なんだかあのやり取り以降、ブロリーとの距離がさらに縮まった気がする。
極端だなあと思ったんだけど、たとえば現在の俺の位置。
「ベジータ王、銀河の至る所から集めたならず者たちがあなたの従僕としてお待ちしておりました」
聞き覚えのあるやりとりが段々と近づいてくる。
宮殿の入口近くで、俺たちは揃って外のほうを見ていた。
そしてパラガスが先導するベジータ一行がやがて到着し足を踏み入れる。
「息子です。なんなりとお使いくだ・・・」
振り向いたパラガスのセリフが途中で途切れた。
隣のベジータも得体の知れんものを見る目でこっちを見ている。
まあそれもそうだろう。
ブロリーの頭の上に幼女がちょこんと乗っかってんだから。
正確には今俺はブロリーに肩車されている状態だ。
首の横から足をぷらぷらさせて、頭上には顎を乗っけている。いい位置にフィットしてんだもん。
絶句していたパラガスが目に見えてわたわたとし始めた。
『降りろ!!』とジェスチャーで訴えかけてきているがぷいっと顔を背けてしらんぷり。
するとその動きで気付いたのか、ブロリーも俺と同じ方向を見た。
あ、ごめんごめん。そっちになんかあるわけじゃないの。
「・・・なんだ?貴様は・・・・・?」
二人して目の前でそっぽ向いてる状況にベジータが顔を引き攣らせながら声を絞り出す。
するとブロリーがそちらに向きを戻すと淡々と言い放った。
「貴様なんぞに名乗る名前などない」
おぉう辛辣。どうやら原作のような猫被りはしないらしい。
パラガスがもう悲鳴でも上げんばかりに狼狽している。
「わ、我が息子ブロリーにございます。申し訳ございません、少々おかしなことになってはおりますが王の手足として存分にご活用頂ければと・・・」
「本人にその気は無さそうだが?」
あーあーもうめちゃくちゃだよ。
半分は俺のせいだけど、そもそもブロリーは協力する気ないんだし。
・・・あ、いやブロリーの変化も俺のせいだって思えば100%俺が原因になるのか。
ごめんて。
ちなみにブロリーの声、初代映画の伝ブロで何度か聞いた全盛期の島田さんのクリアな低音ボイスに近い感じがしている。後年のゲームとかだとちょっと年齢を感じる掠れ方しちゃってるんだよなあ。御歳を考えるとしゃーないけど現役なだけすごい。
俺が余計なことをぼんやり考えている間、パラガスはそれはもうてんやわんやしてた。
結局俺を頭からひっぺがされたブロリーはベジータと一緒に出掛けることになったらしい。
なんのかんの言いつつ無理矢理気味にパラガスに送り出されていった。ありゃあ道中存分にギスるぞ・・・。
置いていかれた俺はパラガスの「余計なことをするなと言っただろう!!」という苦情を聞き流し、どうしよっかな~と思いつつもとりあえず悟飯やクリリンのほうへ向かってみる。
「こんちわ!」
「こ、こんにちわ」
んちゃのポーズで軽く挨拶し、溶け込めるかなとフレンドリーに接してみたところさすがにこちらは常識人揃い。少し話しただけだがちゃんと相手になってくれた。
ちなみにここで彼ら、特にクリリンとウーロンから俺にとってはなんだか久しぶりな『可愛い幼女扱い』をされた。
だって絶世の美幼女だってのに普段ブロリーもパラガスもぜ~んぜんそのあたり触れもしないし気にする様子もないんだもんよ!!俺もそろそろ忘れそうになってたわ。なかなか鏡見る機会もないし。
そして悟飯やトランクスも、そのキャラ性からかとても紳士的に対応してくれている。
「シロちゃんは、さっきのブロリーって人と仲がいいの?肩車されてたね」
「うん!だいすきなんだ」
特に他意もなさそうな様子でそう訊いてくる悟飯に笑顔で頷き返す。
本当のことだし、嘘をつく必要もない。
「アイツもサイヤ人だって話だけど、こんなちっちゃい子とそんなに仲が良いなら実は良いやつなのか?」
「それにしちゃ~ベジータ相手にすんげえ態度とってたけどなー」
クリリンとウーロンのそんな会話を尻目に、トランクスが俺に向かって探るような質問を投げかけてきた。
「シロちゃん。君は、ここで"伝説の超サイヤ人"という言葉を聞いたことはないかい?」
「あ~それ、ブロリーのことだよ」
「「「えっ!?」」」
なんのことはないといった雰囲気で即座にネタバレかました俺の言葉に一同の驚く声が重なる。
元々、このあたりの暴露は早いうちに俺からするつもりだった。本来彼らが話を聞くはずだったシャモたちは既に俺が星へ帰してしまってるからね。
・・・しかし、さすがに今は早すぎるか。念のため悟空も合流してからにしよう。
「危険な人物だっていう話だったけど・・・大丈夫なのか?」
「じじょーが、あるんだ。・・・あのね、夜にまたお話してもいいかな」
出来るだけ深刻そうな表情をしてそう申し出る。
了承してくれた皆と夕食の席でまた落ち合うことにした。
時間になるとその場には無事に到着したらしい悟空も居合わせている。
シャモたちがいないためトランクスや悟飯達が食べ物を持ち出すというイベントもなく、外出中のベジータ以外は全員が揃っている状態だ。
・・・ちなみに、流石に勝手な行動が過ぎたのか夕食までの空き時間。部屋にいたときに恐らくパラガスの仕業だろう、外から鍵を掛けたようで閉じ込められかけた。
しかし俺にはほぼ無意味である。パラガスには転移のことは話してないし普通にスルーして抜け出した。何も無かった風を装って食卓についている。
