玉輿-消えにし後は澄み渡る空   作:ミズアメ

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第三話 戦闘開始

 呪霊達が去ってから、数日の時が経過した。

 

 2005年、10月末―――

 

 嗣狼は未だ、門脇家の屋敷跡に留まっていた。

 

 彼はなくなった酒を補充すべく、蔵に足を運ぶ。

 蔵の外観はボロボロに朽ち果てているが、中の品々は概ね無事だった。しかし嗣狼が連日、湯水も同然に飲み続けたため、酒樽の中身はほとんどなくなっている。

 最後の一杯を瓢箪に移し、嗣狼は蔵を出た。

 

 瓢箪を傾けつつ、歩く。

 

 足取りは真っ直ぐに。門脇家の屋敷を出て、森へ入る。道なき道を奥へと進むと、やや広がった空間に辿り着いた。

 ここは墓地だ。

 門脇家の墓地ではない。あちらは大変立派な造りをしている――もっとも、今は嗣狼によって全て無残に破壊されている――が、ここにあるのは適当な石塊を墓石に宛がっただけの、簡素な代物ばかり。配置も出鱈目で、あまりにも杜撰だった。

 

 無縁仏――ここには、門脇家が()()せざるを得なかった死体が埋葬されている。

 

 その内の一つに、嗣狼は残った酒を全て注いだ。

 墓石に名前は書かれていない。しかし、嗣狼にはそれが誰の墓なのか分かっていた。懐かしい匂いがした。だから彼女の死後――四百年越しに、こうして墓参りに訪れたのだ。

 彼女の名前は、(きよ)といった。

 門脇家相伝の術式――犬神蠱術の使い手。そして人間でありながら、唯一嗣狼の心を開かせ、その理解者となった奇特な女だった。

 

 嗣狼は墓石の前に座り込み、ころころと、掌の中で二つの賽子(サイコロ)を転がす。

 

 丁か、半か。

 

 

 ―――五・六の半! また私の勝ち!

 ―――今度は一・一(ピンゾロ)の丁かぁ、負けちゃった……やるわね嗣狼!

 ―――ふふふ、誰かといっしょに飲むお酒は美味しいでしょ?

 

 ―――嗣狼。いつか、貴方だけは、自由に……―――――

 

 

⦅…………⦆

 

 遠い昔に過ぎ去った感傷が、嗣狼の胸をちくりと刺した。

 

 因習。掟。呪縛。

 

 旧態然とした閉塞環境に自由などなかった。嗣狼は体のいい道具として使われ続け、彼女は他人を呪い殺す家業に束縛されていた。―――自己の意思や感情など一切不要。ただ呪いと不幸と死を撒き散らすだけの存在であることを求められ、そうであるようにと造られたもの同士だった。

 だから心惹かれたのだろうか――嗣狼には、分からない。

 人間は皆、嫌いだ。惨たらしく死ねばいいと思っている。特に門脇家の人間は念入りに殺すつもりだったし、実際にそうした。

 しかし、当の玉も門脇家の人間だった。

 どうして自分が彼女に心を許したのか。嗣狼には、今でもそれが分からないでいる。

 

⦅(―――いいや、そがなんを考えるのは野暮やねや。アレはそれだけ(ばあ)()い女じゃった。ほんじゃあきに、しゃあないぜよ)⦆

 

 嗣狼は、改めて思う。

 

 アレは、とても良い女だった。

 特に当時の女性としては珍しく、体形が豊満で、身長(タッパ)(ケツ)がデカいところを気に入っていた。

 活発で聡明。それでいてどこか抜けたところのある、愛らしい女だった。

 

 彼女は嗣狼を見下すことなく、親愛の情を持って対等に接していた。それどころか人間と呪霊の垣根を超えて、一人と一匹は愛し合う仲にすらなったのだ。

 酒と博打の楽しみ方は、彼女から教わったものだった。

 だがそれ故に、玉は殺された。門脇家の者達によって。その時から、嗣狼は人間をより深く憎むようになった。

 

