あの後会場のほうへ移ると、丁度少年の部の試合が始まるところだった。
観客席の上のほうで立ち見をしていた悟空たちのところへ合流すると、何やらみんな乾いた笑いだったり顰めっ面だったりで微妙な顔をしている。
「・・・どったの??」
聞けば先程まで、セルゲームを再現した映画なんてものを上映していたのだという。
あー、あの何か着ぐるみと着ぐるみがポカポカしてるやつな。
・・・あ、確かアレってZ戦士側の見た目の再現は妙に忠実だったような覚えがある。
役柄は噛ませだったけど、その中にブロリーも居たんだろうか・・・?ちょっぴり気になる・・・観ればよかったかも・・・。
隣のブロリーをチラリと見上げると、抱えた串焼きの束の最後の1本をもぐもぐしているところだった。もう全部食ったんかい50本はあったのに。
明らかに物足りなそうな顔をしているが、少年の部が終わったらお昼休憩に入る筈だからそこでいっぱい食べな~と宥めておいた。
試合のほうは案の定、決勝で悟天とトランクスがぶつかるまではほぼほぼ消化試合みたいなもん。
二人が出るその都度に、観客席の一角からギャーギャー喚く声・・・もとい声援が響き渡っていた。
あのでっけぇマダムとブルチチのママコンビが張り合ってるんだろう。
・・・後々のことを考えると、アイツら相手にヘイトを稼ぎ過ぎるのはあんまりよろしくないんだが・・・。
そしていよいよ決勝戦というタイミングになり、予選再開待ちでずっと足止めを食ってた悟飯とビーデルもこっちにやってきた。
やっほ~と手を振るとビーデルちゃんもにっこり笑って振り返してくれる。かわよ。
武舞台のほうでは縦横無尽に飛び回りながらのトラ天による本格的な取っ組み合いが始まって、そこまでの試合とは次元の違う激闘に最初唖然としていた観客達も今や大歓声を上げていた。
それを目にして、ビーデルもまさかここまでとは思っていなかったのかポカンとしている。
途中うっかり二人それぞれが超サイヤ人になっちゃったり、悟天がかめはめ波で建物の一部を吹っ飛ばしたりだとかのアクシデントはあったものの・・・最後は吹っ飛ばされて勢い余った悟天が観客席に足をついてしまい、場外負けの決着となった。
というわけで優勝は原作通りトランクス。・・・視界の端っこでベジータが嬉しそうにドヤ顔しながら悟空の肩をバシバシと叩いている。
するとそれをじっと眺めていたクリリンが悟空とベジータから視線を外したあとブロリーを、そして俺のほうを見た。どことなくニマニマしたような顔で。
・・・な、なんだよぅ・・・・・言いたいことがあるなら言えよぅ・・・・・。
決勝戦が終わり、次は少年の部の優勝者・・・つまりトランクスがミスターサタンに挑むというご褒美(?)コーナーだ。
しかし悟空たちは微塵も興味がないらしく、悟飯とビーデルだけを残してさっさと昼飯を食いに行ってしまった。
さっきから空腹を訴えていたブロリーもそれに続くというので、俺とはここで別れることに。そのまま予選通過選手しか入れない控え室のほうに行っちゃうからね。
昼休憩のあとはすぐに抽選が始まってそこからはいよいよ本戦になる。
立ち去るブロリーにひとつだけコッソリ"お願い事"を伝えて、そのままここで彼らを見送った。
・・・俺が参加登録した理由って、ぶっちゃけると裏のほうまでみんなと一緒についていきたかったからなんだよな~。
こんなことなら変なことせずに、普通に少年の部の選手として中に入ってからそのままそこに居座ればよかった。あ~あ。
トランクスにブッ飛ばされつつも『子供にわざと負けてあげた優しいチャンピオン』を身体張って演じるサタンの涙ぐましい道化っぷりを堪能したあと、悟飯とビーデルも選手控え室へ向かうことに。
その別れ際、今度はビーデルへ向けて俺は効果があるかはわからないけどひとつだけアドバイスを贈っておいた。
「あのねビーデルちゃん、余計なお世話かもしれないんだけどさ・・・・・」
しゃがんでくれた彼女の耳元でゴニョゴニョと"ソレ"を伝えると、少し驚いたような表情をしたあと納得したように頷いて笑みを浮かべる。
「・・・ありがと。一応、覚えておくわね」
原作から細かい部分が色々と乖離しているこの世界ではあるが、トーナメントの組み合わせはどうなるんだろうか。ブロリーの代わりに元々いた誰かが落ちたりもしてる筈だけど、大きくは変わらないのだとしたらビーデルの相手は恐らくスポポビッチになるだろう。
