TS転生幼女は伝説の超サイヤ人を救いたい。   作:こねこねこ

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今更ながらDAIMAの履修をはじめました。
今後組み込めそうなところがあったら組み込もうと思います。





45:邪推と杞憂は紙一重

第25回天下一武道会、バトルロイヤル最終戦。

 

対峙するのは"世界最強の男という称号"を持つチャンピオン・ミスターサタンと、無名ではあれど"正真正銘世界最強の実力者"である伝説の超サイヤ人・ブロリーである。

 

 

 

―――――正直なところ、内心でブロリーは大いに迷っていた。

 

それは本戦が始まる少し前、別れ際に相方の少女が自分へ言い残していった"お願いごと"のせいだ。

 

 

 

『最後にミスターサタンと一対一の状況になったときにね。本当に心の底からイヤだったらべつにいいんだけど、もしそうじゃなかったらサタンに勝ちを譲ってあげてほしいんだ』

 

 

 

率直な感想として、意味がわからなかった。

 

何故だと理由を訊けば、返ってきたのは『ミスターサタンにはチャンピオンのままで居て欲しいから』という一言だけ。

 

 

 

 

改めて目の前の男を見る。

 

一応身構えてはいるものの、その上半身に反して腰から下は引けに引けている。その上、見るからに怯えていてガタガタと震えるその様子はまるで生まれたての小動物だ。

 

情けない。どう贔屓目に見ても、世界最強の男という称号に相応しいとは到底思えなかった。

 

 

・・・何故アイツは、こんなゴミのためにあんなことを。

 

 

思わず眉根が寄る。さすがにシロの頼みと言えど、わざと負けるという行為への抵抗感もあり今回ばかりは聞かなくてもいいかとブロリーは思い始めていた。

頼んだ本人も『嫌だったら別にいい』と付け加えていたし、そこまで深刻な問題に発展するような事柄では無いのだろう。

 

 

「かかかかか、掛かってこいぃぃ・・・」

 

 

震える声で冷や汗をダバダバと流しながら言葉だけで挑発してくるサタンの言に乗り、ブロリーが一歩踏み出してみれば途端に相手はビクリと身体を跳ねさせて後退り「ヒィィ!!」と小さく悲鳴を上げた。

 

 

・・・本当に、意味がわからない。

 

 

もういいかと思い、適当に一発殴って済ませようと拳を振りかぶる。

 

距離は一瞬で詰まり、ブロリーからすればほんの軽いものだが実質必殺の一撃となるストレートパンチがサタンの眼前へ迫った。

 

 

「ひぃぃぃぃ!!!」

 

 

ほとんど白目を剥きかけていたサタンは恐怖で動けもせず、人生の終わりを悟ったその脳裏に走馬灯が走る。

 

 

 

しかしその刹那。

 

 

 

流れていった幾多の記憶の中からどうして"それ"が唐突に引っ掛かったのかは本人すらもわからないが、絶体絶命のピンチであったその今際の際にサタンはポツリとある単語を無意識に口に出していた。

 

 

 

 

 

「・・・かみぶくろ?」

 

 

 

 

 

「―――ッッッ!!!????」

 

 

 

 

 

かつてどの試合も一撃のみのパンチで済ませていた在りし日の姿が目の前のそれに重なったのか、それとも持ち前の豪運ゆえに本当にたまたま口にした単語が天文学的な確率をすり抜けて"それ"に合致したのか。

 

どちらにせよほんの小声であったそれは確かにブロリーの耳にも届いてしまい、瞬時に混乱と動揺に見舞われたブロリーは思わず握っていた拳を開きサタンの口元を思い切り鷲掴んだ。

 

「ほへぇぃぃぃ!?」

「・・・だ、だまれ・・・・・!!!」

 

てっきり殴られるものと思っていたサタンは怯えた鳴き声を上げつつ目を白黒させている。

しかし、今度はブロリーのほうが冷や汗を流す番だった。

 

 

 

何故だ。何故今その単語を出した?

コイツに自分の正体が知られている?わざと負けなければ公言するぞという脅しか?