 嗣狼は、掌の中で賽子を転がす。

 そして瓢箪を逆さに持ち上げて、僅かに残った数滴ばかりを飲み干すと――瓢箪と賽子を握り潰した。

 

 ()()()()を放り捨てて立ち上がり、嗣狼はおもむろに、愛した人間の墓を踏み付ける。

 

 

 ―――嗣狼。いつか、貴方だけは、自由に……―――――

 

 

⦅応よ、玉。儂は自由に生きちゃるき、御前(おまん)との縁もこれまでぜよ⦆

 

 ゲラゲラと笑い、踏み躙りながら。嗣狼は宣言した。

 

 気分が良い。

 

 嗣狼は空を見上げる。とても綺麗な月夜。しかし星や月の明かりは、昔に比べて随分と色褪せている。偏に人間が行った都市開発と、それに伴う環境破壊の影響だ。

 許せない。

 許せないので、皆殺しにしてやろう。

 

 それこそが呪い。

 それでこそ呪い。

 

 まずは手始めに――縄張り(テリトリー)に侵入した、二匹の人間(さる)から殺す。

 

 そう腹に決めて、嗣狼は夜の一角を睨む。

 視線の先にいるのは二人の呪術師。揃って黒衣の制服に身を包んだ出で立ち。縫い付けられた渦巻き紋様のボタンは、呪術高等専門学校の所属であることを表している。

 

 一人は鳥型の呪霊の背に乗った、妙な前髪の男。

 もう一人は――どのような理屈なのか、我が物顔で空を飛んでいる白髪の男。

 

 真っ黒なサングラス越しに嗣狼を見下ろして、白髪の呪術師――五条悟が口を開く。

 

「何やってんだよ犬っころ、罰が当たるぞ」

⦅フン、こいつは儂の連れ合いの墓じゃきのう。どう扱おうと、儂の勝手ぜよ⦆

「品性を疑うと言っているんだけどね。まあ、呪霊がそんなものを持ち合わせているとは、こちらも思ってはいないが」

⦅あぁ?⦆

 

 目を怒らせて細め、嗣狼は妙な前髪の呪術師――夏油傑を睨み付ける。

 

 よくよく視てみれば、彼と、彼が乗っている異形が持つ呪力は異なっている。式神ではない。呪霊を下僕として操っているようだ。

 

⦅(主従関係を結んじょる……のとは違うな。呪霊操術か。―――チッ、胸糞悪い)⦆

 

 その名の通り、呪霊を取り込み操る術式。

 当然、それは嗣狼の不興を買う。

 

⦅フン、まあえいわ。それで、御前(おまん)等はこがな所まで何の用で来たんじゃ。……ああ、門脇に用があったのなら悪いのう。もう儂が滅ぼしてしもうたきに。女も子供も、誰一人生きてはおらんぜよ⦆

「―――だってさ、傑」

「ああ。終わってしまったことは仕方がない。切り替えていこう。―――さて。突然の訪問で悪いが。今、私達が用があるのはお前の方だ。呪霊」

「実は門脇家に『お助け~!』って泣き付かれちゃってね。まあ間に合わなかった訳なんだけど。だけど手ぶらで帰る訳にはいかねぇからさ、ぶちのめさせて貰うよ」

⦅ククッ、ほうか! ほぉうか! ガハハハハハハハ!⦆

 

 

 何やら大笑している嗣狼を横目に、傑と悟はひっそりと会話する。

 

「まさか、ここまでしっかりとコミュニケーションが取れるとはね」

「ああ。登録済の特級呪霊の中でも、ここまで喋れる奴は稀だ。それにあの呪力量。等級は完全に特級。それもこの間倒した仮想怨霊とは比べもんにならないだろうな」

「だが、私達は負けない」

「当ったり前だろ。俺達は最強なんだからな」

 

 

