Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-05

「なぜ、汎人類史は白紙化した?」

 

「!?」

 ノウム・カルデアのメンバーの顔色が変わる。

「誰かが消した、何者かが行った。それは解る。だが、それが起ったということは、世界のシステムが、貴方がたが汎人類史と呼ぶ世界、歴史を拒絶した証左ではないのか?」

「…………それ……は……」

 言い澱む声の中、大和が手振りで指示する。

 日本政府側の1人がリモコンを操作し、モニターの画面が切り替わった。

 それは、日本列島に無数の線が描かれている地図だった。

 両方とも線が複雑に、葉脈のように描かれている。だが、片方は北海道と、山陰地区のそれが、だいぶ粗くなっている。

「これは…………」

「片方は、 “異星の使徒” が持ち込んだ、日本の鉄道路線を書いたもの。もう片方は同じ書式で、この世界の日本の鉄道路線を示したものだ。どちらも、大都市圏は密度が高すぎて正確ではないが……」

 そう言って、大和は立ち上がると、ラジオのアンテナにも似た指示棒を伸ばし、北海道と山陰地区の、線が粗い部分を指す。

「特に北海道と山陰の領域では、鉄道が次々に廃線になっていると言っていた。これが “先に進む” ということなのか!? 強靭な国土と地域生活を支える鉄道を失うことが、 “可能性を追求した結果” なのか!? 真逆、衰退と停滞を象徴する出来事なのではないか!?」

「異議あり、です」

 大和の追求に、意外と言うか、マシュが挙手した。

「発言を許可しよう」

「はい。日本はモータリゼーションが進み、大都市圏以外では、1世帯あたり複数台の自家用車を所有することが当たり前になっています。汎人類史における、日本の鉄道の廃止は、自動車への転換という発展的な側面をもっていることを考慮するべきです」

 マシュが、なめらかな口調と凛とした視線でそう説明する。

「なるほど。その側面が存在することは認めよう。我が帝都も、かつて網の目のように張り巡らされた41系統の都電も、多くは自動車に追われ地下鉄に役目を譲り、遺すは11系統、1系統あたりも短縮され往年の姿はない……」

 大和がそこまで言うと、日本政府側の職員が、ノートパソコンを操作し始めた。このパソコンから、モニターに映像を映し出していた。

「だが……これはそうではないだろう?」

 モニターに写ったのは、 ────

 テーマパークの遺構が痛々しいゴーストタウン。

 高波、洪水で被災したまま放置されているJR北海道の “本線”。

 時代から取り残されたような建物が老朽化に任せている、老人しかいない街。

「…………これを発展だと、可能性だと、 “先” に進んだ結果だと認めろというのか?」

「う、うう……」

 気圧され、マシュは俯いて黙ってしまった。

「この世界は確かに発展している。我々を東京(ここ)まで連れてきたのも、我々が何を目的に行動しているか知り、それに対してこの世界がどれほど発展しているか、汎人類史と比べても優れた “可能性” を持っているか、それを見せつけるためだった、ということだね?」

 ダ・ヴィンチが、問いかけるように言う。

「左様」

 大和が言った。

「だけど、それは、 “キミ達が与える範囲の可能性” なんじゃないのかい?」

 ダ・ヴィンチがそう言うと、大和は、職員、壁の前に立っていたゆうだちと、顔を見合わせる。

「なぜ、そのような表現を?」

 怪訝そうな様子で、大和は訊ねる。

「今までの異聞帯もそうだった。異聞帯の王、神と名乗るものもいたが、その多くは自己を唯一の正義、人理を制御する者と定義し、人類の創造を激しく抑制していた。あるいは圧政を敷いていたと言ってもいい」

 単独の為政者としては、妖精國ブリテンのモルガンは、圧政ではあったが、創造を抑制していないという点では例外的と言える。だが、彼女が国民として支配していたのはそもそも人間ではない。人間もいるにはいたが、汎人類史の人間とは根本的な点で異なり、妖精達による “製品” に近い。

「それは、世界の “安定” を脅かすからだ、という理由でね。キミ達もそうなんじゃないのかい?」

 ダ・ヴィンチは、反抗的でも挑戦的でもない、ただ淡々と問いかけるように言った。

「他の異聞帯の情報なら知っている」

 大和は椅子に座り直すと、呆れたようなため息を混ぜながら言う。

「我々に言わせれば、度し難い、としか言いようがなかったが」

 大和がそこまで言ったとき、ダ・ヴィンチがシオンと顔を見合わせた。

 それに構わず、大和は続ける。

「所謂ヒューマニズム的な部分を除いたとしても、民には与えたならば、リターンがなければ、為政者はいずれ枯死してしまう。創造と可能性の制限は、そのリターンを漸減してしまう。……ああ」