今伝えた内容が役に立てばいいんだけど・・・。
「あ、そーだ」
二人を見送ったあと、そんなことを考えていたついでにひとつ思いついた俺はちょっくら転移で神様の神殿に出向いてその後すぐに戻ってきた。
手の中には仙豆の袋。神殿から下りてカリン様のところで貰って来たんだ。
原作だと悟空が取りに行く展開だったが、何をトチ狂ったのか行った先でアイツは飯を食い出し結構な時間を待たせたまま中々帰ってこなかった覚えがある。ビーデルちゃんが重傷でヒィヒィ苦しんでるのを見ていたにも関わらずだ。
なので先んじて用意しておこうという算段である。
ついでにもうひとつ、神殿でデンデに頼んで念のために借りてきた"とっておき"も収納に入れてあるんだが・・・こっちは出来れば使わずに済むことを願うばかり。そもそも効果があるのかどうかもわかんないんだけどね。
おひるごはん用に屋台で肉まんをひとつ購入した後、俺はみんなと一緒に観戦しようと観客席にいるチチさんたちのところへ向かうことに。
「あらシロちゃん、あんたもブロリーと一緒に出るんじゃなかったの?」
「予選落ちしちゃった~・・・」
俺の姿を見たブルマさんにそう訊かれたが、予選の方法がパンチマシンの点数だったんだとショボくれながら答えると納得したような皆に笑われながらも慰められた。
マーロンちゃんの横っちょにお邪魔させてもらって肉まんをもぐもぐしていると、本戦の組み合わせ抽選が始まったのか部舞台にホワイトボードが運び込まれ続々と名前が書き込まれていく。
双眼鏡を構えたチチさんがそれを読み上げてくれるのを聞いている感じ、ブロリーはかなり後ろのほうの番号に当たったみたいだった。
ということは多分、彼の一対一での試合は見られないだろうな。一回戦の後半は丸ごとぜんぶバトルロイヤルに変わる筈だし。
もしあのアラビアンデb・・・もといランプの魔人みたいなおっさんの枠に入ってたら第一試合でブロリーにぶつかるかわいそうなクリリンなんていう図が見られただろうが、多分ブロリーの代わりに予選落ちしたのはボクサーっぽいおっさんだ。
他は悟空とベジータだったりビーデルとスポポビッチだったりと、概ね原作と同じ組み合わせになったようだった。
俺が肉まんを食い終わった頃合いでいよいよ本戦が始まり、第一試合はクリリンの圧勝。
第二試合はピッコロさんが棄権し、界王神様もといシンの不戦勝。
そして、第三試合。
ビーデルとスポポビッチの闘いがはじまる。
・・・どう、なるんだろう。
原作よりも段違いで強化されているビーデルが、とはいえ魔人の力を得ているスポポビッチ相手にどこまでやれるか。
内心ハラハラしながら見守る中、試合は始まった。
果敢に攻めて相手を打ちのめしていくビーデルと、幾度となく倒されようともその度に何事もなかったかのように立ち上がるスポポビッチ。
闘いがはじまってしばらくは実況も観客の歓声もそのタフさを讃えていたが、徐々に様子が変わってくる。
・・・くそ、やっぱりこうなるのか・・・・・?
原作からしてビーデルの攻撃そのものはスポポビッチへ通じてはいた。しかしそれを遥かに上回る耐久と不死にも思えるほどの復帰能力で徐々にビーデル側のほうが力尽きてしまい、息切れを起こしたところで蹂躙劇がはじまって状況が逆転したという流れだ。
スポポビッチとてその再生能力に限りが無いというわけではないだろう。だがサイヤ人のように圧倒的な高出力の攻撃が撃てるわけでもなく、かといってそこまでスタミナも多くはないビーデルのほうがどっちみち先に力尽きてしまうだろうというのは容易に予想できる。
続く攻防の中、ついにスポポビッチ側の攻撃がチラホラとビーデルへ当たりはじめた。
このままだと原作と同じ展開になってしまう・・・。
ビーデル自身も焦りを感じているようで、父親を驚かせるためにと隠していた舞空術も使用し上へ退避するも同じく空を飛んだスポポビッチによって叩き落されてしまった。
「いやだ・・・!負けたく、ない・・・・・!!」
降参を促す声にも応じず、鼻血を拭って再び立ち上がるビーデルちゃん。
知ってる。たとえ殺されかけても、あの子は絶対諦めない。
だから。
「ビーデルちゃーーーん!!がんばってーーーーー!!!!!」
力いっぱい叫んだ俺の声が聞こえたのか、こっちに視線を向けたビーデルは俺と目が合った瞬間はっとした顔をした。
・・・思い出してくれたかな?