 ―――まだ、何やら言っている。

 

 最強、最強と。

 

 まったく、実に下らない冗句を聞かされてしまった。だから嗣狼は呆れるのを通り越して、爆笑したのだ。

 

 そこから一転。

 

⦅―――――巫山戯るなや餓鬼共。

 儂を見下す奴は誰であろうと許さん。不愉快じゃ。疾く、死にさらせ⦆

 

 瞬間、嗣狼の呪力が膨れ上がる。

 尻尾が三メートル強にまで巨大化。身の丈を超えるほどにまでなった尻尾を凄まじい勢いで振り抜き、体毛を飛ばす。

 飛ばされた体毛は、強靭な針だ。

 呪力で強化されたソレは、分厚い鉄板をも容易く貫くほどの鋭さと威力を持つ。更に呪霊で且つ呪物でもある嗣狼の体組織には、強烈な毒性があるのだ。もしも刺さったなら、並みの呪術師ならそれだけで死ぬ。仮に即死を免れるだけの呪力量と実力があり、その上で反転術式の心得があったとしても、重篤なダメージを負うことは避けられない。

 それが何十本も。

 多数の針は、銃から激発された弾丸と同等速で二人の呪術師に襲い掛かる。

 

 しかし、どんなに強く凶悪な攻撃でも――当たらなければ無意味。

 

 ―――ザフッ

 

 傑が盾として出した呪霊が消滅する。彼は二体の2級呪霊を犠牲として、広範囲の攻撃を難なく防ぎ切っていた。

 そしてもう一人――五条悟に至っては、回避動作すら行っていない。

 彼に向けて放たれた針は、その全てが空中で停止していた。まるで彼の周囲だけ時間が止まっているかのような現象。それを目の当たりにして、嗣狼は目を細める。

 

 ―――――■ましい。

 

⦅なるほど……―――無下限呪術か。それにその眼は六眼じゃな?⦆

「ご明察。犬の割に詳しいじゃん。まあ門脇は五条家(ウチ)とも何度か戦り合ってるらしいから、知ってても当然っちゃ当然なんだけど」

 

 サングラスを指先で持ち上げ、生じた隙間から――青空のように澄んだ色の瞳を覗かせる。

 

「だけどまあ、それなら話は早い。―――ジャッジャーン! 俺が現代最強の呪術師、五条悟でーす! ってな訳なんで、お前さ、ちょっと大人しく封印されるか祓われてくんない? こっちも長旅で疲れてんの。だから無駄な抵抗はやめて、大人しくしてくれると助かるんだけど」

 

 飄々と悟が告げる。

 

 五条悟は最強だ。

 数百年振りに生まれた、六眼と無下限呪術の抱き合わせ。並みの呪詛師であれば、その存在を意識内に入れただけで震え上がり前後不覚となる。それほどの存在強度。他の人間とは、生物としての規格が違う。

 そして隣にいる夏油傑もまた最強。この世で悟と肩を並べられる、唯一の呪術師だ。

 

 そんな二人を――嗣狼は嘲笑う。

 憐む気持ちすらあった。

 空間座標的には悟と傑が上方、嗣狼が下方であるが、そんな事実はないかのように。嗣狼は最強を自称する二人を見下す。

 

⦅―――――ハッ! 最強? 御前(おまん)が、がか?⦆

 

 大海を知らず、井の中で踏ん反り返っている蛙だ。

 嗣狼は知っている。真の“最強”を。

 あの化け物と比べれば、目の前の存在など、それこそ赤子も同然だ。

 

⦅あんまり笑わせんなや餓鬼共。詰まらん御託を吐くがは止めろ。ほれ、しゃんしゃん掛かって来いや⦆

 

 鋭い爪の生えた、犬と人の手を足して割ったような形の手指。それを振って挑発する。

 

 傑は、誘いに乗ることにした。

 

「では、お言葉に甘えて。今度はこちらから征かせて貰う―――!」

 

