レベルアップが終わらない。   作:幕霧 映(マクギリス・バエル)

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『長い、長い一日目 6』

 絡んできた酔っ払いの腕を"ぼぎんっ"と氷柱のようにへし折り、カーペットみたいに踏んづけた足で、そのまま迷宮探索者組合の窓口にまで歩いていったルツィア。

 彼女は窓口からせり出した木製の卓にどかっと肘を突き、担当者の顔を威圧するように覗き込みながら、「迷宮探索者に、なりたいんだけど?」と言った。

 

 ヤカラ系の人すぎるよ。振る舞いが。

 ルツィアはさっき、迷宮探索者のことを「荒くれ者の集まり」みたいにいってたけど、だとしたら、ルツィアにとってこれ以上ないぐらいの天職ってやつなんじゃないかな?

 

 でも窓口のおじさんも、こうした荒事には慣れているのか。

 ヤカラ系エルフにガンを飛ばされつつも受け流して「ずいぶんと威勢のいいヤツがきたな。新規登録だな?」と、ぶっきらぼうに返してきた。

 

 僕も、周囲の迷宮探索者たちの視線に刺されつつ。

 おっかなびっくり歩いていって、ルツィアの背中から窓口を覗き込んだ。

 

「あの、僕も……」

 

 窓口のおじさんは、ルツィアと僕を交互に見て。

 得心がいったかのように、「なるほど」とつぶやいた。

 

「俺は、ヴェルという。

 エルフのあんた、名は。」

 

「ルツィアよ。」

 

「ルツィアさんよ。あんたは今、女子供の自分らが少しでもみくびられないようにって、かなり気を立たせてるんだろうが……」

 

 窓口のおじさん──ヴェルさんは、先ほどルツィアに絡んだ男(今は泡を吹いて倒れている)を一瞥して言う。

 

「安心しろ。()()()()()に喧嘩売るような気骨のあるやつは、ここにはいねえさ。

 命を捨てるようなもんだ。」

 

「そこに寝てる、あたしの尻さわろうとしてきたクズは?」

 

「このクソ忙しい時に、絡む相手も選べねえほど酔っ払ってるロクデナシだ。気にするな。

 それに……今ここにいるのは、全員《無名(ノービス)級》迷宮探索者だ。

 あんたの敵じゃないだろう。」

 

「ノービス級……?」

 

 僕がそう聞くと、窓口のヴェルさんは。

 「ああ、新規登録って話だったな。迷宮探索者の階級についても、説明してやる。」と言った。

 

 もちろん、僕じゃなくてルツィアを見て。

 

 どうやら彼にとって僕は、ルツィアがいなければ受け答えする価値すらない存在のようだ。

 こんなに丁寧に説明してくれてるのも、相手が有望そうなルツィアだからなのかな。

 

 こういうの、"世知がらい"って言うんだよね?

 

 

 

 

 

 

 ヴェルさんいわく、『迷宮探索者』の階級は、大きくふたつに分けられるらしい。

 

 《無名(ノービス)級》と、それ以外。

 

 迷宮探索者の実に9割強は、《無名(ノービス)級》。

 そして、そこから上が、文字どおり"名のある"迷宮探索者となる。

 

 下から順番に、《詩吟譚(バラッド)級》⇒《幻想譚(ファンタジック)級》⇒《英雄譚(ヒロイック)》級。っていう感じで。

 

 それより上の階級に『神話級』ってのもあるらしいけど、その階級の人たちはほぼ行方不明だから、気にしなくて良いんだって。

 ……存在する意味あるのかな? それって。

 つまり、実際には《英雄譚級》が一番すごいってことで良いみたいだね。

 

「ここみたいな詰め所に仕事を取りに来る奴らは、多くの場合《無名級》だ。

 "名のある"迷宮探索者は、組織のお抱えになるか、自分で事務所を作って指名の仕事を受けちまう。

 逆に言えば、"無名"の奴らでも、この詰め所にくれば組合の信用を通して、仕事にありつけるってわけだ。

 いくらか手数料(マージン)はいただくがな。」

 

