『貴方は最も愚かな人』 作:さららま
>貴方はそれを木刀でいなし、悪魔と戦う覚悟をした。
さぁ、戦闘イベの時間だぞ!
あ、重要なことなんで二回言いました。
さてさて今回初めての戦闘イベ、腕がなりますねー。えっ、最初らへんにもう戦って惨敗してるだろって?あれ襲撃イベントだからノーカンでしょ()
>貴方は凶悪な牙による噛みつきをかわし、爪を使った攻撃には木刀を合わせていく。
ふんっ、せいやっ、サァァ!
クゥー、このQTEは中々に痺れますね。そもそも主人公がレベル足りてないのと、そもそもこの獣攻撃が速いので目まぐるしくアクションが起こっています。いやーこれは追いつくのも大変ですね。俺じゃなければ(キリッ)
とはいえ、今回の主人公はなんか調子いいですね。剣術レベルが足りないとQTEの土台にも立たせてもらえず無条件で攻撃を喰らうことがあるんですけど。今回は一回も起きてないです。
一応背中の出血もあるのでしんどいはずですが、上振れてるだけなんですかね。それともサイクロプスの裏仕様?まぁどっちでもええやろ!
>所々木刀が悲鳴をあげ始め、木の破片を撒き散らしている。
そんな!あの木刀が!?まぁ全然妥当ですね。
これ自作したものなんで、技術もクソもないんですよね。正確にいうなら木刀の形をした木の枝という表現の方が正しいというか。
あ、ちなみに今回の攻防では一回も相手にダメージ通ってないです。攻防とは?まぁ未熟だからしょうがないね!
今回は実質タイム制みたいなものですから、時間さえ稼げば大丈夫です。多分そろそろじゃないですかね。
>ガラ空きになった胴体を爪が貫こうとした瞬間、唐突に獣が吹っ飛んだ。
「すまない、援護が遅れた。」
>案の定ティフォンだった。彼女はもう一度矢を装填し放つと、今度は男たちを襲っていた獣へと吸い込まれていった。
「傷の方は大丈夫か!?」
>貴方は吹っ飛ばされた獣の方に視線を向けると、それは正確に頭を貫いており、思わず舌を巻いた。
いやー流石っすティフォン先輩!主人公ができないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!
では、これで戦闘は終了・・・なわけないよなぁ!?
「あ、おい。何処へ行く!」
>貴方はゆっくりとサーミの戦士の方へと歩いて行った。奇襲を受けた方は致命傷に近く、もう片方もそれなり怪我を負っていた。
「さっきあんたたちを貶していて、虫のいい話だとは思うが、た、頼む!助けてくれ。」
やだよ(即答)。すまんな!我が称号の糧となれ!
>貴方はサーミの戦士が使った剣を拾い、その刃先を彼へと向けた。
「えっ・・・」
>そのまま貴方は剣で彼を貫こうとして・・・
>貴方の眼前に何かが素早く通り過ぎた。
「今すぐその剣を下せ!さもないと次は当てるぞ!」
>ティフォンはこちらに弓を向けてこちらへと敵意を向けている。
>それで、貴方は自分が何をしでかしたのか理解した。
あ、あぁ・・・正気に戻っちゃいましたね。
ここらで人を殺しておきたかったんだけどなー。
おっと、何故ここでこんな行動に出たのか疑問に思っている諸君。教えてあげましょう。
実は主人公がある程度倫理観を保てている状態で人を殺すとですね、称号『人殺し』を会得できるんですよね。
その効果はなんと!ストレス値がちょっと増える代わりに、会得経験値効率が1.3倍!これは破格ですよ。
なので、どさくさに紛れて殺りたかったですけどねー失敗しちゃいました。まぁ、成功したらティフォンちゃんの好感度は下がっちゃいますけど、どーせ攻略で重要じゃないですし。
結果としては殺すことも失敗して好感度も下がったし。もうやだー
まぁ、これから挽回していきましょう!それではー
「ぁ、え、あ?」
「ボーリャ・・・」
高揚感がなくなり、スッと頭が冷えてくる。
銀色の光が目を突き刺し、自分がしようとした事を鮮明に思い出させてくる。
「ち、違う。俺、そんなつもりじゃなくて、だ、だって」
「大丈夫だ。」
ティフォンは弓を下ろし、正面から俺を抱きしめて、ポンポンと俺の腰を優しく叩いてくれる。
「すまない。私が守ると言っておきながら、お前に負担をかけさせてしまった。本当にすまない。」
「ティフォンのせいじゃなくって、お、俺が」
「大丈夫だ。お前がそんな事を好んでするわけないって、私が一番よく知ってるからな。」
荒れた呼吸が元に戻っていく。彼女の柔らかい体の感触が安らぎを与えてくれるような気がした。
ザッ、ザッと遠くから誰かの足音が消えてきた。
ティフォンは離れて、そちらに警戒する視線を送った。
「ティフォン・・・良かった無事で。」
「シモーネか。ん?あぁ警戒しなくていい、私の友人だ。」
シモーネと呼ばれている女性は、草や包帯などを手に持ってこちらに向かってきていた。
「ここで怪我人が出ると啓示が出てね、急いで来たのだけれど・・・」
「・・・すまない、先手を打たれてここまでの被害を出してしまった。」
「貴方が奇襲を?一体何が・・・いえ、大体分かったわ。」
彼女はこちらを一瞥し、そして戦士の方へ目線をやると、彼らはバツが悪そうに顔を伏せた。
「・・・幸い、両方とも応急処置をすればまだ助かるわ。」
「…良かった。」
ホッと一息ついて、ついその場に座り込んでしまう。
