TS転生幼女は決意した。
かの伝説の超サイヤ人を救ってみせると。
「・・・な~んて、意気込んでみたはいいものの・・・・・」
なんかこの流れ二回目だな?
無事に生まれたてほやほやのブロリーとカカロットにお目見え出来て以降、今日で三日目。
あれからずっと俺はこの保育室に入り浸っていた。
ベッドの中であぶあぶ言ってる赤ん坊のブロリーを手製のちゃっちぃオモチャ(木の枝に靴紐くくりつけただけ)であやしつつ、ぼけっとこの後のことを考える。
なおカカロットは現在お昼寝中。つかの間の平和だ。
なにせ知ってはいたものの、起きて一度泣き出すとマジのホントにクッッッッソうるさい。テレビで見た(聞いた)100倍うるさかった。
赤ん坊が泣くのは当然のこととはいえ、あの超弩級の声量ではさすがにブロリーが根に持ちすぎという説は考え直してあげた方がいいんじゃなかろうか。
そりゃブロリーだってつられて泣くしかないしむしろ鼓膜が無事なことをほめてやりたいところだぁ!
というわけで俺は基本的にブロリーの相手をしてあやしつつ、隙あらば泣き出す気配を見せるお隣の問題児を迅速に宥めて寝かしつけにかかるというミニマムベビーシッターと化している。
ちなみに最初の頃はどうすればいいのかわからず子守歌なんて歌ってみたりした。余計に泣いた。なんでやねん。
一方のブロリーのほうは俺が歌うとすやすや寝てくれた。相対的にめちゃくちゃいい子に見えてしまって泣けてくる。あ、いやカカロットお前は泣かなくていい。さっき寝付いたばっかじゃねえかまだ起きるな~!!寝ろ~~~ッッッ!!!
・・・そんな感じでわちゃわちゃしてたらあっという間に三日経ってた。
朝のまだ早い時間、部屋の扉がシュインと機械音を立てて誰かが入ってきた気配を感じ視線を向ける。
白衣と戦闘服を混ぜたような恰好の大人が三人、カカロットのベッドの前に歩いてきた。
いつものご飯係の人じゃないな。な~んかそのうちの二人には見覚えがある。
じっと見てると、その片方の爺さんも俺に気づいたのかこっちを見返して訝し気な顔をした。
「ん?なんだ、この子供は」
「ああそいつ、ここ数日ずっとここに張り付いててこのガキ共の面倒見てるみたいなんですよ。何回摘まみ出されてもいつのまにか入り込んでて」
へへ、すいませんねえ。こちとら転移持ちなもんでいくら締め出されても無駄なんすよ。
実際初日は検査だのなんだので度々部屋から二人のどっちかが連れ出されるとき、俺もついでとばかりに一緒に追い出されていた。
その度に即座に転移で戻って何食わぬ顔をしていると次第に諦められたのか、二日目の半ばあたりからは毎度変な顔はされるものの特に何も言われていない。
「バーダックかパラガスの関係者か?」
「うん。みてただけ。おせわのじゃまはしてないよ」
一方的にこっちが知ってるだけの間柄を関係者とは言わないかもしれないが、適当にそうだと頷いておいた。
爺さんたちはそれで納得したのかそれ以上追及はせず、カカロットを抱き上げて何事かを話している。
・・・ああ、思い出した。この爺さん、TVスペシャルのほうで何度か画面に映ってた医者だ。
たぶん、"そのとき"が来たんだろう。
「・・・・・飛ばしちゃうの?」
「うむ、全ての検査は終了しておるし今日中には飛ばすことになるだろう。戦闘力はたったの2だ、遅かれ早かれそれだけは変わらん」
「そっか・・・・・」
止める理由はない。
いよいよここからドラゴンボールが始まるんだなあ・・・。
爺さんたちはカカロットをベッドへ戻すと、そのまま部屋を出て行った。
ていうかさっき関係者かどうか聞かれたけど、ここ三日のあいだにバーダックもパラガスも一度もこの子達のこと見に来てないぞ。
まあパラガスはずっとブロリーの助命嘆願で必死に駆けずり回ってるんだろうし、バーダックのほうも一度だけカカロットのことを目にしたとき画面に映っていた保育器がこのベッドとは違う見た目だったから・・・恐らくは検査か何かで連れ出されていたとき、別室で会っていたんだろう。
・・・もっとも会いはしても戦闘力測るやいなやクズ呼ばわりして走り去るという、親とは思えない塩対応しかしてないんだけどねあの人。
しかしカカロットが飛ばされる日か・・・・・。
ということは間もなく、今日にでも惑星ベジータは崩壊する。こっちもそろそろだな。
この三日の間、一緒に過ごしていて思ったこと。
このあと今日のどこかで、ブロリーは殺されかけてそのままパラガスと共に捨てられる。
フリーザがこの星を壊すことは確定している以上、どちらにせよ放浪の旅に出なければいけないという事実は変わらない。
・・・だったらさあ、あんな刺されて苦しい思いする必要までは無いんじゃないの?
