Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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前回一部加筆しました2026/03/08 14:34(JST)



Chapter-09

 ストーム・ボーダー、サーヴァント並列召喚システム。

『まだ不具合は直らないか!?』

 艦内通信越しに、ゴルドルフの訊ねる声が聞こえてくる。

「ダメです! 動作不良解消されません!」

 マーカスがまず声を上げる。

 その間に、基盤を覗き込んでいたオルガマリーが、装置の筐体内から這い出してきた。

「術式の一部を修正したら、霊基グラフを読み込むようにはなったんだけど、肝心の召喚式が途中で止まっちゃうのよ!」

 オルガマリーが通信に向かってそう返した。

 通信の相手がダ・ヴィンチに代わり、

『外的要因かも知れない。周囲は地球じゃない、カルデアスの概念の中にあるんだ』

 と、険しい表情で言った。

「もうちょっと弄ってみる」

『それはいいが、これから荒事になるかも知れない、作業するなら気をつけてくれ!』

 今度はネモ・キャスターの声が通信越しに聞こえてくる。

「なにか始まってるの!?」

 アストルフォが訊ね返す。

()()()カルデアスのメインシステムが呼んでる、多分戦闘になる!』

「!」

 筐体内を再度覗き込もうとしていたオルガマリーの動きが止まり、振り返る。

「アストルフォ」

「えっ」

「行ってきて」

「でも……」

 オルガマリーに言われ、アストルフォは一瞬躊躇し、オルガマリーと、通路の方とを交互にキョロキョロと見てしまう。

『艦内は大丈夫だ! あたしが保たせる!』

 ネモ・キャスターが言ったのを聞いて、アストルフォは、

「──── ッ、解った、行ってくる」

 後ろ髪を引かれる様子を見せながらも、通路を飛び出していった。

 

 

 ストーム・ボーダー前部甲板 ────

 いや、そこに()()()()()のか?

 立香はそんな感覚に置かれていた。宙に浮いているのか、きちんと立っているのか、その感覚がぼやける。魔術礼装の防御がなければ、もっと酷い事になっているのかも知れない。確実に感じられるのは、隣にカドックが立っている事ぐらいだ。

「これ……どうすればいいって言うんだい?」

 前に出ているブーディカの声が聞こえてきた。

 前方に見える、虹色に光る花のような存在。金属質に見えるのにうねっているように見える。

 それはまだ簡単に届かないところにあるのか、それともぶつかりそうなぐらい間近にあるのか、それすら立香には曖昧に捉えられていた。

「今見えているのは外殻だろう。ダメージを入れるにはまずそれを剥ぎ取る。アナスタシア、頼む!」

 カドックが言うと、それに(こた)えて、アナスタシア・オルタがサーヴァント達の先頭に出る。

「この(まち)は人民を優しく包み込むも、圧政による飢餓と凍てついた記憶を忘れぬ(まち)。まさしく暴政を掲げる者。あなたに、この冷たさに耐えられますか?『紅帝雪晶都(クラースナヤ・インペーリヤ)』」

 固有結界には至らないものの、凍てついた都市の概念が、相手に向かって投影される。実際の温度の問題ではない。アナスタシア・オルタが操る凍結の概念を、彼女を()んだ無念が暴政者に対して最大限に高めて投げつける。

