TS転生幼女は伝説の超サイヤ人を救いたい。   作:こねこねこ

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たまには特殊フォントってやつを使ってみたくて。





59:矜持

神殿での騒動の一方、東へ遠く離れた岩石地帯にて。

大猿と化した悟空とそれに対抗するZ戦士達、その状況は惨憺たる様相を呈していた。

 

遠くからそれを観察するバビディは子供のようにはしゃぎ、キャッキャと歓喜の声を上げている。

 

「やれやれ~!もっともっとギタギタにしちゃえ~!」

 

仲間や家族といったかけがえの無い者同士での殺し合い。

人の苦しむ様を見て愉悦に浸るのが何より好きなバビディにとって、こういった場面はこれ以上ない娯楽であった。

 

 

 

 

 

敵味方の区別なく見境無しに襲い掛かる黄金の大猿を前に、悟飯やピッコロがいくら言葉での説得を試みようとも相手は一切の聞く耳を持たない。

ただただ疲弊し、傷ばかりが増えていく。

 

岩場を砕きながら踏みつけられた悟飯が凄まじい圧に叫ぶも、その声を聞いてさえ大猿は何ら反応を返す様子もなかった。

 

「よせ!!お前の息子なんだぞ、わからないのか!!」

 

ピッコロは悟飯を救出するべく間に入ろうと手を出すが、尋常ではない膂力に到底太刀打ちが出来ない。

 

飛来したベジータが横手から強烈な蹴りを見舞い、巨体が僅かにバランスを崩した隙にようやく引き摺り出すことに成功した。

 

 

 

自分の子ですら構わず踏み潰そうとしたその有様を見て、ベジータは内心歯噛みする。

 

聞くところによればかつてカカロットは幼少の頃、大猿となった際にその育ての親を自ら踏み殺しているのだという。

 

そのことに気づいたのは皮肉にもベジータと初めて相対し、そして大猿となったその姿を見たあの一戦でのことだったらしいのだが。

この地球というぬるま湯のような恵まれた環境で、情を受けて育ってきたらしい奴の中で目には見えずともひとつの傷として残ったであろうことは想像に難くない。

 

 

 

―――親が子を殺し、子が親を殺す。

それがサイヤ人の性だ。

 

 

 

そのことに対し、ほんの数年前までの自分であったならば当然のことと特に抵抗なく疑問も持たなかっただろう。

 

 

・・・しかし、今はどうだ。

 

 

家族を持ち、穏やかな暮らしに浸ってなおそれを悪くないと感じるまでに変容してしまった今の自分には。

 

到底許し難いものだった。

 

 

 

これまでに家族を、仲間を守ろうと数々の敵を打ち倒してきたカカロットが。

今はその手で全てを捻り潰そうとしている。

 

 

 

―――自分がその背を追い続けてきた男が。その生き様が。こんなにもあっさりと否定され、踏み躙られる様には我慢がならなかった。

 

穏やかな環境に絆されたとはいえ戦士の、戦闘民族としての矜持を捨てた覚えはない。

 

 

 

「・・・いい加減にしろ、カカロット!!!」

 

 

 

爪が食い込むほどに拳を強く握り、覚悟を決める。

 

高めた気を爆発させ、纏ったそれをそのまま突撃した大猿の鼻先へと打ち付けた。

 

猫騙しの如く一瞬怯んだその隙に、大きな赤い眼を真っ直ぐ睨みながらその眉間へ一撃を叩き込む。

 

 

 

「サイヤ人の本能になぞ呑まれるな!!」

 

 

 

そしてそのまま全力で気を解放し、脳天を撃ち抜かんばかりに渾身の気功波を浴びせた。

 

 

 

貴様は!!『カカロット』ではなく!!!この地球で、『孫悟空』として、生きることを望んできたんじゃないのか!!!!!

 

 

 

大猿が咆哮を上げ、凄まじい光と衝撃波に辺り一面が荒れ狂う。

 

 

 

 

 

視界が白一色に染まり、全ての音が消え―――そしてやがてそれが引いたあとには。

 

 

 

 

 

その気力の殆どを使い果たし息も絶え絶えとなったベジータと、

 

 

 

その拳を受け止める、"孫悟空"の姿があった。

 

 

 

 

 

「ありがとよ、ベジータ・・・効いたぜ、今のは」

 

「・・・ふん・・・下級戦士が、手間掛けさせやがって・・・・・」

 

 

 

僅かに口角を上げ、ずるりと崩れ落ちそうになったベジータの腕を肩へ回し担ぎ上げて悟空は辺りへ視線を巡らせる。

 

「悪かったなピッコロ。おめぇ達にも迷惑かけちまった」

「お前・・・その姿は・・・・・」

 

はたから二人の様子を見ていたピッコロは、改めて悟空のその変わり様を見て半ば茫然と呟いた。

 

見慣れたいつもの姿とは随分と雰囲気が違う。

 

毛量の増えた髪、そして上半身を覆う赤い体毛と同じく赤い尻尾。

赤い縁取りに彩られた目つきは鋭く、元々黒曜のようだったその瞳は金色に輝いている。

 

