コピー能力にはそれなりの代償を   作:稲光結音

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脳が破壊される(物理)

 彼が言うには外周部の魔物の多さは中央付近で暴れる冒険者達のせいらしい。

 となると、この場に留まるのも結構危険なのでは? と思うのだが……

 

「いや、ね。男と女がさあ! おっぱじめるもんだから! 隠れようと思ってたんだよ!? でもさあ、我慢できなくて! この寒い中するんですかってさあ! だからつい角で刺し殺しちゃって! 大丈夫大丈夫! 浄化したからさ!」

 

 などと楽しそうに話している。

 うん……こんなところでエロい事するのは割と勇気がいるとは思うけど。違う、そうじゃない。

 

「それで、血とかって貰っても大丈夫ですか?」

「いいよいいよ! あ、角もいる? 生え変わるから大丈夫大丈夫!」

 

 軽いなあ、このユニコーン。

 貰えるなら有難く貰っておこう。

 

「ただし、Aランク相当の実力者じゃないと……あれ!? 君、普通に折ったね!? はぁー、強いんだねえ」

 

 感心したように溜息を吐くユニコーン。

 そして、そういえばゴルドが言っていた気がする。ユニコーンは戦闘能力だけで言えばAランクはある。

 だが、その気性もあってCランク扱いにされているのだと。

 ちょっと気性に関しては信用できないところがあるが、普通こんなところでエロに励む輩がいるとは思えないので、多分……本当の事なのだろう。

 一応、隠れる気はあったらしいからね。

 なんにしろAランク相当の戦闘力で自傷してくれるつもりだったのだと思う。

 しかし、ここでふと思うのだ。

 

「ランクって何?」

「うーん、難しい事を考えるんだねえ。スキルの量と質を合わせた物じゃない?」

「じゃあスキルって?」

「才能と努力の可視化……だったかな?」

 

 じゃあ、スキルにすら含まれていない私のコピー能力はなんなんだ……?

 そんな事を考えていると突然ユニコーンが興奮し始めた。

 

〈あ、ああ……!〉

 

 人の言葉を話す余裕もなく、魔物の言葉で話し始める彼は。

 

〈脳が爆発する!〉

 

 そう言って本当に脳味噌が爆発して死んでしまった。

 振り返ると、そこにいたのは。

 

「ティアラ……?」

 

 小動物のような、銀髪の少女が森に隠れて立っていた。

 

「私のせい」

 

 無表情で、しかし自分を責めるその言葉には自責の念が籠っていた。

 まさか、これも破滅させる運命というやつなのか……?

 【霊視】をすれば、確かにそこにはユニコーンの霊がいた。

 

「いやあ、参ったね! そっちの小さい娘が君みたいな大人しそうな女性の処女を奪っていて、しかもその少女は多数の女と関係を持っている! 高レベルの【非処女の見極め】を発動してみれば、それはもう新しい価値観が山盛りで……脳が処理しきれなくて死んじゃった!」

 

 前言撤回。こんなんで死ぬならこいつCランクだわ。

 百合と、レズビッチくらいでそんななる?

 

「一般的ではない」

「そうだろうけども」

 

 とりあえず血も出来る限り取っておこう。というかもう死んでるんだし全身貰うか。

 私は影魔法にユニコーンの死体を収納して、破裂した脳漿を集めた。

 

「君達の行く末に幸あらん事を……」

 

 今更かっこつけても遅いんだよなあ。百合に脳を破壊されたユニコーンさんは。本当、人生楽しそうだったよ。……人生?

 【霊視】を切って、私とティアラは皆の元へと戻っていった。

 

「素材は集めておいた。ただ――」

 

 雪原を背に、両手を絡めて枕にするアルフは不機嫌そうだ。

 

「で?」

 

 と、聞いてくるその態度からしてもう不機嫌だ。

 

「ええ、ユニコーンは……死んでしまったので、身体ごと素材として頂いてきました」

「そうじゃねえよ」

 

 だとしたらなんだと言うのか。私が首を傾げていると、少年戦士は言った。

 

「突然訳分かんねえ事言い出して、なんか森の奥まで行ってきますとかおかしいだろ」

 

 訳の分からない事……ああ、モンスター言語の事か。

 

「すみません。私のスキルの一つで……」

「一回さ、腹割って話さねえ? 聞かれたら、よっぽどじゃねえ限りは話すつもりでさ。もうお互い大体予想ついてるだろうから、答え合わせするくらいのつもりでさ」

「アルフ、それは……」

「すいませんゴルドさん。これでも彼、師匠の事心配してたんですよ」

 

 窘めようとするゴルド、しかしヘイムがそれを遮った。

 

「いいでしょう。ですが……」

「なんだよ。この期に及んでまだ隠したい事でもあるのか?」

「いえ、とりあえず町に戻りましょう」

 

 私のそれはあまりにも正論だったため、承認された。

 

 

 

 

 で、宿屋の男子部屋に全員が集まってそれぞれが椅子に腰かけた。

 

