Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-10

「は…………?」

 セレスタが目を点にする。

「ロマニが英霊として召喚されるなんて、一体……?」

 呆然とロマニを見続けながら、困惑の言葉を出す。

「えっと……小さいオルガマリー(マリー)?」

「小さい言うな!」

 ロマニの方も、セレスタを見て当惑したように言う。直後、セレスタが言い返した。

「い、今はそれどころじゃないから」

 立香が、少し慌てたように手を振りながら割って入る。

「おっと……そうだった」

 ロマニは、気を取り直したようにそう呟いて、前部甲板からストーム・ボーダーの前方を向き、メインシステムに視線を向ける。

『どういうことです? 英霊を新たに召喚できるはずが……────』

 “声” が狼狽える。

「ああ、やっぱりそうか」

 ロマニが言う。

「時間神殿の時と同じだ。この空間では英霊の召喚が禁じられている」

「じゃあ、どうしてロマニ、アンタは召喚されたのよ?」

 セレスタが、まるで抗議するかように、その背中に向かって声を出す。

「それはこの空間が、正しく人類史を運営しようとしているからだよ」

 そう言うと、ロマニは一度振り返る。

「女王ブーディカ、勇士アストルフォ、貴方達は感じているだろう?」

「ああ、うん」

 ロマニの問いに、ブーディカが答える。

「カルデアスに入ってからずっとだ。私達の存在に対する反発を感じてた。戦いの妨害になるほどじゃなかったから ────」

 そこまで言って、ブーディカはチラリ、と立香を見る。

「── 敢えて言わずにいたけど」

「え、でも、私達は別に……」

「特に何も感じていません」

 エスィルトとタスカが、奇妙そうな顔をしながらそう言う。その隣で、星麗禰が自分も平気だ、と言うかのようにぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「そう言えば、ハベトロットさんはもっと強く反発を感じていて、現界も厳しいと ────」

 思い出して、マシュが言う。

「立香、キミは気付いたんだろう? だから、()なら()べると思いついたんだ。()()()()()()()じゃ()()()()ね」

 ロマニは笑顔を浮かべて、身体をメインシステムの方に向け直しつつ、顔は立香に向けながら言った。

「はい! そうです!」

 立香が、少し声を弾ませながらそれを肯定する。

「だれも知らないはずのあの戦いでも、今の世界なら覚えているんじゃないか、()()()()()()()()()()()んじゃないか、って」

「なるほど、そういう事か」

 ブーディカが言った。

「えっ、どういうこと?」

 アストルフォが、キョロキョロと視線を動かしながら聞き返す。

「汎人類史の英霊の存在が阻害されてるって事だよ。そうでしょ?」

 ブーディカは言い、立香とロマニの方に確認するように問いかける。

「あ、じゃあ私達がなんともないのって……」

 タスカと2人してショックを受けたかのような表情になり、エスィルトが声に出した。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ブーディカが言って、軽くため息を吐いた。

