Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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※前回、京急旧1000形を600形(III)にしちゃったけど、
 600形(II)って現役じゃん……
 ということで、修正しました。


Chapter-09

『お待たせしました。この電車は 駒込線 日本橋行 です。次は 赤羽二丁目 赤羽二丁目です』

 自動放送が鳴る中、立香は振り返り、車窓の外を見る。

 都電が荒川線以外も10路線健在のこの世界、7000形・7500形だけでは当然足りず、 …………

「こいつ結構性能いいのに、廃車すんの勿体ねぇなぁ……」

 ……ってなノリで第一次更新改造で7000形と一見変わらん姿にされた5500形に、7000形とともに第二次更新改造を施した5700形、5703号が、交差点を左折する。

 その交差点を曲がらずに直進した先には、赤羽スズラン通りのアーケードが見える。駅の方から交差点を挟んで、アーケード方へ向かって多くの人が行き交っている。雑談しながら歩いている人達がいる。

 ── 消せない。

 この光景を取り戻したくて、必死に人理修復を果たした。ゲーティアとの戦いに勝利し、これで日常が、元通りの世界が戻ると思っていたら、人理漂白で世界は白紙化された。

 それらによって失われたものが、この世界にはある。自分の取り戻したかったものが存在している。それは自分のものではないかも知れないけれど、この世界の自分達が存在している。人理焼却も、地球漂白も、知らずに。そんな脅威に晒されることもなしに。

 ── この世界を消したって……────

 この世界を消しても、汎人類史、自分達がそう呼んでいるものが元通りになる、その絶対の保証なんかない。また、誰かが世界を消してしまうかもしれない。

 一度そう考えてしまったら、

『あなた達の世界は間違っています。だから、消しますね』

 ──── なんて、言えるわけがなかった。

 運転台の右下に『駒込線 19・27』の表示板を掲げた5703号は、赤羽・東本通り上の新設区間を僅かに北上した後、右折して国道122号線に出て、南東へ進み始める。

 ── この世界は ────────

 

 ──────── 消せないよ。

 

 

 秋葉原。

「えーっ……こんなの一般に売ってるの……」

「侮れませんね……」

 ジャンクショップの並ぶ裏通り、店頭でそれを発見して、ダ・ヴィンチが呆れたような表情で呟き、その隣でシオンがメガネのレンズを光らせながら言う。

「なんですか、それ?」

 マシュが問う。外見だけ見ると、ICと、複数の無極性電解コンデンサが取り付けられた電子基板に見える、のだが……

「魔力と電力の変換装置だよ。双方向のね」

「えっ……」

 ダ・ヴィンチの説明に、マシュが驚いて短く声を漏らし、その回路を凝視する。

「そんなものが、こんなところに?」

「うん。まぁ、そんなに大容量のものじゃない、乾電池よりちょっと大きい程度のエネルギー量のものだけど」

 そう言って、ダ・ヴィンチとシオン、それにつられてマシュも、周囲を見回した。

「やっぱり、汎人類史とは違うところがあるんだねぇ……」

「ええ」

 ダ・ヴィンチが言い、マシュが同意する。

「ただ、釈然としない所もありますが……」

 僅かに苦い顔をしながら、シオンが言う。

「まぁ、シオンはそうだろうね」

 ダ・ヴィンチもそう言って苦笑した。

「どういう事ですか?」

 マシュが、不思議そうな表情で訊く。

「この世界はどうも、魔力リソースを科学技術エネルギーに変換して使いたがっている……使っているようなんだよね」

「大気中の魔力(マナとオド)を電力に変換する、生ゴミなんかに圧力かけた後、時間の経過を圧縮して石油系相当の燃油にして使う、とか、この世界は豊富な魔力をそう言うかたちで使っちゃっているんですよ」

 ダ・ヴィンチに、シオンが続けて、説明した。

「確かに、私達の価値観からすると、贅沢というか……信じられない使い方ですね」

 どこか唖然としたような表情になって、マシュはそう言った。

「この世界の在り方を考えると、納得できる面もあるけどね」

 そう言って、ダ・ヴィンチは、再度、シオンとともにあたりを見回す。

「並行世界から流れ込んでくる空想や妄想、それを形にすることで発展と反映を成し遂げている。チラホラ見られる、旧い様式が残っていたり、それが発展した姿で現存したりしているのがそう言うことさ」

