コピー能力にはそれなりの代償を   作:稲光結音

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暴れん坊は所持スキルに納得がいかない

 俺の中で、もう一つの人格が暴れている。

 

『このスキルよう、なんかもっとぶん殴れるようなスキルねえのかよ!』

『そう言われてもな。その辺の不良冒険者くらいなら殴れるんだからいいだろ』

『よくねえ! もっと強い奴とも真正面からやり合いたいじゃねえか』

 

 との事なので、習得スキルを一度確認してみよう。

 

【体術】【軽業】【隠密】【気配遮断】【忍び足】【弱者の見極め】【不意打ち強化】【魔刃作成】【短剣技術】【投擲】【霧操作】【回復魔法】【生活魔法】【毒物知識】【人体知識】【霊視】

 

 【体術】は基本的な身体の動かし方、【軽業】はより専門的な、回避やアクロバティックな動きに関するスキル。

 【隠密】は意識的に発動するいわゆるアクティブスキルで、その場にいてもなんとなく存在感が薄くなる。【気配遮断】も似たようなスキルだが、こっちはパッシブ。ここに【忍び足】で隠密行動スキルが完成する。

 【弱者の見極め】は自分より相手が総合的に見てどれくらい弱いのかが感覚で分かる。ただし強者には効果無し。弱者の見極めだからな。さすがにこいつが効かないような相手に喧嘩売ってたら俺も全力で第二人格を止めるのだが、まあ弱い奴ならいいか、となってしまうのも本気で止めきれない原因かもしれない。

 そして多分、アーレンスって殺人神父はこの見極めスキルを使って弱い女を狙ってたんだろうな。そりゃ殺されるわ。俺じゃなきゃ勝てなかった。

 【不意打ち強化】は相手の意識の外から攻撃した時のダメージを上げる火力スキル。

 【魔刃作成】は魔力で出来た刃を生成し、【短剣技術】で短剣として利用して何もないところ、武器が持ち込めないところでも武器を作り出せるわけだ。やはりこれも暗殺向け。唐突に【投擲】で投げつけて【不意打ち強化】とのコンボを狙ってもいい。まあ【投擲】は投げる物のコントロールを高めるものだな。

 【霧操作】も姿を隠すのに向いている。割と広範囲まで広げる事が出来るが、それをやると魔力の消費が激しい。

 で、俺的メイン魔法にしたい【回復魔法】。もうこれはギルドなんかで怪我させたチンピラに使ってるので大っぴらになっているが、回復魔法が使えるのは神官やシスターで、俺も元居た場所では冒険者ではなくシスターをやっていたのではないか、と想像されている。

 しかも暴力をふるって破門されたのでは、などと不名誉な感じの想像までされている。これに関しては致し方なし。第二人格が悪い。

 もういっそアーレンスみたいに神職についてる振りして暗殺者スキルを誤魔化して生きるか?

 で、ここで新たな概念の登場だ。スキルレベル。

 これは確認する事ができないようだが、結局のところどれくらいすげえことができるかのレベルだな。俺の回復魔法は傷ならどこまででも癒せるが、切断された四肢とかは無理。

 回復魔法に限らず、あらゆるスキルにレベルがあるので、【体術】スキル持ちです! と言われただけで強さは判別できない。

 普通なら。

 俺は【弱者の見極め】があるので自分より低いスキルレベル相手なら分かる。

 なんにしろ出来る事なら回復魔法のスキルレベルは上げておきたいところだ。

 【生活魔法】は火を熾したり、飲み水を出したりするサバイバル能力の基礎。【人体知識】は回復魔法は勿論だが、暗殺にも向いている。どこを切れば人体にダメージを与えられるかが分かるというもので、とはいえ現代人だった俺に元々ついてるような気もするが、より詳しい。

 最後に【霊視】。これなんだが……。

 

「霊視、発動」

 

