バトル描写は相変わらず不慣れですが、お楽しんで頂ければ幸いです。
ブロリーと別れた後、サタンは再び駆け出していた。
以前あの少女―――シロからサタンへと託された仙豆は二粒。
その手に握った小袋には、まだもう片方の仙豆が残っている。
それを使ってあと一人誰を治すのか、サタンは既に心に決めていた。
「あ、おじさん・・・!」
「すまなかったな、一人にしてしまって」
ややあって、サタンは先ほど気を失っている面々を隠した岩影へと再び辿り着く。
いまだ気を失ったままの兄に寄り添っているミノシアへ、一時的とはいえ少年にこの場を任せてしまったことを詫びた。
そして横たわっている面々を今一度見渡し、小袋から取り出した最後の仙豆を祈るような気持ちで『魔人ブウ』の元へと持っていく。
気を失っている状態で食べられるのかどうか分からなかったが、幸いにも反射的な行動なのか口に入れてみるとモニョモニョとした動きで咀嚼して飲み込んだようだった。
「・・・ブウさん、ブウさん!しっかりしてください!」
「むにゃ・・・・・んぉお?」
やがてパチリと目を開けたブウは、サタンの姿を見留めた途端ぱぁっと表情を明るくする。
「サタンー!」
「わわっ!・・・よ、よかった。元気になったんですね」
例の不思議な豆が人間以外にも効果が出るものなのか、確証のないサタンにとっては賭けだった。
がばちょと抱き付かれ、のしかかった重さにぐらりと揺れてたたらを踏む。
もし"このブウ"にまで敵視されてしまったらどうしようかと実は内心恐々としていたサタンだったが、その振る舞いから自分の知っていたブウそのままだと分かると緩んだ涙腺に瞳を潤ませ安堵の息を吐いた。
そうしていると足元から再び、キャンキャンと聞き慣れた鳴き声が響く。
「いぬー!」
すぐ傍で二人に向かって尻尾を振っていた子犬にブウも気づくと、サタンから手を離して拾い上げた子犬に向かって頬ずりをした。
その嬉しそうな表情には邪悪さなど見て取れず、サタンはやはり自分の判断は正しかったと確信する。
「・・・ブウさん、起きてすぐなのにすみません。でも、お願いがあるんです」
「おぉ?どうした?」
真剣な眼差しで真っ直ぐに向き直ったサタンの様子に、ブウもきちんと話を聞こうと顔を向けた。
「以前、私と犬がケガをしたとき・・・不思議な力で、治してくれたことがありましたよね」
「うん。死んでなければ治せる」
「ここにいる人たちを、ブウさんの力で治してやってくれませんか」
頭を下げて頼み込んでくるサタンを、ブウは表情の読めない顔でじっと見る。
そして横たわっている面々を見渡したあと、もう一度サタンへ視線を戻し・・・そして、口角を上げてにっこりと笑みを浮かべながら頷いた。
「・・・わかった。サタンがそうしてほしいなら、いいぞ」
「!!ありがとうございます!」
抱き抱えていた犬を降ろし、すぐ傍らで横たえられていた子供から一人ずつ順にブウがその手を翳す。
悟天を、トランクスを、タピオンを。
不思議な光がふわふわと包み込んだかと思うと、見る間に外傷も消えやがて負傷者たちは続々と意識を取り戻していった。
「う~ん・・・?あれ、ボクどうしたんだっけ・・・」
「確か魔人ブウと・・・うわ!魔人ブウ!?」
悟天は寝起きが悪いのか、まだぽやぽやとした表情が抜けきらない。
一方で起きた途端目に飛び込んできたブウの姿に、トランクスは驚きと共に思わず警戒を露にした。
しかし即座に間に入ったサタンがそれを押し留める。
「ま、待ちなさい。このブウは敵じゃないんだ。君たちの怪我も治してくれた」
「えっ・・・あ、おっちゃん、確かチャンピオンの・・・・・?」
武道会で直接面識のあったトランクスはサタンのその姿と言葉を聞いて、そして実際に目の前でタピオンを治療しているブウの様子を改めてじっと見ると次第に落ち着きを取り戻したのか構えを解いた。
