西の大陸、バビディの宇宙船が鎮座している岩場に程近い場所にて。
魔人ブウに食われたダーブラが死亡したことにより、息を吹き返した者達がいた。
「な・・・なんだ・・・!?どうなったんだ一体・・・!?」
「おいクリリン!生きてるか!」
「ピッコロ!・・・俺達、石にされた筈だよな・・・?」
石像から生身の肉体に戻ったクリリンとピッコロは、周囲一帯に仲間も敵も誰一人居ないことに困惑した表情を浮かべている。
「何故戻れたのかは分からんが・・・とにかく状況を確かめねばならん。他の奴等と合流するぞ」
「わ、わかった・・・・・」
近くには居ないものの、遠くにうっすらと悟空達の気は感じ取れるため皆生きてはいるのだろう。
戸惑いながらも、ピッコロに促されクリリンは共に空へと飛び上がる。
しかし遠景まで見渡せるほどの高度へ達した時、目に入った各地の惨状に二人は揃って愕然とする羽目になった。
「な、なんだよこれ・・・どこもかしこもメチャクチャじゃねえか・・・!!」
「俺達が石化してからどれだけの時間が・・・・・、!?おい待て、界王神様が近くにいらっしゃる!」
ピッコロが先ほど離れたばかりの宇宙船のほうへ目を向けると、そこから空へ昇ってきた界王神が同じく二人を見て驚きの声を上げる。
「あ、あなた方は・・・石になっていたはず!・・・ということは、ダーブラが死んだ・・・!?」
「界王神様!俺達が石化してから何があったのか、お聞かせ頂けませんか」
「ッ・・・、結果から言います。魔人ブウは恐らく復活してしまいました」
苦々しい表情を浮かべ、界王神は状況を端的に告げた。
そんな、と驚愕の声を上げる二人へそのまま手短に説明を続ける。
「私は、バビディの宇宙船の中に残された魔人ブウの封印された球を破壊しようと潜入を試みていましたが・・・すんでのところでダーブラに持ち去られてしまったのです。そしてそのすぐ後に、この魔人ブウと思しき禍々しい気配が現れました。その際にダーブラは殺されたのでしょう。魔人ブウの逆鱗に触れたのか、もしくはバビディに用済みとされたのか詳しいことはわかりませんが・・・」
「では・・・この世界の有様は、これも魔人ブウが・・・!?」
「いえ、この災害が起こったのはその前です。バビディの一味の仕業ではあるでしょうが・・・こちらも詳しいことは何も。悟空さん達はその被害を少しでも食い止めようと各地へ散りました」
「それで、界王神様だけがここへ・・・?」
「はい、何故かダーブラもバビディも気配が別の場所へ移動していたため、先程が絶好の機会だと思われたので。・・・結局、うまくはいきませんでしたが」
目を伏せた界王神がそこで言葉を切ると、不安気な様子のクリリンが慌てて口を挟んできた。
「あ、あの・・・!俺の家族は!目つきが鋭い金髪の女と、小さな金髪の女の子は無事でいたかわかりませんか!?」
「・・・そのお二方ならブルマさん達と一緒におられましたよ。向こうにはキビトを残してあるので、恐らくは大丈夫だと思います。皆さんが今いらっしゃる街には、幸いほとんど被害も出ていませんでしたから」
「そ、そうすか・・・よかったぁ・・・・・」
現況を聞いたクリリンは一転して安堵の息を漏らし、界王神は再びピッコロのほうを見る。
「私はこれからキビト達の元へ一度戻ります。状況を伝え・・・情けなくはありますが、皆さんの力をお借りしてでも魔人ブウだけは何としても倒さねば」
「ならば我々も。サイヤ人ほどの力はありませんが、何かのお役には立てるでしょう」
「・・・ありがとうございます。それでは急ぎましょう」
こうしてピッコロとクリリンを伴い、一行は再び西の都へと飛び立つのであった。
一方、再び神殿にて。
「・・・な、なんだって?」
「だから、地球には今のブウちゃんより強いひとが3人いるって」
「馬鹿言うんじゃないよ!ブウは界王神達すらたくさん殺した宇宙一の魔人だぞ?それに敵う奴なんてそうそういるもんか!」
「いるんだよねぇそれが・・・」
お菓子を頬張り続けるブウの背中に凭れ掛かってぶにぶにと遊びながら、シロは少しばかり眠たそうな顔をしつつ再び口を開く。
「んー・・・べつに信じないのはバビディさまの自由だけどさ~、このまま放っといてあっさりやられちゃっても知らないよ?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ・・・!」
バビディにとっては到底信じられるような話ではないし、正直信じたくもない。
ただの子供の妄言とここで切り捨てるのは簡単だ。
・・・しかし、もしもそれが本当であったならば。
ここまでの手間と時間をかけ、やっと復活にまで漕ぎつけた魔人ブウをすぐに殺されてしまいかねないということになる。
ダーブラも既に失った今、それだけは何としても避けねばならないだろう。
それに先刻の・・・魔人ブウの製作者の話をしていたときのダーブラの言葉を思い返せば、この娘が適当な出まかせを言っているわけではないという可能性は十二分にあった。
「く、くそぅ・・・・・一体何者なんだ、その強い奴らっていうのは!」
「サイヤ人だよ~」