()()()()? 知り合いから、報酬(ギャラ)の元値から半分持ってかれるって聞いたことあるわよ。」

 

「そいつは古い情報だ。

 すこし前から、手数料の比率は元値の6.5割に上がったんでな。」

 

「……法外ね。」

 

「まあ。しかし……あんたはエルフだ。

 そのガキのお守りをしながらでも、《詩吟譚(バラッド)級》になら、そう遠くない内に駆け上がれるだろうさ。

 そうすりゃ、中央地区は無理でもどっかの《迷宮街》の路地に事務所を構えて、小金持ちになれる。

 さらに上の《幻想譚級》の名声ともなれば、財閥の直属や迷宮街のドンだって狙える。

 なんせ──あんたらエルフにとっては、手足のように扱えるもんなんだろう? 怪しげなカルト連中が儀式をしてようやく行使できるような規模の……"魔術"が。」

 

「…………」

 

 "魔術"。

 その言葉に、ルツィアの口がつぐまれ、長い耳のピアスが金属質な音を立てた。

 

 ……僕の脳裡に、《クリオIII》の雪原での光景が思い出される。

 レドニコフ兵相手に、ルツィアが指先からスパークのようなものを散らしてなにかをしようとしたけど、耳のピアスが光るとともに顔中から血を吹き出して倒れしまった光景が。

 

 たぶん、ルツィアはあのピアスが原因で、エルフなら使えるはずの"魔術"というのが、使えないんだろう。

 

「ええ、使()()()わ。

 でも、ここであんたらにタネを明かすほど、間抜けじゃない。」

 

 突き放すように嘘のことを言ったルツィアに、ヴェルさんは「わかってるさ」と半笑いで言った。

 

「とにかくだ。ようこそ、組合(ギルド)へ。

 ルツィアさんよ。あんたは運が良い……しばらくは、例の事件の影響で、仕事がいくらでもある。

 特に、アンタのようなモンにはうってつけの荒事がな。」

 

 窓口の脇から取り出した書類の束を、指先に唾をつけてぺらぺらしながらヴェルさんが視線をすべらせる。

 

()()()()?」

 

「《クリオIII》のゲートが、何者かによって機能停止した件だよ。

 その影響で、《氷の迷宮街》の連中が、我先にと隣接する他の迷宮街になだれ込んでんのさ。」

 

「……へー。

 おっかないヤツがいたものねえ? ミメイ?」

 

「う……うんっ。トッテモコワイ……コワイネ……」

 

 ルツィアに足を踏まれてる!!!

 

「まったくだ。

 迷宮街はもともと、それぞれのゲートがもたらす資源を中心に発展したもんだからな。それを失えば、命脈を絶たれたも同然で、先はない。

 だから《氷の迷宮街》を牛耳ってたマフィアや企業どもは必死こいて、私兵を率いて他所のシマに進出しようとしてる。

 そのせいであちこちが紛争状態だから、兵隊として『迷宮探索者』も駆り出されてる……ってわけだ。」 

 

「仕事には事欠かない、ってわけね。上等じゃないの」

 

「その通り。だが、記念すべき初仕事を選ぶ前に、登録を済ませようか。」

 

 そういうと彼は、なにやら複雑な数字と図形が書かれた木の板を、ごとっと窓口の机に置いた。

 僕とルツィアの前に、ひとつずつ。

 

「この登録板に一滴、血を押し当てろ。

 それで大まかなレベルの測定と、個人データの登録が済む。」

 

 言われるがまま、僕は渡された針で人差し指の腹をちくっと刺して、それを木の板に押し付けた。

 

 すると木の板に滲んだ血のシミが、なんだか不自然な広がり方をしていき、ヴェルさんはそれをじっと見ていた。

 

