織田の天主は揺るがず   作:戦国大好き侍

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だいぶ書くのに手間取ったので今日は1話だけです。


山崎合戦

6月3日夕刻、摂津国と山城国の国境地帯は、緊張した静寂に包まれていた。

 

明智軍 約11800

明智光秀の軍勢は、戦略上の要衝である山崎に布陣した。信長生存の報に動揺したのか当初と比べて1000弱ほどが減っていた、光秀は自軍の兵力劣勢を補うため部隊を二分し地の利を最大限に活かす布陣を敷いた。

 

天王山方面 4000

明智光秀の主力が配置された。淀川を見下ろし、織田軍の側面を牽制しつつ、敗走時の拠点とする役割。

 

小泉川北岸 7800

天王山から流れ出る小泉川と、湿地や沼地が広がる山崎の隘路に沿って防御陣地を構築。織田軍の京への進軍を物理的に食い止める主戦場となった。

 

光秀軍は士気の低下は否めなかったが、この小泉川と沼地の隘路こそが織田軍の大軍展開能力を封じる最後の望みであった。

 

織田軍 約35000

織田軍は、高槻城に結集し、圧倒的な兵力と大義名分が士気を高めていた。

 

翌朝の隘路突破と、明智軍の即時殲滅を主目的として明智光秀の捕縛を目指していた

 

 

夜間、織田軍は山崎へ兵を進め、隘路の入口に大軍を密集させた。総大将・信忠は、明智軍の防衛線を突破するため、兵力を三方面に展開する三方向からの同時攻撃を選択した。

 

右翼突破部隊(小泉川・平地)池田恒興 中川清秀、高山右近ら摂津衆を先鋒に、光秀の主防御陣である小泉川沿いの湿地帯を強行突破し、中央を切り開く役割。

左翼牽制部隊(天王山山麓)丹羽長重、織田信孝の部隊が天王山の斜面を登り始め、山中の光秀主力を牽制し、側面を攻撃する役割。

中央隊 徳川家康隊が信忠本隊と共に後方に控え、突破口が開いた際の決定打となる準備を整えた。

 

 

 

日の出と共に、織田軍による攻撃が開始された。

 

小泉川の激突

まず、小泉川沿いの沼地を守る明智軍の防御陣地に対し、織田軍の鉄砲隊が集中砲火を浴びせた。

 

先鋒の池田恒興隊は明智軍が待ち構える隘路へ突撃を敢行。沼地と湿地が密集する地帯は織田軍の進軍速度を奪ったが、中川清秀、高山右近らの部隊が次々と投入される圧倒的な物量により、明智軍の防御線は開始直後から過度の圧力を受けた。明智方の斎藤利三が必死に指揮を執るも、織田軍の決死の突破により小泉川沿いの防御線はわずか一刻足らずで崩壊の兆しを見せ始めた。

 

天王山の攻防

ほぼ同時刻、丹羽長重と織田信孝が率いる部隊が天王山の斜面への突入を開始した。

 

山中に布陣する光秀の主力4000は、平地が持ちこたえることを前提としていたため小泉川での予想外の迅速な崩壊の報に動揺が走った。

 

「平地が破られた! 隘路が突破されるぞ!」

 

光秀の側近、明智秀満は山中から防御線を強化するよう命じるが織田軍の部隊は着実に山を登り、光秀本陣の側面に圧力をかけ始めた。

 

光秀の戦略は、織田軍の勢いを鈍らせることにあったが信長生存という事実がもたらした明智軍の士気の決定的な低さと織田軍の圧倒的な兵力差が光秀の地の利を完全に無効化した。

 

戦闘は、光秀の命運を決める短時間での一方的な殲滅戦となることが確実であった。光秀が唯一頼む天王山も、時間の問題となっていた。

 

明智軍の主防御線であった小泉川沿いの陣地は、池田恒興、中川清秀、高山右近ら摂津衆の決死の突撃と、織田軍の圧倒的な物量によって完全に破壊された。指揮官の斎藤利三は必死に兵をまとめようとするが、織田軍の鉄砲と槍衾は怒涛の如く平地を席巻し、明智方の兵は泥と血の沼地に沈んでいった。

 

このままでは、織田軍は隘路を突破し京へ向け進軍を開始する。その前に、天王山にいる光秀の本隊が動かねばならなかった。

 

 

