惑星ベジータ崩壊のあと。
ちょっとした"寄り道"を済ませてから、俺は一旦地球まで戻ってきた。
ブロリーも無事に旅に出たことだし、ここからは予定通り数年おきくらいの時間を置いて彼等の様子を見に行こう。
何か不測の事態だったり事情が変わらない限りはひとまず5年ごと。
毎度毎度の接触のときも少し話したりする程度にして、あまり長時間は居座らないようにするつもりだ。
ちなみにブロリーにとっては5年ごとの邂逅となるわけだが、俺のほうは時間転移をガンガン使う予定なのでほぼインターバルなしでの連続した行動になる。
悟空のほうを追っかけてのんびりとリアルタイムで原作に関わるというのもアリっちゃアリなんだけど・・・、俺がブロリーに会いたくて待ちきれないのだ。
いつでも悟空のほうへも転移は出来るし、何か必要があればその都度赴けばいいだろう。
全く未知の謎の幼女として新惑星ベジータで突如立ちはだかるのも面白そうではある。
「よっし、そんじゃ早速行きますか~」
まずは5年後、ただし今回だけはその3日前となるタイミングへちょっとズラして時間転移。
・・・問題なく成功。
そしたら次はブロリー本人を目標として長距離転移だ。
既に一度会っている以上、これで宇宙のどこに居ようと俺からは逃げられない。
いざ転移してみると、そこはどこか知らない星の草生い茂る丘の上だった。
環境は地球に似ていて穏やか。既に陽は落ちているのか夜空に星が瞬いている。
音もなく降り立った俺の目の前には、ひとりの男の子がこちらに背を向けて座り込んでいた。
5歳になったブロリーだ。年の頃でいえば4~5歳ほどである今の俺と大体同じくらいの見た目になったはず。
「にゃっはろ~」
なんて声をかけるか迷ったのだが、なんとなく某エリート巫女風に軽く挨拶してみた。
何かしら特徴つけたほうがいいかなあっていう雑な理由で。
唐突なロリボイスのわけわからん声掛けに、ブロリーが訝しげな表情をしながらこっちを振り向く。
彼は映画で見た過去回想のときと同じような、薄汚れた布を紐で縛っただけのような簡素な服を身に着けていた。
「・・・なんだ、おまえ」
何だと改めて聞かれるとちょっと困るな。
通りすがりの幼女です。嘘です通りすがりじゃなくて君に会いに来ました。
「なにしてんの、こんなところで?」
答えは濁したまま、逆に質問を返してみる。ご年配の方にやると最近の若いもんはとか文句言われるやつだ。
「なにもしてない」
そうするとま~た反応に困る答えが返ってきた。
あんまり興味もなさそうな様子でそのまま正面へ向き直ってしまったので、近くまで歩み寄った俺はブロリーのお隣へ同じように腰かけてみる。
ちょいと失礼・・・よいしょ。草がちくちくする~。
するとそんな俺の横顔をブロリーはじっと見て、ぽつりと呟いた。
「・・・・・おまえ・・・みたことある」
ぎく。
まさか覚えてるのか!?赤ん坊の頃のことを!?
いや、原作でカカロットのことをずっと覚えてたあたり元々記憶力は良いほうなのかもしれない。
でもまあ・・・特に隠す必要もないよな?
「キミがあかんぼのときに会ってるからさ。なまえもしってるよ、ブロリー」
「そうか」
短くそう零したブロリーはそのまま視線を戻してしまう。
反応が薄い。
というか、なんか思ってたよりだいぶ大人しくないか?
もしかして俺のせいで何かしら矯正かかっちゃってたりするんだろうか。
「・・・もっとあばれたりする子かとおもってた、キミのこと」
「今日はもう星をみっつ壊した。腹がへって力が出ないからとうさんのこと待ってる」
「お、おう・・・」
前言撤回~!!しっかり暴れた後でしたぁ!!
膝を抱えてテンション低く縮こまっている今の様子からはなかなか想像し難いが・・・やはり空腹はサイヤ人の天敵ということか。
っていうかちっちゃい頃はパラガスのこと父さんって呼んでたんだな~!可愛いなこいつ~!
