TS転生幼女は伝説の超サイヤ人を救いたい。   作:こねこねこ

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18:暁に寄り添って

満身創痍のまま地に倒れ伏しているパラガス。

 

それは見るからに死にかけていて、意識もハッキリしないのか近くまで来た俺たちに反応する様子もない。

ただ浅い息遣いだけが静かな空間に微かに響いていた。

 

―――命の灯が、消えかけている。

助けようとするならば、今すぐにでも仙豆を食わせるなり医療機関に運ぶなりしないと手遅れになるだろう。

 

・・・ブロリーは、どうするのだろうか。

助けるのか、それとも自らの手で引導を渡して楽にしてやるか。

 

どちらを選ぶとしても俺は口を出す気はない。

 

 

 

そしてその結果は・・・どちらでも、なかった。

 

 

 

膝をつきその場で腰を下ろしたブロリーは、ただ一言だけを口にした。

 

「・・・親父・・・・・もう、休め」

 

その言葉を聞いて俺は、最後にパラガスの言葉を聞いたあの場面を・・・ブロリーと言い合っていたあのときの様子を思い返す。

ブロリーに否定されて恨みの矛先をどこに向ければ良いのかと、怨嗟に満ちた顔でどこか悲痛に思えるほどの叫びをあげていた。

長年、それだけのために生きてきたようなものなのだ。ここで命が助かったとしても、この先の人生で向き合って消化するにはあまりにも大きく肥大し過ぎたあの怨念に再び身を焦がしてしまうことになるのだろう。

実際本来の恨みの対象である当時の王はもういないのだ。その子供であるというだけでベジータ王子へ代わりに復讐を遂げたとしても、それで本当にパラガスの気は済んだのだろうか。

もちろんそれは本人にしかわからない。だけど、一番それを近いところで推し量れるのだとしたらそれは同じ環境でここまでずっと共に過ごしてきたブロリーに他ならないだろう。

 

そして彼は、ここで終わらせてやることを・・・眠らせてやることを、選択したようだ。

 

言葉を選ばずに言ってしまえば、彼がやっていることは見殺しに他ならない。

今や幻となったがかつての世界線、"本来のブロリー"は父親をその手で殺してしまった。そしてそれが引き金となって、やがては精神に異常をきたすことになったらしい。

 

結果だけ見れば今ここにいるブロリーも父親を死なせたことになる。・・・しかし、その意味は、心の在り様は、かつてのそれとは全く違うもののように俺には思えた。

 

パラガスがこの世を去るまでのほんの僅かな間、彼はそれをただずっと眺めて過ごしている。

その胸中に過ぎるのはこれまでの想い出か、はたまた何か別の思いや感情なのか。

 

・・・30年。俺も要所要所で干渉はしてきたが、ブロリーはこれまでの人生でそのほとんどの時間をパラガスと共に過ごしてきた。この世でたったひとりの家族だったのだ。その重みは、他人の俺が想像するよりもきっとずっと大きい。

 

これは、きっと彼なりの葬送なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の空が淡く橙に色づき始め、光が差し込んできた頃。

 

ついにパラガスは動かなくなった。

 

朝陽に照らされる中ブロリーはゆっくりと瞼を閉じて、最期に何かを噛み締めるようにして僅かに顔を伏せている。

 

隣に立つ俺も何も言葉は掛けることなく・・・・・ただ、いつもよりほんの少しだけ小さく見えるような気がする彼のその背中を、数度だけそっと撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうした余韻も薄まってきた頃、ふとひとつの気配と音が近くにやってきた。

振り返ると、ベジータが空から降り立ったところだ。・・・何しにきたんだろ?

 

そのまま近づいてきたベジータは、ブロリーの隣まで歩いてくると目の前のパラガスの亡骸へと目を向ける。

ブロリーは一度だけちらりと隣へ目をやるも、すぐにそのまま前へ視線を戻した。

 

「死んだのか」

「・・・・・ああ」

 

もっとオブラート包めや。なんやねん。

 

「人伝にではあるが大体の事情は聞いている。先代の王だったオレの父から随分な仕打ちを受けたとな」

「・・・それで、謝罪でもしに来たか?」

「ふざけたことを言うな。あくまで王が勝手にやったことだ、そのことに関してはオレからは何を言うつもりも頭を下げるつもりも毛頭無い」

 

本当になんなんだよコイツ。

逆撫でしに来ただけなんだったらさすがにどっか飛ばすぞ。

 

「・・・だが、」

 

しかし俺が痺れを切らす前にベジータはそこで言葉を切り、ブロリーのほうを見る。

 

「その名は記憶に留めておく。今や国も民も無いとはいえ、それでもオレは王子だからな」

 

その言葉に僅かに目を見張った。

・・・なんだ。こんなになってまで、一応王族としての責任は感じてんのか。

 

「・・・・・そうか。」

 

多くは語らないベジータに、ブロリーもそれだけをぽつりと返しただけで否定も肯定もしない。

 

そして踵を返したベジータは「それだけだ」と言い残しそのまま去っていった。

 

 

 

 

 

太陽もすっかり稜線から離れ、辺りが明るくなった中。

気が済んだらしいブロリーも腰を上げた。

 

俺はその顔を見上げてひとつだけ尋ねる。

 

「・・・おはか、つくる?」

 

ブロリーはそれに緩く首を振った。

 

「いや、必要ない」

「そっか・・・」

「墓というのは死者のためではなく、残された者が整理をつけたり自らを納得させるために設えるものだろう。・・・・・それは、もう済んだ」

 