「よし、おわったぞ。みんな元気になった」
「ありがとう、ブウさん・・・!」
最後に目を覚ましたタピオンへミノシアが縋りつく様子を見ながら、やり遂げて「えっへん!」とどこか誇らしげな顔をしているブウにサタンが再度頭を下げる。
まだ半ば信じきれずに硬い表情をしていたトランクスも、その様子を傍から見てようやく僅かに緊張の色を解いたようだった。
「・・・本当に、治してくれたんだ」
「ねえトランクスくん、なんだかこの魔人ブウって僕たちが戦ったアイツとはなんだか違う感じがするよ?」
かわいい顔してるし!と悟天は恐れることなくブウの足元へ寄り、その桃色の腕をもちもちと触り始める。
ほぁ、と呆けた顔をしているブウはそんな悟天の態度を嫌がることなくその姿をじっと見ていた。
―――自分にまとわりつくその小さな姿と、向けられた『かわいい』という単語に。ひとつの面影が脳裏を過ぎる。
サタンと同じくブウの心の中にしっかりと居場所を作ってしまっていたあの幼女のことを思い出し、どこか穏やかな表情を浮かべたブウは悟天を持ち上げその肩へ乗せた。
キャッキャと喜ぶ悟天のその様子を見て、トランクスは完全に毒気を抜かれたように呆れた溜息を零す。
「・・・まったく、悟天はす~ぐそうやって変なヤツと仲良くなっちゃうんだもんなぁ」
そうこうしているうちに、凄まじい衝撃と地響きが再び辺り一帯を揺らした。
「な、なんだ・・・!?あれ・・・!!」
岩陰から飛び出したトランクス達の目に映るのは、今も続いているサイヤ人達と荒れ狂う巨大な魔人との戦い。
その強大すぎる気の大きさは少年達の認識できる限界を大きく超えており、もはや危険ということ以外にはもう何がなんだか解らなくなってしまっている。
「・・・私もよくはわからんが、どうやら『魔人ブウ』というのは二人に分かたれてしまったらしい。君たちが戦ったという悪い魔人ブウは、きっとあの暴れている方のことなんだろう」
「悟飯さんや、パパも・・・・・あっ!?」
サタンの言葉を聞いて固唾を吞むトランクスの見る先で、戦いの場から一直線に自分達のほうへ向かってくる姿があった。
地上付近にまで降りてきたその男―――ベジータは、サタン達の傍で同じく空の方を見ていたブウへ真っ先に目を留め敵意を露わにする。
「なっ・・・貴様、さっきブウが吐き出したもう一匹か!」
「や、やめてくれ!このブウは違うんだ!敵じゃない!」
向けられた掌と高圧的な態度にブウがムッとした表情を浮かべるも、その口を開く前にサタンが慌ててその間へと割り込んだ。
どうか余計な刺激を与えてくれるなと頼み込むサタンにベジータが訝しげな顔をしたところへ、不意にもうひとつの声が響く。
「待ってパパ!このブウ、オレたちを助けてくれたみたいなんだ!攻撃しないでやって!」
「ッな・・・、何だと?」
サタンのさらに前へ出て制止をかけてきたトランクスの姿に、ベジータのみならずサタンも驚いた表情を見せた。
ブウを庇い立てする息子の姿に一瞬動揺したベジータであったが・・・助けられたという言葉とブウに抱えられている孫悟飯の弟が嫌がる素振りすら見せていないのを目にし、僅かに表情を歪ませながらもそのまま手を下ろす。
「・・・フン。まあいい、後だ。それよりも・・・貴様に用がある」
そして視線を巡らせたベジータは、トランクスと同じくブウによって意識を取り戻したばかりであったタピオンへとその眼を向けた。
見知らぬその男に何の用があるのかと困惑の表情を浮かべながら、一歩近づいたベジータへ当のタピオンも視線を上げる。
「・・・俺、に・・・?」
「単刀直入に聞く。あの巨大化している方の魔人ブウの額についた目、アレを貴様の持つ剣で引き剥がすことは出来るか」
「・・・・・!」
ベジータがブロリー達の会話の中で口にした"心当たり"。