 虹色の花の表面が凍てつき、その動きが止まる。

「はっ!」

 アナスタシア・オルタは、そのまま、凍りつかせたその存在に向かって、手にしていた霊装AKを撃ちかける。

 パキンッ、キンッ、パキンッ

 まったくのノーダメージというわけではないものの、劇的に外殻を砕くには威力が足りていない。

 そこへ ────

「独善の王! 復讐の炎で灼かれろ! 『母后の勝利槍(ヴィクトリアス・マトリアーク)』!!」

 ブーディカが迸るかのように迫る。なお凍てついたままの相手の、花状のその中央部に、神殿の柱ほどもある赤黒い炎の槍を突き立てる。

 パキ、パッキィィン

 凍りついていた表面の殻が、砕け、剥がれ落ちていく。

「ハーッ!!」

 ブーディカに続き、エスィルトが飛びかかっていく。

「『屈辱は我が勲章となれ(ブランディング・オブ・ヴィクトリア)』!!」

 それは直接の打撃技ではなかったが、エスィルトの剣が赤い光を帯び、その剣を大振りにして斬り裂く。

「『影踏む勝利の娘(ドーター・オブ・ヴィクトリー・シェイド)』」

 スッ

 (ブーディカ)(エスィルト)が派手に光を散らしている中、タスカは音もなく現れて手にしている黒い剣で深く斬り裂いた。

「よーし! ボクもいっくぞー!」

 後から到着した彼が、光の如く一気に相手に迫る。

「舞ってまーす! 巻きつきまーす!十重(とえ)二十重(はたえ)に!! 『僥倖の拘引網(ヴルカーノ・カリゴランテ)』!!」

 アストルフォが握る、網の名を持つ蛇剣が伸び、渦を巻くように広がる。外殻が剥がされた相手の本体を、広範囲に渡って斬り裂き、抉る。

 アストルフォが、相手に向かって正面に向かう軌道から逸れるように離脱した後、マシュが踏み込みかけて ────

『なるほど、貴方達の意志は解りました』

 その物体が声を発しているのか、脳に直接響いてきているのか、立香にはどちらか解らなかったが、とにかく、相手の声が聞こえてきた。

『例外は認められません。旧人類史の痕跡を削除、異聞帯の遺物を消去します』

「まずっ!」

 立香とカドックの後ろから声が発された。そこに、セレスタがいた。

「イケニの女王! 貴方防御できると言っていたわよね!? 早く展開して! マスター2人だけでも!」

 セレスタは、そう言いながら、サーヴァント達より前に出ようとする。

「アンタは ────」

「早く!」

 ブーディカが唖然とした表情で聞き返す言葉を、強い声で制する。

「アンタ達、あたしの後ろに!」

 ブーディカが槍を掲げる。槍から炎が吹き出すが、それは『ヴィクトリアス・マトリアーク』の時と異なり、その穂先から放射状に広がる。

「『母后の守護槍(ガーディアン・マトリアーク)』!」

 炎はドームを形成し、ブーディカ自身、エスィルトとタスカ、そして立香とカドックを覆う。

「艦長! 聞こえてるんなら全力で逆噴射! 一旦離脱して!!」

 セレスタは叫びながら、左手で手首を支えるようにして右手を掲げる。

 唱えるような “声” が聞こえてくる。

『ここに、一片の余地もない完全な世界を。ロストベルト・ナンバーゼロ』

 

『「虚空には神ありき(アニマ・アニムスフィア)」』

「『其の隣に神ありき(アニマ・アニムスフィア)』」

 

「エンジンリバース!! 全力!!」

「自分のスラスターの余波で艦体に傷が付きますよぉ!」

 ネモ・キャスターの怒声に近い命令に、ガールマリーンの1人が悲鳴を上げた。

「構うもんか! あれに巻き込まれたら木っ端微塵どころかチリも残らないぞ!!」

 ネモ・キャスターは更に怒鳴った。

「だけど ────」

 今度は、操縦席のムニエルが悲鳴を上げる。

「ダメだ! 全方位から別の攻撃が迫ってる! こんなの回避なんか ────!」

操縦桿(スティック)から手を離してろ! あたしが直結でやる!!」

 前方の破滅から辛くも抜け出したところへ、ムニエルが言った通り全方位から迫る、巨大な魔弾のような攻撃を、後進のまま、捻りこみつつカーブを描く、アクロバットのような機動で回避する。

「クッ」

 額を右手の指で抱えるようにしたネモ・キャスターが、表情を歪める。

 攻撃を躱しきり、それが止んだところで、ストーム・ボーダーはスラスターを釣り合いにし、静止状態に入った。

「くっ……そ、流石に魔力炉、エンジンにあんな操縦までやるのは限界半歩越えてる……」

 そう言いながら、ネモ・キャスターはよろめき、管制室の仕切りに寄りかかった。

「次、こんなのやられたら、流石に保証できねー」

「な、なんだったのかね、今のは……」

 唖然呆然という様子のゴルドルフの声がする。

『ごめんなさい、私の想定が甘かった』

 通信越しに、セレスタが申し訳無さそうに言う。

『私達をその存在の概念ごと無にしようとしたのよ……私がカウンターしたけど……』

「存在を無にすると……ソイツは弱っていたんじゃないのかね?」

 ゴルドルフは、顔色を悪くしながら重ねて問う。

『全力を出せてないのは事実よ。そうでなかったらあなた達はとっくに消去されているわ。でも私が想定した程には制限されてなかった』

 セレスタは、悔しそうな、苦悩しているような、(しか)めた表情で言う。

「し、しかし、キミの能力で防げた、という事じゃないのかね?」

『今のはね……でも、撃ち合いになったら、正直持久戦になったら流石に自信がない』

『これで解ったでしょう?』

 ゴルドルフの縋るような声に、セレスタが苦しそうに答えると、そこへ “声” が割り込んできた。

『貴方(がた)に勝機はありません。消去されるか、地球へ帰って機構の中で暮らすか……最後の選択肢を差し上げましょう。もちろん、汎人類史の方のみですが』

 前部甲板。

「ごめんなさい、本当に私のミス」

 セレスタは、髪をかきあげる仕種をしつつも、立香を見上げて、申し訳無さそうに言った。

「私……私は……────────

 