なかなかに独特な考えだなあ。

まあ、ブロリーがそれでいいなら俺はもう何も言わないよ。

 

遺体はやがてこの星と一緒に宇宙の藻屑となって消えるだろう。それで、何もかもなくなっておしまいだ。

 

 

 

俺を抱え上げたブロリーは最後に一度だけパラガスのほうを振り返り、そして踵を返してその場を飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いろいろ面倒と、あと心配もかけちゃってごめんなさい」

 

そしてあれから。

悟空達のもとにひとまず戻った俺は勢揃いしているみんなに向けてぺこりと頭を下げていた。

 

まあ一件落着して良かったじゃねえかと悟空は笑って済ませてくれたが、一方俺の隣にいるブロリーは相変わらず悟空に対してなんか微妙な表情してる。

 

「・・・ブロリー、どったの?やっぱりなんか悟空に思うところある?」

 

こっそりと小声で訊いてみるとブロリーは何でもないと返してきたが、どこか少しだけ拗ねたような顔にも見えた。

嫌われてんな~と悟空はぽりぽり頬を掻いてるが、・・・・・まさか?

 

「ねえもしかしてさ、赤ちゃんのときにわたしがカカロットのことばっかり面倒みてたこと引きずってたりするの?」

 

そう言うとブロリーは微かにだが「うぐ、」と何かに詰まったような反応をした。

 

あ~~~そういうこと~~~~~??

いやこれは今のうちにハッキリさせておこう。

 

「ブロリー、きいて。」

「・・・なんだ」

「あのね、あのときにカカロットの面倒見てたのはホントだけどさ。それもこれもぜ~んぶブロリーのためだったんだよ?」

「?」

「カカロットって一度泣きだしたらほんとに、ほんっっっと~~~に声がおっきくてやかましかったの。それでブロリーが寝られなくなっちゃったり泣かされちゃったりしないように、がんばって泣き止ませてたわけ」

「・・・・・」

「それでそのね、その恨みがその・・・まえに話した"元のアレ"、の原因にもなってたから。だからブロリーが安心して過ごせるようにがんばってたのです。だからぜんぶブロリーのためだったし、わたしがだいすきなのはブロリーなんだからしんぱいしなくてもいいよ」

 

身を乗り出してそう熱弁してやればブロリーはちょっとだけびっくりしたような顔をしたあと、「そうか」と表情を緩ませた。

よし。わかったか。

 

すると悟空も何やら顎に手を添えて思い出すように考え込んでいた。

 

「赤ん坊の頃・・・?」

「そうだよ、キミはおぼえてないかもしんないけど。同じ日に生まれて隣同士にいたってこないだ話したでしょ?数日だけだったけど二人のおせわしてたの」

 

すると悟空はまじまじと俺の顔を見てから口を開く。

 

「おめえ歳いくつだ?」

 

こらーーー!ノンデリーーー!!

後ろの方でトランクスたちも「マジか」みたいな顔してんじゃねえか。

 

「おんなのこに年齢をきくんじゃありません」

「そ、そっか。わりぃ」

「いやまあべつにかくす気もないんだけどさ。わたしまほうで時間とばしまくってたからみためとなかみの歳ばらばらなの。いまはえっと・・・27?8?いやたぶんまだ27かも。ブロリーや悟空よりちょっと下くらいだよ」

「・・・そうだったのか」

 

あけすけにそう話すと、ブロリーも意外そうな顔で俺のほうを見ていた。あれ、年齢については言ってなかったっけな。

 

「・・・えーと何の話なんだっけ?あ、そうそう!だからブロリーは何もしんぱいしなくていいし、悟空とも友達になれとまでは言わないけどさ・・・せめてふつうに接してくれたらうれしいよ」

 

そういうとブロリーはさっきよりは平常通りの顔をして悟空を一度見たあと、俺に小さく頷いた。

 

「・・・・・善処はする」

 

わーいよかった~!!

悟空のほうも「同じサイヤ人の生き残りなんだし仲よくしようぜ」と笑顔で返してくれた。

ちなみに同じく生き残りのサイヤ人であるベジータは腕組んだまま眉間にシワ寄せてる。まあアイツは元から「他人と仲良く」って性格でも関係でもないしな・・・。せめて揉めないでくれたらそれでいいや。

 

「・・・となると、おめえたちも一緒に地球に来るってことでいいんか?」

 

悟空のその問いに、ブロリーのほうを一度見る。

いいよね?と聞くと「お前とならどこでもいい」と返ってきた。よしよし。

 

「どうせこのままこの星にはいられないから。いっしょに、おじゃまさせてください」

 

Z戦士たちの顔を見渡して、改めて頭を下げる。

悟空たち以外の面々も約一名(ベジータ)以外は笑顔で歓迎してくれて、俺はブロリーの手を引きながら悟空たちのほうへ付いていった。

 

よろしくおねがいしま~す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――なおこのあと。

原作映画とスケジュールがズレてしまっていたために完全に入れ違いになったピッコロさんが独りで彗星の近づく新惑星ベジータに向かっていることを思い出し、慌てて引き留めにいくなどもう一騒動ありました。ごめんな・・・・・。

 

 

 

 

 





映画本編部分はこれでおしまいです。このあとは後日談もどきのあとセルゲーム。
ここからは本当に不定期連載でのんびり書いていくつもりです。
まだこの先もお付き合い頂ける方は引き続きよろしくおねがいします。
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