こまめな保存ダイジ。
「あ、おっちゃんひさしぶり~。げんきそうだね」
「お、お前・・・生きていたのか・・・!?」
零れ落ちなかった目ん玉の代わりに顎が外れそうなくらいに驚いたり目まぐるしく表情が変わっていたパラガスに、ようやくほっぺたを解放された俺はブロリーに首根っこ摘ままれてプラプラしながらも手を振って声を掛けた。
「うん。いったでしょ、だいじょうぶだって」
「いや、しかし・・・容姿もあの時のままではないか」
「そこはちょっとじじょーがありまして」
不可解なのはわかるが出来れば触れないで頂けると。まあ別に隠さなくてもいいんだけども・・・。
そうしているとブロリーがぽつりと口を挟んできた。
「・・・お前、親父と会ったことがあったか?」
「さいしょにね、いっかいだけ」
「ブロリーよ、お前は覚えていないかもしれんが赤子の頃に王に殺されそうになっていたのを救ったのがその娘だ。惑星ベジータが崩壊する寸前、私の元へ無傷のお前を送り届けてくれた」
「・・・・・そうか、あれが・・・・・」
いや~なつかしいね。
もっとも俺にとってはそんなに前の出来事じゃないんだけど。
ブロリーも断片的にでも記憶が残っていたのかどうなのか、目を伏せ考えるような素振りを見せて納得したようだった。
ところでそろそろ降ろしてくんない?
「・・・もしや、お前が時折話していたのはその娘のことか」
「え?なになに?」
パラガスが思い出したようにそんなことを言い出して思わず食いつく。
俺のいないとこでブロリーが俺のこと話してたの?なんて??
「昔からごく稀にだが数度、妙な奴に会ったという話をしてきたことがあった。その時は決まって機嫌が良さそうに・・・あ、いや、」
「親父ィ・・・余計なことは言うな・・・・・・・」
一段声を低くしたブロリーに遮られてパラガスは言葉を切った。
へ~~~~~?
「ま、まあ・・・折角来たのならゆっくりしていくと良い。まだ大した設備は整っていないが。それではな」
そそくさと部屋を出て行ってしまったパラガスを見送って、ニマニマを抑えながら再びブロリーと顔を見合わせる。
「・・・きかないほうがいい?」
「忘れろ」
「うぃ」
そろそろおろしてよ~、と再度うごうごしてたらやっと地面へポトリと落とされた。
ぐい~っと伸びをして、そして改めて部屋をぐるりと見渡しながら気になったことを訊いてみる。
「さっき"設備"っていってたけど、今はここでくらしてるの?」
「ああ、しばらく前からここにいる」
「ふ~ん・・・」
あの宮殿ほど豪華ではないが、なんというか"砦"って感じの場所。
いつしか放浪するのはやめて、ちゃんと拠点らしき拠点を持ってたんだな。
それからはぽつりぽつりととりとめのない話をしていたが、そんな中ふいに思い出して俺は身を乗り出した。
「ね、ブロリーは今日二十歳になったんだよね?」
「そうだな」
「じゃあとくべつだ!おいわいしなきゃ」
「特別・・・?」
「うん、わたしのいた国では二十歳になったら成人ってきまりだったの」
途中から扱いが18歳以上に変わったりもしたが、酒や煙草が解禁されるのは変わらず20歳だったし成人式に行くのもほとんどが20歳だったはずだ。
だから今でも大人の仲間入りとされるのは20歳という印象が強い。
サイヤ人にはそういう習慣は無かったのだろうかと問うと、そもそもサイヤ人の社会とは離れて過ごしていたため知らないと返ってきた。・・・それもそうか。
そして特に親子間でそういったイベントも無かったらしい。親父ェ・・・・・。
しかし今回は俺も人のこと言えないか。何か用意してきたら良かったな~!こういう所ホント気が回らない。
それでも何かしてあげたいと言うと、ブロリーは少し考えたあとポツリと言った。
「・・・リンゴがほしい」
「へ?・・・いつもあげてたあのりんご?」
「ああ」
「そんなんでいいの?」
「あれがいい」
まあそう言うなら。・・・そんなに好きだったのか?
頷いたブロリーに、収納から採ってきたばかりの林檎をいつもよりたくさん出して机に並べてあげる。
ていうか、よく見たら果物盛りみたいなやつ部屋にも置いてあるぞ?あれはいいのか?
すると俺の視線に気づいたのか、その中からひとつブロリーが手にとって俺に投げ渡した。
「ここで色々と手に入るようになって、探させたことがある」
ふむ?
渡された赤い実は林檎に似てはいるが・・・。ちょいと一口失礼。
すっっっっっっっぱい!!!し、果汁もあんまりない。スッカスカ!!
