爻光将軍60連、餅70連で確保しました。
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オクヘイマを、いやオンパロス全土を襲った未曾有の地響き。
それを引き起こした《大地》のタイタン、ジョーリアは遂にその姿を現した。
場所はオレノス高原、その場所こそジョーリアとの決戦の地。
カイザー率いる軍団は遠征の準備が出来次第、その場所を目指すことだろう。
だが俺は一足先に、オレノス高原へと向かっていた。
周囲には山々が連なり、人の気配は欠片も感じられない。
そんな場所で俺がやらなければならない事は二つ。
一つは、ここに位置取るであろう大地獣竜騎士団の陣の場所を確認すること。
もう一つは、その陣に居るであろう荒笛という名の大地獣にケリュドラとの密会の約束を取り付けること。
この二つを成し遂げるため、単身訪れていたのだ。
「...やっと...見つけた...。
どんだけ...探し...回ったか」
敵陣を探し始めてから早数日、遂に俺は見つけたのだ。
山に出来ている洞窟に彼らは陣を敷いていた。
この情報があれば有利に立ち回れることだろう。
まぁその代償に疲労困憊だが。
「は~....。
よし!じゃあとっとと忍び込んで荒笛を見つけるか!
ーーってか俺荒笛がどんな大地獣か知らないんだけど大丈夫かね?」
ケリュドラやセイレンスは見れば分かるの一点張りだったから多分大丈夫なのだろうが少々不安だ。
まぁうだうだ言っても始まらない。
俺は洞窟に忍び込み荒笛を探し始めた。
物陰に隠れながら視線を避けて進み続ける。
幸いなことに大地獣竜騎士団を構成するのは山の民や大地獣、周囲の荷物などはかなり大きく身を隠すのは容易だった。
そうして周囲を見て回り荒笛を探し回っていると、近くから話し声が聞こえてくる。
俺は身を隠しながら声がする方向へ視線を向けた。
(なるほど、確かにアレは見れば分かるな)
視線の先に居たのは一人の山の民と一際大きい存在感を示す大地獣だった。
その大地獣の姿はまるで山のように大きく、頑強さが見て取れる。
一目見て理解した、あの大地獣こそが荒笛だと。
(ってことは傍に居る山の民はジオクロスか。
一体何の話をしているんだか)
「ーーー我々は奴らを正面からひき潰す、下手な小細工を弄する必要もない。
あの我らの神を屠らんとする傲慢な王も、大地を我が物顔で泳ぐ魚も、殺すことしか脳がない狂戦士も、全て大地への贄にしてくれる!」
「...わが友よ、一度落ち着け。
そのような策ですらないもので、あの者たちを倒せると思っているのか」
「倒す以外の選択肢は無い!
奴らがジョーリアを殺し、大地に住む命を蔑ろにする以上はな!」
「.....」
どうやら荒笛とジオクロスは俺たちとの戦いに向けての話し合いをしているようだ。
それは随分と白熱...というかジオクロスの方がかなり燃え上がっており、荒笛はその抑えに回っていた。
まぁ彼らが信仰するタイタンを殺そうとしているのだ、あの怒りも真っ当なものだろう。
ーーだが、『殺すことしか脳にない狂戦士』というのは是非とも否定したい所だ。
「...ジオクロス、一度休むべきだ。
その湧き上がった頭が冷え切ったら、もう一度話し合おう」
「どれだけ話しあっても私の考えは変わることはないぞ。
奴らの末路は凄惨なものでなくてはならない」
(話は終えたか...。
じゃあ機を見て、荒笛と話を.....って何処に行くつもりだ?)
話し合いを終えた荒笛はその巨体で洞窟を揺らしながら外へと向かっているようだ。
俺は慌てて後を追うが、隠れながらのせいもあり洞窟を出るころには荒笛の姿は見えなくなってしまった。
「クソッ、見失っちまったか。
...ていうかあんだけの巨体と気配が全く見つからないってどういうわけだよ」
荒笛を見失った俺は彼の姿と気配を探すが、一向に見つからない。
そんな状況に思わず愚痴が口から漏れ出る。
これからどうやって探すのかと頭を悩ませていると、ふと気になることがあった。
「...何だ?