『なるほど、異聞帯の英霊の座を使ってサーヴァントを召喚する。その発想は想定外でしたが ────』

 “声” が言う。

『── ですが、それが何か?』

 先程、一瞬取り乱した言葉はなかったかのように、 “声” は続ける。

『サーヴァント1騎、召喚に成功したぐらいでこの状況が変わるとでも?』

「そうだね、普通はそう考えるさ」

 ロマニが、微笑みさえ浮かべながら言う。

「でも、今、キミは『はずがない』と言った。 “想定外” は起こるものさ。僕もそうだった。 “人類史に2017年以降はない”。その観測結果は覆った」

「あ…………」

 ロマニはあくまで “声” に対して言ったが、立香がハッとして口を押さえる。

「ごめんなさい、ドクター、私……────」

 立香は、申し訳無さそうに言ったが、それを聞いて、ロマニは苦笑する。

「うん、それも “想定外” だ。そういうアクシデントがあるから、 “対応措置(パッシブ・セーフティ)” は用意するものだろ?」

「え…………」

「そうよ」

 言葉を途切れさせる立香に、その背後からセレスタが声をかけた。

「汎人類史の力だけでここへ乗り込んで来ていたら、ほぼ確実に詰んでたでしょ」

人類史(せかい)を消す力に対して、対抗できる世界が残った。それは誰かを責めるものではないさ」

 ロマニが続けてそう言った。

「私は未来の保証(カルデアス)。西暦2117年の文明の灯りを私は見ている」

 セレスタがそう言ったところで、ロマニはメインシステムの光に向き直る。

ソロモン(ぼく)の権能の1つ、ネガ・サモンを使う、その解析の力。2017年以降の人類史を消した張本人。宇宙(せかい)を解析し、地球(だいち)を解析し、再現する者。解析の獣、人類悪(ビースト)。ただし、なり損ないだ。キミの製作者は精神(こころ)を解析する力を与えなかった。いや、与えられなかったんだろう。自分が理解できなかったんだから」

『そんな事はありません。私の解析は完璧です。私こそが唯一の完全な存在、完成された宇宙なのですから』

「でも、君の解析はもうすぐ崩壊する。 …………名前がわからないのがもどかしいな」

『カルデアの同志として、最後に教えて差し上げましょう。人理保障天球マリス・カルデアス。もっとも貴方(がた)は、魂も残らず消滅していただく事になるので、無意味な事ですが』

 

 管制室。

「ええい、黙って聞いていれば! ビースト!? そのなり損ないだと!? どういう事かね技術顧問、説明早く!」

 ゴルドルフが、憔悴したような憤怒したような表情と口調で、ダ・ヴィンチに説明を求める。

「トリスメギストスII(2)も答えた。ヤツはビーストVII(7)。ただし不完全だ。コヤンスカヤのような幼体じゃない。文字通りの “なり損ない” だ! そうと分かればこちらにも人理の ──── いや、人意の後押しがあるはずだ!」

 

 前部甲板。

『今度こそ最後です。直ちに空想樹クエーサーを解放し、超新星爆発による恒星級攻撃を行います。貴方方の(フネ)では回避は不可能です。さようなら』

 空想樹の1つから、花が咲くかのように光が漏れ出す。それは超高温を示す白い光となっていき ────

 

「天は巡り、地は回り、愚者は目を逸らし、皇帝は其れを詠み、人は移ろい、されど魂は生まれ出ずる」

 

 ストーム・ボーダーの舳先にも、同じように光球が現れ、膨らみながら進んでいく。

『な ────!?』

 空想樹の光球がストーム・ボーダーへの光線となって放たれた瞬間、同じようにストーム・ボーダー舳先の光球も、光条となって空想樹からのそれに向かっていく。

 おそらくはお互いの中間点でお互いはぶつかり、強烈な閃光を放つ。それは数分間続いたようにも感じられた。

『恒星級攻撃を同等の攻撃で相殺した!? そんな、そんな事が可能なはずが……』

「バーカ。やっぱりアンタ “なり損ない” だわ」

 セレスタが挑発するように笑いながら言う。

「今、 “()()()()()()したでしょ? だから一斉じゃなくて、後を考えて1発だけ撃った。1回ぐらいならなんとかなるわ」

『どういうことですか、カルデアスの偽体。疑似惑星モデルに過ぎない貴方にこんな事ができるはずがありません』

 マリスがセレスタを問い質すと、セレスタは不敵に笑う。

「私の名はセレスタ、Celestial。()()()()()()()()存在(もの)。不可分の存在」

『あり得ません、そんな理論』

「アンタに言われる筋合いはないわよ。私は言ったはずよ。『ナイフでバラバラにして解らないと言ってるのは西洋魔術師だけだ』って」

「な、なんて事を、そ、そんな事が可能なのかよ……」

 セレスタがマリスと言い合っている後ろで、カドックが驚愕の表情でそれを見ながら、声を漏らすように言う。

「ぺぺや(アクタ)がこの場にいたら驚倒(きょうとう)ものだ。カルデアスを東洋理論で組み直したのか!」

「そう、それが、私が “仮想魂の(はこ)” の中で出した答え」

 セレスタはそこまでは格好つけられたものの、

『ですが、貴方はただの1体。今と同等の攻撃は連続してはできません。こちらの勝利は揺らぎません。空想樹セイファート、解放 ────』

 と、マリスの言葉とともに、2本目の空想樹が光を放ち始めた ──── かと思いきや、その光が集まっていた空想樹セイファートの尖端で、突然大爆発が起こった。

『!? これは? 超新星爆発ではない ────』

 その爆発の閃光を見た立香が、口に出す。

「あれは、確かオリュンポスで見た……だから、つまり、妖精國の ────!」

 

