駿川たづな攻略RTA   作:たづなさんの脚ぺろぺろ

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前日譚的なものです。
小説形式に興味が無い方は読み飛ばしてもらって大丈夫です


???/アグネスタキオン

◇???

 

かつてトキノミノルというウマ娘がいた。

GIを3勝した一線級の実力者だ。

 

ただ、彼女の競技バとしてのキャリアはあまりにも早く終わりを迎えた。

彼女は速すぎた。そして、その速さに彼女の脚は耐えることが出来なかった。

 

 

彼女の最後のレースは日本ダービーだった。

 

元々、壊れるんじゃないかという予兆はあった。

ダービーの直前に右足の爪は割れてしまい、さらにそれをかばうようにしていたからか左脚はパンパンに腫れてしまっていた。

当然、当時の彼女のトレーナーは出走を取り消そうとした――だがしかし、彼女はそれを拒んだ。絶対に走れるようになる、だから出走を取り消さないでくれと。

その時の彼女の表情は鬼気迫るものであったらしい。

 

気圧されてしまったトレーナーは、トレーナーあるまじき行動であると理解しながら結局彼女の出走を取り消すことは無かった。

だがしかし、もし腫れが引いていけなれば、もしくは彼女が走れないと言った様子を少しでも見せれば批判覚悟でも当日に出走取り消しを申し込む覚悟をしていた。

 

そして、奇跡が起こった。

 

ダービー当日の日、腫れ上がっていたはずの左脚からは腫れが完全に引いていた。右足の爪も完治とはいかないものの、ほぼ治りかけていた。

 

この状態なら出れてしまうだろう。

 

そうして彼女は意を決して日本ダービーに出走し、そして勝利した。

 

しかし、奇跡はそう長くは続かなかった。

 

日本ダービーの1週間後、突如として彼女は競走バを引退した。

しかも引退会見の場には何故か引退する本人がいなかったのである。

 

当然、会見に訪れた記者達は彼女の所在について尋ねた。

だが何度尋ねようとも彼女のトレーナーは決して口を割らなかった。

ただひたすらに「すみません」と謝罪の言葉を述べていた。

 

 

そうして、まるで幻だったかのように()()()()()()と呼ばれたウマ娘は競バ界から消えていったのだ。

 

◇アグネスタキオン

 

――授業に出ろ。

 

授業を受けるまでもなく教科書見れば内容はすぐに理解できてしまう。よって時間の無駄だ。実験をする方が有意義に時間を使えるだろう。

……めんどくさいからという理由も少々混じってはいるがね。

 

 

――選抜レースに出ろ。

 

キャベツに群がるアリのように私をもみくちゃにしなければ考えてやったさ?あんな体験は二度と味わいたくないものだね。

そもそもの話、私はトレーナー達にアピールしようとは思っていないのだから選抜レースに出る意義とやらがないのだよ。これも時間の無駄でしかない。

 

 

――何故スカウトを受けない。

 

いくら相手が名門出身のトレーナーだろうが、GIを何勝も勝たせている凄腕トレーナーだろうが私の『目的』と一致していなくては話にならないからだ。

そう彼らに何度説明しても、延々と付きまとってくるしつこさには辟易しているよ。

私も自分の事は言えないが、彼らは自分の事しか考えていない。私の事を金のなる木のように見えているのだろう。そう自分で思えるぐらいの自信はあるからねぇ。

 

 

 

「…ふぅン…どうしたものかねぇ…」

 

私は先程スカウトを拒否したトレーナーからの吐き捨てるように言ってきた言葉を思い返していた。

 

『このままでは学園から退学になるぞ』

 

なくもない話…どころか、いよいよ現実味を帯びてきた。

 

この学園に入学して彼是三年程。

ウマ娘の限界速度の先に到達するという私の研究は、完全に行き詰まっていた。

原因はわざわざ考えなくとも分かる。

 

「見つけるしか……無いだろうなぁ」

 

座っていた椅子に背中を預け天井を見上げる。

 

「――今日は随分……独り言が多いですね」

 

小さいながらも、不思議と耳に入ってくる声――それは、私とこの旧理科準備室(実験室)を共有している私の良き友人、マンハッタンカフェの声だった。

 

「そんなに独り言をつぶやいていたかな」

「……はい」

「ふぅン……少し、気分転換に外でも歩いてこようかな」

「……さっき、トレーナーさんたちに追いかけられていたと……思いますけど」

「さっきと言っても、一時間も経っているじゃないか。きっとほとぼりも収まっているさ」

 

若干不満げな、心配しているようにも見えるカフェの視線を背に私は実験室を立ち去った。

 

 

――よーし、もう一本行くぞ!

 

――もう一回お願いします!

 

――よくやったな! タイムが縮んだぞ!

 

放課後ということもあり、廊下の窓の外の景色はウマ娘達のトレーニング風景が映し出されていた。

 

私はその光景をぼーっと眺めていた。

 

カツンカツンと、靴を鳴らす音が廊下に響き渡る。それが嫌に鮮明に聞こえた。

音を鳴らしているのは自分自身だ。

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