「・・・うん、あんまり、おいしくない、ね」
「そういうことだ」
死神のリンゴほどではないかもしれないが、これは確かに俺があげた林檎に慣れていると耐えられる代物ではないかもしれん・・・。
現にブロリーはさっそく俺が持ってきた方の林檎に噛り付いている。
そういうことならもっとあげよ。さっきいっぱい採ってきてよかった~。
ブロリーは不満無さそうにしているが、なんとな~くこれじゃ特別感ないなあと思った俺は何か出来ないかと考える。
・・・・・あ!そうだ!
「ね、ここにすんでるんだったらさ、ごはんつくるところあるよね?」
「ああ」
「ちょっとまってて!」
俺は部屋を出て走り出した。
おっちゃ~ん!!お台所貸して~!!!
・・・そうして30分ほど経ったあと。
大皿に乗せた"力作"を手に俺は部屋へ戻った。
「じゃーん!アップルパイです!」
皮を生地代わりにしたタルトでも作ろうかなと思ったんだが、小麦粉も卵もあるとのことだったのでそれをありがたく使わせて貰いごくごく普通のアップルパイを作ることが出来た。
ちなみに時間が異様に速いのはめちゃくちゃズルしたから。本来なら数時間は掛かる。
実は時空魔法と料理は実に相性が良い。材料のカットは瞬時に出来るし、発酵や焼成などの長時間待つ工程も加速でスキップ出来るからだ。
俺は元々独り暮らしで自炊していた時期も長かったため、それなりに料理が出来る自負がある。
まあそんなわけで、さくっと一品作ってみたわけだ。
お祝いといえばケーキっしょ!いやパイだけど。見た目はそれっぽさ出るよね。
「わたしのいたところでは、おたんじょうびとかおめでたいときはこういうお菓子でお祝いするんだ」
「・・・お前が作ったのか?」
「うん。りんご好きだったらこれもたべられるかなって」
つやつや光るサクサクのパイ生地と、煮詰めた焼きりんごの甘い匂い。見た目も味もそれなりだと思うんだが・・・。
8等分にカットして、ひと切れ差し出してみるとブロリーはそれを手掴みで口へ運ぶ。持ってきたフォークは要らないらしい。
特に訝しむこともなく大きな口でかぶりつくと、ほんの数口で瞬く間にぺろりと平らげてしまった。
「悪くない」
「そ。よかった」
微妙な感想に聞こえるが、俺もひと切れ取ってフォークでちまちま食べているうちに残りのピースはあっという間に全部ブロリーの腹の中に消えていた。
どこか満足そうにも見えるので口には合ったんだろう。素直に美味しいとか言えないだけで。・・・だよな?たぶん。
ちなみに俺としては充分に美味いと思っている。やっぱり林檎は加熱したほうが甘味が増して好きだな~。
フォークを口に入れてもごもごしていると、食べ終わったブロリーがじっとこっちを見ていたが暫くの後ふいに口を開いた。
「・・・次は、いつ来る」
「ん~・・・?また5年後かなあ」
「いつも同じ間隔だが、理由でもあるのか」
「うん、ちょっとね」
特に気にする様子はなかったが、しっかり認識されていたらしい。
俺が気掛かりだったのは『干渉のし過ぎ』という一点だけだったので、5年というスパンは適当に設定しただけなのだが・・・正直なところ、今のブロリーの様子を見ているとこれでも来すぎだったか?と思ったりしている。
だって、こんなにも普通に会話が出来て穏やかな様子を見せてくれるまでになるとは予想外だったから。
まあ今は制御装置の影響で暴れることも極端に少なくなっているとみていいんだろうが・・・映画本編のパラガスの台詞からも、カカロットに再会するまでは制御が安定していたらしいし。
そんなわけで、こうして仲良くなれたことは嬉しく思いつつも原作との乖離具合はやっぱり気になるところでして。
ぶっちゃけ大人になった姿を見ることが出来た時点でかなり満足してしまっているので、映画本編に入るタイミングまでスキップしてしまってもいいくらいではあるんだが・・・。
な~んか、さっきの言い方からすると楽しみにしてくれてるっぽいよなあ・・・。気のせい?
まあ飛ばすとしてもあと1回なんだし、いつも通りお邪魔させてもらうことにしよう。
俺もブロリーに会いたいしな。
食べ終わったあとは食器を返却し、お暇する前に再度部屋へ戻って声をかける。
・・・今回はずいぶんと長居してしまった。
「じゃあ、かえるね。またくるから」
「・・・ああ」
少し名残惜しそうな顔をしているブロリーに、またりんごたくさんもってくるねと笑って手を振る。
―――転移で姿を消すその間際、彼が何かを言いかけたような気がするが生憎聞きそびれてしまった。
お察しの方もおられるかもしれませんが、林檎の件は一切原作にはないので単に幼女があげたものがそのまま好物になってしまったというだけです。