 そこまで言って、大和は、ちらりと視線をゆうだちに走らせた。

「……私達がどのような存在か、説明はしたはずです」

 ゆうだちは、説明を引き継いだ。

 庇護されるべき国の民の思念……空想、妄想といったものが霊子体として形をとったもの。

 庇護すべき国民の思念によって具現化する。

「私達にとって人類の創造……空想、妄想と、それを具体的な存在に変える力は、私達の強さと活動するエネルギーの源です。それを制限して我々に得になることなどありません」

「…………つまり、思想統制のようなものとは無縁だと」

 ほんの僅かに表情を歪ませ、ダ・ヴィンチが聞き返す。

「はい。少なくとも我が国では」

 ゆうだちは、はっきりと即答した。

「具現化人格軍艦を形骸的存在にして、独裁を目論んだ()()なら、外国に何人かいたけどね」

 大和が、呆れたような表情で呟くように言い、軽くため息を()いた。

「それでも、違う」

 漏らすように、立香が言った。言ってから、顔を上げ、大和を見据える。

「確かに、私達の世界で起きた過ちかもしれない。でも、過ちを経験していないあなた方が、私達を批判するのは違う!」

「そうだ! 私達が同じ過ちを犯さないという保証などどこにも存在しない! だが、それでもだ!」

 感情的に声を荒げる立香に対し、まるでそれを打ち返すかのように大和が声を上げた。

「藤丸立香、あなたは日本人だろう! この光景が、あなたの日本で起きたものであること、誰も責任を取らぬ大罪であることはよく知っているはずだ!!」

 モニターに映し出されていたのは、 ────

 焼け付くし、更地当然になった、大都市だった場所。

 河川敷に積み上げられた、真っ黒な、人形をしたモノ。

 そこかしこに転がる、炭化しきった死体、死体、死体…………

 ──── 東京大空襲、翌日の光景。

「う……あ……」

 このような光景には、なれていた。彼女の前で、何度も起きた。今更この程度で、動じない ──── はずだった。

「これは、特異点や異聞帯で起きた、()()()()()()()()()()()()()()での出来事ではない! これほどの悲劇を、許されざる罪を、わかっている過ちを、なかった事にして何が悪い!? その程度の傲慢を持って、何が悪い!!!?」

 大和が初めて、上げた大声のために息を荒げた。

「…………そうなると、後は……」

 困惑と険しさの混じった表情で、ゴルドルフが言う。

「我々が汎人類史として取って代わるのを、貴方がたが許せるか。我々の対立軸は、もともとそれしかない」

 大和は、息を整えると、鋭くゴルドルフに視線を向けながら、はっきりとした口調で言う。

「貴方がたの家族、友人、それらは世界ごと白紙化された。我々から言わせれば、貴方がたがそれを事実として受け入れるのか、それとも、()()()()()()()()()()()()()

「八つ当たり!?」

 マシュが声を上げた。彼女は、力なく俯いて、椅子に座っている立香をどうにかフォローしようとしていたが、大和のその言葉を聞いて、驚きに僅かな怒りを混ぜて、視線を向けた。

「そうだろう? 汎人類史は、貴方がたが汎人類史と呼ぶものは消えた。白紙化された。誰がやったのか、なぜやったのか、理由はわからないが、なかったことになった」

「そんなことはありません! まだ、汎人類史はどこかに存在している!」

 マシュは、そう声を上げた後、一度、シオンとダ・ヴィンチの方を向いた。

「そうですよね!?」

「はい。今のところ、汎人類史は完全に滅びたわけではない、ということは断言できます」

 シオンが言う。

「だとしてもだ。我々も帝国臣民1億、ひいては全世界27億の人口を守る義務があり、権利があるはずだ」

 大和は言い、俯いたままの立香に視線を向ける。

「今の所、力で我々の方が優位ではあるようだが、仮にその関係が逆だったとしても、世界ごと滅びると解って、足掻くことを諦めるわけにはいかない。()()()()()()()()()()()()()()()()()の為に、この創造で満ちた世界を滅ぼさせたりはしない」

