コピー能力にはそれなりの代償を   作:稲光結音

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戦い終わって

 懺悔を、しなければなりません。

 私はティアラに一週間ほど優勝おめでとうの意味を込めた淫らなご奉仕を受け続けました……

 女の身とはこうも簡単に快楽に流される……いえ、全ては私の不徳の致すところ……

 

『積極的だったわねえ』

『やめてって言ってるのにやめてくれなかった……』

『あの女怖すぎ』

 

 あの第二人格さえ恐れる女、ティアラ。

 強い女が好きって言ってたけど、そもそも身体が強くないとあの性欲についていけないと思う。

 今はやっと解放されて、私が泊まってる宿で食事を取ろうと二階の客室から降りて一階の食事処に降りてきた。すると、一人のやけにセクシーな、ヘソ出しローライズ男に手を振られた。

 あまりにも怪しいのでスルーして歩みを進めると、近づいてきて壁ドンされた。顔が近い。

 

「おいおい、無視とは悲しいねえ。俺とお前の仲だろ?」

 

 誰だお前。大会に優勝するとこういう勘違いファンも出てくるものか。

 有名税ってやつだな。

 で、こういうナンパ野郎相手には対応が決まっている。

 

「失せろ」

 

 そう言って一発拳を振るう。第二人格渾身の一撃。

 しかしそれは受け止められてしまう。こいつ……只者じゃないな!?

 【剛力】で掴まれた腕を払うと、ならばと宿を壊さない程度に魔法を放とうとすると。

 

「おーい、ゴルドさん。もうそいつほっとけよ」

 

 そんなアルフの声が聞こえた。

 よし、ゴルドにナンパ野郎の相手を任せるか。そう思って周囲を見渡す。

 ゴルドはどこだ。そうキョロキョロ見渡すとセクシー男が笑った。

 

「はは、どこ見てるんだ? 俺がゴルドだよ。……あれ? もしかしてモッドちゃんって俺が鎧脱いだの見た事なかったか?」

 

 え? この上半身は上着一枚のへそ出し、下半身は超ローライズのちょっとした猥褻物みたいな男がゴルド? いや、言われてみれば声が……? でも普段兜の中で反響してるし。

 

「あの、私が知ってるゴルドさんは多分そういう服着ないです」

「いやいや、こっちが素。鎧着てると身が引き締まる思いでさ。ちょっと堅物になっちゃうんだよね。さあイこうか。向こうにアルフとヘイムが席を取ってる。四人で座ろう」

 

 困惑しながらついていくと、当然のようにアルフとヘイムもこの男を受け入れている。なんなら遅えよ、なんて軽口を叩かれて仲がよさそうだ。

 

 え、ちょっと待って? このイケメンがゴルドさんの中身? 全員で私をからかってる?

 

「てかモッド……さんはなんでこんな挙動不審なんだよ。ですか」

「ああ、俺が鎧着てないところを見るのが初めてだったらしい」

「それは仕方ないですね。私達も最初は驚きました」

 

 流石にヘイムまで私を担ごうとはしないか……? まだ信じられないが。

 

『というか人格変わる事については俺達、人の事言えねえだろ』

 

 それはたしかに。

 

「ま、ちょっと鎧は預けててね。優勝賞金使ってゴールドにコーティングしてもらってるんだ。あと一週間はかかるな」

「金は魔法を弾く性質がありますからね」

「で、それまで俺は剣を教わってる」

 

 なるほど、皆今後を見据えてるんだなあ。

 私はと言えば姦淫に耽りながらピロートークでティアラとちょっと旅の予定について話したくらい。

 予定といえば。

 

「皆さんは今後はどうするんですか?」

「俺はこの二人が一人で立てるようになるまでついててやらないと駄目だろうからね。こいつら次第さ」

「俺達はゴルドさんの鎧が出来るまで訓練つけてもらって、それからはまた別のところいくかな」

「大会も終わっちゃいましたし……あ、そういえばモッドさん優勝おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「そういうモッドちゃんは? 今後どうしたいとかあるのかい?」

「ええ、ちょっと賢者の石でも作ろうかと」

 

 仰天した、という様子のアルフとヘイム。にこにこと話を聞いているセクシーゴルド。

 

「へぇ、それまた大したもんだ。てことはモッドちゃん錬金術も使えるのかい」

「まだ卵くらいですけどね。なので錬金術の修業しながら、賢者の石のレシピを手に入れて、そしたら素材を集めて……とまだまだ遠い道のりです」

「錬金術! いいよなあ」

「私も使えるようになるといいんですが」

 

 意外と食いつきがよかった。というか、ヘイムは錬金術が使いたいのか?

