仕事嫌すぎて、
現実逃避ばっかりしてる。
ブロリーは普段、シロのやること成すことに対し基本的には概ね肯定的な対応をとっている。
しかし時折、全く思いもよらなかった突拍子もない行動を起こされ混乱させられることも稀にはあった。
―――それは、普段より少しばかり早めに悟空との修行を切り上げ帰路についていた時のこと。
家の方角へ向かって飛びながら、ブロリーはいつもの習慣でシロの居所をほぼ無意識に探っていた。
そして違和感に気付く。
シロの気を、自宅の付近に感じない。
どこかに出掛けたのだろうと当たりをつけ、特には不審にも思わず探知を広域に切り替えたのだが・・・・・
途端に顔色を変え眉根を寄せた。
さほど時間も掛からずに見つかったシロの微弱な気。
それが、特に何もない筈の"空の上"にあったからだ。
「・・・・・?」
訝しげな表情でブロリーはひとまずそちらへと向かうべく高度を上げる。
そしてすぐ、遠目に"それ"を見つけた。
―――乗り物なども何もなく、遥か上空から小さな少女が身ひとつだけで一直線に墜ちてくる。
「!!!??」
ぎょっと目を剥き、気を爆発させ急行した。
そして辿り着くのと同時に、落下してくるシロの身体をそのまま掻っ攫うようにして空中で受け止める。
「わぁ!?」
シロは特に気絶していたというわけでもなかったようで、唐突に現れたブロリーの腕の中に抱えられながらその顔を見て目を白黒させていた。
「び、びっくりした~・・・。いきなりどしたのブロリー?今日は早いね」
あくまで普段と変わらず、不思議そうにいつもの様子でそんなことを言うシロにブロリーはひとまず無事を悟り僅かに安堵の息を吐く。
そして眉根を寄せ、少しばかり詰めるように口を開いた。
「・・・こちらの台詞だそれは。こんなところで一体何をしていた?」
「あ~・・・えーっと・・・・・落ちてた」
「それは見ればわかる」
目を泳がせ少々気まずそうに口ごもったところを見るに、後ろめたさが無いわけではないのだろう。
しかしその実、シロは嘘は言っていなかった。
「や、ほんとに落ちてただけなの。・・・よーするに、あそんでました」
心配させちゃったならごめん、と素直にシュンとしたシロへブロリーはまだ腑に落ちないのか小首を傾げている。
「??・・・・・落ちて、どうするつもりだったんだ」
「んにゃ、どうもしないよ。落ちるだけ」
「・・・落ちることが、遊びなのか?」
「あのねブロリー、ふつーの人間は飛行機もなしに空なんて飛べないの。だからブロリーにとっては何でもないことでも、わたしにとってはトクベツだったりするんだよ」
「そういうものか」
「そーゆーものです」
納得のさせ方が多少強引すぎる気がしなくはないものの、ブロリーはとりあえずそこについては考えることを止めた。
ただ、理由がどうであれ危険な行為であることには変わりない。
「・・・しかしせめて事前に何か言ってくれ。肝が冷えた」
「ご、ごめん・・・誰も見てないと思って・・・・・」
「尚更困る。一人でやるな」
「んー、じゃあブロリーいっしょに付き合って?未遂になっちゃったからさ、もっかいやりたい」
「落ちるのをか?」
「うん、スカイダイビングっていうんだ~。さっきテレビ見てたら特集しててね、そういえばやったことないな~って思って。一回やってみたかったの」
「・・・まあ、構わんが」
動機が"やってみたかった"というのならば、途中で諦めさせて未練を残すよりも自分が付き添って一旦気が済むまでやらせたほうがまだ良いだろう。
そう考えて了承すればシロは嬉しそうに笑い、ブロリーを連れて再び遥か上空へと移動した。
見れば足下を雲が流れている。雲海よりももっともっと上の位置だ。
肺腑に入る空気は薄い。・・・が、その分とても澄んでいた。
普段空を飛んで移動することの多いブロリーでも、これほどの高度にまで上がって来ることは中々無い。
「そんじゃ、舞空術きって!あ、バリアもね」
「・・・わかった。落ちるぞ」
「ていくおーふ!」
キャッキャとはしゃぐシロの声に、「それは飛び立つときの掛け声では?」とツッコむ者はその場にいなかった。
ブロリーの纏っていた気が霧散した直後、二人の身体は揃って重力に従い自由落下を始める。
抱えていた腕からシロを解放し、しかし離れないようにその小さな手だけは握り締めたまま。
何時もならばバリアに阻まれて受けることの無い強い空気抵抗に顔を僅かに顰めながら、シロに倣って四肢を広げた状態でブロリーもまた身を投げ出す。
雲へ突っ込んで身を刺すような冷気を浴びながらその下へと突き抜けたとき、急に視界が開けた気がした。
「・・・・・・・!」
夕刻へと差し掛かりいつしか東の方角は茜色に染まっている。
水平線へと向かう夕陽の橙色の光が連なる光暈となって差し込んで二人を、世界の全てを煌々と照らしていた。
―――――空とは、こんなにも広く感じるものだっただろうか。
ブロリーにとっては見慣れたはずの、特段何を感じることもなく過ぎ去っていくばかりだった景色。
蒼から茜色のグラデーションに彩られ、果てしなく大きく広がったように見える空と海。
光を照り返す水平線は輝きに満ちており、淡く橙に色づく大地と遠くに見える街並みの数々。
その全てが何故かこんなにも艶やかに、新鮮なものとして映ることに驚いてブロリーは思わず目を見張った。
そしてちらりと隣を見れば、シロもその目を輝かせて満面の笑みではしゃいでいる。
成程、地に足つけて歩くばかりではなかなか見られぬ光景ではあるとブロリーは得心がいった。
これがシロが見たがっていた"トクベツ"、なのだろう。
そのまま堪能しているうちにどんどんと高度は下がり、地面が近づいたところで再び気を纏い落下速度を落とす。
特に危なげもなく、シロの身体をその手に再び抱えながら二人揃って地表へ降り立った。
「・・・ふはー!たのしかったぁ~!!」
地面へと降ろされたシロは、余韻も興奮も冷めやらぬといった様子で今もまだ目をキラキラさせながら大喜びしている。
「気は済んだか」
「うん!ありがと!」
満足そうなシロへ頷いたブロリーの口角が無意識に上がる。
「ブロリーと一緒だったからさ、一人でやるよりももっともっとすんごく楽しかったんだとおもうよ」
「・・・・・そう、か」
内心で同意するブロリーも、意図せず良い経験をさせて貰ったと改めて感じていた。
普段気にも留めていなかった筈の何でもないことが、恐らく生涯忘れることのないであろう特別な体験へと変わったこと。
それは恐らく、シロと一緒だったからだ。
改めて不思議な奴だと薄笑みを浮かべたブロリーは、「満足したなら帰るぞ」とその手を差し出す。
それを嬉しそうにシロが握り返し、夕暮れの中二人手を繋いで帰路へと就いた。
以前スカイダイビングの動画を見漁るのにハマってた時期がありまして。
あとティアキンの鳥望台でマップ解放するときに、夕焼け朝焼けの中快晴だったときのあの感じ。
好きなんですよああいうの。