動物たちが同じ方向に...行ってみるか」
俺が同じ場所に立ち止まっていると、周囲を小動物や大型の獣、鳥といった生き物が揃って同じ方向に向かっていた。
ここに来てから日は浅いが今までにこのようなことはなかった、彼らが向かう方向に何かあるのかと少しの期待を胸に秘めて俺も同じ方向に足を進める。
暫くの間進んでいると、ある光景が目に入った。
動物たちが一つの巨石に集い、寄り添うように佇んでいる。
その中心にある巨石をよく見れば、俺が探していた相手がそこに居た。
「荒笛...こんな所に居たのか」
俺が巨石と見間違えたもの、それは荒笛だった。
彼は微動だにせず、自らを止まり木とする動物たちを受け入れている。
その様子は何処からどう見ても休息の真っ只中、今話し合いを進めるのは得策ではないだろう。
幸いなことに俺もここまでの旅路や荒笛探索で疲れも溜まっている。
ここは俺も休ませてもらうとしようと、荒笛たちから少し離れた場所に腰を下ろし目を閉じた。
さて、目を開けるころには彼の休息が終わっているといいのだが。
* * *
休み始めて、どれだけの時間がたったのだろうか。
俺は暗闇の中で、何かを見ている。
一際大きな光の傍に、無数の小さい光が密集している。
その小さい光からは声のようなものが聞こえる気がした。
声の向き先は、どうやら大きい光に向けられているだ。
...だが何故だろうか、その声は俺にも向けられている気がしてならない。
どれだけその声を聞こうとしても、俺には理解できなかった。
まぁ少なくとも良いものではないのは分かったが。
そのまま暫くの間、声を聞き取ろうと奮闘しているうちに身体を揺れが襲った。
暗闇の中に向いていた意識は、急速に外側へと引っ張られていく。
少しだけ名残惜しいが、俺にはどうすることもできない。
俺はそのまま、引っ張られる感覚に身を任せることにした。
「ーーーんぁ?
...あ~結構寝ちまってたか。
さて荒笛の様子は、と」
目を覚ました俺は目を擦りながら身体を伸ばす。
凝り固まった身体が解れていくのを感じながら、俺は視線を休息をとっていた荒笛に向けた。
彼の周囲に居た動物たちは徐々に離れ始めており、荒笛の身体も徐々に起き上がっていく。
それに合わせて周囲の地面も小刻みに揺れている。
そして完全に起き上がると、荒笛は大地のごとき気配を再び放ち始めた。
「...さてケファレの創造物よ、わざわざ私の目覚めを待っていたのだ。
まずは名を聞くとしよう」
「...我が名はポーネリウス。
聖女の従者、若しくはクレムノスの殺戮者と呼ばれている者だ。
ーーけどまぁポネウスって呼んでくれるとありがたい、そっちの方が長く呼ばれて慣れてるしな」
名を聞かれた俺は一瞬だけかしこまった態度を取るが、その態度は長持ちせずに崩れ落ちる。
分かってはいたことだが、俺には丁寧な態度というのはとても難しいようだ。
「ふむ、殺戮者..か。
噂で聞いていた者とは随分と違うようだ」
「...一応聞いときたいんだけど噂で俺どんな風に言われてんの?」
「返り血でその身を飾り、獲物を探し彷徨う幽鬼。
笑いながら戦場を駆け回り命を奪っていく死神。
常に傍らに幼子を集め続けている不審者...といったところだ」
「.......」
俺はすんでの所まで出かかった怒声を飲み下し、顔を引きつらせる。
一体俺のイメージはどうなっているのだろうか。
二個目の噂については正直否定はできないが、最初と最後の二つについては納得いかない。
俺は別に獲物なんて探し回ってないし、幼子を集めた事なんて一回もない...というかあってたまるか。
何処のどいつがそんな噂を流しているのか、正体が分かれば真実の獅子の口と同じ扱いをしてやるというのに。
「それで、火追いの軍の一人が私に何のようだ。
言っておくが私たちの竜騎士団の長はジオクロスであって私ではない。
カイザーから伝言でもあるのなら、そちらに届けるべきだ」
「いや、用があるのはアンタだ荒笛。
アンタに対してカイザーから伝言があるんだ」
「私に、か。
...まずは聞いてみるとしよう」
「といっても単純な話だよ。
カイザーはアンタと直接会って話がしたいらしい。
俺がここに来たのは、それを受けるかってことと場所を伝えに来ただけだ」
「......」
俺が荒笛との用件を伝えると、彼は唸り黙り込んでしまう。
取り敢えず伝えるべきことが終わった以上、俺は彼の返答を待つだけ。
真っ直ぐに彼を見据えて、ただ待ち続ける。
「...ポネウス、お前たちは我が父が今どうなっているか知っているか?」
「ん?
