生き延びたので続き書きます。
「・・・それでは、私は一度界王神界のほうへ戻ります。こちらにはもはや人手も必要無さそうですし、悟空さん達の様子も気になりますから」
キビト界王神はピッコロへそう告げたあと、惑星間瞬間移動で再び界王神界へ向かう。
・・・念のためブロリーにも声を掛けはしたが、どことなく消沈した様子の彼は「今は放っておけ」と力なく返すのみだった。
痛ましいとは思うものの、本人の言うとおり今はそっとしておいたほうがいいだろう。
そして瞬間移動で再び帰り着いた界王神界にて、その姿を目敏く見つけた悟空が早速声を掛けてきた。
「おっ、界王神様ー!随分遅かったけどどうだったんだ?」
「・・・残念ながら、超神水は既に失われてしまった後のようです。ブロリーさんはあちらに残られました。・・・そちらは、如何ですか?」
「そっか、ダメだったか・・・。こっちは・・・順調って言っていいんかわかんねぇな、ありゃあ」
そう溢しながら振り返った悟空の視線の先には、向かい合うように座り込む二人の姿。
潜在能力を引き出すという触込みの老界王神による儀式・・・の筈なのだが。
訝しげな表情で物申したそうにしている悟飯へ両手を翳している老界王神は、涎を垂らしながらこっくりこっくりと船を漕いでいる。
「・・・えーっと・・・アレは・・・?」
「例の『儀式』っちゅーやつなんだけどよ、始まってしばらく変な踊りしてたかと思ったらその後ずーっとあんな感じなんだ」
「ね、寝ていらっしゃいますよね・・・?」
「そう見えるよなあ、やっぱり」
困ったように眉尻を下げつつ首を傾げる悟空を見て、キビト界王神は声を張り上げてみた。
「ご、ご先祖様!ご先祖様ー!」
「ふがっ!?な、なんじゃい!」
「い、いえ・・・意識を飛ばしていらっしゃるようにお見受けしたので・・・」
「ま、まるで人が居眠りでもしとったかのように言うんじゃないわい!深く深~く集中しておったからそのように見えただけじゃ!」
「えぇ・・・・・?」
一応は気を遣ったつもりが、言い掛かりをつけるなと言わんばかりの剣幕で叱りつけられて思わずたじろぐ。
「・・・オラ達も何度か起こしたんだけどさ~、その度に「寝てねえ」って怒られちまうんだよ」
「そ、そうですか・・・・・」
悟空のその言葉に釈然としない表情を浮かべるキビト界王神は、本当に任せていて大丈夫なのかと一抹の不安をひっそりと抱いた。
そして、それは他の者も同様らしい。
「・・・下らん。本当にあんなザマでパワーアップなど出来るのか?」
「それを確かめるために悟飯に試して貰ってるんじゃねえか。じっちゃんの言った時間までまだまだあるんだし、とりあえずは待ってみようぜ」
「フン・・・とはいえ、あんなものを只じっと動かずに受けるなどオレは御免だぞ」
「それは正直、オラも・・・ぜってぇ寝ちまうだろうしなぁ・・・」
棘のあるベジータの物言いに、悟空は宥めつつもその内容を否定はしなかった。
生真面目な性分の悟飯は何とか頑張って耐えているが、自分たちがそれに倣えるかというと全く自信が無い。
「・・・それで、あなた方のほうは?何か進展はありましたか」
「こっちも言うほどじゃねえな。ベジータと遠慮なく手合わせ出来んのはいいけど、精神と時の部屋でもねえからたった一日弱の修業じゃあ大した効果にはなってねえと思う」
「・・・癪ではあるが、このままでは今の魔人ブウに追い付くなど到底出来ん」
「悟飯のパワーアップが本当に出来たら、その後に頑張って我慢して儀式を受けるって手もあるけど・・・・・」
口ではそう言うものの、苦虫を噛み潰したような表情から本当に悟空もベジータもあの儀式を受けたくはないのだろう。
そうして一拍置いたあと、神妙な顔で悟空は再び口を開いた。
「なあベジータ・・・やっぱり試してみねえか、フュージョン」
「・・・あの合体する技か・・・・・」
「ブウと一対一で正々堂々戦りたい気持ちはオラにだってある。でもこのまま意地張ってもし全員やられちまったら地球はおしめぇだ。今ならオラもおめぇと同じ超サイヤ人4になれるし、昔シロが言ってた通りならブウに勝てる可能性だって十分あるさ」
シロが皆にフュージョンを教えた折、途中で離脱したもののベジータもその場で同席していたためフュージョンがどういうものなのかも・・・そして、それを実行するために奇抜なポーズをとらなければならないということも知ってはいる。
そしてその動きを目にした途端に帰ってしまった当時の反応からも分かる通り、強くなれるというメリットと天秤にかけて尚受け入れ難いほどに"それ"はベジータにとって羞恥の極みともいえるものであった。