 視界に幽霊が映るというもので、なんなら会話もできる。

 で、俺の傍にいる幽霊といえばだ。

 

「こんにちは」

「……ああ。結局お前何がしたかったんだ?」

 

 殺人神父、アーレンス。

 

「なんてことはないですよ。霊視で私だけが見れるハーレムを作りたかっただけです」

「最低の理由だった。俗物だし」

「元々暗殺者だったので倫理観とか期待されても」

 

 くだらね。

 

「さ、お話しましょ」

「いらん、霊視解除」

「ああっ、幽霊は暇なのにー」

 

 ま、そんな能力。多分今後使うことはない。

 ここまで整理して思った事。……このチート、有効に使えば本当にチートだな! こんなに一気に貰っちゃっていいんですか!?

 

『なあ! もっとパワー! って感じの能力持ちのやつコピーしようぜー! 暴れたりねえよ!』

 

 これで五月蠅いのが付いてこなければなあ。

 

『ギルドで教習も受けたんだろ!? そこそこの連中とパーティ組んでさ、強え奴見かけたらコピー! これよ!』

 

 そう、俺はギルドの初心者教習を受ける事が出来た。そこでスキルレベルの存在や、本来のスキルの習得方法などを身に着けたのだ。

 ちなみに習得方法は経験や知識を高める。体術は身体を動かしてれば身に付くし、植物知識みたいな知識関係は本当そのまま教えてもらったり本を読んだりすることで身に付く。

 ちなみにヒットポイントみたいな概念はないらしい。剣と魔法のファンタジー世界とはいえ、ロールプレイングゲームではないらしい。

 そう考えると、身体の丈夫さを高める【頑強】なんかは欲しいところだが……リスクがなあ。自分で鍛えるかあ? 初日から殺人鬼が襲ってくる世界だぞ。どれくらい強くなっても損はない。俺の運が悪いだけ? そうだね。

 ちなみになんでギルドで教習を受けた描写がないのか。つまんなかったから、以上。

 

『そもそもパーティなんか組めるか! 先輩冒険者お前がぼこるから遠巻きに見られてるんだよ』

『うっ……』

『あと、暗殺向きの手札を一時的な味方に晒したくない。ついでにいえばお前のキレやすさを考えると近くに人置いとけないだろ……』

『ううっ……』

 

 正論の暴力。するとまあ、相手はキレる。

 

『じゃあもうソロでいいわい! つええ奴は大概ダンジョンの奥! そこまで行ってコピー! これだろ!』

 

 この街にはダンジョンがある。そこには魔物と宝があるわけで、それを狙った冒険者達のための街なのだ。

 ちなみに街の名前はリアル。ファンタジー世界の名前がリアルってウケるな、どこもリアルじゃねーよとは思うのだが多分この世界の人には誰にも通じないので言わない。今度第二人格に話すか。

 などと言ってる場合ではない。一部の身体の優先権を奪われている。

 片足。それがあきらかにダンジョンの方へ向かおうと頑張っているのだ。ぷるぷるしてる。

 

『まあ待て。そもそもコピーをしたとする。それでお前が暴れられる可能性はどれだけある?』

『あ? どういうことだ』

『お前より強いやつをコピーしたら、そっちの人格の方に意識が持ってかれる可能性だってあるだろ。新しい力を使いこなす新しい人格がお前を差し置いて暴れる可能性はあるぞ』

 

 足が止まる。身体の制御が戻ったので、向かっていた足を元に戻す。

 

『うーん。いや待て! その確認のために第三人格を作るのはありだろ!』

 

 第二人格はそう言って、また一歩足を出す。

 

『無しだ。俺は今のスキルで満足している』

 

 足が戻る。

 

『俺はしてねえの!』

 

 足が前に出る。

 右脚を前後させる応酬が無意味なダンスを繰り広げる。

 傍から見たら馬鹿みてえだろうなあ。こっちは必死なんだけど。

 