天王山の山中、本陣にいる明智光秀は、小泉川の崩壊と味方の敗走を目の当たりにした。光秀の顔からは全ての表情が消え失せていたが、その眼には信長への憎悪だけが燃え残っていた。

 

「...これで終わりではない」

 

光秀は、もはや地の利や戦略といったものを考える余裕はなかった。残された唯一の道は、天王山の斜面を登り、織田軍の主力の一角を粉砕するという、最後の捨て身の玉砕戦であった。

 

「全軍に伝えよ! 丹羽長重、織田信孝の部隊を認め次第、山を降り、突貫せよ!織田軍の側面に風穴を開けるのだ!」

 

光秀の命により、天王山に配置されていた明智軍の精鋭4,000が、雄叫びを上げて一斉に山を駆け下り始めた。

 

斜面を登りつつあった丹羽長重、織田信孝の両部隊は、突然の山からの突撃に直面し、一瞬動揺が走る。

 

「光秀の本隊だ! 天王山から降りてきたぞ!」

 

明智軍は絶望的な状況下で故なき謀反の責任を負うという狂気的な覚悟を剣に変え、丹羽、織田隊の側面に猛烈な勢いでぶつかった。明智秀満、明智光忠らも先頭に立ち、壮絶な斬り合いが繰り広げられた。

 

 

しかし、その勢いも長くは続かなかった。

 

明智軍の突貫は凄まじかったが丹羽長重は地味ながらも歴戦の勇将であった。彼はすぐに隊を立て直し側面から突撃してくる明智軍に対し、鉄砲隊を集中させて射撃を命じた。

 

「慌てるな! 奴らは袋の鼠だ! 後退するな、押し返せ!」

 

さらに、平地を突破した池田恒興、中川清秀らの部隊が、天王山を駆け下りてきた光秀の主力を発見し、背後と側面を包囲する形で一斉に襲いかかった。

 

光秀の突貫は結果として自軍を天王山という唯一の防御拠点から引きずり出し織田軍による三方からの集中攻撃を容易にしてしまった。

 

総大将の織田信忠は、後方からこの状況を見極め、徳川家康に光秀の逃走経路を完全に断つよう依頼した。

 

「明智は終わりだ。総崩れになる前に共に奴の退路を絶って頂きたい」

 

三方から織田軍の怒号が響く中、光秀の部隊は兵を束ねることもできず、山崎の地で完全に孤立した。天王山の最後の突撃は、明智光秀とその一族の最後の抵抗となり、織田軍による殲滅戦へと切り替わっていった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

天王山の斜面における明智軍の最後の突撃は、丹羽長重、織田信孝、そして池田恒興、中川清秀らの挟撃を受け、完全に殲滅された。総大将 織田信忠による怒涛の攻勢は、光秀に再起の機会を微塵も与えなかった。

 

 

明智光秀の馬印が、織田軍の三方からの怒号と鉄砲の轟音の中に孤立した。主力の崩壊を確認した光秀は、もはや「撤退」ではなく「潰走」を決断するしかなかった。

 

「殿! もはやこれまで! 亀山城へお逃げくだされ!」

 

側近の明智秀満が血に塗れた顔で叫び光秀の馬首を無理やり戦場から向けさせた。光秀の周りには、秀満のほか、明智光忠、溝尾茂朝ら、わずか二十数名の側近しか残っていなかった。彼らは散り散りになる味方の屍を踏み越え、山崎の平地を抜けていく。

 

光秀の鎧には無数の血が飛び散っていたが、それは彼自身の傷ではなく、彼を守るために討ち死にした兵たちの血であった。

 

彼らが目指したのは、光秀の丹波における居城である亀山城であった。しかし、その道は既に危険に満ちていた。

 

西は織田討伐軍の本隊が展開し、逃走経路を封鎖しつつあった。

南は筒井順慶が道を防いでいる。

 

光秀の一行は、主戦場となった山崎の混乱から一刻も早く離脱するため、味方の敗残兵に紛れつつ、京方面への山間を選んで必死に馬を走らせた。

 

光秀は、馬上で一度だけ振り返った。そこには、信忠の総大将旗がはためき、生ける信長の威光が自身の大逆の顛末を嘲笑っているかのようであった。

 

「信長め... 信長めが...」

 

光秀は口の中で信長の名を呪詛のように繰り返したが、その声は風にかき消され、誰にも届かなかった。彼は、謀反が失敗したことよりも、信長を討ち漏らしたという一点の絶望に打ちのめされていた。