いや、俺は知らないな。
..ただ温厚なタイタンって聞いてたジョーリアがそこかしこで地響きを起こしてるのは違和感がある。
自分を殺そうとしてる奴らがいるっていうのもあるんだろうけど、それ以外にも理由があると思う。
ジョーリアがあそこまで荒ぶる理由が」
「...そうか。
......我が父は暗黒の潮に侵されている。
大地そのものである身体が傷つけられて、既に正気は無い」
「暗黒の潮...。
ジオクロスとかはそのことを知ってるのか?
知ってたとしたらどうして未だに守ろうとしている?」
「当然、ジオクロスも知っているとも。
だが、我らの創造主がどれだけ狂い果てようと我らを創ったことに変わりはない。
彼らが守ろうとするのは当然のことだ。
...その上で問う。
親が子を守るのと同じように、子が親を守ろうとする当然の摂理の前で...お前は何故我らの父を殺そうとする?」
重い、重い質問だ。
その問い自体もだが、込められた想いもまた俺に圧をかけてくる。
きっと口が上手い者ならば、目の前の大地獣も丸め込めるのかもしれない。
荒笛が言う当然の摂理を否定できるのかもしれない
でも俺が出来るのは馬鹿正直に、自分の考えを口にすることだけだ。
「...ただ、守りたいからだ」
「....」
「ジョーリアが暗黒の潮に飲まれたみたいに、オンパロス各地で暗黒の潮の影響が出てる。
人も、神も飲み込んでより多くの命を奪っていく。
それを防ぐためにも、火種を集めて新しい世界を作らなきゃいけない。
ーーそうしないと、俺の大切な人たちが傷つくことになる」
ケリュドラ、セイレンス、ライア、サフェル、ラビエヌス、セネカ、アポロ二ウス、ヴァージニア。
そしてーートリスビアス。
俺は大切な人たちには幸せになってほしい、健やかでいてほしい。
その未来の為には、除かなければいけない障害がある。
「荒笛、アンタの言った摂理を俺は否定しない。
親が子を守り、子が親を守る...何も間違ってなんかない。
けど、俺は大切な人たちを守るためにジョーリアを殺す」
「守るため、か。
殺戮者と呼ばれる者とは思えぬ理由だな。
ーーだが嘘は感じられない」
「...なぁ荒笛。
アンタからは、ジオクロスたちがジョーリアを守る理由を聞いた。
じゃあアンタは、何でジョーリアを守ろうとしてるんだ?
さっきの言い振りからして、別の理由があるんじゃないか」
「....」
俺の問いに荒笛は答えない。
それは答えるのを戸惑っているというより、答えを探しているようにも見えてーーー。
瞬間、土を踏みしめる音が俺の耳に届いてきた。
その足音はすぐ傍まで近づいており今から何かに隠れる余裕はないだろう。
「ヤバッ...!!」
足音を聞いた俺は咄嗟に荒笛の巨体に隠れるように滑り込む。
もし今見つかってしまえば荒笛に密会の約束を取り付ける事は出来なくなる。
荒笛には申し訳ないが暫くの間、隠れさせてもらう。
俺は息と気配を殺して見つからないように専心する。
「荒笛、こんな所に居たのか」
「...ジオクロスか。
何か用でもあったか?」
「用も何もあるか。
陣を出てから一向に戻ってくる気配が無いから何事かと思って来てみただけだ」
やってきたのは荒笛を探しに来たジオクロスだった。
思えば休んでいた時間を考えれば既に結構な時間が経っている。
もっと周囲を警戒すべきだったと後悔していると、ふと嫌な考えが頭に浮かんだ。
(あれ?
今荒笛が俺のことバラしたらヤバくね?)