『じゃあ主人格! お前の人生プラン聞かせてみろよ!』

『じ、人生プラン!?』

 

 なんか急に賢い事言い出した。

 

『えーと、とりあえずギルドで回復魔法で金取りながら練習。スキルレベルを上げて……まあその後はおいおい。なんならそのまま一生を終えてもいい』

『つまんねえ! つまんねえなあ! せっかく異世界に来て、それでいいのか!?』

『む』

 

 痛いところを突いてきた。足が動く。

 

『まあ今は直接ぶん殴る手段が少ないのはしゃーねえ。でももっと強くなって、より高みを目指す! 金! 名誉! 女! すべて手に入れようじゃねえか! 世界最強ってのは、世界で一番安全だって事だぜ!』

 

 一理……あるのか? ちょっと勢いに押されて、つい身体が動いてしまう。

 

『ていうかよお、別にダンジョン行ってみるだけってのはありじゃねえのか? 金もいるだろ? 採取とか宝箱探しがてら、モンスター相手には隠密してりゃ安全だろ。で、ついでに動きのいい冒険者がいればコピー。ついでだと思えよコピー先探しは』

『むむむ』

 

 完全に論破され、身体の主導権は第二人格に。

 

『待て待て、分かった。降参だ。ダンジョンにいく。

 だから俺に動かさせろ。お前じゃ暗殺スキルを上手く使いこなせなそうだ』

『それは確かになあ。俺は直接ぶん殴りたいタイプだしな。それにお前があの神父殺したわけだし、安全の為なら平気で人殺しできるお前の方が向いてるだろう』

 

 人聞きが悪い! だが納得はしてくれたようで、俺の意志で俺の身体が動く。その当然の事がこんなに嬉しいとは。

 

『……ちょっと待てぃ! そっちはダンジョンじゃねえぞ!』

『武器を買うんだよ』

『魔刃作成があるだろ!』

『あれは暗殺用。あのスキルの存在は知られない方が不意打ち強化が輝くだろ』

『誰殺す気だよ……こわ……』

 

 ちんぴらのくせに引くなよ、こっちが悪いみたいじゃないか。

 俺は短剣を数本、予備を含めて買うが安物だ。人に見られなければ普通に魔刃作成を使うつもりなので、これはアリバイ作りみたいなものだ。

 そうして俺は改めてダンジョンへと向かった。

 ダンジョン入口付近では冒険者達がパーティを組もうとしていたり、買取やポーションの販売などを行っていて賑やかだ。

 俺は呼び込みの声を掛けられることも無く、隠密スキルを使ってするするとダンジョンに誘い込まれるかのように入場していく。

 そうして地図を見ながら――教習で貰ったものだ。先へ進んでいくと、モンスターの群れが現れる。それを見た俺は頭を抱えた。第二人格は狂喜乱舞だ。

 別に、強いモンスターだったわけじゃない。むしろ、弱者の見極めが雑魚だと判断している。そこじゃないのだ。

 問題は……

 

「モンスターもスキルの複製対象かよ……!」

『こりゃ潜り甲斐があるってもんだなあ! 俺!』

 

 ふと、霊視を発動する。ダンジョンにいまだ残る、成仏していない霊が見える。

 

「霊どももスキルの複製対象かよ……!」

『なんか過去の英雄からスキルコピーとかできるんじゃねえか!? ワクワクしてくるな!』

 

 まるで世界が俺にチートを使えと囁いてくるかのようだ。

 その意志を掻き消すかのように、雑魚なゴブリン共を蹴散らしてやった。

 

『荒れてんねえ、俺! 別に戦う必要なんてなかっただろ。隠密でやりすごせた』

『五月蠅い……!』

『世界がこんなに輝いてみえたのは初めてだぜ!』

 

 そりゃお前、人格として目覚めたのは最近だろ。

 俺は第二人格の上がっていくテンションについていけるのか、心配になってきた。

 絶対に! コピーは! もうしない!

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