今年の汚れ♪今年のうっち~に♪
なーんてCMもあったなあと懐かしくなりつつも思い出に浸る余裕もない、年の瀬迫る師走のとある日。
「そんなわけで!!今日は大掃除です!!」
ハタキと雑巾片手にででん!と仁王立ちして宣言する俺。
「はいそこー!めんどくさそうなかおしない!!」
指差した先はもう顔どころか全身から全力でやりたくありませんオーラをむんむんに発しているブロリーさん。
「・・・そんなに汚れていないと思うんだが」
「パッと見はそうかもね。でも半年以上住んでんだからあちこち細かいとこにホコリは溜まってきてるし、お料理いっぱいしてたからキッチンだってきちゃないとこはきちゃないし、水回りだってほっといたらぬるぬるになっちゃうよ」
「・・・・・どうしても、やらないと、だめか・・・・・?」
「だめ」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・やらないと、どうなる?」
「いずれは誰かがやんなきゃいけないことだから、わたしひとりで家じゅうの掃除ぜんぶするハメになって、来年になってもしんどかったなーしんどかったなーって事あるごとに言い続けます」
「ッう・・・・・・・・・・わかった」
「ん、えらい!」
正直嫌味すぎるかなあとも思ったんだが、実際俺ひとりに任せっきりになんのもヤだし。
なんだかんだでやっぱりブロリーは俺に対して甘いな。
・・・とはいえ、「わかった」と言いつつもその様子は本当に本ッッッ当~に渋々といった様子だ。
開始から1時間ほど経っても大して進まず、その動きは鈍いままだった。うーむ・・・・・。
「・・・ね、そんなにおそうじするのキライ?」
改めてそう尋ねると眉尻を下げつつブロリーは頷く。
んー・・・そっかぁ・・・そんならもう無理することもないかもなぁ。
「んじゃ、やめちゃおっか」
「・・・ん?」
やーめぴ!っと俺も持っていた掃除用具をぽいっとそのへんに置いた。
つけてたエプロンも外してソファにぽすっと飛び込む。
急に手の平返したような俺の行いにブロリーは呆気にとられたような表情をしていた。
「・・・いいのか?」
「うん、だってイヤなんでしょ」
「そう、だが・・・いずれは誰かがやらなければいけないんじゃなかったのか」
「"普通だったら"、ね」
寝そべりながら足をぱたぱたさせて、全身でだる~っとしながら引き続き口を開く。
「わたしさあ、こういうのって出来るだけ『怠けちゃだめだ』って思ってたんだよねえ」
「・・・怠け」
「うん。出来ることは出来るだけ自分でやって、ズルとかしてサボらずに真っ当に努力しなきゃ~!・・・みたいな?」
「お前はいつも頑張っていたと思うが」
「ありがと。・・・まあそんなだから、お掃除もちゃんとした方法で普通に頑張んなきゃだめかなって思ってたんだけどさ。な~んかブロリー見てたら、ホントに嫌がってるのわかっちゃったんだもん。そしたらね、さっき言ってた『頑張らなきゃ』っていうのもわたし自分だけの思い込みだったかもって。押し付けてまで嫌な思いさせたくないな~って気づいちゃったら、どうでもよくなったの」
ブロリーは俺に甘いが、俺もブロリーにつくづく甘いのかもしれない。
「・・・オレのせいで、諦めさせてしまったということか」
「んにゃ、ちょっとちがうかも。・・・だってわたしもホントはお掃除なんてめんどくさいんだもんー!やりたくなーい!」
いやー!と駄々をこねるように手足をばたばたすると表情の曇っていたブロリーも少し気の抜けたような顔をした。
「だから頑張らなくても済むところはべつに頑張らなくていいや~って思ってさ。というわけで大掃除はキャンセル!やめやめー」
「しかし、放置すれば汚れは溜まっていくんだろう?」
「さっきも言ったけど"普通は"そうなるね。だからズルっこだけど、普通じゃない方法で解決すればもーまんたい」
「普通じゃない方法・・・?」
俺はソファからぴょんと飛び降りて、部屋の中を見渡す。
「ちょっと今からさ、"引っ越ししてから買い足したもの"一回ぜんぶ除けてくからちょっと手伝って」
主に家具や便利系の家電、あとパントリーと冷蔵庫の中身の食糧の類をひと通り。
ここに住み始めて以降に増えたものを一旦ぜんぶ俺の収納の中へ移してスッキリさせた。
「んで、一回おうちの外にでます」
玄関前に二人並んでハウスのほうを見る。
意図もわからないまま手を貸してくれていたブロリーはまだ頭にハテナを浮かべているが。
「そして・・・これをこうして、こうじゃ!」
たいむまじ~っく!!
家まるごとを対象として、遡行を発動。
一瞬魔法のエフェクトで輝いたと思った直後、カプセルハウスは設置したその日と同じ状態に戻った。
汚れだけでなく、ブロリーが勢い余ってぶっ壊したりヒビ入れたところなんかも含めて綺麗さっぱりだ。
「これでおうちはお引越しした日のまんま。新品のぴっかぴかです」
あとは一旦除けたものを戻したらおしまいだ。次回以降は今日のこのタイミングまで戻せばいい。
隣で目を丸くしていたブロリーは、ややあって噴き出したようにくくくと笑っていた。
「・・・確かに、"ズル"だな。これは」
「だっしょ~。誰にでもできることじゃないけどね、わたしはできちゃうから」
珍しく子供みたいな表情して笑う彼に俺も悪戯っぽくにひひと笑い返す。
そしてさっきの続きのように口を開いた。
「がんばるのはいいことなんだけどさ。全部を全部がんばるんじゃなくて、こうやって力抜けるところは抜いちゃって代わりに別の違うところをがんばったほうが・・・なんていうか、精神的にも楽だし有意義っていうか。建設的かなあって」
「別の所・・・例えば?」
「んー・・・ちょっと良いごはんを、手間暇かけて作ってみるとか」
「あぁ・・・・・賛成だ」
目を細めてしみじみと頷くブロリーと笑い合って家の中に戻る。
新築ぴかぴかになったそこへ除けてたものを一斉に戻し、さっそく有意義な労力を割くべく俺達は晩飯をどうするか相談を始めた。
めでたしめでたし。
大掃除おわって筋肉痛バキバキの中書きました。ぼくも大掃除キャンセルしたい