俺は今荒笛の背後に隠れている。
今荒笛が俺の居場所をジオクロスに知らせてしまえば戦闘は避けられないだろう。
その場合当然荒笛はジオクロスに加勢するだろうし、武勇を誇る二人相手に一人で立ち向かわなければならない。
その状況を思い浮かべると額に冷や汗が浮かんでくる。
しかも荒笛にとって俺は少し前に会っただけの殺戮者、対してジオクロスは長年連れ立ってきた戦友だ。
彼がジオクロスに俺の居場所を知らせる可能性はかなり高い。
俺はいつ戦闘が始まってもいいように得物に手を伸ばしておく。
「それで何かあったのか?
休息にしてはやけに時間がかかっていたが」
(.....!!)
「....あぁ、そうだな。
先ほどまでーーー
私と共に休んでいた生き物の声を聞いていてな。
既に彼らは去ってしまったが、話し込みすぎたようだ」
(!?荒笛の奴...俺のことを話さなかった?)
「ふむ、そうだったか。
だがもうそろそろ陣に戻ってくれ。
あの不届き者どもが近づいてきている、軍議も進めなければなるまい」
「そうだったか、では先に戻っていてくれるか?
どうやらまだ去っていない生き物がいるようだからな、彼の声を聞いてから戻るつもりだ」
「分かった、あまり時間をかけすぎるなよ」
そう言ってジオクロスは来た道を戻っていく。
その姿が完全に見えなくなるまで、俺は隠れ続けていた。
「....荒笛、俺の居場所をジオクロスに教えなかったってことは『そういう事』だと思っていいか?」
「あぁ、カイザーとの話し合いに応じよう。
...私にも未だ懸念がある、あの聡明な皇帝ならばそれも解消できるかもしれん」
どうやら荒笛にも悩みの種はあるようだ。
それの内容は俺には分からないが、恐らく彼にとって重要なことなのだろう。
だがソレを無理矢理聞こうとして、逆鱗に触れるのは勘弁願いたい。
俺は荒笛に日時と場所を伝えて、その場を離れた。
* * *
「ってな感じで、密会の約束取り付けてきたよ」
「ご苦労だった、巡剣卿。
ジョーリア攻略の大きな一手になるだろう」
荒笛との話し合いから暫くして、俺はオレノス高原近くまで来ていたケリュドラたちと合流し事の顛末を説明していた。
竜騎士団の陣の場所、ジオクロスが取ろうとしていた戦法、荒笛の様子。
それらを聞いたケリュドラは満足そうに頷いていた。
「オクヘイマの方は大丈夫だったか?
あの地響きの被害、結構出てただろ」
「幸いなことに、地響きの揺れ自体は金織卿の金糸でかなり抑えられていたからな。
見た目ほど大きい被害は無かったうえに、運命卿の尽力もあり民たちへの配給も滞りなく済んだ。
今ではいつものように生活が出来ているとも」
どうやらオクヘイマも大きな問題は無いようで、思わず安堵の息が漏れる。
オクヘイマの件が無事解決したところで、もう一つだけケリュドラに聞くべきことがあった。
「カイザー、俺はその密会の場所に行かなくていいのか?」
「あぁ密会の場では僕一人だけで十分だ」
「一人って...セイレンスも連れてかないつもりか?」
「奴は既に誠意を見せている。
ならば、僕がそれに応じないわけにもいくまいよ」
どうやらケリュドラは一人で密会に向かうようだ。
その意思は固く、俺が何を言ったところで考えは変わらないだろう。
...というかこういう場で俺が彼女の考えを変えられた試しが無いし。
密会で何を話すかを俺は知らない。
今はケリュドラと荒笛の話し合いが上手くいくように願うとしよう。
「それにしても、巡剣卿がオクヘイマを出たのはかなり前だったな。
荒笛の居場所を探すのにそれほど時間がかかったのか?」
「いや?
あいつらの陣を探すのは二日ぐらいで見つけたぞ」
「ふむ、ならば何故そこまで時間がかかった。
何処かで油を売っていたわけはあるまい」
「あ~...実はオレノス高原に着くまでに時間がかかってな。
ちょ~っと道に迷ってたりしてたら...な?」
「....一人ぐらい案内をつけるべきだったか」