 

「あ、私達の旅の目的って村おこしに使えるものを探す……って事なんです」

「そ。だから錬金術ってのは結構興味ある」

 

 ふむ、だとすれば。いや……でも。うーん。

 

「よければ一緒に来ますか? 一から錬金術を学ぶよりは、スキル使ってるところ見た方が覚えられるかもしれません」

「いいんですか? 私達は……その。依頼失敗の原因にもなって」

「もう一人同行者がいるのですがその子に被害が出るようなら――貴女達を殺してしまうかもしれません」

 

 ひぇっと言ったのはアルフだ。まあそりゃあの出会いした人間にそんな事言われたら怖いわな。ただでは殺してくれ無さそう、とか思ってそう。

 

「それでも私は、人の成長というものを信じたいと思います」

「モッドさん……いえ、師匠!」

「師匠!?」

 

 ヘイムが突然、そんな事を口走った。驚きを隠せない私。

 

「錬金術を教えて頂きます! これからよろしくお願いします!」

「あれ? 俺の意見とか聞かない感じ? まあいつもヘイムには俺に付き合ってもらってるしな。たまにはいいか」

 

 そうして二人が……正確にはヘイムが乗り気になったところで、ゴルドが手を二度、三度と慣らした。

 

「オーケイ。こいつらがそれを望むなら俺も付き合おう。これでも冒険者のはしくれ、でかい目的(モノ)にロマンを感じたりもするさ」

 

 ゴルドもそう言ってくれている。これでこの三人の同行が確定した。今のゴルドはともかく、鎧を着ている時のゴルドが付いて来てくれるのは心強い。

 

「で? もう一人の同行者ってどんなやつ? 旅程組む相談に来てもらわないと困るだろ」

「すみません。この一週間、割と徹夜気味で……寝てるんです。私も限界です。ご飯食べたら寝ます」

「いや、そんな深夜テンションで人を旅に誘うなよ」

 

 などとアルフに突っ込まれたりしながらその場では解散。

 ゴルドの金鎧が出来るまで時間はある。ゆっくりと準備を整えよう。

 

 

 

 

 冒険者ギルドの奥深く、ギルドマスターの部屋。そこで一人の少女がギルドマスターと話をしている。ティアラだった。

 

「――というわけで、眼鏡は必要。借りていく」

「ほんとそれ貴重なんだからね? 途中で壊したりしないでね? あーもう、仕方ないなあ。心読める君は受付嬢のエースなのに」

「申し訳ない」

 

 会話の相手は、くたびれたおじさんと言った風体だ。

 

「ま、あの魔剣士杯優勝者。とんでもない魔法使いを放置する方が問題かあ。んー、たまにギルドの依頼とか受けられるようにできる?」

「できる。私達はらぶらぶ。たまに言う事を聞いてもらう事は可能だと思われる」

「ならいいけどね。でも成長性が気になるなあ。もしどうしようもない化物に成長したら……いや、いまでも充分化物だけど、とにかく君が破滅させてやるんだ」

 

 返事は無言。

 

「頼んだよ、【運命の女】」

 

 そう言って立ち上がると、街の外を見るギルドマスターの声は冷たく。

 そんなただのくたびれただけのおじさんではない男の背を見ながら、ティアラは――

 

 

 ギルドに用事がある。そう言って起きたティアラが帰ってきた時には、冒険するメンバーは全員そろっていた。

 挨拶もなく、まず彼女が放った一言は私を喜ばせた。

 

「街を出るけど鑑定メガネは借りる事が出来た」

 

 すばらしい……すばらしい……

 

「鑑定メガネ! いいなあ、私も錬金術でそれくらい作れれば街の名産になるのに」

「いや、あれ素材からして貴重だって話。そうじゃなきゃ今頃量産されてるわ」

 

 んー、なんかこの二人はもっと強くなろうみたいな意識の人間だと思ってたんだけど、町おこしが出来ればいい感じなのかな?

 

「なぜ自己紹介より先にメガネの話をしたか。なぜなら私の能力はメガネ任せ。メガネが本体」

 

 その発言の真意を理解したのは第四人格。

 

『ふーん、仲間にも読心術は秘密ってワケね。了解』

 

 なるほどー、そういう事か。

 

「いやまあ自虐はいいけどよ……自己紹介もしてくれよな。俺はアルフ。剣士だ」

「ヘイムです。回復魔法と防御魔法が使えます。よろしくね」

「俺はゴルド。一般人のお嬢さんがいるなら盾でも使えるようになるべきかなって今思ってる。ヨロシク」

「私はティアラ・ダイアモンド。好きなのは強い女。強い女を性的に負かすのも好き。スキルは【情報処理】と【性豪】」

 

 うん、君はまごう事無き性豪だよ。一週間ずっとぺろぺろされた私が保証する。

 しかしその自己紹介に目を細めたものが一人。

 

「ダイヤモンド……ふぅん」

 

 軽い調子のゴルドの目が、妖しく光る。なんだティアラはやらんぞ。

 

「何」

「べつに? 姓持ちは珍しいなって。いいとこのお嬢様?」

「一応」

 

 割としょっぱい対応の仕方しかしない元受付嬢。普段どんな接客を……いや、オフでまで仕事の対応しろってのもしんどいか。

 冒険者組とティアラの共通の知り合いである私が音頭を取る。

 

「それでは、ここにパーティの結成を祝いまして、乾杯!」

 

 各自飲み物を持った腕があがり、それぞれが乾杯と口にする。

 これからどんな冒険が待っているのだろう。

 まだ方向性しか決まっていない、未知の針路に思いを馳せるのはこの宴が終わってからでいい。

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