忌避感だけで言えば老界王神の儀式を受ける苦痛と似たり寄ったりだ。
利点は理解しつつ、どうしても首を縦には振りたくない様子のベジータへ悟空は更に揺さぶりを掛ける。
「・・・おめぇだってブルマやトランクスのこと、死なせたくねえだろ?」
「ぐっ・・・・・」
昔とは違って、今のベジータは家族を引き合いに出されるとどうにも弱い。
暫し歯噛みしていたものの、やがてどこか諦めたかのように肩を落とし心の底から嫌だという苦渋に満ちた顔で溜め息を吐いた。
「・・・やむを得ん、か・・・・・。しかし、本当に信用出来るんだろうな?此方側を裏切った小娘の伝授した技など」
「教えてくれた当時はまだおかしくなる前だったろ?オラと悟飯でも一度試して成功してるし、同じくらいの気の大きさ同士でやった場合の効果はチビ達が実証済だ。安心しろ」
「ふん・・・しかし今現在魔人ブウを強化しているのが本当にあの娘なら、敵に利する立場だというのは変わらんだろう。ブロリーの奴、柄にもなくいつまでもウジウジしやがって・・・踏ん切りが付かんのであれば、オレが代わりに手を下してやっても構わんのだぞ」
「よせよ。そんなことしたらブロリーに一生恨まれるし、下手するとアイツまで狂っちまうぞ?いつまでもって程は待ってやれねぇけど、まだコトが起きてから昨日今日の話だ。もう少しくらいは時間やってもいいんじゃねえか」
悟空は日頃からブロリーと付き合いが深く、彼のシロヘの執着ぶりもよく知っている。
新惑星ベジータでシロを失ったと誤認したときのことも前例として記憶には鮮烈に残っているし、何の誇張もなく『世界かシロかどちらかを選べ』と言われたら即座にシロをとるだろうと確信出来るほどに彼の中でその存在は重い。
表情の変化が乏しい男ではあるが、その内面が大いに揺れているであろうことは容易に想像がついた。
「アイツが自分で決めて、納得して・・・その上でケリつけねぇと。魔人ブウはともかく、シロのことはブロリーに任せたほうがいい」
幸いにも、ブウもシロも大人しくしているらしい今は状況も比較的落ち着いていると言える。
・・・もっとも、それが只の小休止なのかそれとも事態が好転する兆しなのかはまだ判断がつかないが。
けっ、と悪態をつくベジータをよそに悟空は地面に鎮座している大きな水晶玉へと視線を向けた。
「・・・なあお嬢ちゃん、妙だとは思わんか?」
「ん~?なにが~?」
捏ねた生地を小さな手でぺちょぺちょ成形しながら、シロは隣のサタンが呟くように漏らした問いに反応を返す。
今は、見かけによらず料理が上手いらしいサタンが夕食を拵えるというのでシロも一緒に手伝っているところだ。
「魔人ブウのことさ。なんだか随分と、聞いてた話と違うじゃないか」
「どんなウワサ、きいてたの?」
「そりゃあ人類の敵だとか危ないやつだとか・・・いやまあ、普通じゃないことは確かなんだがな」
「・・・ブウちゃんは、いい子だよ。人間だって、まだひとりも殺してないし」
シロは手を止め、少し眉尻を下げながらぽつりとそう口にした。
原作で暴れまわっていたかの姿とは違い"この世界の魔人ブウ"は、こと此処に至ってまだ一度たりとも虐殺や破壊行為に走っていない。
復活直後に自分へ向かって中傷の言葉を吐いたダーブラはクッキーに変えて食べてしまったが、それ以降はただ命令を聞き大人しくしていただけだ。
「・・・んん?確かバビディとかいう奴が、世界中の街を潰したのは魔人ブウの仕業だと・・・・・」
「ちがうよ。・・・あれを、やったのはね」
首を傾げたサタンのその言葉に、シロは感情の読み取れない瞳でまっすぐにサタンを見る。
「わたし」
―――――まるで一瞬、時が凍りついて止まったかのような錯覚に襲われた。
しかし、
「・・・なぁにを下手な冗談言っとるんだ!大人をからかうもんじゃない!」
一拍おいてガハハと笑い飛ばしたサタンに、シロも表情をころりと変え「ホントなんだけどなあ」と困ったように笑う。
・・・小さな幼女という容姿は、いい意味でも悪い意味でも発言に信憑性が無い。
ブロリーを筆頭とした付き合いの長い面々は別として、初対面の相手や面識があってもシロの素性やその能力をよく知らない者であれば概ね今のサタンと似たような反応をする。
―――――もしも。
シロが星を墜とし町々を焦土と化したあのときに、その力を目の当たりにしたバビディがシロへの認識や評価を改め"適切に"その能力と知識を最大限活用していたならば。
被害の規模は、現状の比ではないほど更に大きなものとなっていたことだろう。
それこそ本人の口にしていた『世界征服』にも、本当に手が届いていたかもしれない。
しかし、結果としてそうはならなかった。