「対神兵器『ロンゴミニアド』!」

 

 

『警告 警告 敵性物体が 発生 しています。解析 内部機能 および 自律思考 有り 空洞構造体 と 認められません。空想樹セイファート その 芸術的な滅亡路線(童話/幻想によるメリー・バッドエンド) に 従って 敵性物体 を 排除してください』

「『捕食する日輪の角(ブラックドック・ガラティーン)』!!」

 空想樹の枝が、青黒い炎に燃やされる。

「『メリー・バッドエンド』か。聞き慣れない言葉だが、趣旨は理解した」

 寡黙にも苛烈、本意に慈悲をもつ女王が姿を表す。

「多くの救われない悲劇と運命を定め、それを蝶の羽根の如き薄膜の夢で飾り、あたかも佳き物語のように見せかける……それが貴様の方針というのなら、いいだろう。望み通り、この上ない悲劇を与えてやる」

 モルガンはそう言い、ケープの越しになお鋭い眼力を感じさせる睨みを空想樹セイファートに向ける。

「妖精騎士よ! 我らが大地の痛み、祭神に代わって返礼する時だ!!」

「本当に ──── よくもあそこまでブリテンを台無しにしてくれた! その借りを返そう! 根源の渦の複製だろうが本物だろうが容赦なく切断する! 『無垢なる湖光(イノセンス・アロンダイト)』!!」

 

 

『あり得ない。空想が漏れ始めている。あれは……異聞帯のサーヴァント?』

 空想樹セイファートに続き、空想樹メイオール、空想樹マゼランでも火が()き始めた

 マリスから、動揺の声が漏れた。

 立香がマリスを見据え、言う。

「……解る。私達が作り変えられた汎人類史に決別を告げるためにここまで来たように、あのひと達もまた、自分達の世界の決着をつけに来たんだ」

『────、意味がありません、たった数騎のサーヴァントで形勢は変わりません』

 マリスは、唖然とした様子でそう言った後、少し呆れた様子になって、

『いえ、そもそもなぜ、彼らは空想樹を攻撃しているのですか? 空想樹は異聞帯の礎。自らの世界を否定しようというのですか?』

 と、言って、対象を立香に向けた。

『解析不能、彼らの醜い(なかみ)は理解不能です。解説を、代弁を求めます。藤丸立香』

「なんで私に聞くの?」

 立香は聞き返す。

『彼らの行為は、自身の世界を否定し、途絶させる行為。同じ選択をした貴方なら解説できる。なぜ私は、守るべき人類史から攻撃を受けているのかを』

「あー、ごめん。それは解んないよ」

 立香は、マリスの方を見たまま、言う。

「だって私には帰る世界、帰りたい場所があるから。ただ、それが元の世界じゃないってだけ」

『──、────』

 一時、絶句したかのように思われたマリスだったが、

『では、セレスタ・アニムスフィア。 ──── いえ、セレス・カルデアス』

「さぁ。私はゴミみたいな世界なら滅んでしまえって思った事はあるけど、彼らが同じ想いかって言われたらそれを保証はできないわ」

『────────』

 マリスが更に絶句したような間があったが、

『藤丸立香、このまま空想樹が切除されれば、どうなるか理解できているのですか?』

 と、立香に訊く。

「えっ…………」

『ここにある空想樹は、異聞帯のオリジナル。切除された空想は全て消去されます。解りますか? ()()()()()()を切除すれば、貴方が守りたい、帰りたいと言っている世界も、最終的に消去されるのですよ』

