魔の森を越え、ダイ達はロモス王国へ到着していた。しかし時間も遅かったため城へ向かうのは翌日にし、一行は宿に泊まることにした。
その際、以前ゴメを攫ったニセ勇者一行と鉢合わせトラブルになりかける場面もあったが、アバンによって仲裁された。
男女で分かれてそれぞれの自室に入り、寝る支度をしながらポップは呟いた。
「しっかしひでぇ奴らだったなぁ。自分よりも弱いやつとしか戦わないなんてカッコ悪いこった。」
「ポップ・・・。あんまり人のこと言えないよ?」
「えぇ!?いくら俺でもあれと一緒にされたら怒るぜ、ダイ!」
「まあまあ、案外ああいう人種は長生きしますし、思わぬ所で活躍したりするものですよ。」
「ええー、本気ですか?先生。」
アバンの言葉を聞いて、ポップは怪訝そうな表情を浮かべる。しかし、アバンは穏やかな表情を崩さずにポップに語りかけた。
「ええ、本気ですよ、ポップ。それにあの魔法使い、まぞっほと言っていましたが、あれはおそらくかつての私の仲間、マトリフの弟弟子ですよ。」
「先生の仲間!?その弟弟子ってことは、あのじいさんも強いってことですか!?」
「さあ、そこまではわかりませんが。修行の途中で逃げ出してしまったが、才能はあった、とマトリフは言っていましたね。」
ポップとダイはその話を聞いて、心底驚いた、といった表情を見せた。あの小悪党じみた老人にそんな大層な背景があったとは。
人は見かけによらないものだ、と感心する2人に、アバンが声をかけた。
「さて、明日は朝も早い。そろそろ寝るとしましょう。」
「「はい、先生。」」
なお、女部屋では。
「・・・おっきい。」
「ちょっ、くすぐったいわよイル!」
マァムの一部を見たイルが衝撃を受けてあれこれする場面があったりとかなかったりとか。ちなみにワルぼうはイルの抱き枕にされていた。
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「おお、良くぞ参った、勇者アバンとその弟子達よ。まさかあの時の少年が本当に勇者に師事しようとは、わしの目も捨てたものではないのぅ。」
翌日、一行は城にてロモス王に謁見していた。勇者アバンと、先日の一件で顔見知りであるダイの姿を見て、ロモス王は彼らの来訪を歓迎した。
「ロモス王、我々は先日こちらの少年、ダイの故郷であるデルムリン島にて、かつての魔王ハドラーと対峙しました。ダイやそちらの少女、イルの協力もあり撃退には成功しましたが、奴ですら今は魔王軍の一端にすぎないとのこと。今後の魔王軍との戦いへ向けて、情報と支援を賜りたく参りました。」
「なんと、あのハドラーが再び現れたと申すか!そしてそれを打ち破るとは、なんと頼もしいことか。もちろん協力しよう、と言いたいのだが、生憎我が国もまさに魔王軍との戦いの真っ最中でのう。大した支援も他国の情報も与えられそうにない。」
眉を下げながら話すロモス王の言葉に、ダイ達は衝撃を受けた。予想はしていたとはいえ、既に魔王軍の侵攻はこのロモスでも始まっていたのだ。
「このロモスを攻めているのは、魔王軍の軍団長がひとり、獣王クロコダインじゃ。奴が率いる百獣魔団は魔の森に潜み、虎視眈々とこの城を狙っておるのじゃ。」
「確かに、魔の森の魔物が今まで以上に多く強力になっていました。」
「普通の魔物ならまだよい。だが獣王クロコダイン、奴の強さは別格じゃった。我が国の誇る精鋭10人を一瞬で蹴散らす力に、どんな攻撃でも傷つかない鋼鉄の肉体。今は奴の気まぐれか戦場に出てきてはいないが、次に奴が現れれば我が国の敗北は必至じゃろう。」
ロモス王の語る獣王クロコダインの強さに、アバンの後ろに控えるポップは震え上がった。ついこの前ハドラーを撃退したばかりなのに、もうそんな敵が現れたというのか。
しかもこの後の展開が予想できる。勇者である自分の師匠がこの場でする返答など一つしかない。
「状況はわかりました。今は人類全体が一致団結すべき時。我々もここに留まり、クロコダイン打倒に協力いたします。」
「おお、ありがたい!何か必要なものがあれば気軽に城のものに声をかけるがよい。よろしく頼む、勇者アバンとその弟子達よ。」
「(やっぱり〜!)」
またあんな戦いに巻き込まれるのか、とポップは内心でため息をついた。
謁見を終え、城を出たアバンたちは二手に分かれた。戦いに備え、ダイはアバンと共に第3の奥義、『空裂斬』の修行へ向かった。そして残された3人は今後必要となる消耗品の買い出しに、ロモスの街を歩いていた。
「やくそう、どくけしそう、せいすい、あとは・・・ダイとイルの寝袋か。」
「寝具ならあそこの角か、こっちの道の先ね。こっちの方がちょっと高いけど長持ちするって評判よ。」
「ほー、なるほどね。先生もケチらなくていいって言ってるしそっちにするか。」
いくつか買い物を済ませたポップたちは、大通りに面したカフェで休憩していた。買い物のリストを見つつ話すポップとマァム。一方でイルは半分こ、と言いながらケーキの8割近くを平らげたワルぼうに涙目で怒っていた。
騒がしいイルとワルぼうを放置して、ポップはマァムに尋ねた。
「なあマァム、お前はこれからどうするんだ?」
「えっ?どういうこと?」
「いや、先生も言ってたろ?これからクロコダインとかいう奴と戦うって。でもお前はロモスまでの道案内って理由で来てるんだから、村に帰ってもいいんじゃねえかなって。」
ポップは視線を手元のカップに落としつつ、マァムをさも心配するかのような言葉を告げた。一瞬ポカン、とした表情を浮かべたマァムは、微笑んでいった。
「何よ水くさい、私だって戦うわ。それにロモスが敗れたらネイル村だって危ないもの。どこに居たって変わりないわよ。」
「いや、そりゃあそうなんだけどよ。その・・・いや、何でもねえ。」
「? 何よ、変なポップ。」
不思議そうな顔をするマァムに手をひらひらと振って、ポップは会計へと向かった。アバンがいない時の金管理はポップに任されていた。マァムもイルも戦い以外での脇が甘そうだ、という理由であった。
次の店へ向かう道中、先導するマァムの後ろでポップは小声でイルにも尋ねた。
「イルはクロコダインと戦うって聞いてどう思った?」
「クロコダインってどんな魔物なのかなぁ?早く見てみたいって思ったよ?」
「お前って結構ズレてるよな。」
「えっ、急に罵倒された・・・?」
この頼もしい女性陣には、ポップの複雑な心情は理解してもらえないのであった。
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