 立香の身体が、ビクッとした。

「…………まだ、考える材料が貴方がたにも必要だと思います」

 大和に代わって、ゆうだちがそう言う。

「一応、貴方がたが今の東京を観る時間は用意してあります……要らない、帰るというのであれば、その希望に沿いますが……」

「そうすれば、その時点から戦闘開始、という事になるんだな?」

 ()()()()()()()()、それまで口に出さずにいたカドックが、問い質す。

「そう言うことになるかと思います」

 ゆうだちが答える。

「どうする? 新所長」

「ううむ……」

 カドックに()()()()、ゴルドルフが軽く唸る声を出した。

「卑劣な言い回しになるかもしれませんが、貴方がたがあの空中戦艦に戻るまでは、危害を加えないことは保証します」

 ゆうだちが言う。

「…………ストーム・ボーダーそれだけの力では、抵抗することは難しい、だが……────」

 ゴルドルフが苦しそうに呟き、カドックとともに、立香を見た。

「…………我々の最大の戦力がこれでは、戦う術もない……」

「そうだね。虎口の中に入り込んでいるような気もするけど、ここは相手に甘えよう」

 ダ・ヴィンチが、ゴルドルフを支持するように言った。

「解りました。用意させます。一旦失礼しますね」

 ゆうだちがそう言って、会議室から出ていった。

 

 

 日の出桟橋から、ノウム・カルデアのメンバーをここまで運んできたマイクロバス、マツダ WX-90 パークウェイは、まだ内閣部局庁舎の正面口で待機していた。

 既に陽は落ちている。空は夜の群青に染まっているが、東京の地平はなお明るい。

 ゆうだちが、メンバーをバスに案内しつつ、職員からメモを受け取る。

「もっと永田町(ここ)に近いところ取れなかったの?」

「勘弁してくださいよ。いくら平日ったって、都内でいきなり当日じゃあ、きちんとしたところは……」

 ゆうだちが反射的に出した言葉に、職員は思わず頭を掻く仕種をしながら言い返す。

「まぁ、それもそうか……ごめん、考えなしだった。仕事増やして悪い、ありがとう」

 ゆうだちは、そう言って、メモを手に、バスに乗り込む。

「全員乗られてますね!?」

「ああ、 ────」

 前の方の座席に座っていたカドックが、答えかけて、一旦車内を見回す。

「大丈夫だ」

「了解。出しますね」

 カドックの答えに、ゆうだちはそう言い、添乗員席へ向かった。

「ここ、解る?」

 運転手に、先程職員から受け取ったメモを渡す。

「ジャイロケータに入れます」

「うん、そうして」

 運転手はそう言うと、ゆうだちから見て運転席に反対側に設置されていた、小さな画面の付いた “電子ジャイロケータ” に、建物の情報を入力し始める。GyroとLocatorを組み合わせた造語で、つまりナビゲーションシステムに当たるものだが、画面はタッチパネル式ではなく、小型のキーボードがついていた。

『出発シマス』

 ジャイロケータの音声が発されてから、

「発車しまーす!」

 運転手は、一度後ろを振り返って、乗客にそう告げてから、ギアを1速に入れ、マイクロバスを発車させる。

「…………先輩、大丈夫ですか?」

 マシュが、俯いたままの立香に、心配そうに声をかける。

「今まで……」

 立香が、エンジン音に紛れてしまいそうな声で言う。

「今までは、異聞帯を消すことが、そこに住む人ごと消すことだって解っていても、仕方ないって、異聞帯は間違っているんだって、どこかで自分に言い聞かせてた……」

「それは……」

 マシュが、掛ける言葉を迷っていると、

「まだ、この世界が汎人類史より素晴らしいか、なんて、解らないじゃないか」

 と、通路を挟んで反対側の席から、ダ・ヴィンチが声をかけてくる。

 マシュと立香が視線を向けると、ダ・ヴィンチと、並んで座っていたシオンも、心配気な視線と表情を立香に向けている。

「今までの世界も、素晴らしいのはあくまで一面だったのでしょう?」

 シオンも言う。

 立香は、その2人の顔をじっと見つめる。

「私……」

 

『こんな、強いだけの世界に負けるな』

『強いだけの者、国が跋扈するような世界の為に、この創造で満ちた世界を滅ぼさせたりはしない』

 

 マイクロバスは、新宿通りを西に向かう。

 四ツ谷駅の、中央線の跨線橋をまたぐ。

 道路の下を、緑色基調の塗装を施された253系が、愛称掲示器に『急行 アルプス』を示して通過していく。

 

「私……私は……」

 






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カドックとのカップリングは……

  • アナスタシア以外考えられない
  • 譲っても立香♀まで
  • 既存の型月キャラなら、まぁ……
  • 別に型月キャラでもオリキャラでも
  • 逆にやるならいっそオリキャラの方が良い
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