それは先の戦いの中で一度戦況を覆すにまで至った、あの不可思議な力を持つ剣のことだった。
「あの"第三の目"は後からブウへ付いたものだ。今ここにある手段でどうにか出来るとすれば、フュージョンをも分離させた貴様の剣だけだろう」
険しい表情でそう告げるベジータへタピオンはほんの一瞬だけ目を伏せるも、やがて意を決したように立ち上がる。
ミノシアに支えられながら身を起こし、その足で確りと立つと真っ直ぐにベジータを見据えて言葉を返した。
「・・・保証は、出来ない。しかし、やれることがあるならやってみよう」
すると、傍からそれを聞いたトランクスが思わず声を上げる。
「兄ちゃん、アレと戦う気・・・!?ムチャだよ、殺されちゃうぞ!」
今のトランクス達には、西の都を飛び出した時のような楽観的な万能感など既にない。
むしろこれまでに感じたこともない余りにも巨大な悪の気に当てられて、僅かながらに怯えすらも抱いてしまっていた。
タピオンの隣にいるミノシアも、不安気な様子で兄のその顔を見上げている。
「兄様・・・」
「・・・きっとこれは、千載一遇の好機なんだ。俺達兄弟の・・・いや、コナッツ星でかつて死んでいった皆の悲願を果たす」
タピオンはそんな子供達の顔を見たあと、まるで言い聞かせるようにミノシアの肩へと手を置いた。
「俺達はこの身にヒルデガーンを封じることを使命としてきた。しかし、封印というのは結局のところ脅威を後の時代へ先送りすることでしかない」
―――あの時は"そうするしかなかった"とはいえ、いつか誰かがどこかの時代で。遠い未来で何とかしてくれることを期待して押し付けることを選んだのと同義であることには変わりない。
「今ここであの魔人ごとヒルデガーンを滅することが出来れば、本当の意味で俺達の使命は果たされる。いつ破られるかわからない封印に脅えることもなく、俺達自身も真に平穏を得ることが出来る筈だ」
暴れ狂う魔人ブウの内に取り込まれたままのヒルデガーンの気配は、今でも微かながらにタピオン達の元へ届いている。
もしもあれをこのまま放置してしまえば、再びその脅威がブウの身を借りて表出することも充分にあり得るだろう。
今あれを斃さんとする戦力が場に集っているこの機に乗じて、タピオンがその力を差し出すことで宿敵を討つことが叶うというのであればそれは願っても無いことだ。
「俺達を勇者と称え、故郷の皆が託してくれた意志を。・・・果たすのは、報いることが出来るのは、きっと今しかない」
だから俺は行くよ、とタピオンは弱々しく縋りつく弟の手を優しく解き・・・そして前へと一歩を踏み出す。
傍からその姿を見ていたトランクスは、タピオンの言葉を反芻するようにぽつりと呟いた。
「・・・・・ゆう、しゃ・・・」
「封印を護れず、そのための笛すらも失った今の俺には過ぎた称号だ。・・・だが、それでもまだやれることがあるならば・・・やるべきだ」
タピオンは背にした剣を抜き放つ。
持ち主の意志の強さを映すかのように、その輝きには一点の曇りも無い。
「・・・・・!」
ほんの半日前には大人なのに大した戦闘力もないと侮っていた筈のトランクスの目には、今のタピオンのその姿はまるでいつか読んだ絵本の昔話に出てくる『勇者』そのもののように見えた。
―――いつの時代も、どんな冒険譚の中でも。
世界を脅かす"魔王"に立ち向かうのは、いつだって"勇者の剣"だったのだから。
「・・・よく言った」
口を挟まずそのやりとりを見ていたベジータは、タピオンのその宣言に口角を上げ頷いた。
「ブウの元へはオレが確実に連れていく。貴様はその剣を当てることだけを考えろ!」
「わかった」
そしてその時、ベジータのその言葉を合図としたかのように。
唐突に空を中心として凄まじいまでの気が、辺りの全てを圧倒した。
