アグライアのガチャが引きたいけどVer4.0が怖くて引けない今日この頃。
復刻の時期が...悪い!!
樹庭を解放し、ライアが《浪漫》の半神になってからケリュドラは即座に次の狙いを公表した。
《大地》のタイタン、ジョーリア。
大地獣や山の民、オンパロスの大地を創造したとされる支柱の三タイタンの一柱だ。
火追いの軍の士気は《浪漫》の火種を手に入れたこともあり最高潮。
俺たちはそのままジョーリア討伐へ向かおうとしたのだが、一つ大きな問題が立ちふさがったのだ。
その問題とは『ジョーリアの居場所が分からない』というものだった。
ジョーリアを信仰している都市国家は数多くある、だがその都市国家の人間ですらジョーリアの居場所を知るものは誰一人居なかったのだ。
居場所が分からない以上、軍を動かすことも出来ない。
よって俺たちはオクヘイマに戻り、各々のやるべき事とジョーリアの捜索を始めたのだ。
「一振り一振りにしっかり力を籠めろ!
籠めた力が中途半端だと弾かれて隙を晒すことになるぞ!
戦場で隙を晒したら次の瞬間には命は無いと思えよ」
そんな中、俺は新兵の教練を担当していた。
彼らに武術、心構えを教えて戦場で戦い抜く方法を叩きこむ。
日々成長していく彼らを見るのは、俺が考えていたよりも楽しいものだった。
「そこまで!
本日の訓練は以上、後はしっかりと休息をとれよ。
それじゃあ解散!」
「「「ハッ!」」」
俺の言葉に応じて、新兵たちは解散していく。
教え始めた当初は返事に声も出ず、歩みも頼りないものだった。
だが今は疲れは見えてもしっかりと自身の足で歩けている。
今の彼らならきっと戦場に出ても戦っていけるだろう。
「お疲れ様、ポネウス。
皆頑張ってたね」
「あぁ、本当にな。
若いやつらの成長ってのは嬉しいもんだな」
「若いやつらって....ポネウスも十分若いでちょ?
そんな事言ってたらすぐにおじいちゃんなっちゃうよ」
「えぇ、今そんな爺臭いこと言ってたか?
やだなぁソレ、まだ二百歳程度だってのに」
新兵たちの訓練を終えると、トリビーが声をかけてくる。
彼女もまた自らの役割を終えたらしく、俺たちは揃ってライアの屋敷に帰り始めた。
その道中、やけに市場の方が騒がしい事に気づく。
そこはやけに熱気が籠っているようで人だかりが出来ていた。
「何かあったのかな?
ポネウスも見に行ってみよ!」
「それはいいんだけど...。
...またラビエヌスとセネカじゃないだろうな」
その熱気に興味を引かれたのかトリビーが人だかりの方に向かっていく。
当然俺もそれを追いかけるのだが、頭にはあの二人の喧嘩ではないかと疑念が湧いた。
もしラビエヌスとセネカの喧嘩だったなら、今度は言葉ではなくすぐにでも力で黙らせるつもりだ。
何故か未だ幼女趣味の噂が消えていないというのに、また新しい噂を作られでもしたらたまったものじゃない。
そんな疑念を抱えながら人込みをかき分けると、そこにいたのは俺の予想とは外れた二人だった。
一人はボロボロの服を着て、フードを被った子供。
もう一人は煌びやかな服を着て、傍に護衛を控えさせている貴族だ。
そんな真逆な印象を持たせる二人はテーブルを挟んでサイコロを振っている。
恐らく賭け事でもしているのだろう。
子供の表情はフードで見えないが、貴族の方はあからさまに焦っている。
どちらが有利なのかは明白だ。
「ほら、早くサイコロを振りなよ。
後はあんたの出目で結果が決まるんだから」
「わ、分かっている!!