 右手の人差し指と親指を立てて、それ以外の指を握り込む。銃に見立てた形。

 照準を嗣狼に向けて、左手で右手を固定し――指先から烏賊型の呪霊を連射した。

 

 文字通り弾丸も同然に、大気を切り裂く呪霊。

 

 しかし呪霊が穿ったのは地面だった。嗣狼は既に高く跳躍しており、地上から十メートル以上も上空にいる傑と悟を捉えられる距離にいる。

 嗣狼が蹴撃を浴びせる。

 対象は五条悟。当然、嗣狼の蹴りは空中で止まった。

 

⦅ほぅ、マジで当たらんとはのう!⦆

「そういう呪術なんで。アキレスと亀だよ。あっ、犬には分かんないか!」

⦅糞餓鬼が! 儂を馬鹿にすな!⦆

 

 無下限呪術――術式順転、『蒼』。

 

 “吸引”、“歪曲”。

 強化された無下限呪術によって生み出された“無限”。発生座標は嗣狼の腹部。周囲の森羅万象を引き寄せて、内側に向かって捩じり切る。

 それを犬の特性に由来する卓越した呪力探知能力で察知し、嗣狼は空中で呪力を放出――反作用によって空を駆け、悟の攻撃を回避する。

 

⦅―――儂が御前(おまん)に触れるには、まず儂と御前(おまん)の間にある中間点に辿り着かんとならん。だがその中間点に辿り着くには、儂と中間点の間にあるもう一つの中間点に辿り着く必要がある。やけんどその中間点に至るにはもう一つの中間点が……というがが無限に続く。それが御前(おまん)の術式の仕組みじゃろう!⦆

 

 俊足の英雄は亀に追いつけず、飛んでいる矢は止まっているのと同義。

 

 俗にゼノンのパラドックスと呼ばれる名詭弁。当然、詭弁故に、そんな現象は現実的に有り得ない。だが有り得ぬ現象を現実にするが故の呪術である。

 

「へぇ、まあ及第点かな。そっちは林檎に届かない矢の方。パラドックスはパラドックスでも、微妙に内容は違うんだよね。でも犬にしては賢いじゃん。だけどそれなら分かるだろ? そっちの攻撃が当たんない以上、俺達には勝てねぇって」

 

 ―――とは言ったものの。

 

 相手は特級。それも登録済の特級呪霊とは桁違いな力を持つと思しい。となれば――間違いなく、五条悟の無限を無効化する術を持っているだろう。

 

 呪術戦の奥秘――領域展開。

 

 結界術によって具現化された生得領域の内部では、必ず攻撃が当たる。無下限呪術を持つ五条悟といえど例外ではない。

 領域に対する一番の対抗策は、自らも同じく領域を展開し、領域を押し合うこと。そうすることで必中効果を打ち消せる。だが現時点では悟の領域は未だ発展途上。未完成だ。簡易領域や落花の情などの手札もあるが、一時凌ぎにしかならない可能性が高い。

 

 では、どうするか。

 

 領域を使う暇を与えず、即行で叩き潰せばいい。

 

「フン―――!」

 

 召喚した低級呪霊を足場として嗣狼に接近する傑。彼は今回の任務に向かうに当たって、呪術高専忌庫から持ち出した呪具を振り被る。

 耳の中に仕舞っていたソレは、持ち主の意思でサイズを自由自在に変えることのできる棍棒。

 

 一級呪具――如意金箍棒。

 

 五メートル前後にまで伸びた棍棒が、強烈に嗣狼を打ち据える。

 獣の毛皮は刃物に強いが、反面として打撃に弱い。しかし呪力によって強化された嗣狼の体毛は、その全てが金剛石も斯くやという硬質振りだ。当然そんなものを拳で殴打すれば、逆に体毛が突き刺さりかねない。

 

(呪具を持って来ていて正解だった。悟ならともかく、私が無手で戦うのは分が悪い)

 

