コピー能力にはそれなりの代償を   作:稲光結音

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吸血鬼の弱点

 勝負の始まりはラッシュの早さ比べから。

 吸血鬼の持っているスキル【剛力】【頑強】【敏捷】が一撃一撃を痛烈に、素早く、殴られても構わず次の拳を繰り出していく。

 しかし――互角。

 当然だ。私の能力はコピーなのだから同じ土俵で戦えば引き分けにしかならない。

 

「ふむ、ならこれはどうかね」

 

 そんな一言と共に繰り出される拳を、不必要なほど大袈裟に回避した。

 

『ひえええ!』

『おいてめえ第三人格! 邪魔すんじゃねえ!』

『だってあの攻撃は【幻術】だよお。ちゃんと【感知】すれば分かるよね?』

 

 それは俺、じゃなかった私のミスだ。【幻術】スキルはもっと大袈裟に使ってくるものだとばかり思っていた。

 

「これも避ける。よろしい。ならば闘争を続けよう」

 

『ちっ、てめえに助けられるとはな』

『へへへ……怖いのはすぐ分かるよ』

 

 しかし第三人格は謎だな。押しに弱いですってキャラの割に上機嫌で殴り合ってる第二人格の肉体操作権を分捕った?

 コピー元の性能が関係してる? いや、そうだとしたら俺が主導権を握る事は一切できないはずだ。主人格だから? うーん。

 殴り合いを第二人格に任せて、俺はそんな考え事に耽るほどに余裕がある。

 互角であるにも関わらず、だ。

 アーレンスの能力の分だけ数で勝ってるから?

 違う。

 

「魔刃作成! こっからの俺様はリーチで勝る! さあてめえの抵抗を見せてみな!」

 

 暗殺者スキルなんてものは不意打ちでもしない限り一対一の勝負では刺さらない。

 魔刃による二刀の剣が、吸血鬼の王を襲う。

 

「品の無い言い草だ」

 

 ヴァンパイア・ロードは氷魔法によって刃を作り出し、レイピアを形作るとリーチで勝負しようとしていたこちらを上回る。

 

「そもそも、だ。私はアンデッドで君は人間。そこには覆せない差というものが存在することは分かっているのかね?」

「ああ!?」

「不死者は疲れない。人は疲れる。

 もし、もしもだ。君と私が互角の強さを持つとしたら――勝つのは私だろうね」

 

 互角。それは種族差を考えないスキルのみを見た時だ。

 だから私は複製されたスキルの中に吸血鬼にありがちな【日光弱点】とか【銀弱点】とかはつかなかった。

 それとも吸血鬼の王ともなると、その辺の弱点は克服していたという事だろうか。

 

『満足したか?』

『おう! 消耗させてやったぜ! 多分な!』

『なら変われ。あとは私達がやる 第三人格! 【影魔法】の操作を手伝ってくれ!』

『り、了解!』

 

 俺は距離を取ると、【霧操作】を発動した。

 

「ふむ。また私の真似事かね。君は……ものまね士、とでも言ったところか」

 

 霧操作はこいつも持っていたのか!

 それは予想外。スキルリスト見た時は無かったからな。おそらく元々持ってたスキルだから表示が変わらなかったのだろう。スキルレベルはスキルリストに表示されないからな。

 しかし、吸血鬼は霧を解除しない。

 

「ふふ、時間稼ぎかね。私には君が見える。君が震えているのを。

 恐ろしいのだろう、私が」

「……いや、寒いんだよ」

「強がりを」

 

 気品のある笑いを一つ浮かべると、徐々にこちらに近づいてくる。

 霧の中など自分の庭であるかのように。

 

「貴方は言いましたね。私はアンデッドで君は人間、と」

「言ったとも」

「だから貴方は――この冷気に気付かない」

 

 【霧操作】プラス【氷魔法】……氷霧。全てを凍てつかせる、氷の霧。

 

「ぐっ……!? だが、この程度ならば私の怪力があればなんとでも!」

 

 そう言って、徐々に動かなくなっていくはずの身体を、無理やり動かしてこちらを狙う。

 そこを。

 

『へへへ、【影魔法】~!』

 

 第三人格の動かした影が、更なる拘束を仕掛ける。

 二重の足止めによる完全拘束。これによって吸血鬼の王は動く事も出来ず――

 

「はぁっっっ!」

 

 赤いオーラが周囲のすべてを破壊していく。

 血液を消費する代わりに様々な効果を発動する吸血鬼らしいスキルである【血液魔法】だ。

 

 

 使ったな?

 

 

「はあ……はあ……。腹の減っている時に使う技ではないね。

 さあ、勝負はついた。貴様の血液を頂いて、私はこの生まれた地で穏やかに――どこにいった?