「な、なんだ・・・!!?」
驚愕して慄くトランクス達が見上げる先には、強大な"紅い気"を沸き立たせている長髪の超サイヤ人の姿。
満を持して漸く、ブロリーが界王拳を発動させた瞬間だった。
「・・・始まったな。ブウは暫くの間"ヤツ"がその動きを抑える筈だ。この機を逃すな!」
覚悟を決め頷くタピオンのその胴を抱え、地面をベコリと凹ませながらベジータは再びその場を飛び立つ。
残した面々が各々不安や緊張の表情を浮かべながら見送る中、最大線速で空の戦場へと舞い戻っていった。
―――『界王拳』。
それは肉体への莫大な負荷と緻密な気の操作技術を求められることと引き換えに、その戦闘力を何倍にも一気に引き上げることの出来る秘技である。
その効果は練達した者であれば数十倍にも及び、在りし日のシロの口からも「あれは反則」と言わしめたほど。
かつて数年前。
孫悟空は当時他のサイヤ人二人から一歩遅れていまだ超サイヤ人4へ至れていなかった中で、超サイヤ人3に界王拳を掛け合わせることで超サイヤ人4のブロリーすらも一時凌駕するという荒業をみせたことがあった。
そして今現在。
それを超サイヤ人4とも遜色ない戦闘力を誇るブロリーの"伝説の超サイヤ人3"を以てして再現し、過去に類を見ないほどの絶大なる力でサードアイの齎す大魔王の無限の力に対抗する。
サードアイによる"無限の力"は、サイヤ人側にとって幸いなことに"力に上限がない"というわけではなく"力の出力自体はそのままに、それが延々と尽きることがない"という『強さではなく耐久力』という方面に特化した意味での"無限"であった。
ブロリーは界王拳の発動と同時に一気に解放した膨大な気の奔流を、そのまま直接ブウへとぶつける。
ギリギリまで間近で注意を引き付けていた悟空と悟飯によって、ブウはマトモな対抗策もとれないままにそれを真正面から受けることとなった。
「ッぐ・・・!」
「ギ、ギィィィィ・・・!!!!!」
技名も何も無い、純粋なるフルパワーのエネルギー波。
界王拳により一時的とはいえ大幅に底上げしたブロリーの力は遂に、大量の神精樹の実による強化を重ねに重ねてきたブウの力を上回った。
咄嗟に迎え撃とうと放ったエネルギーボールをそのまま押し返し、深紅に輝く極光の柱がブウの巨体を諸共呑み込む。
サードアイによる再生によりブウの肉体は即座に復元を開始するも、その全身を灼かれ続ける限りはそのまま身動きが取れない。
ブロリーは全身へ襲い来る膨大な負荷に抗いながらも全力で気を燃やし続け、そして完全にブウの動きは抑え込まれた。
「よっしゃ、今のうちにあの目をどうにかしちまえば・・・!!」
直前までブウの気を引いていた悟空は肩で息をする悟飯を支えながら、漸く見えてきた勝機に声を弾ませる。
完全に拮抗している今の状況、あとはブロリーの肉体が限界を迎えるよりも先に決着をつけることが出来るかどうかだ。
するとそこへまるで稲妻のように閃光が迸り、下から超速でこの場へとひとつの影が飛び込んできた。
「っベジータ!!」
タピオンを抱えたベジータはブウを見下ろせる高さにまで来た途端、急速に方向転換しそのまま下へ向けて勢いをつけながら剣を構えた青年のその身をぶん投げる。
「今だ、行けぇッ!!!」
「うおおおおおお!!!!!」
身動きのとれないままのブウへ向け、祈りと共に力を籠めた剣をタピオンが一閃。
刃と共に通り抜けた光が過ぎ去ったその瞬間、何かが砕けるような音と共にブウの額から球体が飛び出した。
「やった、外れたぁ!!!」
「ギギャッ・・・!!?」
サードアイを失ったブウの肉体は元の大きさへと縮むが、決して逃がすまいと攻撃の手を緩めぬブロリーのエネルギー波に囚われたままその身の崩壊が激しさを増す。
「よし、今だ!!!!」
「いい加減にくたばりやがれぇッ!!!」