 しかし、それでも大してダメージを受けているようには見えない。

 地面に叩き落とされた嗣狼は、忌々し気に傑を睨むばかりで、殴られた箇所を気にしていない。呪霊は人間と比べて肉体の修復が容易ではあるが、それにしても限度があった。

 

(―――千年間呪いを溜め込んだ結果か。凄まじい呪力量だ)

 

 地面に降り立ち、棍棒を構える。

 そして嗣狼の後方――挟む位置に、悟が着地した。

 

 二対一。

 

 二人の間に合図など不要。傑と悟は、同時に走り出す。そして極めて息の合った連携で、嗣狼を攻め立てた。

 

⦅―――――ッ! ……っ!⦆

 

 棍棒の一撃が嗣狼の顎を打ち据え、悟の掌打が腹部を粉砕する。

 無下限の術式順転『蒼』によって敵を吸い寄せつつぶつける攻撃は、言うなれば必ずクリティカルヒットするカウンターのようなものだ。その上無下限の術式によって、嗣狼の体毛は悟に刺さらない。反撃の隙もなく、一方的に攻撃を受けるのみである。

 

 傑が鋭い突きを放つ。

 棍棒の先端が、嗣狼の腹に突き刺さった。

 嗣狼は体をくの字に折り曲げて、遠くに吹き飛ばされる。そこに悟が追撃を叩き込んだ。

 

「術式順転――『蒼』!」

 

 吸引する無限。その中心に据えられた嗣狼は、肉を捻り潰されながら、『蒼』に勢い良く引き摺られる。円を描く軌跡。その先には―――

 

 ―――ドスッ

 

⦅ぐぼっ!?⦆

 

 阿吽の呼吸で待ち構えていた傑が、嗣狼の腹に棍棒を突き刺す。今度は貫通した。

 それだけに留まらず、落ち武者の姿をした二体の二級呪霊が、手にしている槍で嗣狼を両脇から貫く。鋭い穂先がそれぞれの腕と胴体とを固定した。

 

 呪霊特有の、紫色の血液が迸る。

 

「悟、今だ!」

「分かってるって!」

 

 棍棒を引き抜き様に叫ぶ傑。それに即座に応じる悟。

 再びの『蒼』。生じた無限によって、嗣狼の上半身が消滅する。

 傑が出した呪霊の槍も潰れてしまったが、安いものだった。

 

 呪霊にとって頭部は急所。どれだけ呪力があろうと、核となる頭を破壊されれば必ず消滅する。如何に特級呪霊とて例外ではない。

 

「……ふう。思ったより呆気なく終わ―――」

「―――待て! 様子がおかしい! 術式を解くな、悟!」

 

 嗣狼の下半身が、消えずに残っている。

 それどころか動き出して、悟に攻撃を仕掛けた。

 

 本体から切り離された部位がどのタイミングで消滅するかは個体差があるが、頭を潰された後だというのに消えないままなのは明らかにおかしい。故に傑は警戒した。

 敵はまだ、死んでいない。

 しかし、六眼を持つ悟が消滅を誤認するなど有り得ない。六眼はあらゆる呪力を見通し、原子レベルでの緻密な操作を可能とする。故に悟が『死んだ』と断じたのなら、その呪霊は間違いなく死んでいるのだ。

 

 だが―――

 

「チッ―――――!」

 

 舌打ちして、無下限の術式によって嗣狼の攻撃を防ぐ。

 嗣狼は下半身だけの状態のまま、後方へと飛んだ。大きく跳躍し、太い木の枝の上に着地する。

 

 足を屈めて座り込む嗣狼。

 その肉体は、既にほとんどが治癒していた。

 

 胴体、腕、衣服が戻る。そして、首が生えた。

 

⦅―――……ククッ、頭を潰されたのは久し振りじゃ。なかなかやるやいか⦆

 

 顎の毛並みを指先で整えながら、嗣狼は二人の呪術師を見下ろした。

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