TS転生幼女は伝説の超サイヤ人を救いたい。   作:こねこねこ

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66:明暗分かつ水鏡の

天界の神殿でブロリー達が家捜しに走り回っていた一方、地上へ降りた魔人ブウとシロはというと。

 

完成した家の屋根の上で、呑気にぽかぽかと日向ぼっこに興じていた。

まだ初夏というには早い季節、吹き抜ける風は心地よくお昼寝には丁度いい。

 

二人並んでのんびりムニャムニャと微睡んでいると、ふいに下の方から物音が聞こえてきた。

 

騒がしいそれにブウが何だ何だと顔を出し、ピョンと飛び降りていったそれをやや遅れてシロも追ってみる。

するとそこには、ブウへお菓子の箱を差し出す見覚えのある姿があった。

 

「・・・あっ、おっちゃん~!」

「へっ!?」

 

声を掛けられたその男―――ミスターサタンも予想外の人物との再会に驚き思わず目を見開く。

魔人ブウが他の誰かと行動を共にしていること自体は特段おかしくはないものの、まさかそれが例の魔導士とやらではなく人間・・・しかも、見覚えのある小さな女の子だとは。

 

「お、お嬢ちゃんは確か・・・ビーデルの友達の・・・・・!?」

「そだよー、昨日ぶり」

 

一瞬人質か何かかとも考えたが、見たところ怯えた様子もなくそんな雰囲気は感じられない。

そしてにこやかに手を振るシロと驚いているサタンとを見比べ、顔見知りらしいその様子に魔人ブウだけがキョトンとした顔をしている。

 

「オマエ、こいつのこと知ってるのか?」

「ほら、こないだ言ってたサタンって人。このひとだよ」

「サタン!そうか、オマエがサタンかー!」

 

シロからの紹介を聞くなりパッと表情を明るくしたブウに、サタンは再び目を剥くこととなった。

 

・・・まさか自分の名前が魔人ブウに知られていようとは。

しかし、世界チャンピオンとしての名声というよりかは・・・何やらこの少女が自分のことを魔人ブウへ事前に伝えていたかのような反応だ。

 

「オレと仲良くなれるニンゲン!」

「へ・・・??ど、どゆこと・・・???」

 

ワケがわからないサタンはブウのその言葉に目を点にして暫しポカンとしていたが、ブウを挟んだ向こう側でシロが何やらジェスチャーで合図を送ってきていることに気が付いた。

 

 

それはまるで、『いいから話を合わせておけ』とでも言っているかのような。

 

 

 

(・・・・・そ、そうか!!)

 

 

 

サタンという男は、世界格闘技チャンピオンとして長くその看板を背負う者として表舞台に立つことが多い。

単なる強者というだけでなく、衆目を愉しませるエンターテイナーとして数々の場数を踏んできた彼はその場の空気を読むことに長けている。

 

そしてそれに加え・・・自分の理解の範疇を超えた物事や状況を目にしたとき、それをとことん自分にとって都合の良い方向へ解釈する傾向にあった。

 

 

―――つまりは。

あの少女は自分が魔人ブウへ自然に近付きその討伐をスムーズに果たせるよう、事前に御膳立てをしてくれていたというワケだ!

 

 

「そそそそうなんですよぉ~!!魔人ブウさんと是非とも仲良~くさせて頂ければと思いましてですね?あっコレ、お近づきの印です。高級チョコレートですよ~、魔人ブウさんはお菓子がお好きと伺いまして。ささっ、どうぞどうぞ」

 

確信した途端に、回る口をフル回転させながらサタンはその手に持っていた箱のフタを開け再びブウへと差し出した。

その中に整然と並ぶ小振りなチョコレートは、贈答用のそれなりに値が張る代物だ。

 

・・・但し、その中には酒やフルーツのジュレに紛れて致死量を優に越える猛毒が仕込まれている。

 

「チョコか~!コーキューってなんだ?」

「とってもお高くて、おいし~いってコトですよぉ!」

 

サタンは揉み手でゴマを擦りながら、魔人ブウがウキウキと嬉しそうにチョコを口へ放り込んだのを見て内心で"勝ち"を確信した。

 

・・・正直なところ、こういう手を使って不意討ちを狙う姿を子供の目に晒すことに対し若干躊躇する気持ちも無くはない。

しかし相手はあのセルと同等、もしくはそれ以上に危険な存在とされる魔人ブウだ。何時ものように煽り倒し下手を打てば機嫌を損ねたブウに殺されるリスクもあるし、それに何故だか不思議とあのシロという子であれば口裏を合わせ黙っていてくれるのではないかという打算も働いた。

 

ひとまずは優先してブウを倒してしまい、その後で何もかもを口先で丸め込んでゴリ押ししてしまえばいいのだ!