再びギッと相手を睨んだビーデルは一直線に走り出す。
そして掴み掛かろうとしたスポポビッチの手が届く前に、姿勢を低く切り替えスライディングで思いっきり足元を払った。
そしてバランスを崩したその巨体を掴み、ぶん回して投げ飛ばす!
原作のほうでも巴投げみたいなことはしていたが、やはりパワーも段違いに上がっているんだろう。
女の子の細腕で投げられたとは思えない勢いで場外まで一直線だ。
しかし相手は先ほど見せた通り舞空術が使える。
飛ばされながらもニヤリと笑ったスポポビッチは、そのまま空中で姿勢を立て直そうとした。
―――その瞬間。
「負ける、もんかああぁぁぁーーー!!!」
気迫と気合いを一気に爆発させたビーデルの手から気功波が放たれた。
うぇぇ!?マジ!!??
まだ空中でバランスをとり切れていなかったスポポビッチも予想だにしていなかったのか、完全に不意打ちとなったエネルギーの塊が直撃。
ダメージそのものは通ってなさそうではあったが、衝撃によってそのまま巨体を建物の壁へ叩き付けた。
「じょ、場外ーーー!!ビーデル選手の勝ちです!!」
審判の宣言が響き渡り、武舞台に残されたビーデルが諸手を挙げて飛び上がる。
「やっっったぁ~~~!!!」
す、すげえ・・・・・。まさか気功波まで撃てたとは・・・・・。
確かに・・・悟飯に教わって気の扱いを覚えたあと、かなりの速度で飛べるようになったということはそれなりに練達していたという証。最初に気を練る練習をしたとき、両手のひらの中で具現化させた気の塊をそのまま大きく練り上げればそれが気弾となるんだろう。
実際にクリリンやヤムチャのような非サイヤ人でも昔から気弾や気功波は撃てていたんだし、しっかりとベースアップされた戦闘力・・・つまりは気の総量に加えて扱いも正しく覚えたとなれば、ビーデルだってその類が出来るようにもなってもおかしくはない。
もしかしたら舞空術と同じく、サタンや悟飯を驚かせようとしてずっと隠してたのかもね。
・・・俺が先刻、ビーデルに伝えた言葉。
『相手が大きすぎたりタフすぎるときは、無理に倒そうとしないで』
原作での彼女は、あくまで相手を打ち倒そうとしてひたすらに攻撃を加え続けていた。だけどそれだとあの不死性に押し勝つことは到底出来ない。
だから狙うべきはどうにかして場外へ押し込むこと。
あのアドバイスで言外にそう伝えたつもりだったんだが・・・察してくれただろうか。
ちなみにスポポビッチ相手でなくても、もしも対戦表が原作と変わって仮にブロリーに当たっちゃったりしてた場合でも一応通じる内容だった筈だ。
壁にぶつかったあと地面に落ちたスポポビッチを見ると、そこへ近寄っていったヤムーと何やら言い争うようにして言葉を交わしていた。怒られてんのかね。やーいやーい。
一方ビーデルのほうは大歓声の中、嬉しそうに周囲の観客へ手を振っている。
そして同じように嬉しそうにしている悟飯が入場口から顔を出しており、それに気付いたビーデルも部舞台から降りてそっちへ向かった。
・・・要らなかったなあ、この仙豆。
俺は頬を綻ばせながら、ポッケに入れてあった小袋を取り出して見る。
ここも原作と乖離してしまったが、これで良かったんじゃないかな。
あのリョナシーンは元々見ていて気持ち良いものではなかったし、この世界で直接関わり合って仲良くしてくれたビーデルちゃんがそんな目に遭うのを俺も見たくは無かったもん。
頷いて小袋を再びしまう。
それよりも次の試合を―――、
そんな時。
甲高い悲鳴が、突如辺りに響き渡った。
DB女子の中でもけっこうビーデルちゃん好きな方なので若干盛りがち。
ホントは2~3日くらいで続き上げようとおもってたんですがおにぎり屋さんシュミレーターに夢中になってたらいつの間にか一週間近く経ってましたふしぎ。
シロちゃんたちも何かお店やってくんないかなあ
でも食べ物関連だったらぜんぶブロリーさんが食べちゃうもんなあ
味も評判も良かったのに爆速で潰れる謎の店
「あの、ブロリーさん?」
「・・・・・」
「それ売ってもらわないと俺達の収入いつまでたってもゼロなんですけど?」
「・・・・・わかっては、いる」
「だったらその手を止めろぃ!!!!!」
ブロリーさんのつまみ食いが店の利益を消し飛ばす