「……レベル、40以上だと?」

 

 そこではじめて、彼は僕に目を合わせてきた。

 すこし、険しい目つきだった。

 

「……見えんな……」

 

 だけど、彼がそう呟いたのも束の間。

 

 僕の隣で、"バツン!"という、繊維が勢いよくちぎれたような音が聞こえた。

 

 ルツィアが血の雫を木の板ににじませた途端、弾け飛ぶようにして、真っ二つに裂けてしまったのだ。

 

「これは……どういうこと?」

 

「……ここにあるアナクロな測定板では、レベル300までしか測れない。

 ルツィアさん。あんたは"測定不能"ということだ。」

 

 「安心しろ。こういうことが無いわけじゃない……登録はできる。すこし待ってろ。」そう言って、ヴェルさんは窓口の奥へと引っ込んでいった。

 

「……なんとか登録できそうだね、ルツィア。」

 

 僕がそう呟くと、ルツィアは小声で応じてくる。

 

「しばらくは……迷宮探索者をやって、資金を貯めるわよ。

 そして、機会を見計らって、どこかの迷宮に……」

 

 

 

 

 

「なあ──あんたら。」

 

 ルツィアが、今後の僕らの行動について話しかけたそのとき。

 僕たちの背後から、低めだけどよく通る女性の声が聞こえた。

 

 振り向くと、そこに立っていたのは、二人組みの女の人。

 

 ひとりは快活そうな笑みを浮かべた、癖のある栗毛の人で……

 

 もうひとりは、気弱そうな面持ちで、びくびくしながらルツィアの様子を窺っている、くすんだ金色の髪の人だった。

 

「なんの用? さっきのを見てて、あたしに絡んで来ようってのなら、いい度胸だけど……」

 

 その言葉に、栗毛の女の人は焦ったように両手をぶんぶん振った。

 

「いや、いやいや! 違うんだよっ。

 アタシはケーラ。そんで、こっちのやつはリン。

 率直に──あんたら、次の仕事で、アタシらと組まねえか?

 アタシらはこれから依頼で、《煙の迷宮街》に行くんだが……

 それに、いっしょに参加して欲しいんだ。」

 

「あんたたちと……組む? あたしが?」

 

 ルツィアのするどい視線を浴びて、気が弱そうな方の女の人──リンさんは、不安そうに脇のケーラさん耳元にささやいた。

 

「や……やっぱり、無茶ですって。ケーラ。

 今日、迷宮探索者に登録したばかりの私たちなんかが、こんな強そうな人に、組んで欲しいだなんて……」

 

「今日登録したばっかりなのは、向こうも一緒だろ……

 《氷の迷宮街》の動乱で、組織どもとやり合ってタマぁとるためには、腕っぷしの強ェ仲間がいるんだって……!

 それに──なあ。アタシらと組むのには、あんたらにもメリットがあるんだよ!」

 

 大きな身振り手振りで、ケーラさんは説明してくる。

 

「メリット……ねえ。」

 

「なあ、あんたら……見たところ、丸腰だろう?

 ナイフなりを隠し持ってるにしても、大した装備はないはずだ。

 

 じろり、と。怪訝な目で見られながらも、ケーラさんは続ける。

 

「理由を話すと長くなるが……アタシらは今、武器をすこし余らせてんだ。」

 

 そう言いながら、ケーラさんは腰に付けたポーチをぽんと叩き。

 その蓋部分をちょっとずらして、明らかに収納のサイズより長い刃渡りの、剣らしきものをのぞかせた。

 

 ルツィアはその光景を見て、ピクッと目元を歪ませた。

 

「……次元収納の迷宮遺物(アーティファクト)

 そのへんの迷宮探索者じゃあ手が出せるはずのない、家が立つレベルの高級品のはずだけど?