その前に先んじてブロリー達だけ逃がしてしまえないだろうか。
そんなことを考えていると、隣のカカロットが再度愚図り出した。
ああまたかと宥めようとしていると、再び部屋の扉が開いた音が聞こえる。
今度は誰だと視線を向ける前に、詰めるような鋭い声が投げかけられた。
「そこで何をしている!」
あん?さっきの医者じゃないな。
見ると入口からこっちに向かって来る男が一人。その手には抜身のナイフが・・・って!!
え!?うそ!?言ってる傍からもう来たのか!!??
ていうか近づいてきたその顔を確認すると、現れたのはなんとベジータ王その人である。
おま!!!映ってた影がなんかそれっぽい髪型してるなとは思ってたけど王自らが下手人だったのか!!
直接手を下されたとあればそりゃ恨みもひとしおだろうな!!
泣き喚いてるカカロットのほうはそのままに、急いでブロリーを抱きかかえる。
「そいつを渡せ。さもなくば・・・」
殺気を隠しもせず低い声で凄む王の言葉が終わらないうちに、俺は睨みつけてあっかんべー!と舌を出し悪態ついてから構わず窓の外へブロリーを抱いたまま転移で逃げた。
短距離ならば目標の人物などがいなくても視界内ならばどこにでも跳べる。
そのまま上空のほうを転移の繰り返しで移動しながら、とりあえず宮殿の方角を目指していった。
先んじて殺されかけているはずのパラガスの元へまずは合流する必要がある。
玉座の間でやられたことと、あの棄てられた場所でのシーンは上から光が入っていたことから恐らくは宮殿付近かさっきまでいた施設とのあいだに位置するどこか。上空から視認できるところのはずだ。
・・・とはいえ遠目からは判りづらく、思ったよりも時間が掛かってしまったが下を確認しつつ探し回っているとようやくそれらしき場所を見つけた。
そしてその途中見えた遠くのほうで、空に向かって一直線にぶっとんでいく人影がひとつ。
・・・・・ああ、『たったひとりの最終決戦』だ。
正直見てぇ~!!
でも優先すべきはブロリーの方!!
あっちで最期の戦いが始まっている以上、もう爆発まで時間がない。
瓦礫まみれのゴミ捨て場に降りると、大怪我をしたパラガスがひとりで倒れていた。
まだ意識はあったのか、空から落ちてきた俺達を驚いたような顔で見つめてくる彼に腕の中のブロリーを差し出す。
「ブ、ブロリー・・・!?無事だったのか、」
「おそわれて刺されそうだったから逃げてきたの」
「そうか・・・すまない・・・・・」
ふにゃふにゃと愚図るブロリーを安堵の表情で抱き締めているパラガスを見て、ようやく俺も一息ついた。
しかし長居している時間も無く、次第に地響きが強くなって強烈な光が辺りに満ち始める。
「な、なんだ・・・!?」
「フリーザがね、この星をこわそうとしてる。もうすぐバクハツするからにげて」
「馬鹿な!フリーザ様が何故!?」
ああそういえば、Z版はこの頃崩壊ギリギリになろうとバーダック以外の誰もフリーザのことを疑っていなかったな。
ブロリーサイドの描写ではその辺りの話が一切出てこなかったけど、パラガスもその例に漏れずだったんだろう。
狼狽えるパラガスをよそに、まばゆい光に照らされたブロリーが突然火のついたように大声で泣き始めた。
これまでの控えめな泣き方とは一変して人が変わったように、そして手を握ったパラガスを連れたまま浮かび上がっていく。
・・・映画で見たあの光景そのままだ。
すると上へ上へと昇っていく中、驚愕の表情を浮かべていたパラガスが突然こっちのほうを振り返り手を伸ばしてきた。
「何をしてる!お前も早く・・・!」
あ、そっか。星が爆発するって言ってんのに呑気にそのままぽつんと残ろうとしている幼女をさすがにそのままには出来ないのだろう。
・・・しかし、俺は一緒には行かない。行けない。
「わたしは、だいじょうぶ」
差し出された手は取らず、緩く首を振った後にっこりと笑みを浮かべて二人の旅立ちを見送る。
困惑するパラガスと、しっかりその手を握られたブロリーへ最後の言葉を
「ブロリー、げんきでね。・・・・・また、会いにいくから。ぜったい」
だから今は、ばいばい。
その台詞を最期に、視界が光で真っ白に埋め尽くされた。
―――――いや熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!
痛覚は熱とはまた別物ってか!?無理無理耐えられん!!転移!!!
短くまとめようとは思いつつ何故かどんどん文字数増えてっちゃうんだよな~。ふしぎだなあ