 

―――いや違う。何か、別の何かを見落としている気がする。ほんの小さな引っ掛かりが棘のように記憶のどこかに刺さったままで気色が悪い。

 

そもそも。

こんなにも弱いこの男が、ベジータやあの人造人間の女など"本当の実力者"がひしめいていた中で何故自分と一対一になるまで生き残っているのか。

 

そして思えば、あのシロの"お願いごと"はまさしくこの状況になることを前提としていたものだった。つまり、こうなるとアイツは予め分かっていたのだ。

 

・・・・・何か、意味がある。

 

 

 

再度改めて、目の前の男を見た。

 

今や酷い有様のその顔は、ここまでの地球での暮らしの中で何度か目にしたことがある。

何気なく流していたテレビのCMに、雑誌や新聞などの紙面に、はたまた出かけた先での街中の広告に。

大衆芸能や有名人などには一切興味も縁もないブロリーですら、日々の生活の中で勝手に目に入ってくるほどだ。

 

 

 

そこで、ふと思った。

 

もし今ここでこの男に勝ち、自分が"チャンピオン"とやらになってしまったら。

この男がここまでやってきた前述のそれらを、代わりに自分がやらなければならないということか?

 

 

 

・・・い、いやだ・・・・・!!

 

 

 

世界中で持て囃され、絶えず歓声を浴び、人に囲まれて。

どこへ行っても自分の顔が目に入るほどあちこちに貼り出される光景。

 

・・・・・想像するだけでも怖気が走る。

 

 

 

それに加えて、唐突に思い出した。

以前自宅でシロがテレビを見ながらポツリと溢していた一言。

 

『有名人ってたいへんだよねぇ~。おちおち普通に暮らしてもいられないんだからさ』

 

それは何かのニュースで、人気の役者だか何かがその住まいにまで報道関係者に詰めかけられ日常生活すらも脅かされているといった内容。

シロは『有名税』という言葉を使っていたが、要するに過ぎた名声にはそれなりの代償が付き纏うということだろう。

 

 

 

さらに数か月前、ジャガーという男が引き起こしたクローン事件のとき。

セルゲームでセルを倒したのが自分だということを知られた時に、シロはその男に世間への公表はしないように口止めをしていた。

 

『わたしたち目立ちたくはないし、あれはあれで面倒臭いこと色々引き受けてくれてるからむしろ助かってるんだよ』

 

当時は聞き流していてよく意味も解っていなかったが、"面倒臭いこと"というのはつまりそういうことだ。

 

 

 

―――――連鎖的に蘇ったそれらの記憶の数々が、一本の線で繋がる。

 

 

 

仮に自分が"チャンピオン"になってしまったら。

あちこちの広告に引っ張り出されて世界中に顔が知られ、行く先々では人混みに囲まれ、暴かれた自宅には人が押し寄せる。ついでに数年前の活動のことについても知られてしまうかもしれない。

今までのようにひっそりと静かに二人だけで暮らしていくことなど到底出来はしないだろう。

 

それに加え、そういった押しかける人間たちの対応や自分に降りかかる"仕事"の数々を管理し捌くことになるのは恐らくシロだ。

 

過去に格闘大会に出ていた頃のことを思い出す。

次第に存在が知れ渡ったのか、試合に出る度に幾人かの人間に付き纏われるようになりそれが煩わしくて仕方がなかった。

それらを振り払えたのはシロに転移で送迎して貰うようになってからであり、他にも試合関連の連絡のやりとりや雑事の一切をあの頃もシロは率先して引き受けてくれていたのだ。

 

当時ですらそんな有様だったのに、世界規模で名と顔が知れ渡ってしまったら。

それらの全てがあの頃よりも比較にならないほど輪をかけて酷くなるのは目に見えており、俗事に疎い自分に代わってシロが忙殺されてしまうのは想像に難くない。

 

壊れてしまう。今の穏やかな生活の何もかもが。

 

 

 

―――――実際の所はこの試合での勝利ひとつだけでミスターサタンの名声がそっくりそのまま丸ごとブロリーのものになるわけではないのだが、諸々に疎い彼はそう解釈した。

 

 

 

つまり、シロのあの"お願いごと"の真意は。

 

単に字面通りサタンに花を持たせてやるということではない。

 

『俺達二人の静かで平穏な生活を、このまま守っていこう』という意味だったのだ。

 

 

 

・・・いや待て、もう一歩足りない。

 

シロは『本当に心の底からイヤだったらべつにいい』とも付け加えていた。

 

 

 

あれは『それほど深刻な問題じゃないから気に留めなくていい』という意味ではない。

 

『二人の生活を守りたいけれど、わざと負けるっていう行為にプライドが耐えられないのならそれを優先しても大丈夫だよ』

 

という、自分への気遣いだ。

 

 

 

 

 

・・・・・そういう、ことか・・・・・・!!!!