「あなたもその背中の傷、悪魔は傷を媒介にして侵食してくることがあるから早く手当した方がいいわよ。」
「…そうか、じゃあ集落に戻った時に、いでぇ⁉︎」
「駄目だ、ここでしてしまうぞ。処置は早い方がいい。」
戦闘が終わって完全に脱力をしていたが、そこに突き刺すような激痛が走ったものだから、思わず大きな声をあげてしまう。
「ティフォン!それ痛い、痛いから!」
「お前が痛みを感じてなかったのは寒さで痛覚が麻痺してたからだ。全く…この怪我の様子だとしばらくは仰向けで寝れると思わない方がいい。」
優しい声とは裏腹に、彼女が背中を触れるたびに電撃のような痛みが走る。一体俺は何をされてるんだ。
「これを傷口に塗り込むと治るのが早くなる、細菌の感染も防げるからしない理由がないだろう?」
「だ、だからって、限度があるだろ!限度が!」
「む、暴れるな。手元が狂う。」
畜生。なんでこいつはこうも強引というか、理不尽なんだ。
シモーネという女性の方へ視線で助けを求めようとしたが、彼らの応急処置で忙しそうだ。
「ふぅ、ふぅ、ふぅぅ。お、終わったか?」
「あぁ、よく頑張ったな。後は包帯を巻くだけだ。」
彼女は懐から包帯を取り出し、背中の傷を覆うように胴体に巻き付けてくる。
「・・・なんだ、シモーネ。そんなジロジロ見て。」
「いえ、貴方が他人とそんなに近付いているのを初めて見て。仲がいいのね。」
そう言われればそうなのか?確かにお互い肌を触れ合っているが、応急手当てだしそんな騒ぐようなことでもないだろう。
「はぁ、くだらない事を・・・よし、もう動いていいぞ。」
「おう、ありがとう・・・いてぇ!」
「痛覚が戻って頭も冷えてきたらそうなるだろう。ほら、こっちに寄りかかれ。」
流石に抵抗感があったが、このままだと移動することもままならないので仕方なく彼女の方に寄った。
「遠慮するな、もっと体重をこっちにかけないと辛いだろう。」
彼女に引っ張られ、さらに密着することとなった。
彼女の紫色の髪が目前に広がり、とてもサラサラしているな、なんてあまり深く考えないようにした。
「そちらの二人については任せていいか?」
「えぇ、そのために来たもの。何よりお二人に水を刺すわけにもいかないしね。」
「・・・いてぇ!」
「ほら、早く帰るぞ。」
半ば強引に担がれ、少し浮遊感を覚える。
シモーネさんはそれを見て笑った後、こちらに手を振ってきたので。俺も振り返しといた。
彼女は俺がサイクロプスと分かっていても。友好的に接してくれているからいい人なのだろう。
「体調は悪くないか?」
「あぁ、問題ない。」
無事集落に到着でき、早めに寝床ついた。
だが俺はあの戦闘の出来事が脳裏にこびりついて、寝ることができなかった。
「ティフォン、俺はお前から見て正常か?」
「・・・あまりあの事について気に病む必要はない。」
「気休めの言葉なんていらない。」
甘い慰めの言葉なんてほしくないのだ。そんなもの今はなんの足しにもならない。
「私も、お前と同じだ。」
「は?」
「私も両親が亡くなって、私はあの人たちのことを何も覚えていない。残されたのはこの弓だけだ。」
ぽつりぽつりと、暗闇に溢していくかのように独白が続く。
「私は仇のために技術を磨き、悪魔と戦ってきた。私はいまだに復讐に取り憑かれている。だが、お前は何に取り憑かれているんだ?」
あたりに光はなく、何も見えるはずがない。なのに、彼女の視線がこちらを鋭利に貫いているような気がした。
「お前には憎むべき敵もいない。なのに常に急いで、貪欲に強さを求める。それはいったい何故だ。」
何故、なぜか。
「必要だからだ。」
「・・・そうか。」
本当はあの声について打ち明けるべきなのかもしれない。ただ、それをしようとすると体がどうしようもなく強張るのだ。
『サイクロプスは予見した未来を形として残すことはない。』
今なら、アルゲスさんが言っていたことも分かるような気がする。
思考がぐわんぐわんまわり、吐き気がしてきた時。そっと背中に柔らかい感触があった。
「お前が寝るまで、ずっとさすっといてやる。」
「・・・俺はガキかよ。」
ただ、それは言いようもない安心感を与えてきて。
俺はそれに身を委ねて、静かに眠りについていった。
「寝たか?」
私はそっと彼に声をかけた、しかしなんの反応も返ってこない。
「お前は優しすぎる。」
短くない時を共に過ごしてきたから分かる。この男は戦士として優しすぎる。
狩猟をして、動物を仕留めた後。その獲物の血だらけの有り様を見て、彼は時々顔を曇らせる。
もし、それが人相手だったら尚更だ。彼の中で超えてはいけない一線が人殺しなのだろう。
そもそも、あいつは技術以前に戦う事には向いていない。そう思っていた。
戦いの時に見せた合理化された、残酷ともいえる戦い方。
アレはきっと、彼ではない。これは確信だ。
「だから、私が止めてやる。」
彼を見ていると思う。食べ物に感謝するところも、他人を慮るところも。
きっと、彼はいい狩人になれる。
偶に、頭に過ぎることがある。彼と一緒に森を探索し、狩猟して、知識を教え合えるような。そんな関係になれるのではないかと。
そんなもしもが、頭から離れない。
「お前を邪魔する全てを取り除いたら、狩人として私の隣に立ってくれるのか?」
そんな小さな囁きは誰の耳にも届くことはなく消え失せた。