「お、おめえまさか・・・ブロリーを大猿にすんのか・・・!?」
驚いている悟空に俺は頷いた。
あっちが10倍になってんだからこっちも10倍にするしかねーだろ。
「ブロリー以外には誰もしっぽのこってないでしょ?だからまきぞえもないとおもうし」
「それは大丈夫だと思うけどよ・・・あのブロリーだぞ、理性は・・・」
「たぶんなくなるね。でもだいじょぶ、いざとなったら人にもどす方法もしってるから」
悟空の懸念もわかる。大猿化してセルには勝てるかもしれなくても、その後に当のブロリーが暴れてしまったらどっちみち地球は終わりなんじゃないかという部分だろう。
しかしそこは俺がなんとかすると念押しすれば、少しの間だけ逡巡したあとに意を決した様子で悟空もベジータのほうを振り返った。
「っ仕方ねえか・・・!ベジータ!頼む!」
「はやくしろー!まにあわなくなってもしらんぞーーー!」
まだ苦々しい表情で躊躇っていた王子へ俺も再び叫ぶ。ネタ混ぜる余裕もそろそろ無くなっちまうよ。
ちなみにベジータのほうへ転移で近寄って声を掛けるでもなくわざわざ遠くから無駄に大声出してやりとりしてるのは、一応ブロリーのほうにも聞こえるようにと思ってのことだ。
まさかこんな早くに実行することになるとは思わなかったが、ブロリーが原作に食い込むことで今後起きるであろうインフレの加速と大猿化の可否については以前二人で話していた中で既に軽くだけだが触れたことがある。
雑談のオマケ程度だったからちゃんと計画立てていたわけではない。・・・だが、恐らく察してはくれるだろう。
「ッくそ・・・!どうなってもオレは責任取らんからな!!」
半ばヤケクソ気味にそう吐き捨てながらもベジータは片手に白い光球を作り出し、それを空へと投げ放った。
「はじけてまざれぇっ!!」
一際強い輝きを放ってその場に現れたのは、限られたサイヤ人のみが作ることの出来るという人工月。
ブロリーはセルに踏んづけられて仰向けの状態だ。上空に作ったそれは嫌が応にも目に入る!
月が放ち続ける強烈な光に、セルもいち早く異常に気付いたらしい。
得体の知れないそれを放置は出来ないと判断したのか、見上げるままに吐き出した魔口砲によって月はすぐに壊されてしまった。・・・が、それよりも先にブロリーの変化は始まっている。
咆哮を上げながら巨大化していくその姿。
やがて現れたのは、新緑のように鮮やかな緑色の毛に覆われた大猿だった。
・・・あれぇ!?なんか思ってたのと違う!!
想定とは違うが・・・どこかで見覚えはあるような。
ゲームか何かで出てた、ブロリーの独自形態だったろうか。伝説の超サイヤ人から変化したからなのかな?明らかに一般的な大猿とは別物だ。
変身を終えた大猿ブロリーは、目の前を飛んでいるまさしく羽虫のようなサイズ感のセルへ即座に襲い掛かった。
戦闘力はこれで10倍。両者が変化する前と同じ力関係に戻ったはずだ。
あとは体格による有利不利ってところだな・・・。
巨大すぎる大猿となったブロリーと人の大きさのままのセル。的のデカさと小回りの利きやすさから、単純にセルの攻撃はブロリーに当たりやすく反対にブロリーの攻撃はセルに当たりづらい。
しかしそこは俺がサポートすればいいだけのこと!