俺にすごい睨みを利かせながら「どうぞごゆっくり」と原作通りの一言を残してパラガスが去った後、食事にちまちま手をつけながらも質疑応答タイム開始。
彼らには、ブロリーに関する概ねの事情は知っておいて貰おうと思ったのだ。
元々は惑星ベジータで悟空と同じ日に生まれたサイヤ人で、潜在能力の高さを妬まれ命を狙われたこと。
星の爆発と共に宇宙を放浪する羽目になり、かなり過酷な生活を送らざるを得なかったであろうこと。
父親のパラガスは上記の経緯から当時のベジータ王ならびにベジータ王子をかなり憎んでいるということ。
ブロリーは戦闘力の高さと併せ持った破壊衝動により暴走の危険があったものの、本人はそれをどうにかしたい意思も見せている。一方、そんなブロリーをパラガスが制御装置を用い無理矢理制御下に置いていること。
今回の件はパラガスの一存でベジータへの復讐のためにブロリーを"伝説の超サイヤ人"として仕立て上げ餌とし、近々衝突する彗星で爆発する星もろとも消し去ろうとしていること。・・・そして、その計画にブロリーは反対していたこと。
本来劇中でパラガスの口から語られていた部分も含め、もう片っ端から洗いざらい喋ってやった。
「ブロリーはね、制御装置がある以上じぶんではどうにもできないみたいなの。南の銀河とか他の星を荒らしたのもほんとだけどパラガスのめいれいだったし、あばれてるあいだのことはあんまりおぼえてないみたい」
「・・・そうだったんですか。となると、黒幕はやはりパラガスということになりますね」
トランクスをはじめとしてZ戦士たちは俺の話を噛み砕きながら何かを思案している。そして悟空はすっげえ食ってる。・・・話きいてた?
すると視線を感じたのか悟空は咀嚼していたぶんを飲み込むとやっと会話に混じってくる。
「なあ!界王様の話だと伝説の超サイヤ人はすげえ強ぇって話だったけど、結局ブロリーがその超サイヤ人だってことでいいんだよな?そんなに強ぇんか?」
「つよいよ。ここにいるきみたちみーんな束になってもかてないくらい」
「うひゃー!そりゃ楽しみだ!」
完全に戦う気満々やんけ。そんな気楽なこと言ってられるのも今のうちだぞおい。
じとっとした目をしていたのが伝わったのか、悟空はさらに言葉を続ける。
「だってよ、そのパラガスって奴がブロリーのことを武器にしてる以上は絶対戦えって命令も出すだろ?どっかしらでぶつかる機会はあるはずだ」
「しかし悟空さん、今の話を聞いた以上わざわざ危険なこの星に留まる必要もないのでは?」
「だけどもったいねえじゃんかよ~、それにベジータだってブロリーがその超サイヤ人だって知ったら逃げるより前にぜってぇ戦おうとすると思うぞ?」
完全にサイヤ人特有の厄介ムーブである。
・・・しかし正直なところ、戦闘を避けることはほぼ無理だろうというのは俺もわかっているのだ。どうにか穏便な方向に事態を収めたいという気持ちはあるが、どこか確信めいている。
「・・・シロちゃん。君はいろんな事情を知っているようだけど、こうして話すことでパラガスとは敵対することになるんじゃないのか?・・・君は、何が目的なんだい?」
情報量の多さと立ち回りでただの幼女ではないということは察しているのか、真剣な顔でそう問われた。
「わたしはね、ブロリーを自由にしてあげたいんだ」
「・・・"だいすき"、でしたもんね」
悟飯の言葉に頷く。
状況や展開が変わろうと、俺がやりたいことは結局この一言に尽きるのだ。
「そうとおくないうちに、パラガスがもってる制御装置をどうにかしようとおもってるの。でもなにがおきるかわかんない。ブロリーがあばれだしたら、みんなともたたかうことになるとおもう。・・・でも、ぜったいに死なせたくはないんだ」
「・・・わかりました。彗星の衝突まではまだ少しの猶予があるんでしたね?」
「うん、あしたのお昼ごろだったかな・・・とりあえず、もうすこしはだいじょうぶ」
「僕たちも父さんの帰りを待ってこの情報を伝えなければなりませんし、すぐには動きません。もし何かしら必要になれば、その都度協力はさせて頂きます」
「ありがとう!」
こういうときにトランクスはスマートに場をまとめてくれるな。助かる。
必死の訴えが功を奏したか、さほど疑うこともなく信じてくれたようだ。
これでひとまずZ戦士側に話は通したし、あとは当事者間でどうするかだな・・・。
夕食を終え、悟空についてった俺は出掛けていたブロリー(とベジータ)を出迎える。
案の定ブロリーは悟空の姿を認識しても原作のような荒れ方はしなかったが、俺が「これがカカロットだよ」と言うとなんか変な目で睨んでた。・・・あれ?恨んでないんだよね?
悟空のほうも軽い調子で挨拶している。が、ブロリーは冷たい対応のままその場を去っていってしまった。あれぇ??
空気になってたベジータはそのまま引っ込んでしまったし、俺はとりあえずブロリーのほうについていくことにする。
「・・・ね、なんかきげんわるい?」
「そんなことはない」
短くそれだけ返してきたがな~んかどこかささくれ立ってる気がする。気のせいかなあ。
そんなやりとりをしているうちに、帰還を知ったらしいパラガスからブロリー共々呼び出しを受ける。
予定にも原作にもなかったイベントだ。
なんとなく・・・ここで何かが変わる、そんな予感だけはしていた。
なんだかんだで原作沿いっぽくなってるような、そうでもないような。