持ち前の再生力でまだ抵抗を続けるブウへ向け、悟空とベジータがそれぞれ渾身の気功波を放った。
かめはめ波、そしてギャリック砲。
ブロリーが撃ち続けるエネルギー波と合わせて三条の光が交差し、銀河そのものすらも消し飛ばしかねないほどの破壊力となったその中央でブウの身体が遂に堪え切れずに外側から徐々に消滅を始める。
ブウは崩れ行く身で必死に藻掻こうとするも、鬼気迫る表情で拘束を続けるブロリーはそんな最期の足掻きすらも許さない。
「こ、このまま・・・押し切れぇぇぇーーーッ・・・!!!」
三人の雄叫びが響き、各々の持てる気力の全てを注ぎ込むと交差する光が更に激しさを増していく。
―――深紅の、そして蒼と紫の光が輝きを増し視界を染め上げる中。
遂に最後の一片までも残さず、ブウのその身は全ての細胞ごと光の中へと熔けて消滅した。
先程まで辺りへ満ち満ちていたブウの邪悪な気が、その肉体の消滅と共にまるで嘘のように消え去っていく。
悟飯は落下するタピオンを空中で受け止めたあとその身を支えながら事の顛末を見守っていたが、ようやっと安堵の息を零すと共に地上へと降りた。
「や、やったぁー!!」
パパたちの勝ちだ!と歓声をあげるトランクス、空から降りてきた二人へ駆け寄る悟天とミノシア。
そしてサタンもまた、そんな子供達の様子を見てやっと危機が去ったらしいという状況を察し気の抜けたような顔をしていた。
「・・・お、終わったんです、よね・・・??」
「うん。もうアイツ、どこにもいない」
「そ、そうか・・・よかった・・・・・本当に・・・・・」
光が消え去り穏やかさを取り戻した空を隣で一緒に見上げていたブウがそう頷くと、本格的に緊張が抜けたようで目尻にうっすらと涙さえ浮かぶ。
今度こそ、本当に世界の終わりかと思うような事件だった。
サタン自身も最後の方はなりふり構わず我武者羅になって駆け回っていたが、本来はとても人の手に負えるような相手ではなかった筈だ。
改めてとんでもない連中がいたものだと、"彼ら"のことを今一度思い返しサタンは乾いた笑いを漏らす。
―――と、そんな時。
「・・・・・ん??」
ひるるる、とどこか間の抜けたような音と共に何かが空から落ちてきた。
どうやら小さな球体らしきそれは、地面へ当たるとポヨンと軽やかにバウンドしてサタンの足元までぽよんぽよんと跳ねながら転がってくる。
やがてころりと回りながらサタンのほうへ"正面"を向けたソレは、こぶし大ほどの大きさの眼球であった。
「ひ、ひぇぇぇ!!???」
シュールだが軽くホラーなその見た目に思わず飛び上がり、その悲鳴に何事かと他の面々の視線が向く。
「げっ!?そ、それってもしかして、さっきまであのでっかいブウについてた目玉じゃ・・・!!??」
「え、は!?うわあっ!?」
つい先ほど、タピオンがその剣でブウから分離させたまま宙を舞っていたサードアイ。
悟飯がギョッとした顔で口にしたその言葉に、パニックになったサタンはその場でダバダバと避けるように足踏みをしていたが―――――何を思ったかそれとも偶然か、転がるその眼球を足でぷちっ!と踏み潰してしまった。
「「「あっ」」」
しーんと静まり返った中、サタンの靴の裏でポシュン・・・と何やら奇妙な音と感触が一瞬だけ抜けていく。
周囲の注目を集めながらも鼻水を垂らし目を点にして固まっていたサタンは、数秒間そのままの姿勢で呆然としていたが急に我に返ったようにゴホンと咳払いをひとつ。
「・・・・・あ、悪は滅びたーっ!!」
誰に向けたものなのかわからないポーズをキメながらヤケクソ気味に叫んだその言葉は、事態の収束を知らしめるように辺りへ響くものの生憎歓声を返してくれる者はこの場にはいなかった。
サタンはじゅうぶんに頑張ったので、この世界でも救世主ってことでいいんじゃないかなと思います。