「え、そうでしたか?」

 ダ・ヴィンチの説明に、マシュが意外そうな表情をして、訊き返す。

 すると、

「例えば、アレとか」

 と、言って、シオンが指差したのは、路地の先、昌平橋通りの交差点を行く、都電の姿だった。

 王子駅前の配線を変更した上で、旧19系統と旧27系統を統合した駒込線の軌道上を、5703の番号のはいった青い電車が、万世橋へ向かって走っていくのが見えた。

「アレが……ですか?」

 マシュは、視線で5703号を見送った後、その視線をシオンやダ・ヴィンチに向けて、不思議そうに訊ねる。

 ダ・ヴィンチは、ニヤニヤと、苦笑気味に笑っている。

「東京のような過密都市では、路面電車を維持するのは楽なことではないんですよ。それを残らせるのに、エネルギーを余分に使っている部分があって、そのエネルギーをおそらく、大気中の魔力から取り出すことで補っているんですよ」

 シオンがそう、説明したが、

「はぁ……」

 と、納得がいかないと言うか、いまいち話の論点をつかめていない、邪のない表情で、マシュは気の抜けたような返事をした。

「我々を上陸させるのに使った小舟も、焼玉エンジンなんか使ってたしね。まぁ、それは石油燃料に対する、日本人的な意識からかも知れないけど」

 ダ・ヴィンチがそう言った。

 …………そうやって、ずっと店の前に突っ立っていたものだから、

「いらっしゃい、別嬪さん方」

 と、店主と思しき、角刈りの中年男性が出てきて、ニコニコと笑いながら、声をかけてきた。

「そっちの娘、小さいけど、その奇抜なカッコってことは、魔術師だろ?」

 ダ・ヴィンチに対して、悪気なく偏見を口にする。

「デモ回路あるけど、良ければ見ますかい?」

「あー……」

 ダ・ヴィンチはダ・ヴィンチで、困ったように苦笑しつつも、僅かな間だが明らかに葛藤の色を見せてから、

「ご、ごめん。ちょっと通りがかっただけで、用事があるから、また今度って言うことで」

 と、返事をした。

「そうですかい、残念」

 店主の方も残念そうに苦笑する。

 その傍らで、シオンが腕を組み、そっぽを向くようにしながら、口を軽く尖らせた表情をしていた。

 

 ──── 一方。

 ダ・ヴィンチ達女性陣の一行からさほど離れていない場所。

 路上駐車しているしている1台のクルマを、ゴルドルフが観察していた。

 車体全体にファンシーな背景とともに、何らかのアニメのキャラクターが描かれている。いわゆる痛車というやつだった。

 ゴルドルフがその車体を凝視していると、

「おいオッサン、こんなのにも興味あるのかよ」

 と、その背後から、カドックが呆れたように目元を手で覆いつつ、声をかけた。

「こ、ここここれはだな、この世界の動向の調査と言うやつでだな……」

 ゴルドルフは、慌てたせいで挙動不審になりつつ、カドックに対してそう主張するも、口調がどもりがちになってしまう。

 そこへ、

「おい、お前」

 と、このクルマのオーナーと思しき男性が、その背後から声をかけてきた。

「や、そ、その、だな……────」

 テンプレなオタク像、ではなく、細マッチョな体型の男性に、ゴルドルフは、カドックにしていた態度でどもりがちになってしまう。

 が、

「オッサンじゃねーよ」

「!?」

 と、男性はそう言うと、カドックに視線を向ける。

「万人受けしないとは解ってるけどさ、往来で聞こえるように『こんなの』呼びはないんじゃないか? おぉ?」

「!?」

 ── なんだこいつ……こいつこそ自分を弁えてるのか!?

「あー……済まない」

 カドックが戸惑っていると、逆に、妙に落ち着いた様子になったゴルドルフが、言った。

「我々は日本についてなれていなくてね……失礼があったのなら謝罪するよ」

 妙に得意げな態度ながら、ゴルドルフは男性に謝罪の意を伝えた。

 ── くっ、屈辱!? 常識問題で新所長に庇われただと!?

