お皿を返却し、一旦離脱した俺はまた地球へと戻ってきていた。
・・・一度目の訪問はなかなか良い感じに終わったんじゃないだろうか?
しかし映画での元々の描写が少なかったせいか、関わるごとにどんどん不憫エピが増えていく気がするな・・・。
まあそれを補って余りあるくらいにやらかしてる部分も大きいから、見てるぶんには釣り合いがとれてるのかもしれないが。
それはともかく、早速次の訪問タイミングへ跳んで会いに行こう。
再び5年後。ブロリーは10歳になっているはずだ。
もうだいぶ扱いにも慣れてきた時間転移で再度跳躍。
そしてブロリー目掛けて転移した。
着いた先は、一度目とは違いえらく赤茶けて寂れたところだった。
あっちもこっちも岩だらけ。荒れ果てた星のようだ。
転移でここに着いた以上、近くにブロリーが居るはずなんだが・・・見当たらない。おかしいな?
キョロキョロ見回していると、岩影の隅からチョロっとしっぽがハミ出しているのを見つけた。
あ!ブロリーみ~っけ!
近寄ってそーっと覗いてみると、さっき見た時とほとんど変わらない姿のブロリーが地面に転がってまたもや膝を抱えていた。
・・・また腹へって動けなくなってんのか?
「にゃっはろ~」
前回と同じ挨拶を投げかけてみると、気怠そうな視線と頭が僅かに揺れてこちらへ向けられる。
「・・・、おまえか」
そう、わたしです。
某魔女みたいな返しをしそうになったのを呑み込んで、とりあえず今回も話を聞いてみるかと傍へ腰を下ろした。
「どしたの?こんなすみっこで」
「・・・・・・・」
ブロリーは答えず、再び膝へ顔を半分くらい埋めてしまう。
言いたくないことを無理に聞き出そうとも思わないので、そのまま無言の空気が流れていたが・・・しばらくした頃、ふいにぽつりとブロリーは言葉を零した。
「・・・おこられた・・・・・」
「おとうさんに?」
ブロリーはただコクリと頷く。
どうやら不貞腐れモードでこんな隅っこに縮こまっていたらしい。
「そっか。今回はおなかすいたせいじゃないんだね」
「・・・はらもへった・・・・・」
さよけ。
ん~今回はな~・・・周りには何も・・・・・あ、そうだ。収納に大量に放り込んだままのアレがある。
俺は異空間収納に手を突っ込んで真っ赤な林檎をふたつ取り出し、ブロリーに片方を差し出した。
「りんご、たべる?」
「・・・・・くいもの?」
「うん、木の実だよ」
するとブロリーはそろそろと起き上がり、今度は特に訝しむこともなく素直にそれを受け取ってくれる。
齧りつくとシャクリ、と小気味いい音が鳴ってブロリーは僅かに目を見開いた。
「・・・、あまい」
「おいしいでしょ~。あ、まんなかのとこは固いしタネはいってるからやめときなね」
異空間収納に入れたものは時間が止まるため、この林檎も木からもぎ採ったときの瑞々しい状態を維持している。
俺も自分のぶんをしゃくしゃくかじって、ふと横を見るとブロリーは忠言を丸無視して残りの林檎を芯ごとまるごと食ってた。やめとけ言うたやろ!!
足りない?と訊くと頷いたので、収納からさらに10個ほど取り出した林檎をぜんぶブロリーにあげた。
ちなみに中にはまだまだ入ってる。地球でうろついてるときにちょっと採りすぎたかも。
満腹にはほど遠いだろうが、おやつをあげすぎてご飯が食べられなくなってもアレなのでほどほどで止めておく。
ブロリーの機嫌もいくらかはマシになったようだ。
三角座りのままだが顔を埋めるのはやめて、しかしぶすっとした表情はさっきと変わらず愚痴を垂れてきた。
「・・・とうさんは、オレよりもよわいのに、オレのこと怒ってくる」
「あー・・・・・」
何を窘められたのかは知らないが、確かにパラガスは戦闘力で見れば生まれてすぐの赤ん坊のブロリーの数値さえ超えられないままだったはず。
確か超のほうが4000くらいでZが8000くらいだったかな。
戦闘力至上主義的な価値観を持つサイヤ人において、常に子供のほうが親より強いというこのイレギュラーな関係は非常に難しいところなのだろう。
ブロリーが不満を持つのもまあわかる。
「しってる?"つよさ"ってね、ちからのつよさだけじゃないんだよ」
「・・・??なんだそれ」
「いろいろなことを知ってたり、口がとってもうまかったり、自分がこうげきするよりもひとのことをたすけるほうがじょうずだったり」
「よくわからん」
サイヤ人の中にも非戦闘員はいるし、それこそパラガスもまさに自分が矢面に立つより計略で人を動かすタイプだったはずだ。
単純な腕力で測れない領域のことを理解すれば認識もちょっとは変わると思うんだが・・・。10歳にはまだ早いか。
「たとえば、このあたりってぜんぜん食べられるものなさそうじゃん?こういうばしょからでられなくなったとき、ちからがつよいけどたべものがないブロリーと、ちからはよわいけどなにかとくべつな知識とかでたべものをみつけられる人とだったら、ブロリーじゃなくてそっちの人のほうが生き残っちゃったりするわけ」