あくまでも魔人ブウしか主眼に置かず、最後までシロのことを侮り続けたバビディは世界の全てを手中に収める機会を逸してしまったのである。
「・・・とにかく、ブウちゃんはただ命令された通りに従ってただけだからさ。あの子自身は、何が良いことで何が悪いことなのかもそもそもわかってないんだよ。誰も教えてくれなかったから」
シロは止めていた手を再び動かして作業を再開し、綺麗に形を整えた肉の種をポイポイとサタンの構えたフライパンへ放り込んだ。
なるほどなあ、とサタンは唸りつつ手際良く肉をジュウジュウと焼いていく。
まるで幼い子供のような言動をする魔人ブウ。
本来サタンがここへ来た目的は暗殺であったが、直接その目で見てやりとりを経た今は正直心が揺れ動いていた。
真に邪悪なのはあの魔導士とかいう奴だけで、この少女の言う通り魔人ブウはただそれに利用されていただけの存在なのだとしたら。
・・・・・可哀想じゃないか。
そしてそんなことを考えていたサタンのすぐ脇から、当のブウが唐突にひょっこりと顔を出した。
「オイシイもの、まだか~?」
「どわぁぁぁ!!?」
動転し放り出してしまったフライパンを咄嗟にシロがキャッチしてコンロへ戻す。
「ブブブブウさん!!待ちきれなかったんですか?」
「ウマそうなニオイがする!まだか?まだか?」
「今焼いてるところですからね、もうちょっとだけお待ちを・・・・・」
ウキウキした顔でよだれを垂らしているブウのその様子を見て、サタンの頭につい先ほどのやりとりが過ぎった。
そして、つい"それ"を確かめたくなり問いを口にしてしまう。
「・・・あの、ブウさん。ブウさんは人間を殺したり町を壊したり、楽しいからそういうことをするんです?」
「んー?んー・・・バビディもビビディもそう言ってたから、そうやって遊ぶものなんだと思ってた」
恐る恐るといった様子で訊いたサタンは、ブウのその答えにやはりそうなのかと内心で納得する。
自分が楽しいと思ったからではなく、"誰かにそう言われたから"。恐らくは刷り込まれていただけなのだろう。
するとブウは、コテンと首を傾げてサタンへ逆に問い掛けた。
「オマエは、やっちゃいけないとおもうか?」
「え、ええ・・・もちろん」
もしかしたら機嫌を損ねるかもしれないとも思いつつ、一縷の望みに掛けてサタンは媚びを売ることなく正直にそう答えてみる。
ブウの反応は、思ったほど悪くないものだった。
「そっかー。・・・じゃあオレ、ニンゲン殺さない!」
「お、おぉ・・・!!!ホントですか!!」
「うん」
コクリと頷いたブウに、サタンは諸手を挙げて喜んだ。
可能性自体は先程のシロとのやりとりで感じてはいたが、ハッキリとブウ自身からその言葉を聞くことが出来た意味は大きい。
そして横手から二人のそのやりとりをニコニコしながら見ていたシロのほうへ視線を移し、ブウはさらに口を開く。
「シロもずっとバビディと違うこと言ってた。ニンゲンを殺して食べちゃうより、ニンゲンにお菓子を作ってもらった方がいいって」
「ええ、ええ!その通りですよぉ!殺して誰もいなくなっちゃうより、皆でおいしいものた~くさん食べるほうが、ブウさんもシアワセじゃないですか?」
「オイシイもの、いっぱい食べる!」
ワイワイとはしゃぐブウのその様子を見て安堵すると共に、サタンは薄々感じていたことを再度認識する。
・・・このシロという少女は、魔人ブウという純粋で善悪の定まっていなかった存在を"良い方向"へ誘導しようとしていたのではないだろうか。
彼女がブウへ向ける視線は慈しむかのように優しいもので、なんだかまるで"こういった者の扱いは初めてではない"かのような印象も受ける。
まだ年端もいかないような見た目であるのに、なんとも不思議な存在だ。
そんなこんなで暴虐な行動はしないと言質もとれたことで安心したサタンは存分に腕を振るい、出来上がった料理は三人で仲良く舌鼓を打った。
暫し流れる穏やかな時間。
―――しかし、運命というのは不思議なものである。
魔人ブウとシロが作ったこの家は、"本来の場所"とは遠く離れた違う場所に建てられた。
だが結果としてサタンはブウを狙ってこの場所を訪れたし、翌日散策に出たブウは怪我をした子犬を拾ってきた。
・・・・・そして。
"奴等"もまた、この場所へとやってきた。
ブウってお菓子ばっかり食ってる印象あるけど、ブウ編でサタンが作った肉とか卵とかの普通のごはんに喜んでる描写もあったから特別好きなのがお菓子だってだけで美味しいものだったら何でも食べるんだろうな~。
※更新頻度、まだしばらく低めにはなると思うんですが出来れば少なくとも週一くらいは上げたいな~と思ってます。
予定は未定