 

 

・・・・・そう思っていたのだが。

 

 

「うんま~い!!今まで食べたチョコの中で一番ウマいぞ!」

「え?・・・あ、そ、そうすか・・・・・」

 

たった一粒だけでも食べればすぐにのたうち回って死んでしまうはずのそれを、次々に口へ放り込んではただただ美味しそうにムシャムシャと食べている。

そしてあっという間に箱の中身全部を食べきってしまい、魔人ブウは上機嫌で「オマエ、やっぱりイイ奴!」とサタンへ笑顔を向けた。

 

 

―――まるで純粋な子供のようなその反応に、ほんの少しの罪悪感がチクリと胸を刺したような・・・そんな妙な気持にさせられる。

 

しかし相手は人類の敵だ。

ほんの一瞬のそれを振り払い、サタンは若干引き攣った笑みを顔に張り付けた。

 

「よ、喜んで頂けて何よりです・・・あっ、他にもお土産がいくつかありましてですね!」

 

持参したバッグから次々に手を変え品を変え差し出してみるも、結局ブウを害することは出来ず仕舞い。

毒入りの食べ物も、爆発するゲーム機も、キャッキャとブウを喜ばせるだけだ。

 

そしてそんなサタンとブウのやり取りを、シロはニコニコしながらずっと眺めている。

 

 

 

・・・こうしてすっかりサタンのことを気に入ったらしいブウは、今日出来たばかりの家へ彼を迎え入れることにした。

 

それに乗ったサタンの目論見は勿論、ブウの身の回りの世話を焼きつつ隙あらばその命を頂こうという目的のためである。

 

そしてシロもその間に混じって時には緩衝材となり、時には見守り、サタンを手伝いつつ束の間の平穏な時を二人と共に暫し過ごすこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブロリー、悪い報せだ」

 

 

ふいに姿を見せたピッコロにそう声掛けられて、倉を漁り散らしていたブロリーは振り返った。

 

捜索をはじめてからおよそ半日近く。既に陽も傾き、再び東の空が茜色に染まろうかという頃合いだ。

 

 

「・・・なんだ」

「界王様が今しがた知らせて下さったのだが・・・・・超神水は、もう・・・ない」

「!!」

 

これ以上にまだ事態が悪化するのかと身構えていたブロリーにとって、それは最も聞きたくなかった一言だったかもしれない。

 

 

促すピッコロに連れられ神殿の建物から外へ出て、向かった敷地の隅の隅・・・縁のところに"それ"は落ちていた。

 

 

白と青の装飾が施された、砕けた壺の破片。

聞いていた特徴と一致する。

 

 

「・・・これが、そうか」

「界王様が言うには・・・オレ達がここへ来るより前に、既にこれを手にしていたシロが破棄してしまったようだ」

「何故・・・いや、アイツなら知っていてもおかしくはないな」

「捨てた理由まではわからん。しかし、どうやら今回の事件が起こるよりも前から既に確保してあったらしい。・・・・・お前やベジータがもし操られた時に、飲ませるつもりだったようだ」

「・・・・・そうか」

 

どうやら界王は、シロというより魔人ブウの動向を監視する中で偶然その場面を目にしたらしい。

その後もずっと魔人ブウのほうを注視していたが、ふと神殿のほうを見ると今更になって超神水を必死に探し回っている三人の姿に気付き慌ててピッコロへ報せをくれたのだとか。

 

 

いずれにせよ、これで・・・シロを正気に戻せる方法はもう、ポタラを除いて全て無くなってしまったということになる。

 

 

 

「・・・少し、放っておいてくれ」

「もう日も落ちる。今夜は少しでも休んで体力を戻しておけ。お前、昨夜は一睡もしていないどころか武道会以降ずっと碌に休息をとっていなかったのだろう。・・・魔人ブウとあの娘も、今のところは破壊も殺戮も行わず大人しくしているようだ。何か状況に変化があれば知らせてやる」

 

ぽつりとそう呟くように溢したブロリーへ、ピッコロはそれだけを伝えると踵を返しその場を後にした。

 

独り残されたブロリーは、ふいに脱力したようにその場に座り込む。

 

 

 

―――――いよいよもって、決断を迫られていた。

 

 

 

ブロリーがずっと、シロを"生きたまま"正気に戻したいと拘っていたのには訳がある。

 

・・・この地球では、命の重みというのが妙に軽い。

それはドラゴンボールという超常の力をもって、死んだ者の蘇生が容易であるためだ。

 

シロにおいても、一旦はその命を絶って正常に戻ったあとで改めて生き返らせればいいのではないかと恐らく仲間内には言われるだろう。

 

 

 

しかし、もしもそれでシロが本当に正気に戻ったならば。

ここまでの罪を犯した身で、この世に戻りたいと思うだろうか。

 

皆に合わせる顔が無いと、恐らくは自ら蘇生を拒むだろう。シロのことをよく知るブロリーにはその光景が、そんな未来がありありと見える。

 

 

 

つまりは・・・・・一度あの世へシロを送ってしまえば最後、もう二度とブロリーの元へは戻ってこない気がしたからだ。

 

 

 

だから意地でも僅かな可能性を探ろうとした。

 

しかし結局この手に残されたのは、あの老界王神から預かった小さな耳飾りひとつだけ。

これを使うことはすなわち、"シロという人物"という個の消失を意味する。

 

 

 

迷っていられる時間はそう長くはない。

 

 

 

 

 

―――陽が落ちて徐々に宵闇に染まっていく空の色は、まるでそれを眺めるブロリーの心象をそのまま映し出したかのようだった。

 

 

 

 

 






次か次の次くらいには話が進展すると思うんだけどなあ(希望)



前の話から一週間近く経ってそろそろ更新したいな~続き書こ~って思ってた矢先にめちゃくちゃガッツリ風邪ひいて寝込んで「もうダメだぁおしまいだあ(体調)」になってました
季節の変わり目もれなく体調崩す虚弱体質。


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