存在になった」

「人間同士が、わかり合えるような “線”、ね」

 ダ・ヴィンチが、怪訝そうな、険しい表情をマリスビリーに向けた。

 それに気付いているのか、マリスビリーは涼しい顔のまま、続ける。

「方法も極めて簡単だった。その物質を身体に移植するだけでいい。 ──── それがカルデアス地球の人類圏。本来なら1000年かけて到達する恒久的平和が叶った」

「聞くだけなら本当に理想世界ですが……」

 マシュが言った。

「マシュ、君は経験を積むことで、自分の価値観に照らし合わせて考える、という事を覚えて()()()()ようだね」

 僅かに哀しそうに、マリスビリーはそう言ったが、すぐに済ました笑顔に戻り、言葉を続ける。

「実際、1年目は限られた市民にしか与えられなかった。だが、次第に量産が可能になり、人々はこぞってソレに群がり、あらゆる国がその恩恵に与った。そして10年、20年と地道な努力と歳月を重ねた結果、2050年には人類の99%に行き渡り、地球全土を結ぶ一大ネットワーク事業の要ともなった」

 マリスビリーは目を開き直し、立香に視線を向ける。それに気付いたブーディカが、若干構えるようにしつつ、表情を険しくした。

「まぁ、一部にアニミストは()()()()を嫌い、文明の及ばない山奥で暮らしたが、それ(異分子)を排斥するほど人々は醜くはなかった。満ち足りていたからね」

 マリスビリーはそこまで言うと、今度は身体ごと立香達の方を向いた。

「さて、ここまで聞いて疑問が浮かぶのは当然だ。()()()()とは何か」

「宇宙人を解剖して取り出した、おぞましい代物」

 マリスビリーの言葉は明らかに途中だったが、セレスタは、少し張り上げる声を出して、それを遮るように、言った。

 立香達が、軽く驚いたようにして、セレスタを振り返る。

 ただ、セレスタのパートナーであるデオンは、涼しい表情をしている。

「…………どうして、そう思うんだい?」

 マリスビリーは、驚いた様子もなく、セレスタに問い返す。

「だって、それが私だもの!」

 挑戦的に笑みを浮かべつつ、セレスタは胸に手を当て、そう言った。

 

「カルデアス地球に落下した宇宙人。未知の物質をもたらした被検体。汎人類史のオルガマリー・アニムスフィア! それが私の精神(こころ)。それを異聞世界(レイヤー)のカルデアスの魂に貼り付けて、作り物の身体を与えたもの、それが私なの!」

 

「本気で……言ってるんですか?」

 マリスビリーは意外にも、さほど驚いた様子は見せなかった。それが本心なのか、取り繕ったものなのかまでは解らなかった。

 それ以外の全員が、驚愕と言うか、信じられない、といった表情でセレスタを見る中、立香が、やっと声を出して、問いかけた。

 セレスタは、ニヤリと笑ったまま、言う。

「ええ、なんなら、汎人類史のオルガマリー(わたし)じゃなきゃ解らない事を答えてあげましょうか? 立香、あなたカルデアでレイシフト実証の前の説明会で、私の訓示の最中、一番前の席に座って寝てたわよね? そして私の怒りを買って、ビンタされた後、追い出された」

 それを聞いて、立香は、驚愕の表情の目を更に大きく開く。

「マシュ、最初の冬木では、誰も準備なんかできていなかったけど、私が持っていたドライフルーツで小休止を入れたわよね」

「え、え、そんな、そんな……」

 セレスタの、オルガマリーとしての記憶について聞かされ、マシュも、彼女らしくなく、愕然とし、跡切れ跡切れの言葉を出す。

「それがここ、エリア51だって知ったのは今だけど、どんな目に合わされたのかは覚えてる。最初は確かに治療を試みていた。だけど、その神経のような繊維体が、夢の素材としての特性を持っていると解ると、その行為は ────────

 

 

 お願い、話を聞いて!

 誰か、誰か!!

 

 やめ、やめて、やめ ────

 ゃあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ

 

 助けて! お願い、助けて!!

 ひいぃぃいぃ、ひぃぃ、あぁぁぁああああ!!

 

 やめて、やめて!

 私は人間、人間よ……

 宇宙人なんかじゃ、ない……!

 

 同じ地球人なのに、どうして…………

 たすけて、誰か……助けて…………!!

 

 たすけて たすけて たすけて たすけて

 たすけて たすけて たすけて たすけて

 たすけて たすけて たすけて たすけて

 たすけて たすけて たすけて たすけて

 

 誰も、助けて、くれない……

 あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 だれにも、わたしのこえは、とどかない……

 あがぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

『──── ぇか、誰か! この電波を出している者!

 受信ができるのなら、応答してくれ!!

 助けが要るのなら、そう言ってくれ!!』

 

 え…………

 

『こちらは、JOOK、日本放送協会、京都放送局!』

 

 とどい、た ────

 

 

 ──────── まさか、私の出していた声が、時空間を越えてAMラジオ放送に混線していたなんてね」

 セレスタは言う。

 マリスビリーとノウム・カルデアの一行は、マリスビリーが案内する予定だったその部屋にいた。

 そこは、立香とマシュには一度訪れた覚えのある ──── トラオムで見た、手術室のような場所、だった。

汎人類史のオルガマリーの精神(わたし)は、向こうの歴史で昭和17年の初頭、つまり、1942年に、向こうの世界にサルベージされた。だから、精神(わたし)がここにいたのは、2042年まで、ということね」

 セレスタは、伏せがちにした視線で手術台の上を見ながら、寂しそうな声で言った。

「救出されたのは精神だけだった」

 未だに動揺した様子もなく、マリスビリーが言う。

「だから、精神が失われた後も、魂はこの場所に留まった。やがて魂は、欠落した精神の代わりに、魂の中に残っていた記憶の残滓を元に、精神を再生させた」

「それは私も推測はしていた。でも、新しい精神と、私は別物。もちろん、まったく負い目を感じていないと言えば嘘になるけど……いいえ、だからこそ ────」

 不敵な笑みで腕組みしつつ、セレスタは、マリスビリーを見据える。

「お父様改めバカ親父。アンタの計画は絶対にブッ潰してやるって決めたの」

 





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ネモ・ガールマリーンの衣装について

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