クソっ...このままじゃ...」
貴族は震える手でサイコロを握り、子供の言うままに転がした。
テーブルの上で出目を変え続けるサイコロ。
周囲を囲む野次馬も、貴族もそのサイコロに目を引き付けられる。
だが子供は一切の動揺を見せることなく、サイコロではなく貴族の反応を見ていた。
そのまま徐々にサイコロの回転が遅くなっていき出目が確定する。
その出目はーー。
「はいあたしの勝ち。
残念だったね、貴族の坊ちゃん」
「ッッ!!」
貴族の敗北を、子供の勝利を示していた。
野次馬も歓声を上げて、子供の勝利を称賛する。
俺もトリビーも少ししか見ていないが緊迫した状況を肌で感じた身として、惜しみない称賛を送った。
それに気分を良くしたのか子供は得意げに座っていた椅子から降り、テーブルの上に置かれていた綺麗な宝石に手を伸ばす。
「それじゃコレは貰ってくよ。
次からは賭け事は程々にするんだね」
「....いや、待ってもらおうか」
「は?
急に何言ってんの...っ痛!」
子供が伸ばした手が宝石に届く直前に、貴族の手が子供の腕を掴み取る。
その掴む力が強かったのか、子供は痛みに呻く。
周囲に不穏な空気が流れ始める。
野次馬たちもそれを感じ取ったのか距離を取った。
「ちょっと...離してよっ!
賭けに勝ったのはあたしなんだから大人しく認めたら!?」
「いや、君のような貧民の事だ。
どうせイカサマでもしたんだろう?
そんな輩にコレは渡せないさ」
貴族は子供の腕を掴んだまま、難癖をつけ始めた。
子供は掴まれている腕を外そうと藻掻くが、その拍子にフードが外れ子供が今まで隠していた顔が露になる。
灰色の髪に、青色の瞳。
その顔立ちから少女であることが伺える。
その中でも特に目を引くのは頭に生える獣の耳だ。
その特徴を見て、野次馬はどよめき貴族は我が意を得たとばかりに笑みを浮かべる。
「ハッ!
その耳、君はドロスの出身だったか。
あの下賤な盗賊の都の住人ならイカサマもするか」
「ッ!」
「何か言いたいことでもあるのかい?
君がドロス人なのは本当のこ「おい、そこまでにしとけ」ん?」
俺はドロス人は苦手だが、子供相手にここまで言うのは気分がよくない。
俺は貴族の腕を握ると、少しだけ力を入れた。
貴族は痛みと驚きに顔を歪めながら少女の腕を離し、少女は突如割り込んで来た俺に驚いた様子を見せる。
「っ!
急に割り込んで人の腕を掴んできたと思ったら君は何処の誰かな?
私は今、賭けでイカサマをした貧民と話をしているんだが」
「オクヘイマの教官を務めてる者だよ。
話って割には随分と強引だったように見えたけどな」
「教官?
そんな立場の人間には関係ないことだろう、今の立場を無くしたくなければ引っ込んでいてくれ。
それとも私の護衛に動かしてもらいたいかい?」
「ハッ、いい度胸してるなお前。
いいぜ、そっちかその気なら「ちょっと待ってポネウス」トリビー?」
貴族は俺の立場を聞くと、馬鹿にしたような顔を見せて護衛をけしかける。
その様子に思わず笑ってしまうが、あっちがその気ならこちらも荒っぽい手を使わせてもらおう。
そう決めて拳を握り、力を籠め始めるとトリビーが俺と貴族たちの間に割り込む。
「オクヘイマの教官には関係なくてもあたちたちなら関係はあるよね」
「ん?今度はだ..れ...あ、貴女は!?
..それじゃあ教官ってことは...まさか...」
「そのまさかだよ。
それと賭けはあなたたちで決めた事なんでちょ?