変にいじり倒して嫌われてもイヤなので心の中でニヤつくだけに留めておく。
ブロリーの目線の先には、この星の住民であろう小さめの集落があった。
何かの祝祭でもやってるのか、飾り付けがしてあってお囃子みたいな賑わいが微かにこっちまで伝わってくる。
なんだろう、大体どういう文明であっても収穫祭みたいな行事は何かしらの形であったりするよね。そういうやつかな。
「あっち、にぎやかだねえ。おまつりかな」
「・・・オマツリって、なんだ?」
「ん~?みんなであつまって、お祝いすることだよ」
「オイワイって、なんだ」
おいマジかよ・・・。
聞いたこともないくらいに、そういった類のこと一切から縁遠い人生を送っているのだという事実をまざまざと突きつけられて悲しくなってくる。
しかし当たり前に知ってる単語を改めて説明するのもなかなかに難しいな。
「ん~むむむむむ・・・なにか喜ばしいこととかおめでたいことがあったときに、おいしいものを食べたりおくりものをしたりして喜びあうこと、かな」
「そんなことをして、たのしいのか」
「たのしいよ?おいしいもの食べるって言ったじゃん。それだけでもじゅ~ぶん」
おいしいもの、と聞いたからかブロリーの腹が盛大に鳴った。
そういや空腹で動けなくなったって言ってたな・・・。
「うーん・・・そうだ!ちょっとまってて」
俺は立ち上がり、ブロリーの返事を聞くことなく転移でその場から姿を消した。
といっても帰ったわけではない。
集落は見える位置にあったため、近くまで短距離転移で跳んでから足を踏み入れる。
やはり収穫祭だったのか、広場には大きな野菜が積み上げてあって周りには屋台のようなものがいくつか出ているようだった。
う~んもしかしてと思ったんだけどどうかな~・・・?あ、あった!
屋台にはお金を取っているものとそうでないものがある。
祝祭だったら無料の振る舞いでもあるんじゃないかと思って来てみたんだがビンゴだったようだ。
見るからに手ぶらの子供たちが並んでいる屋台の列に紛れ込んで、器に入ったスープと焼き菓子を受け取る。
おともだちが待ってるんだと言うと屋台のおばちゃんは快く二人分を持たせてくれた。
「ありがとー!」とお礼を言って人気のない場所まで走り、転移でブロリーのところへ戻る。
「ただいま!はい、これ」
「・・・??」
差し出した器を見てブロリーは首を傾げていた。
「あそこで配ってたからもらってきたんだ。これ、キミのぶん」
「・・・くいものか?」
「うん、できたてみたいだからはやくたべちゃお」
器のスープからはほこほこと湯気が立っている。
恐る恐る受け取ったブロリーの手に焼き菓子も載せて、再び隣へ座り込んだ俺はさっそくスープに口をつけた。
あったけ~。そして濃厚であま~い。
野菜の収穫祭だったようだから予想はしていたが、かぼちゃのような芋のようなああいう系統の野菜を潰して作ってあるポタージュだ。
焼き菓子もかぼちゃみたいな味がする。サクサクまったり美味しいぞ。
「あまくっておいしいねえ」
「・・・知らない味だ」
ブロリーのほうはといえば、空腹に耐えかねていたのかスープを一気飲みしたかとおもうと菓子もほんの二口くらいでさっさと食べてしまった。
そんでもってなんか変な顔してる。
「あまいの、すきじゃない?」
「あまい・・・?」
おいおいおいマジかよ。
甘味を知らない子供がいるなんて信じたくない・・・いや、元の世界でも貧困層とかであり得る話なのかもしれないが。
目の前にそういう存在がいると途端に居たたまれない気分になってくる。
「そ、これがあまいの。おいしくなかった?」
「きらいじゃ、ない・・・・・けど、足りない」
そりゃそうだろうな。こんな皿一杯だけじゃサイヤ人の腹が膨れるはずがない。
しかし、これはあくまでその場凌ぎだ。
「このあとお父さんくるんでしょ、そのあとでおなかいっぱいたべな」
「・・・・・・・」
とても残念そうな顔をしている。
その不満の中身は量の足りなさだけではないと、思ってもいいんだろうか。
空になった器をブロリーから回収し、俺は立ち上がる。
そろそろお暇しなければ。
いや思ったよりも長居してしまったな。しょっぱなから予定と違えてしまっているが・・・まあ別にいいよね。
「そろそろかえるよ。ついでにお皿もかえしとくから」
「おまえ・・・この星の奴なのか」
「ちがうよ?でも、さっきのをおいしいって思ったんだったら・・・できればこの星はこわさないでくれると、うれしいかも」
座ったまま見上げてくるブロリーにニヘッと笑い返し、それじゃあね~と声をかけて集落のほうへ歩き出した。
「・・・あ、そうそう」
途中で一度振り返り、手を振って一言だけ残していく。
「おたんじょうびおめでとう、ブロリー」
返事は待たずに再び踵を返し、そして数歩だけ歩いたところで結局面倒臭くなった俺は転移で姿を消した。
環境が環境だけに放浪中のあの親子はマトモなもの食べてなさそうだな~と思った。