二人の闘う様子を瞬きもせず凝視する。
セルが羽を震わせブロリーの間合いから逃れようとする度、回り込もうとする度、何度飛び回ろうとしようがそのたびに毎回ブロリーの目の前へ転移で戻してやった。
ふはは逃げられまい!これぞSANS戦法。
本来普通の人間には目でも追えない速度のため、時間魔法の減速も併用している。しばらく目が離せないがすぐに決着はつくだろう。
ブロリーからしても、視界内に居る限りは優先してセルを狙うはずだ。見失ってしまうとヘイトが周りの環境や他者のほうへ向かう恐れがある。
思うように動けないセルは仕方なく正面から大猿へと向かい、遂にはその大きな掌に捕まった。
両手で握り締められ、その凄まじい圧にベキバキと骨なのか甲虫ゆえの装甲なのかよくわからない硬いものが砕ける音がする。
「ぐがああぁぁぁぁ!!!!」
響き渡るセルの悲鳴と、それに伴うようにブロリーが吼え大きく開けた口に輝きながらも凝縮していく緑色の光。
やがて放たれた極太のエネルギー波に至近距離から呑み込まれ、ただでさえひしゃげていたセルの上半身が消し飛んだ。
手の中に残された、ぼろぼろのぐちゃぐちゃになってしまった下半身をゴミのようにブロリーが投げ棄てる。
今ので核を殺れたかどうかはわからないが、死んでしまったならそれで良し。そうでなく仮に生きていたとしても早々に復帰は出来ないだろう。自爆からの再生にも数分は掛かっているのだから。
問題は、その空き時間。明確な標的を失ったブロリーが暴れ出してしまう。
「や、やべえぞ!!」
「行ってくる!ごめん、なるべく誰も手は出さないで!」
慌てる皆へきっと大丈夫だからと言い残し、俺は転移でブロリーの元へ向かった。
大猿から人へ戻すには尻尾を切るという方法がよく採られるが、それをせずともブロリーを戻す手段に見当はついている。・・・が、その前に出来ればひとつだけ試してみたい。
この緑色の特別な大猿が悟空たちでいう"黄金の大猿"に相当するものであるならば、"その先"の可能性だってあるはずなのだ。
「ブロリー!わかる!?シロだよ!!」
暴れようとしている大猿の大きな鼻先に乗っかって、目の前で呼びかけてみる。
突然目の前に現れた異物に一瞬怯んだブロリーは煩わしそうに手で跳ね除けるが、すぐに戻ってもう一度名前を呼んだ。
どけてもどけても目の前に戻ってくることに苛立ったのか、終いには先ほどのセルのように両手で掴まれてしまう。
握り潰そうと凄い圧が掛かってくるが、セルとは違って俺には通用しない。先日のようにピンポイントで首を絞められてるわけでもないから二の轍だって踏まないはずだ。一応危なくなりそうだったら逃げるけど。
「ブロリー」
落ち着いた調子のまま、呼び掛ける。
力が通じないことになのか、聞こえた声に反応したのか、少しだけブロリーの様子が変わった。
「覚えてる?・・・言ったよね。『道が逸れそうになったら引っ張って連れ戻す』って」
ブロリーの赤い眼が、何かを思い出すように細められて俺をじっと見る。
握り締める手の力が、少しだけ緩んだ。
その隙に刺激しない程度に身動ぐが、なんとか抜け出せたのは片腕だけ。
そのまま、目の前に手を伸ばす。
「だいじょうぶ。・・・戻って、おいで」
呼び掛けに、咽を鳴らしたブロリーが反応を返すその直前。
突然どこかから浴びせられた光に全身を灼かれた。
「・・・・・ッッ!!!??」
痛みはないものの、明確な攻撃であったそれにブロリーも思わず手を離したのだろう。俺はそのまま空中に投げ出された。
巡り回る視界にいろんなものが映り込む。
思ったより早く再生したらしいセルがこっちに向けて腕を掲げていたところとか、ブロリーが何かを叫ぶように吼えたところとか。
なんだか妙にスローが掛かったようにしてぐるぐるまわってる。
やがて視界が真っ白に染まって、眩しさに目を閉じた。
落下していく浮遊感だけがずっと続き、どこまで落ちるんだろうと思ったところで誰かに抱き止められる感触。
頭はぐわんぐわんしたまま、目を開けてみるとブロリーの姿が見えた。
あれぇ・・・?黒ブロに戻ってる・・・・・。
失敗しちゃったか。でも暴走しなかっただけマシかなあとか、そんなことを考えているうちにどことなく違和感に気づいた。
・・・なんか、ふかふかしてる。
そしてこっちを見下ろすブロリーの眼。黒色だったはずのそれが今は金色に光ってて、目の周りには赤いアイラインみたいな縁取りが。
風に揺れている黒髪がいつもよりも長い。
・・・・・ん?????
ぱちぱちと瞬きして、ちゃんと見れば半裸のその上半身のほとんどが赤い毛に覆われていた。
こ、これって・・・・・、
「・・・ブロリー?」
呆然としながら名前を呼んでみると、ブロリーも頷いて僅かに口角を上げた。いつものように。
「お前のおかげで、戻って来れた」
ちゃんと俺を見て、言葉を返してくれる。俺の知ってるブロリーだ。
・・・ただ、
俺も知らない、"伝説の超サイヤ人4ではなく通常状態を元にした超サイヤ人4"の姿になっていたけれど。
前々から思ってたんですよ。黒ブロベースのSS4があったら絶対カッコイイだろうなって。