なら、負けても自分の責任だよ。
それなのに負けても言い訳ばっかりちて子供に掴みかかるなんて貴族とちてどうなの?」
貴族はトリビーを見ると、先ほどまでの余裕は何処にいったのか途端に焦り始める。
それと同時に俺が誰かも気づいたようで、焦りを見せる顔は徐々に青くなっていく。
だが貴族も顔色が悪くなっていく最中、辛うじて言葉をひねり出す。
「お、お言葉ですがこの子供はドロス人ですよ?
それに見るからに貧しい身ですし、イカサマをしてもおかしくはないでしょう?」
「どこの都市国家出身かどうかなんて関係ないよ。
それに本当にイカサマをちたかも分からないんでちょ?
それともこれ以上騒ぎを大きくちてカイザーに呼び出されたい?」
「い、いえそのような事は!!
では失礼します!」
「あ、まだこの子に謝ってな...行っちゃった」
貴族の精一杯の反論もトリビーは容赦なく切り捨てる。
結局カイザーの名前を出した途端、貴族は俺の手を振り払うと凄まじい速度で逃げていった。
どれだけケリュドラが貴族の中で恐れられているのか分かりやすいことだ。
走り去っていく貴族を一瞥したトリビーは、どこか呆然としている少女に駆け寄った。
「大丈夫だった?
腕掴まれてたけど痛くない?」
「う、うん。
えっと、あんたたちは?」
「あ!まだ自己紹介ちてなかったね。
あたちたちはヤヌサポリスのトリビー!
こっちはあたちたちの従者のポネウス!」
「よろしく。
さっきは大して力になれなくて悪かったな」
「いやそんなことないけど...何で助けたのさ。
あの貴族の言う通りあたしがイカサマしてたかもしれないのに..」
少女は俺たちを一瞥すると、訝しむ視線を送ってくる。
突然現れた大人を信用できないのは分かるが、少女の様子はそれだけではないようだ。
まぁ今は少女の疑問に答えることが最優先だろう。
「別にイカサマしてかたどうかは気にしてねぇよ。
俺はあの貴族の物言いが気に入らなかっただけだし。
トリビーはーーー」
「あたちたちも同じだよ。
あんな風に言いがかりをつけるなんて見過ごせないから」
「.....」
少女の視線には未だ疑念も警戒心も宿っている。
しかし、俺たちの答えを聞いて少しだけ警戒心を解いてくれたようだ。
「...その...ありがとう。
さっき、助けてくれて..」
「気にちないで!
困ったときはお互い様なんだから、ね?」
「応、子供は素直に大人を頼ればいいさ。
俺たちも力にはなるしな。
それと、力になるついでに聞くけどお前はこれからどうするんだ?」
「あたし?
あたしはこのまま賭けの戦利品を持って帰るつもりだけど..何か用?」
「用って程じゃねぇよ。
たださっきの貴族が何もしないとも限らないだろ?
なら暫くの間、俺たちと一緒にいた方が良いんじゃないかって思ってな」
俺は胸に生まれた懸念から少女に提案する。
先ほどの貴族が少女に対して何もしてこないと限らない。
ならば少女の身の安全を確保するまでは俺たちと一緒に居た方が安全だと思ったのだがーー。
「大丈夫だって。
さっきは油断して掴まれちゃったけど次はそうはいかないし。
何があってもあたしなら逃げ切れるよ」
「う~ん、あたちたちも一緒に居た方が良いと思うんだけど...」
「あ!信じてないでしょ?
ならあたしなら問題ないってこと、見せてあげる」
そう言って少女はボロボロの服から一枚のコインを取り出す。
そのコインで一体何をするのかと俺とトリビーが首を傾げると、少女はコインを指で高く跳ね上げた。
次の瞬間、「じゃ、またね~」と少女の声が聞こえたと思うと突風が巻き起こる。
突風が収まるころには少女の姿も、テーブルの上にあった宝石も消え去っていた。
その場に残ったのは、少女が取り出した一枚のコインだけだ。
「え!?