 

 

 

 

 

つくづく、自分の浅慮が嫌になる。

危うく気付かないまま、何も考えずにそれらの気遣い全てを無為にするところだった。

 

 

 

"シロと二人の暮らしをこのまま守っていくこと"と、"たった500万ぽっちの賞金と自分の見栄"。

 

どちらを取るかなど、そんなものは比べるべくもない!

 

 

 

 

 

ここまでの思考がブロリーの脳内で駆け巡り繰り広げられたのは、サタンの口を塞いでから現実時間にして僅か1秒ほどの間。

 

そして彼は即座に結論を下した。

 

 

 

鷲掴みにしていたサタンの顔を、そのまま地面へ叩き付ける。

 

「ほげぇぇぇ!!!」

 

さほど力を入れたつもりはないものの、今ので骨の数本くらいは折れているかもしれない。

しかしそんなことを気にしている場合ではないブロリーは、地面に這いつくばったサタンへ彼にしか聞こえないほどの声量で小さく吐き捨てた。

 

「避けろ!」

「・・・は、はへぇ・・・・・??」

 

わけがわからないサタンは返事の代わりに間抜けな声を漏らし、それを聞いたブロリーは思わず舌打ちを零しつつ空へと飛び上がる。

 

・・・ああいった類の鳴き声を上げて可愛げがあるのはシロくらいのものだというのに。

 

苛立ちをそのまま転化するように、滞空したままその場で気を高めた。

 

 

『おおーっと、ブロリー選手、物凄い気迫だ~~~!!一気に勝負を決めるつもりかーっ!?』

 

 

どんどん気を高め、しかし同時に片っ端から放散させてさほど内部の"圧"自体は上げないようにする。

威力的にはほとんど意味の無い行為だが、はたから見るぶんにはとんでもなく派手なことになっているだろう。

 

現にこちらを見上げているサタンの顔は目玉が飛び出るかと思うほどに目を剥き血の気も引いて真っ青だ。受ければ命が100個あっても足りないと思うほどの大技に見えればそれでいい。

 

それで適当に時間を使ったあと、適当な構えでサタンのほうへ向かって急降下で蹴りを放つ。

 

「ぎ、ぎえぇぇぇぇぇーーー!!!!」

 

降下中わたわたと慌てたサタンがムシケラのような変な動きで奇声を上げつつその場から離れたのを見て、内心安堵したブロリーはそのまま轟音を立てながら武舞台へと激突した。

 

 

 

まるで雷でも落ちたのかと思えるほどの盛大な光と爆音、そして煙が収まったそこに残っていたのは。

 

武舞台のみならずその下の地面さえも抉り、巨大なクレーターと化した穴の真ん中に着地したブロリーの姿。

 

 

 

『あぁーっと!!これは!!審議が入ります!!』

 

 

ブロリーが先程まで居た位置はサタンよりも武舞台の中心寄りであり、そこから外側へ向けて斜めに過分にめり込んだそこは平面で見ると武舞台の淵があった場所から僅かに外側に逸れている。

 

 

『場外!!場外という判定になりました!!ブロリー選手、凄まじい一撃でしたが勢い余って力を入れ過ぎたようだー!!』

 

 

響き渡るアナウンスに、立ち上がったブロリーは密かに息をついた。

 

・・・・・これで、いい。

 

 

『素晴らしい攻撃でしたが、それを華麗に躱したサタン選手はさすがの一言!!見事チャンピオン防衛となりましたーーー!!』

 

 

武舞台に残されたサタンはポカンと間抜けな顔を晒したまま暫し呆然としていたが、観客からの大歓声に我を取り戻したのか即座に立ち上がってポーズを決めている。

 

 

 

 

 

それをちらりと見返したあと、ブロリーは何も言うことはなくそのまま選手入場口のほうへと立ち去った。

 

 

 

 

 





お察しかもしれませんが、幼女氏はそこまで深刻に考えて発言してるわけじゃないし単にブロリーさんが勝手に深読みし過ぎてるだけです。


この連載、『ガチブロ』のタグ付いてていいと思う?

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