敗走する光秀らを、織田軍は獲物として追撃した。しかし、戦場が総崩れとなったため、追撃は主に池田恒興隊や中川清秀隊の分隊によって行われていた。

 

明智秀満は殿を務め、迫りくる追手を必死に阻止した。彼は光秀の馬と並走しながら、顔の汗と血を拭いもせずに叫んだ。

 

「殿、亀山へお急ぎください! ここで余命を繋げば、まだ...!」

 

「繋いでどうする、秀満...」光秀は虚ろな目で応えた。「天下に居場所はない。朝敵となり、天にも見限られたのだ...」

 

彼らの逃走は、希望のない孤独な道行きであった。光秀は、京への道が閉ざされ、坂本城も既に危険な状態にあることを、直感的に悟り始めていた。彼の謀反からわずか二日。その短い時間で、光秀は天国から地獄へ突き落とされたのであった。

 

光秀一行が山崎の混乱から抜け出し、山沿いの小道を進むうち、追撃の織田軍の斥候隊が彼らを発見した。追ってきたのは、平地戦を制した池田恒興隊の分隊であった。

 

「あれこそ光秀! 逃がすな!」

 

織田軍の追手が迫る中、明智秀満は光秀の馬首を前へ押しやり、馬上から叫んだ。

 

「殿! お急ぎください! この秀満が、この場を食い止めます!」

 

光秀は一瞬振り返った。血を吐くような主君の顔に秀満は静かに頷いた。

 

「秀満... 済まぬ...」

 

光秀が馬を駆けさせた直後、秀満は数名の忠臣と共に追撃隊の前に立ちはだかり、最後の壮絶な防戦を開始した。衆寡敵せず、激しい斬り合いの末、明智秀満は池田隊の鉄砲と槍を受け、壮烈な戦死を遂げた。

光秀は最も信頼する腹心の死の叫びを背中に聞きながらただ逃げることしか出来なかった。

 

日が傾き始め、光秀は、細川忠興率いる2000の部隊が既に亀山城に入城したという絶望的な報を老ノ坂での途上受けた。最後の希望が断たれた光秀は、亀山城への道を捨て、京方面の沓掛へと馬首を向けた。

 

沓掛は、京から丹波・山陰道へ向かう入口にあたる地であり、光秀が本能寺へ向かう際に通った道でもあった。今は、逃げ場のない逆賊が辿る、皮肉な終着点となった。

 

夜陰に紛れ、光秀は僅かな手勢と共に沓掛の山中を進んでいた。その時、彼らは落ち武者狩りを目的とした土民たちの奇襲を受けた。この混乱に乗じて金品を奪おうとする者たちが、光秀の命運を断つこととなる。

 

明智光忠や溝尾茂朝ら側近は、光秀を守ろうと奮戦したが、闇夜と不意打ち、そして疲弊により次々と倒れた。

 

光秀は、土民の手にした竹槍の一撃を受け、馬から落ちた。

 

「信長め... 信長めが...」

 

光秀は、最期の瞬間に、信長を討ち漏らしたという一点の絶望を抱きながら、謀反からわずか二日足らずという短期間でその生涯を閉じた。

 

沓掛の山中にて、明智光秀は織田信長に歯向かった逆賊として、ひっそりと息を引き取った。

 

 

 

 

 




死亡または消息不明
明智方
明智光秀 落ち武者狩りにあい死亡
明智秀満 殿を務め池田元助により討ち取られる
明智光忠 落ち武者狩りにより死亡
溝尾茂朝 落ち武者狩りにより死亡
斎藤利三 小泉川北岸での指揮を取っていたが消息不明
伊勢貞興 利三と共に指揮を取っていたが高山方の銃撃を受け死亡
安田国継 天王山で奮戦、消息不明

織田方
津田信澄 明智光秀の女婿だったこともあり織田信孝により討ち取られる寸前だったが信長の登場により回避、疑惑を払拭するために信孝軍の先鋒として天王山に突貫するも明智方の銃撃を受け死亡

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瀬田の橋を焼いた山岡兄弟のことすっかり忘れてたので後で近隣武将の反応のとこに挿入しとします。()
ちなみにwikiによると本能寺の変の直前に沓掛の農民が明智方に十数人が切られたみたいなので沓掛で光秀が切られたのはその因果によるものです
やっぱり合戦場面難しいな

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