あの子は何処に...ポネウスは分かる!?」
「...いや、俺もよく分からなかった。
風が起きたと思ったら居なくなってたからな。
手がかりと言えば..このコインか」
俺は少女が残したコインを拾い上げる。
そのコインにはオンパロスで使われている硬貨とは違った模様が彫られている。
何処かでこの模様を見た覚えもあるが果たして何処だったか。
「まぁ急に消えれるような力があるんなら何かあっても逃げ切れるだろ。
...心配ではあるけどな」
「そうだね...。
また会えるといいんだけど...」
俺とトリビーは心残りを残したまま、その場を離れる。
少女の名前など色々気になることはあるが、当人が消えてしまったので調べようもない。
俺たちに出来るのは少女の安全を祈ることだけというのが何とも歯がゆかった。
「..ただいま」
「ただいま、ライアちゃん...」
「二人ともお帰りなさい。
..何やら浮かない顔ですね、何かあったのですか?」
「まぁちょっと市場で色々あってな。
俺もトリビーも心配事が出来ちまってな」
「心配事ですか。
それは師範が持っているコインに関係あることですか」
「ん?
確かにそうだけど何で分かった...って金糸か」
ライアは心配事と聞いて、俺が服にしまったコインを指摘する。
一瞬何故分かったのか疑問が浮かぶが、ライアの能力を思い出す。
彼女が《浪漫》の神権を引き継いでから手に入れた金糸の力。
ライアは金糸により、周囲の状況だけでなく人の心まで読めるようになったという。
「ふむ..その硬貨は『飛翔する幣』ですか。
師匠がザグレウス由来の物を持っているとは珍しいこともあるものですね」
「あぁ、何処かで見たことあると思ったらそういう事か」
ライアがコインが飛翔する幣であると言い当てる。
その名前を聞いた瞬間、見覚えがあったことに合点がいく。
以前ドロス人の詐欺に引っかかった時にこのコインが残されていたのだ。
その時はそのドロス人への怒りが頭の大半を占めていたので、すっかり頭から抜け落ちてしまっていたが。
合点がいった俺とトリビーはライアに先ほどの事を説明する。
市場で賭けがあったこと、少女が貴族に絡まれたこと、その少女がコインを残して消えてしまったことを説明するとライアは何か納得したような顔を見せた。
「成程、そういう事でしたか。
師匠たちが心配することはありませんよ。
後日そのコインも私から彼女に返しておきます」
「返ちておくって..ライアちゃんあの子と知り合いだったの?」
「えぇ、以前私の工房で剣旗卿のバイオリンが壊れたことがあったでしょう?
それ以来あの困った子猫とは縁があったのです」
「セイレンスのバイオリン壊したのかあの子!?
..よく五体満足で居られてるな」
まさかの所業に目を見開く。
確かにセイレンスから逃げれているのなら並大抵の相手なんて造作もないだろう。
理由は兎も角心配事が解消されたので、一安心と息を吐く。
取り敢えずはライアに任せれば大丈夫だろう。
* * *
少女の一件から数日後、俺はある同行者と一緒に人気のない裏路地を歩いていた。
その同行者は俺の前を軽快に歩きながら先導する。
どう見ても、その人物が上機嫌なのが見て取れる程度には軽快な動きだった。
「ほらほらこっちこっち。
速く歩かないと置いてっちゃうよ」
「置いてかれるほど遅く歩いてないっての。
そっちこそ上機嫌なのはいいけど転ばないようにしろよ」
「はぁ!?
あたしの何処が上機嫌に見えるってのさ!?」
「全部」
俺の淡白な返事に先導していた同行していた少女はシャーッ!!と鳴き声が聞こえるような怒り方を見せる。
その少女はボロボロの服にフードを被っており、その頭には特徴的な耳が見えていた。
そう、先日の少女その人である。
あれからライアと少女の間で何かあったようで少女はライアの屋敷に住むことになった。
今は彼女のねぐらから少女の荷物を取りに行く真っ最中ということだ。
俺は荷物持ち兼護衛である。
「ーーってことだから、別に上機嫌ってわけじゃないから。
勘違いしないでよね」
「ん?あぁごめん、よく聞いてなかった。
所でねぐらまで後どんぐらいだ?」
「聞いてなかった!?