 カドックの表情がひきつり、全身が凍りついたようになる。

 それを余所に、

「まぁ、俺もちょっと大人気(おとなげ)なかったか」

 と、男性は言う。

「アンタは、俺のクルマじっと見てたみたいだけど、やっぱまいかちゃんのファン?」

 ゴルドルフに対し、喜んだような表情を向けて、男性は訊ねるように言う。

「やっぱいいよな、まいかちゃん」

 どうやら、描かれているアニメキャラの、特に大きく描かれているキャラの名前らしい。

「い……いや、私はクルマそのものに興味があってだね、つまり……」

 流石に硬直してしまいつつ、ゴルドルフはそう弁明する。

「クルマ自体…………?」

「あ、ああ……」

 ゴルドルフと男性の間に、奇妙な時間が流れる。

 やがて、

「いやーっ、解ってるねぇ、やっぱスバルはいいよな、スバルは」

「まぁ、ラリーストならスバルはやはり気になるブランドだからな」

 ニンマリ笑って調子良く言い始めた男性に対し、ゴルドルフもきっちり話を合わせて返す。

「一時期軽と実用車から撤退なんて話もあったけど、そうなってたらスバリストやめてたかもなぁ。それがなくて何よりだった」

「ああ、解るぞ」

 流石にここは、ゴルドルフは適当に相手を否定しないように、そう言った。

「おっと」

 男性はハッとすると、腕時計を見て、

「すみません。この後用事あるんで、惜しいけど失礼しますわ」

 と、頭の脇に手を当てながら言う。

「ああ、こちらこそ誤解させるような事をして済まなかった」

 ゴルドルフがそう言うと、それを待ってから、男性はキーレスエントリーでクルマのドアロックを開け、乗り込む。

「それじゃあ!」

 男性は、エンジンをかけると、窓を開けてゴルドルフに手を振ってから、右ウィンカを出して、クルマで走り去っていった。

「ふむ、やはりSJ型スバル フォレスターか」

「それがどうしたっていうんだよ」

 ゴルドルフが呟くと、カドックが辟易した様子でツッコむように言う。

「昨日、私も個人的に少し調べてね……どうやらスバルや三菱、マツダといった、汎人類史ではエンスージアスト向けブランドが、実用車を製造しているようだったし、スバルはどんな感じで作っているのかと気になっていてね」

「結局自分の趣味じゃないか……」

 カドックが呆れきっていると、そこへ、ゆうだちが小走りにやってきた。

「ゴルドルフ所長。少しお話が……」

「なにかな?」

 ゴルドルフが訊き返すと、ゆうだちは周囲を伺うような仕種をしてから、

「ここでは。一旦、クルマの方へ」

 と、言った。

 ゆうだちと、ゴルドルフとカドックは、ノウム・カルデア御一行様東京案内用のデリカ コミューターのところまで戻ってくる。

「これもミツビシなのか。そういや昨日のバスはマツダのマークをつけていたな……」

 カドックが呟く中、ゴルドルフとゆうだちはその車内の座席に、隣り合って座る。

「何!?」

 それを聞かされて、ゴルドルフははっと目を見開き、ゆうだちを凝視する。

「立香が逃走した……!?」

「何……」

 カドックも顔色を変える。

「事を公にするわけには行きませんので、今のところ、非常線は張らずに、どうにか居場所を突き止めようとしているところです」

「それは……解ったが……」

 ゴルドルフは、吐き出すように言い、憤怒したような、しかしそれを出しきれないような表情をし、しばらく沈黙する。

「新所長?」

 カドックが声をかけるが、更に僅かに沈黙した後、ゴルドルフは車窓から視線を外に向けた。

「後の3人を連れてきてくれ。のんびり東京観光をしている場合じゃなくなったぞ」

 

 

 立香は、都電を万世橋停留所で降りると、早足で歩いて、秋葉原の駅に入った。

 別に、東京から離れたいとか、明確な目的があって移動していたわけではなかった。ただ、一か所にとどまっていることができなかった。

 だから、駅につき、ホームに上るまでの間、誰とも顔を合わさないように、誰かに心を見透かされないように、心の底でささやかに怯えながら、黙って、無表情で、歩いた。

 埼京線では、国鉄時代の電車をきれいに直したような電車が走っていたかと思ったら、秋葉原駅で電車を待っていると、前面が軽く張り出した見たことの……いや何かで見た覚えはある電車が、京浜東北線の電車として入ってきた。

 むしろ、よく知っているE231系、E235系が走っている山手線ではなく、半ば意識してそちらに乗った。何も知らない、どこかへ連れて行ってくれる気がしたから。

 しかし、車内アナウンスは、

『この電車は京浜東北線快速、大宮行きです。次は、上野、上野に停まります。上野の次は、田端に停車いたします。途中、鶯谷、日暮里、西日暮里御利用のお客様は、降りたホーム向かい方、山手線電車にお乗り換えください』