「・・・おまえみたいに、なにもないところからくいものを出したり?」
「そうそう。わたしも力はよわいけど、ちょっとやそっとじゃ死なないからね」
「ふーん・・・・・」
「だからおとうさんもたぶんいっしょ。力はブロリーよりつよくなくてもさ、かわりにブロリーにできないことができたりするでしょ?」
「・・・・・・・」
思い当たるフシはあったのか、とくに反論は出てこなかった。
「それにね・・・ふつうはつよい相手にはこわがったり機嫌をとったりばっかりで、ちゃんと怒ったりってあんまりしてくれないものなの。だからよわいおとうさんがつよいブロリーのことをこわがったりせずにちゃんと怒ってくるってことは、ちゃんとブロリーのためになることを言ってくれてるんだとおもうよ。たぶんだけど」
「・・・・・そうなのか?」
「そうなんじゃないかなーと、おもった」
まだイマイチ腑に落ちない顔をしている。
まあこういう感情は子供のうちは実感しにくいところだからしゃーないな。親の心子知らずっていうのはどこの世界でも同じことだ。
「それにさ、ブロリーよりよわいおとうさんがそうやってイヤなことを言ってきても、ブロリーはおとうさんを殺そうとはしてないでしょ?」
「・・・うん」
「じゃあブロリーもちゃんとおとうさんのことを大事だっておもってるんだね。ふつうだったらイヤなやつは殺しちゃうでしょ、あばれんぼのキミなら」
「・・・かんがえたこと、なかった」
ずっと当たり前に傍に居る存在ゆえに、これまで意識したことなどなかったんだろう。
初めて気づいたと言わんばかりに僅かに瞠目したブロリーは俺の言葉を大人しく聴いている。
「だから、そう・・・ぜんぜんおかしいことじゃないんだよ。おとうさんの話も、ちゃんときいてあげてね」
「・・・がんばって、みる」
「えら~い!」
おずおずと頷いたブロリーの頭をちいちゃな手のひらでわしゃわしゃと撫でた。
これは明確な成長の兆しといえるだろう!褒めて然るべきだ!
するとブロリーはくすぐったそうに身を捩って少し困惑したような表情をした。
「・・・あたまをさわって、なにをしてる?」
「え?なでなでだよ?・・・きらいだった?」
さすがに馴れ馴れしすぎたか?と手を引っ込めるも、ブロリーは不思議そうに首を傾げていた。
「"ナデナデ"?」
「もしかして・・・してもらったこと、ない?」
「しらない」
おいこらーーーーー!!!なにやってんだ親父ィ!!
でかくなってからならまだしも!まだちっちゃい子供なんだからもっとスキンシップとれー!!!
撫でて貰ったことすら無かったんか・・・。不憫エピまたひとつ追加です。
ブロリーは少し何かを考えるような素振りを見せたあと、戦慄した顔で固まってしまっていた俺の手のひらにまた頭を押し付けた。
「もっとしろ」
「んあ?」
「"ナデナデ"、もっとしろ」
「よしきた」
こっちに向けられているブロリーの頭をこれでもかと両手で撫でくり回してやる。
どっちかっていうと大型犬にやるような感じで・・・あ、髪くっちゃくちゃになった。
「まんぞく?」
「ん」
ぼさぼさの頭で頷いたブロリーはどこかすっきりしたような様子。よかったよかった。
「それじゃ、おとうさんのところかえりな」
「・・・うん」
「わたしもそろそろかえるね。それじゃあ、」
「おい」
お暇しようと立ち上がる俺を、ふいにブロリーが呼び止めた。
「どったの?」
「なまえ」
「・・・ん??」
「おまえのなまえ、きいてない」
まさかブロリーのほうから俺に興味を?
というか今まで忘れてたけど、そうか名前・・・・・。
「あ~・・・そういえば、まだきめてなかった」
「きめてない?」
「わたしのなまえ、まだないんだ。ちょうどいいや、ブロリーがきめてよ」
「は??」
わけがわからないという顔をされたが、本当に名前が無いんだと再度告げるとブロリーは俺の頭からつま先までじーっと見たあと・・・ぽつりと言った。
「じゃあ、シロ」
え、犬・・・・・??
「・・・しろいから?」
「しろいから」
ネーミングセンス無!!!!!
解釈一致です。
「うん、それでいいや。これからわたしのなまえ、シロにする」
「シロ」
「なあに?」
「また来るのか」
「うん、くるよ」
「そうか」
言葉は多くない。
しかし嫌がっている様子もなく、少しずつでも心を開いてくれているような・・・気がする。気のせいじゃないよな?
「じゃあ、またね」
嬉しいような少し気恥ずかしいような、不思議な気持ちを抱えながら俺は転移で姿を消した。
幼女氏、ようやく名前を得るの巻。
いつの間にかめちゃくちゃ伸びててびっくりしてます!!
日間総合8位、二次創作日間ルーキー2位!!ありがとうございまーす!!