 最初は「生きるため」だった。

 時間神殿で、ゲーティアにそう答えた。

 その次の旅は「取り戻すため」だった。

 

 いつも最悪の状況だった。

 そう言い聞かせなければ、戦えなかった。

 

 でも。

 “戻れる場所” ができたことで、

 

 初めて、「守るため」に、「戦いたい」、と思った。

 

 ──── 嫌だ、嫌……私…………」

 立香は、ボロボロと涙を零しながら、言う。

「諦めたくない……」

「…………」

 マシュが、ブーディカが、甲板にいたサーヴァント達が、言葉もなく立香を見ているしかできずにいた。

 しかし、やがて、

「…………解った」

 と、セレスタが言って苦笑した。

「私が全力でぶつかってくる。勝機は五分五分だけど…………」

「セレスタさん!?」

 泣きじゃくっていた立香が、顔を上げて、驚いた表情をセレスタに向ける。

 セレスタは、その視線に背中を向ける。

「あなた達は、その間に離脱して」

「待って、待ってください」

 立香は、慌ててセレスタの背後に駆け寄り、その片腕を掴む。

「貴方がいる世界を守りたいんです! 貴方がいなかったら意味がないんです! セレスタさん…………オルガマリー所長!!」

 セレスタが振り返る。

「私も同じなの! 汎人類史のオルガマリー(わたし)の “春の記憶” を、最悪の形で消したくない!」

『まだ、理解が不充分なようですね』

 “声” が割り込んできた。

『原初証明宇宙 支柱七() 解放。凍結していた天体運動を再開』

「っ……!?」

 今は一時的に離れている核、メインシステムを取り囲むように、尖端の尖る空想樹7本が姿を表した。

『貴方(がた)を消す事は容易いのです。カルデアスの偽体。貴方がどれだけの事をしようとも、保護から外された人間を消去するなど、容易い事なのです』

「そんな……私達が今までしてきた事って……」

 マシュが、その光景を見ながら、愕然として、漏らすように声に出した。

「空想樹だけでも押さえないと、どうしようもない。でも、もう追加の戦力は……カルデアのサーヴァントを呼べないのでは……」

「カルデアの……汎人類史のサーヴァント……」

 マシュの言葉の一部を、立香は、目を(まる)くしながら反芻した。

 そして、甲板に手を向ける。

開始(run) ────」

 

 素に銀と鉄。 礎に石と契約の太閤

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、

 玉乃(たまの)(こうぶり)より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

「先輩!?」

 マシュが驚いた声を出す。

「召喚は……────」

 

 うん、これは、賭けだ。

 でも、今起きているのが、()()()と同じなら。

 

 世界の不可視の本質、 “整然たる混沌の渦”。

 英霊の座があるそこは、並行世界までもから流れ込む、想造、空想、妄想が情報の載ったエネルギーとして流れ込む坩堝。

 だから、あの戦いも流れ込んできているはず。

 あの、誰も知らない、(ソラ)の外での戦いの経緯も、その結果も。

 

 幻想の寄るべに従い、この意、この理に従うならば(こた)えよ

 

 だから、汎人類史には絶対にいない、

 このカルデアスが認識するはずのない、()がいてもおかしくない。

 

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 

 我が記憶の奥底より蘇り、

 汝三大の言霊を纏う七天となりて、

 整然たる混沌より来たれ、灯籠の守り手よ ────!

 

「召喚、が、発動、する…………!!」

 マシュが、呆然とそれを見ていると、その光の中に、その人物が現れた。

「そんな……先輩、先輩、こんなことって!!」

 

「まいったな。僕を、この姿でサーヴァントにしようだなんて無茶苦茶だ。本質は写し取った情報とは言え、こんな形で再会するなんてな…… まぁ、しょうがないか」

 カルデアの制服に、白衣を着けた長身の男性は、決まり悪そうに言ってから、表情を引き締める。

 

「サーヴァント・キャスター、ロマニ・アーキマン、召喚に応じ参上だ」

 





アストルフォ(sabre)/No Event Version
https://x.com/kaonohito2/status/2030600142215344167

シュヴァリエ・デオン(assassin)
https://x.com/kaonohito2/status/2030613904502792660

どうしても「銃と正装」ってーとルパン三世の影響が抜けねーな……

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「⁠一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。

ネモ・ガールマリーンの衣装について

  • 原作マリーンと同じ短パン
  • スカートにしたら?
  • ちょい色気のあるショーパンにならない?
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