「んじゃ。まずは俺から。俺はモナキ村出身の冒険者志望だった。無事こうして冒険してる中で【剣技】【貴方だけの騎士】【直感】のスキルを得た。冒険の目的は村を繁栄させるために出来る事探し。次ヘイムな」

「私はアルフと目的は変わらないけど……スキルに【聖女の卵】を持っています。アルフはそんな私を守るためについてきてくれました。錬金術はまだ見習いでスキルも生えてないです。次、ゴルドさん」

「やはり私もやるのか、まあいい。長く冒険者を続けてきた。最初はスバルとも組んで五人組のパーティだった。だが、ダンジョンで希少な宝を手に入れた時、パーティの一人が裏切った。

 私の背中は斬られ、未だに傷跡が残る。それから私は自分と同じくらいの実力者を信用しなくなった。圧倒的に上、もしくは下の相手としかパーティを組めなくなっていた。

 こんなところか? 次はティアラから聞こう」

「私はマイナススキル【運命の女】を持っている。好きになった相手を破滅させてしまう。だから私は強い女が好き。運命を乗り越える強さを持つ女性を探していた。その点、お姉様は【不老不死】を持っている。だから安心して甘えている。

 ちなみに【読心術】を持っているので鎧で表情が見えないゴルドも【情報処理】と違って何を考えているのか分かる。じゃあ、お姉様」

「ええと、まず私はですね。他の世界にいました」

 

 そこから神にTSを条件にコピー能力を授かった事、暗殺者、吸血鬼、伝説の魔法使い、アルフのスキルをコピーした事を話した。そして、コピーをするたびに人格が増える事を話した。つまり今は五重人格だと。

 

「へぇ、その中に俺が入ってるのは光栄だな」

「というかヘイムの【聖女の卵】も大概だぞ。よくもまあ隠し通したものだ」

「ゴルドさんすいません。自分で聖女候補なんて言うのは恥ずかしくて……というかティアラさんは知ってたんですよね。読心術使えるってことは」

「知ってた」

「ゴルドは自分より格下だと思ってるから俺達とやってこれたってのはショックだな。格上ってのはモッドか?」

「そうだ。ティアラはそれで全部か?」

「バルトのギルドマスターにお姉様が強くなりすぎたら破滅させるように言われている」

「え?」

「破滅するならそれまでなのでいいと思う。どうやっても止められないくらい強い女が理想」

 

 わいわいがやがやと話し始める我ら<チェンジャー>の面々。

 だが最終的には。

 

「元男ってなに!?」

「神様に会った事が!?」

「リーダーは今どれだけ強いんだ!?」

「異世界について知りたい」

 

 謎多き女、私を巡っての会話になった。訳分かんな過ぎて混乱させてしまっただろうか。申し訳ない。

 こうして私達は秘密を曝け出しあって、また一つ仲良くなれた気がする。

 

 

 

 

 そうして雪狼やスノウラビット、ユニコーンの素材をギルドに納品した我々はその功績が評価され、ゴルドはBランクに返り咲き、私はBランクに昇格し、アルフとヘイムがDランクになった。

 ティアラは受付嬢というだけで身元の保証がされているようなもので、冒険者ランクは持っていない。

 ランクの上がったその足で分身のスバルから納品したはずの素材を受け取り影魔法の中へ。

 さて、そろそろ魔法都市エンディにつくのだが、その前にやっておく事があるという。

 

「ヘイムに【鑑定妨害】を覚えさせる」

 

 なんでも、魔法都市ともなれば鑑定メガネ持ちがいるらしく、万が一【聖女の卵】を見られると厄介らしい。

 そしてもう一つ。

 

「異世界人であるお姉様はスキルを自力で覚えられるのかの検証」

 

 そう。実はこれ地味に気になっていた。

 私のスキルは全部複製品。オリジナルがないのだ。

 よって、ヘイムが鑑定妨害のスキルを覚えるまでの間に一度、何らかのスキルを覚えるまで何かに打ち込んでみないかという話になった。

 その間、剣士組はとにかく剣技を磨く事に専念してもらう。魔法が斬れるくらいまで成長するといいが、とはゴルドによるアルフ評であった。

 

 という事で、少しの間だけ修行の期間となる。

 

『剣技以外の武器スキル身に付けてえなあ!』

『なんか安全に冒険するスキルがいい……』

『もういっそ、ティアラから【性豪】スキル教えて貰えば? 手取り足取り、腰取り――ね』

 

 何の修行をするかの方向性すら決まってない私の人格達は、私の中であれがいいこれがいいと騒いていた。

 そして――修行の期間は飛ばされる事になる。なぜなら面白くないから。

 結果として、ヘイムは【鑑定妨害】を覚えた。

 アルフは直感スキルと組み合わせる事で魔法を斬る事を可能としたし、そもそもゴルドは魔法を切り裂くくらいの事はできる。なんなら金色の全身鎧は魔法対策であるため、大して必要のない技術ではあった。

 私の方は……秘密だ。

 自力でスキルを覚える。それが出来ると分かればこれからの旅はもっと楽になるだろう。

 巡礼の旅に出て、一か月が過ぎた――

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