 あんたら、一体……」

 

 ケーラさんだけじゃなくて、後ろで震えているリンさんの腰にも同じポーチ……迷宮遺物(アーティファクト)とやらがある。

 

「へへへ……すこし、興味が出てきたかい。

 もし、アタシらの依頼に同行してくれるなら、武器を貸してやる。

 そんで、実入りは山分けといこうじゃんか。

 そうだな……配分は、あんたら6。ウチら4でいい。」

 

 交渉の風向きが自分の方へと変わったのを感じてか、ケーラさんはニヤつきながらルツィアに顔を近づける。

 

「あんたらのメリットは?」

 

 ……話がうますぎる。

 僕と同じくルツィアもそう思ったのか、低い声で聞き返した。

 

「……ルツィア、だったっけ。

 実はさっき、窓口での会話をこっそり覗いてたんだけど……

 あんた、レベル300以上なんだってな。

 すでに《詩吟譚(バラッド)級》でもおかしくないレベルだ。

 この話の、あんたへの有利さはな…………

 その戦力を買う、って意味で認識してくれりゃあ良いさ。」

 

 そう言われ、僕とルツィアはしばしの間、顔を見合わせた。

 

 ……これを、信じていいのかって。

 

 もし、武器を貸してもらえる上に、報酬までこっちが多くもらえるという話が本当なら、飛びつきたい話だよね。

 "ヒート・パイプ"を出せる僕はともかく、ルツィアには今武器がないわけだし……

 それで、治安が荒れてるらしい迷宮街に行くのは、不安がある。

 

 でもルツィアは、数秒ほど顎に手を当てて考える素振りをしたあと。

 「……登録が済んだら、外で互いの条件をすり合わせましょう」と言った。

 

 たしかに、会ったばかりの人と一緒に仕事をするのはリスクだけど……

 それよりもリターンのほうが高いと、ルツィアは判断したようだ。

 

「よっしゃっ! メチャ強な仲間ゲット! 

 これ、アタシの迷宮探索者証な! ほら、リンも。

 あんたらも探索者証ができたら、交換な?」

 

 ルツィアの言葉に、ケーラさんはぱっと表情を明るくすると。

 それから、カードみたいなものを見せてきた。

 

 そしてリンという人もおずおずと、同じカードを差し出してくるのだった。

 

 

 

 

─────────────────

【ケーラ:レベル21】

【探索者等級:《無名級》】

 

 

【リン:レベル27】

【探索者等級:《無名級》】

───────────────── 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──████(クソッ)!」

 

 氷の迷宮街。

 とある会議室に、レドニコフ語の怒声が響きわたる。

 

 怒号とともに、深い色合いの木材で作られた長机が蹴り上げられ、天板にひび割れが走ったが……

 その八つ当たりを咎める者はそこには誰もいなかった。

 

 この会議室には、十人ほどの上等な白スーツを着た男たちがいたが……

 ほとんどの者は、沈痛な面持ちでうつむくか、絶望。あるいは放心するかのような虚ろな目で、虚空を見ているばかりだった

 

 

 彼らは、《氷の迷宮街》マフィアとしては最大派閥のひとつ、《槌の兄弟団(モロト・ブラトヴァ)》。

 70年前に迷宮都市へとやってきたレドニコフ系移民をルーツとする彼らはいま、混迷のさなかに叩き落されていた。

 

 ──《クリオIII》ゲートの機能停止事件。

 

 迷宮都市には、無数の異世界につながるゲートが存在するが、その数はひとつの世界につきまちまちだ。

 

 異世界《クリオIII》へとつながるゲートは、《氷の迷宮街》各地に実に300以上存在していた。

 そのすべてが突如として、"先のない扉"へと化した。

 

 迷宮都市でも、過去にいくつかそういった事例は存在する。

 

 そしてその原因は──つながるはずだった先の異世界が、滅びたということを意味する。

 

 つまり、《槌の兄弟団(モロト・ブラトヴァ)》は。

 自分たちの民族のルーツと、生活の食い扶持を、一気に失ったのだ。

 