 と、これを聞いているうちに、なにかどうでも良くなり、上野駅に到着して、扉が空いたところで、ふらり、と降りてしまった。

「…………」

 人の流れに任せるように、下り階段を降り、中二階の中央連絡通路に出る。

『お待たせしました。18番線に18時10分発、寝台特急「ゆうづる」1号、函館行が入線いたします。黄色い線の内側まで下がってお待ち下さい』

 しばらくフラフラと正体なく歩いてきたところで、そう、アナウンスが聞こえてきて、地平ホームを見下ろした。

 2編成の、銀色と、青の、寝台特急が、最後尾を向けて、停車している。

 さらにもう1本、同じ青の車体だが、別の形をした寝台特急が、本来の最後尾を先頭にして、ゆっくりと入ってきて、停車する。

『13番線、寝台特急「カシオペア」まもなく発車となります。ご乗車になってお待ち下さい』

「おかーさん! はやく! はやく!」

「解ったから。ほら、慌てていると転ぶわよ」

 初めての寝台列車の体験なのか、はしゃぎながら、うしろを振り返りつつ、ホーム上を駆けていく少女と、それを追っていく、その母親と思しき女性。

「この後どうするー? 食事でも行く?」

 若い女性が、談笑しながら、中央連絡通路を京浜東北線・山手線ホームの方へ向かって歩いていく。

「どうですか、ちょっと一杯」

 そんな話をしながら、仕事上がりだろうサラリーマンが、背後を通過していく。

 なにも考えなければ、真実を知らなければ、多少の差を除いて、見慣れた光景。

「これから、どうしよう」

 小さなトランク状の物 ──── 霊基グラフのケースを見て、誰にともなく小さく呟く。

 

 

「あれっ?」

 2人連れで歩いていたアストルフォは、その姿を見て、ハッと何かに気が付き、振り返る。

「えーっと……えーっと……」

「どうしたのよ?」

 アストルフォが、自身の記憶を呼び起こそうと、こめかみを人差し指で押しながら唸っていると、連れの女性も立ち止まって、問い質してくる。

「ちょっと待ってね……うーんと……あっ」

 ようやく思い出した、と、一瞬表情を綻ばせかけるが、

「え!? なんであの娘、この世界のこんなトコにいるの!?」

 と、一転、ギョッ、と驚いた表情になって、再度、身を乗り出すように、その姿を凝視する。

「ご、ごめんマリー! あれ、ほっとけないや!」

「え、ええ?」

 アストルフォがそう言って駆け出すと、マリー、と呼ばれた女性も、それを追う。

「ね、ねぇ!」

 アストルフォが声をかけると、相手の少女は、驚いた様子もなく、ただ、憂い気に、力なさ気に、アストルフォを振り返った。

「あれっ、名前…………えーっと……あ、そうだ! 立香!」

 ようやく、相手の名前を思い出して、アストルフォはそれを呼んだ。

 すると、 ──── アストルフォの記憶にある限り、らしくなく、公然で厭世的にかったるそうにしていた相手の少女の表情が、俄に驚きの色を帯びてくる。

「ちょっとアストルフォ、何やってるのよ……」

 アストルフォの連れである女性が、追いついてきて、現代的な装いをしているアストルフォのジャケットを掴んでしまいながら、訊ねる。

 すると、

「──── っ」

 相手の少女は、その女性をまず、驚愕したように目を(まる)くして凝視しし、しばらく立ち尽くす。

「ちょっと? あなた!?」

「うぅぅ……うぅぅぅぅぅ……!!!!」

 かけられた声に制される事はなく、少女は、女性の目前で、嗚咽をあげ、やがて、周囲に憚られることなど気にせず、子供のように泣きじゃくり始めた。

「うぁあぁぁぁぁぁっ!! 所長! 所長!! っは、はぁっ、オルガマリー所長!! あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 





秩父鉄道17000系と、京急旧1000形延命更新車
https://x.com/kaonohito2/status/2002904438365921614

都電5700形5703号
https://x.com/kaonohito2/status/2002905420286111860

スバル SJ型 フォレスター バン / ワゴンLG(ベースグレード)
https://x.com/kaonohito2/status/2002906444077912472

…………に、施される尊厳破壊
https://x.com/kaonohito2/status/2002906679118373345

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「⁠一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。

カドックとのカップリングは……

  • アナスタシア以外考えられない
  • 譲っても立香♀まで
  • 既存の型月キャラなら、まぁ……
  • 別に型月キャラでもオリキャラでも
  • 逆にやるならいっそオリキャラの方が良い
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