あたしがあんなに説明したのに!?」
少女は再びけたたましく怒り始める。
その反応も含めて昔のライアを思い出すのでつい揶揄ってしまうが、程々にしておかないとトリビーたちに怒られてしまう。
「ごめんごめん。
余りにもいい反応するもんだからつい、な」
「も~やめてよね、揶揄うとかそういうのは私の専売特許なんだから。
次やったら本気でライアとトリビー姉さんに言いつけるからね!」
「おっとそれは勘弁してくれ、サフェル。
俺、あの二人には頭が上がらないんだ」
「ふ~ん、まぁ取り敢えず許してあげる。
あたしの荷物いっぱい持ってもらわなきゃだしね」
ドロス人の少女、サフェルは俺の降伏宣言に満足そうな表情を見せる。
取り敢えずサフェルのご機嫌取りに成功した俺は彼女に続いてどんどん裏路地の奥へと進んでいく。
そのまま裏路地を進めば進むほど嫌な気配が満ち満ちていくのを感じる。
言葉にしづらいドロリとした重い雰囲気、市場や雲石の天宮とは全くの別物だ。
そんな普段感じることのない異質な空気、そんな中だからこそ馴染み深いモノを向けられれば容易に気付ける。
「サフェル、ちょっとこっち来てもらっていいか?」
「ん?何々、何か見つけたーーってうわっ!
人のこと急に持ち上げるなんて何するのさ!!」
「悪いな、でもこうでもしないと守れるか分かんないからさ。
ちょっとの間我慢してくれ」
「守る?
守るって何からーー」
「さっきから物陰に隠れてるコソコソ俺たちを見てる輩どもからだよ。
ーーおいお前ら聞こえてんだろ?
隠れてるのバレてるからとっとと出てこい」
突然サフェルを脇に抱えながら輩に呼びかける。
俺の呼びかけに周囲の気配が動揺を見せるが、どうやら出てくる気がないらしい。
なら俺から出てくるように仕向ければいいだけだ。
「サフェル、少しの間目瞑っててくれるか?
あと出来れば耳も塞いどいてくれ。
少しだけ、荒っぽくなるから」
「う、うん。
っていうか荒っぽくって何する気なのさ...」
「それは知らない方がいいと思う..ぞっ!!」
一瞬のうちに足に力を溜めて、一気に踏み出す。
目的は隠れている複数の気配の内の一つだ。
即座にその気配の主へと走り、ソイツの姿を捉える。
全身を黒色の装束に包み、手には暗器が握られていた。
その姿には見覚えがある...というかここ最近になって、よく見かけるようになった姿だ。
俺はソイツの頭を掴んで思いきり建物に叩きつける。
骨が砕ける音が鳴り、ソイツの頭からは赤色の血が流れ出す。
「お前らが出てこないってんなら一人ずつこうやって潰していくけど...構わねぇよな?
お前たちも俺らの仲間を殺してんだから、なぁ『粛清者』ども」
「...ねぇポネウス兄さん。
その..粛清者って何者なの?」
「っておい、目と耳塞いどけって言ったろ。
子供にはあんまり殺しは見せたくないんだけど」
「別に気にしなくていいよ。
今は質問に答えて」
「...粛清者ってのは黄金裔を狙う輩の名前だよ。
火を追う旅の仲間も、何人かあいつらに殺されてる。
はた迷惑な暗殺者どもだよ」
「...随分と勝手に言ってくれるものだな、黄金の血を流す獣め」
サフェルの質問に答えて、簡単に粛清者について説明する。
その質問を聞き捨てられなかったのか建物の影から複数の人影が姿を現す。
「はた迷惑だと?