 彼らが傘下に置き権勢の地盤としていた、銀行と数百の資源採掘会社も、そのすべてが既に市場価値はない。

 

 唐突に訪れた栄華の終わりに、組織の幹部たちのほとんどは、目の前が真っ暗になったような気持ちだった。

 このままでは、数千人の部下たちが路頭に迷い、野垂れ死に……

 氷の迷宮街を巡る動乱のさなかで、《槌の兄弟団(モロト・ブラトヴァ)》の名は歴史の闇に飲まれ消えゆくのだろう。

 

「──失礼いたします、幹部の皆様!」

 

 その時、会議室の扉を慌ただしく開ける者がいた。

 

「ご用命されていた、《煙の迷宮街》侵攻のための兵隊たちですが……

 外部の迷宮探索者どもを雇い入れることで、なんとか4000人ほど揃えることが出来ました。」

 

 部下のその言葉に、会議室の一番奥に座していた男が答える。

 

「フィトール……私は、5000は兵隊の頭数を揃えろと命じたはずだが……」

 

 重々しく響くバリトンの声に、フィトールと呼ばれた部下はどもりながら「申しわけありません、ボス・ザクォーネ……!」と平身低頭で返す。

 

「他の《迷宮街》の連中も、抗争に備えて、カネに糸目をつけずに探索者共を雇い入れているようでして……

 しかし──《詩吟譚(バラッド)級》の迷宮探索者が5名ほど、我々の側につくという報告があります。

 それに加えて……我々には、あの者が。

 十分に、勝算はあると……」

 

 ボス・ザクォーネ。そう呼ばれた、ひときわ上等なスーツの大男は。

 愛用の短剣の手入れをしながら、「……"最後の地吹雪"か。」と呟いた。

 

「報告ご苦労だった。顔を上げると良い。

 私は、怒っていないんだ。

 命令を達成できなかったとて、私は組織の家族を叱責することはしない。」

 

 ボス・ザクォーネは、革靴の音を鳴らしながら、部下のフィトールの目の前まで歩いていって、肩をぽんと叩きながら穏やかな声で言った。

 

「フィトール……お前が組織に入った日のことは今でも覚えている。

 12年前、霜の張るように寒い路地で震えていた幼いお前の肩を、こうして私が叩いたのだ。

 あれから、お前は誰より組織に忠実な人間だったな。」

 

「……覚えて、くれていたのですか? ボス・ザクォーネ……

 そうです。私の全ては、あなたに報いるため。

 そしてこれまで《槌の兄弟団(モロト・ブラトヴァ)》のおかげで生きてこられた者は、みな同じ思いです。

 われらは、最後まで──!」

 

 フィトールは、感極まりながら、顔を上げようとして、

 

「は──……あっ? あっ?」

 

 首をもたげたと思った瞬間、自分の頭部が浮遊感に包まれていることに気がついた。

 

「だが、命令違反は命令違反。掟は掟。

 そうだろう、フィトール。

 お前だってこれまで、上役からの命令を達成できなかった家族の頭を、いくつも吹き飛ばしてきたはずだ。

 ただ……順番が回ってきただけだ。

 これまで、本当に……ご苦労だったな。

 お前は、私の誇りだ。」

 

 一滴の血も出さずに、曲芸じみた技術で部下を断首したボス・ザクォーネは……

 

 自らが切断した部下の首が地面に落ちる前に拾い上げ、懐から取り出したハンカチーフで、生首の顔を覆い隠した。

 

 そして、その光景に唖然とする幹部たちへ振り向くと。

 手短に、しかしどすの聞いた声で、命じた。

 

「《槌の兄弟団(モロト・ブラトヴァ)》はこれより、全戦力をもって《煙の迷宮街》の領地(シマ)を奪いに行く。

 家宝の槍と槌を取り出せ──戦争の準備をしろ。兄弟たち。」

 

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