ブロリーやベジータと酷似したその様子から、悟空も同じく"超サイヤ人4"とやらにようやく覚醒できたということなのだろう。

 

「今まで何度やってもダメだったってのによ。まさかコイツに連れ戻されるなんて思ってもみなかったぜ」

 

尻尾を再び生やして以降の数年間、ベジータとシロの協力のもと幾度か大猿からの進化を試みたことはあったがすべて失敗に終わっていた。

悟飯のみならずチチにまで協力を仰ぎ引っ張り出してなおダメだったのだ。

 

家族の説得でも届かなかったがゆえに半ば諦めていたそこへ、まさかあのベジータが至ることが出来ようとは。

 

ライバルとして幾度となく相対し、拳を交えた相手。この世に僅かに残された、数少ない同族。

孫悟空という人物に占める"戦士"としての部分へ訴えかけるには、確かに最適な人物ではあったのかもしれない。

 

「・・・ひとつ、借りが出来ちまったな」

 

損耗激しく意識が落ちそうになっている相手へギリギリ聞こえない程度の大きさでぽつりと呟いたあと、悟空は改めてベジータを抱え直す。

 

そして満身創痍となっていた二人と共に、一度キビトや界王神の待つ西の都へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、つい先刻まではしゃぎながらその様子を見ていたバビディは。

 

孫悟空が変身を遂げたのを見た途端、慌ててその場を離れ我先にと逃げ出していた。

 

「なななな、何なんだよあれはぁ・・・!!」

 

話が違う。

そこまで長い時間稼ぎにもならず、集った連中に大した被害も出せず。

怪物から人の姿へ、しかも何やら強そうな風貌へ変わってしまった。

 

急いで離れてある程度の距離を置いたあと、バビディは魔術で自らを転送し神殿へと戻る。

 

そして魔人ブウの隣で縮こまったシロを見つけた途端、いきり立って食って掛かった。

 

「おいオマエぇ!!聞いてた話と違うぞ!アイツ、もう人間に戻っちゃったじゃないか!!」

「・・・え?なに?どしたの?」

 

キョトンとしている幼女へ先ほど見た一部始終を話すと、シロは慌てるどころか薄く笑みを浮かべて何やら嬉しそうな様子を見せている。

 

「そっかぁ・・・出来たんだ・・・・・」

 

その反応にバビディは一段と苛立ちを募らせ、唾を飛ばす勢いでがなり立てた。

 

「何呑気なこと言ってるんだよ!このままじゃブウがやられちゃうだろうが!!強化アイテムってのは手に入ったんだろうねぇ!?」

「・・・あ、それはまだ。木は植えてきたんだけど、まだ実は収穫できてなくって・・・」

「なにぃ?じゃあ今すぐ急いで取ってこい!このグズ!!」

 

まだ目的のものを入手できていないことに腹を立て、癇癪を起こしたように腕を振り乱し小さな拳でシロをぽかりと殴りつける。

 

「わ!叩かなくってもいいじゃん~・・・おこりんぼ・・・・・」

「うるさい!いいか、オマエの役目は魔人ブウをとにかく強くして助けることなんだからそれだけ考えろ!分かったらさっさと行ってくるんだよこの役立たず!!」

「は~い・・・・・」

 

特に傷などにはなっていないものの、シロは消沈した様子で叩かれた頭をさすりながら転移で再び姿を消した。

 

それを見届けたバビディはフンとふんぞり返ってぼそりと言葉を零す。

 

「全く・・・な~んか妙に扱い辛いし変なとこで反抗的だし、もう少ししたらあの小娘も用済みでいいかなあ・・・ブウさえ最強になったらもう要らないだろうから、適当なところで使い潰して捨てるかぁ・・・・・」

「・・・・・・・」

 

そのブウがジトリと物言いたげな目で見ていることに気づきもせず、バビディは今後の算段を立てながらフヒヒと厭らしい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

―――その時。

 

辺り一帯の空気が、急に軋むように震えた。

 

 

 

 

 

「・・・な、なんだ・・・・・!?」

 

 

 

凄まじい気が周囲を満たし、何かピキバキと罅割れるような音がしたかと思ったその直後。

バビディ達から数メートル離れたとある一点で突如爆発が巻き起こる。

 

 

 

 

うぎゃっと悲鳴を上げて軽く吹き飛ばされたバビディが視線を上げると、そこには。

 

 

 

シロがこの場を離れたことで拘束を解かれた一人のサイヤ人が、禍々しい気を纏いながら鬼気迫る表情でそこに立っていた。

 

 

 

「な、なななななんだオマエ・・・!!一体どこから・・・・・!?」

 

 

 

慄くバビディは、それがブロリーだとは気づいていない。

 

以前見た時とは比べ物にならない巨躯、そして長く伸びた金緑の髪のせいだろう。

 

 

 

そして全身からスパークを迸らせ、虹彩の見えない眼で真っ直ぐにバビディのほうを睨むブロリーは・・・・・低く地を這うようなその声で、ただ一言だけを呟いた。

 

 

 

「・・・・・殺してやる

 

 

 

 

 





バビディのことは悪役としてイイキャラだなあと思ってますし別に嫌いとかじゃないんですよ。
滅びて然るべきだとは思ってますけど。


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