「そんな……」

 絶句しかけた立香だったが、

「いえ、それはないはずよ」

 と。その背後から、セレスタがそう声を発した。

「さっきも言った。この世界の西暦2117年は観測されている。まだ仮説が幾つかあって断言できないけど、()()()()()()()()()()()()()()は変えられない」

『──── それならば、観測結果を消去するまでです。セレス・カルデアス』

 マリスは、淡々とした口調になって、言う。

『未だサーヴァントの数は限られている。これを排除した後、まず、貴方を消去します』

 今や、全ての空想樹で何らかの異変が生じていたが、それは空想樹の大元を切除するのには足りていなかった。

「…………」

 セレスタが、少し考えた後、

「ロマニ、さっき言ってたけど、あなた、魔術王、アニムスフィアの帥父ソロモン王って、本当なの?」

 と、訊ねる。

「うん、まぁ、そう言う事だけど」

 ロマニは最初焦ったようにしたが、すぐに表情を整え、口元で笑った。

「じゃあ、『世界はまだ貴方を必要としている』。いいわね?」

「人使いが荒いなぁ。本当にマリーみたいだ」

 深刻そうな、真剣な表情で言うセレスタの言葉に、ロマニは飄々とした様子でそう言ってから、

「でも、 “あの時の僕” に続きがあるなら、きっとこうするだろうから」

 そう言って、ロマニは前部甲板の中央に立つと、前方を見据えて、両手を軽く広げる。

 

「『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)』」

「『戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)』」

「『訣別の時きたれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)』」

 

「そして ──── ロマニ・アーキマン第1の宝具にして、ソロモン第4の宝具をここに」

 

「『再会の時きたれり、世界は其を求めるもの(テウルギア・レメゲトン)』」

 

セレス・カルデアス(せかい)はソロモンを求めた。ここに(かれ)の権能は再定義された。マリス、その権能は元々僕のものだ。返してもらうよ」

『何を ────』

 マリスが反応しかけた時、上空からキラリ、と、流星のようなものが、メインシステムに向かって行くのが見えた。

「えっ、これ…………」

 立香が、それを見上げて声を出す。

 流星は1つ、2つ……10、20……百を超え、千を超え、万を超え、無数に降り注いでいく。

「これは、汎人類史の……ううん」

 立香の顔が、笑みに変わっていく。

「新しい人類史の、サーヴァント!」

『い、いったい、何が起きているんだ? 報告したまえ』

 ゴルドルフが、通信越しに割り込んできた。

「この人は?」

 ロマニが、立香に訊ねた。

「えーっと……私達の司令官で、ゴルドルフ・ムジークで……」

「技術職ではありませんが、ドクターの後任的存在と思ってくれればいいかと」

 立香が言いにくそうにすると、マシュがその後を続けて説明した。

「そうか。初めまして、ムジーク司令官。僕はロマニ・アーキマン。かつてカルデアでマリスビリーの助手をしていた者で、今はサーヴァントとしてここに来ました」

『記録にあったな。人理焼却からの修復時にカルデアを指揮していた者だな。マリスビリーの助手というのが些か胡散臭いが、今は1人でも戦力がほしいというのも事実』

 ゴルドルフは、難しい表情をしてそう言ってから、

『それで、今何が起きているのか、報告してくれないか?』

 と、再度それを求めた。

「マリスがこの空間に張っていたネガ・サモンは(うしな)われました。今、サーヴァントが駆けつけてきています」

 ロマニが答える間にも、光を曳く無数のサーヴァントは、メインシステムの防護帯に、そして7柱の空想樹へと降り注いでいく。

『だとすると、後は……────』

 ゴルドルフの言葉に、立香が答える。

「空想樹を切除して、メインシステムを停止させるだけです」

 





マイクロショーツ版ネモ・ガールマリーン。(試作品)
https://x.com/kaonohito2/status/2031183107530043407

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ネモ・ガールマリーンの衣装について

  • 原作マリーンと同じ短パン
  • スカートにしたら?
  • ちょい色気のあるショーパンにならない?
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