我々は獣を殺し、人の世を守ろうとしているだけだ。
穢れた黄金の血を身体に宿す貴様らを殺すことでな」
「守る..ね。
昔のお前らなら、それも間違ってはなかったんだけどな。
今は無差別に黄金裔を殺し回ってるだけだろ。
今回だって俺ついでにサフェルも..この子供も狙ってたよなお前ら」
「幼子であっても黄金裔であることに変わりはない。
その者が将来どのような横暴を働くかは分かったものではないからな。
不安要素は早めに摘み取っておくべきだ」
昔、粛清者が現れた時代にはタイタンの力を悪用する黄金裔もそれなりに数が居た。
そういった奴らを粛清者は殺すことで民を守っていたのは事実だ。
だが、時代が経つにつれて粛清者の在り方は変化していった。
民を守るという使命感は黄金裔への憎悪に飲まれ、今となってはどんな非道な手段も容易くとってしまう外道に堕ちてしまった。
...確かな信念を持って戦っていた当時を知るものとしては、今の奴らは少しだけ哀れに思えてくる。
だが、それで火を追う旅を妨害するなら俺の敵であることに変わりはない。
というかトリビーたちに被害が行く前にとっとと片づけたいのが本音だ。
「もういいか、それじゃお前ら片してサフェルの荷物を取りに行かせてもらう。
結構激しく動くけど暴れたりするなよサフェル?」
「暴れたりしないって。
..でも大丈夫なの?
あたしを抱えたままじゃ片手しか使えないじゃん」
「そこの小娘の言う通り。
貴様が普段使う武器も今は持っておらず、守らなくてはならない存在までいる。
そんな状態で我ら相手に片手だけで戦えると思っているのか?」
「ハッ!
お前ら俺の事舐めすぎじゃねぇの?
得物無しで守る奴もいて、片手しか使えない。
ハンデってやつだよ。
ほら、好きにかかってこい」
俺の挑発に合わせて計五人の粛清者たちが四方八方から襲い掛かってくる。
そのどれもが暗器を構えて、俺ではなくサフェルを狙う。
狙いやすい相手から仕留めるのは分かるが、ここまであからさまだと呆れが最初に出てくる。
俺は身を捩り、サフェルに向けられる刃の軌道から彼女を外す。
そのまま一番近くにいた粛清者の腕を掴んで他の粛清者に叩きつけると、グシャリと肉が潰れる音が路地裏に響く。
かなりの力を籠めたので奴らが起き上がることはないだろう。
(まずは二人)
目の前で仲間がやられたというのに、残りの粛清者の動きは止まることはない。
最小限の動きで奴らの凶刃を避けながら、隙を晒した粛清者の頭を砕いていく。
(三人、四人)
残るは一人、先ほどまでいた筈の仲間もいなくなり粛清者は思わず歯噛みするが状況は好転しない。
粛清者が一度引こうと体勢を整えようとした次の瞬間、俺は奴の懐に潜り込み胸目掛けて拳を振り抜く。
破裂するような音が鳴ると、そのまま最後の粛清者は地面に倒れ込んだ。
「これで五人っと。
ハンデ、足りなかったかもな」
「......」
「サフェル?
あんまり見ない方が良いと思うぞ。
いやこの状況作ったの俺だけどさ」
「...ねぇポネウス兄さん。
ライアもトリビー姉さんも、こんな風に戦ってるの?」
「..そうだな。
トリビーとライアはここまで荒っぽくないけど、皆それぞれのやり方で戦ってる」
「...そっか、そうなんだ。
..よし!あたしのねぐらまでの案内続けよっか!
こいつらの仲間が来ないとも限らないし、サッサと行こう!」
サフェルはそう呟くと、抱えていた俺の手から離れ速足で歩き始める。
その背中は何か悩みを抱えているように見えるが、俺にはそれがどういうものなのか分からない。
今はただ、焦るように走るその背中を追うのだった。