「さっきも言ってたなぁ、その名前?・・・よし、そのサイヤ人とやらについてお前が知っていることを教えるんだ」
兎にも角にも、地球の勢力について明るくはない以上情報を得ることは重要だ。
バビディの命令に、よしきたとばかりにシロは自分の知っているサイヤ人についての知識をつらつらと挙げ始める。
「サイヤ人っていうのは元々惑星ベジータを拠点にしていた戦闘民族でね、他の星を征服して転売することを生業にしてたんだ。だけど数十年前に星ごと滅ぼされちゃって、今残ってるのはたまたま生き残ったほんの数人だけ。それがこの地球にいる3人」
「つまり、オマエの言ってたブウを倒せる3人か?」
「そう。んで、どうしてやたらめったら強いのかっていうと・・・簡単に言うとここ10年くらいで進化しまくっちゃったから。サイヤ人には『超サイヤ人』っていうめちゃくちゃ強い戦士の伝説みたい話が昔からあったんだけど、残ってる純血の3人とその子供達含めて今や全員がその超サイヤ人に覚醒しちゃったの。その上この地球って今回だけじゃなくこれまでにもちょくちょく存亡の危機に瀕しててね、そういう相手と戦い続けてきたその度にガンガン進化していった結果こうなっちゃった」
「な、なんだそれ・・・メチャクチャじゃないか・・・」
「戦闘民族って言うだけあって戦うことが何より楽しい連中だからね~。地球に住み始めてからは穏やかに暮らしてるから、今は侵略行為だとかは一切してないんだけど」
・・・それに、残った純血のサイヤ人は全員が男性のため今後もう新しい純血が生まれてくることは決して無い。
近いうちに絶滅することが決まっているがゆえに、この劇的な進化は滅びる直前の生存本能的なものも関係しているのかもしれないなとシロは考えていた。
消えゆく炎は、その間際にこそひときわ輝くものなのだから。
「・・・まぁ、とんでもない連中だってことは分かったよ。そうするとアレかぁ?さっきのおっかない奴もその3人のうちのひとりだってことか」
「そう。ブロリーはその中でも一番つよくって・・・・・」
そこまで口にしたところではた、と何かに気付いたようにシロは動きを止める。
「・・・そうだ・・・さっき、ブロリーがここに来て・・・・・それから、どうなったの・・・?」
「ん?ボクは知らないぞ。オマエがどこかにやったんだろ」
「・・・おぼえて、ない・・・・・」
ここへ飛来したブロリーが降り立ったところも、そこへ走って行ってしがみついたのもハッキリと覚えていた。
ただ、そのすぐ後から先ほど目覚めるまでの記憶が部分的にすっぽりと抜け落ちている。
実際バビディが術を掛け直した際、その精神状態を戻すために錯乱する原因となった記憶を雑に排除したせいで欠落が起きていたのだが・・・当のシロにそれを知る術はない。
ただ、自分が飛ばしたのだとすると。
「どっか、他の星に飛ばしちゃった・・・?」
飛ばした先が地球上のどこかなら、すぐにまたここへ来ているのではないか。
そうでないということは、もっとずっと遠くへ追いやってしまったということだろう。
「・・・なんで、そんなことしたんだろ・・・・・」
「おい、話を戻せ。要はソイツ以外に、ブウを倒せそうな奴がまだ2人いるってことなんだろ?」
「あ、うん。そーなる」
バビディにせっつかれ、シロは再び目の前に意識を戻した。
「うぬぬ・・・それじゃあオマエは、ブウが倒されないようにするにはどうしたらいいと思う?」
「えー、ぜんぶ聞くじゃん・・・そだねえ、手っ取り早くブウちゃんを強くするには吸収だろうけど・・・アレ後から解除されちゃう可能性もあるしなあ・・・出来れば、ブウちゃんそのものを強化するのが一番いいだろね」
「強化か・・・ボクがパワーアップさせられる量にも限度はある。オマエ、他に何か良い方法知ってたりしないのか?」
「ん~、あるにはあるよ。いくつか手順踏むから、ちょっと時間かかっちゃうかもだけど・・・・・」
「その間に奴らがブウを殺しに来ないとも限らないぞ?」
「・・・ていうか、もうこっちに向かってるかもしんないまである。あのひとたちってブウちゃんの気配も感じ取れるだろうし」
「はぁ!?じゃあ急がなきゃいけないじゃないか!」
「そうなるねえ」
相変わらずのほほんとした顔をしているシロへ、思ったよりも状況が切迫していることを知ったバビディは慌てた声を上げる。
「そうなるね~じゃないよ!どうにかそいつらの足止めをしろ!・・・あ、いや、オマエはその強くする方法のほうに取り掛からなきゃいけないのか・・・?と、とにかくなんとかしろ!」
「えぇ・・・人使い荒いなぁ・・・んー、要はしばらく時間稼げたらいいんだよね?」
主人の雑な無茶振りに、それでもシロは頭の中で情報を整理して暫し思考に耽った。
ブロリーが不在の今、相手は悟空とベジータの二人。
その両者を、それに加え出来ればもっと周りもうまく巻き込んで足止めする方法。
「そんじゃ・・・こういうのはどうかなぁ」
やがてシロはひとつの妙案を弾き出し、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
一家に一台シロペディア。