 まさかここにきて逃げ出したなどと言うまいな!?」

 

 言わないさ。

 だって、もう倒せる相手なんだからな。

 

 赤いオーラによる全体破壊を【軽業】で回避。そのまま【隠密】【気配遮断】【忍び足】で後ろに回り、飛び掛かった。

 

「なっ! 貴様何を――がっ!」

 

 【不意打ち強化】による噛み付きで吸血鬼のスキル【吸血】を発動。血を吸いながら【血液魔法】で拘束具を生成。【影魔法】で抵抗を防ぎ、周囲の冷気を利用した強烈な【氷魔法】で完全に動きを止める。

 

「やめ……っ」

 

 三重の拘束を、血液の減った状態では吸血鬼の王とはいえ抵抗する事もできず――俺に絞り尽くされ、消滅した。

 

 そう、俺の狙いは最初から血液を消費し切らせる事だったのだ。

 人間にスタミナの限界があるように、吸血鬼にも血液量の限界があった。

 そう、やつは言ったのだ「生まれて初めての吸血」と。

 まだ血を吸ったことの無い吸血鬼なら、そこに付け入る隙はある。俺の読みが当たった結果だ。

 

『へへっ、やったな!』

『こ、怖かった~……』

 

 ダンジョンボスを倒したから宝箱が湧いた。

 中身は……マント。修道服の上から身に付けてみると、自由に伸ばしたり縮めたり、固くしたりできた。

 効果は【伸縮自在】【硬化】ってところか。

 使いどころはありそうなので売らずにとっておく事にする。

 さあ、凱旋だ。

 

 

 

 

 街はもう静かなものだ。

 結局あの外に出てきたモンスター達は外に追い出された後の事は命令されてなかったため、攻撃を受けたから反撃した。くらいのものなので混乱の割に被害は少なかった。

 特に建物なんかは壊す理由もなかったようでほぼ無傷。

 また特異個体の中でも厄介な奴が出ない限りダンジョンのモンスターをすべて追い出すなんて真似をするボスは出てこないだろう。

 

 リザルトがてら、今の私のスキルを公開しよう。

 

【体術】【軽業】【隠密】【気配遮断】【忍び足】【弱者の見極め】【不意打ち強化】【魔刃作成】【短剣技術】【投擲】【霧操作】【回復魔法】【生活魔法】【毒物知識】【人体知識】【霊視】【暗天時強化】【吸血】【処女の見極め】【突剣技術】【血液魔法】【影魔法】【氷魔法】【魔力強化】【蝙蝠化】【暗視】【気品】【礼儀作法】【モンスター言語】【鷹の目】【知覚】【感知】【超聴覚】【反射神経】【眷属操作】【剛力】【頑強】【敏捷】【幻術】【魅了】【自動回復】【復活】

 

 流石に数が多いので説明は何個かピックアップする感じで行きたいと思う。

 【暗天時強化】は太陽の光を浴びていない時に自身の性能を高める。なんなら【霧操作】で深い霧でも作ればいい。【魔力強化】は純粋に魔法の質と量を上げるやつ。

 【眷属操作】は人間である私が使うと、自分より弱い奴を自由に操る効果。【弱者の見極め】と相性がいい。

 【剛力】【頑強】【敏捷】はそれぞれ攻撃、防御、速度を上昇させるよって感じ。吸血鬼の王は【魅了】を使ってこなかったけど、たぶん戦闘スタイルと合わなかったから使わなかったとかそんな感じ。これ使われてたら負けてたと思う。

 【自動回復】は自分のダメージがちょっとずつ癒されていくよっていう、吸血鬼の不死身加減を表したスキル。

 【復活】、これちょっとダンジョンボス復活するんじゃね?って不安になるかもしれないけど【復活】持ちが復活するには条件があって。

 蓄えてた血液を消費して生き返る能力なので、あの倒し方で正解なのもある。

 

 さて、この黒マントを携えて凱旋した私は黒翼の修道女などという二つ名を誰が言い始めたでもないけど頂き街中の有名人になった。

 ちやほやされすぎて駄目になる。そう考えたロリお姉さんシスターのトリーさんの勧めにより、巡礼の旅に出る事になった。

 最初の目的地は、闘技場で有名な街であるバルト。

 相乗り馬車に乗り込むとそこには。

 

「む」

「げ」

「あ」

 

 ダンジョン十階層でしんがりを務めていた、私に冒険者に向いていないと説教した全身鎧の男。

 誰がとは言わないが調子に乗って女の子を危機に晒したアルフ。

 危機に晒された方のヘイム。

 

 この三人と相乗りすることになった。

 

「……」

 

 気まずい。

 

『うう~なんか知らないけどやだー! 明らかに空気悪いじゃん!』

『なんでい、雑魚ばっかじゃねえか! 調子乗った事言ったらぶっ飛ばす』

 

 たぶん私と相乗り嫌なのはお互い様だよ。

 

「……っす。アルフっす」

「へ、ヘイムです。そのよろしくお願いしま、す?」

「ああ、彼らが例の。なるほど。名乗っていなかったかな? 私はゴルドだ」

「モッドです。その、色々ご迷惑をおかけして――」

 

 私の巡礼の旅は前途多難なようです。

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