イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第4話 襲来、百獣魔団

 魔の森のとある場所、大きく口を開けた悪魔を模した洞窟の奥で、獣王クロコダインは不満げに口を開けた。

 

 

「何のつもりだ、ザボエラよ。ここロモスの攻略は魔軍司令殿より命じられた使命、貴様に口出しされる筋合いはない!」

 

「キッヒッヒッ、今回の作戦、儂の言葉はハドラー様の言葉と同様としてよいと許可を得ている。儂に歯向かうことは、魔軍司令に歯向かうことと同義というわけじゃよ。」

 

「なっ、それは本当か!?魔軍司令殿は何を考えている!?」

 

 

 突然の指揮官の交代に、クロコダインは驚きの声を上げた。しかも上に就くのがよりにもよってこの者とは。

 

 妖魔司教ザボエラ。魔王軍の屈指の頭脳の持ち主である。しかしその策は卑劣なものが多く、武人としての誇りを重視するクロコダインとは相容れない存在であった。

 

 

「なに、ハドラー様は司令として、確実に勝利を得るための人事を下したに過ぎぬわい。儂とて暇ではない、今からする命令を守れば後は好きにすればよいわ。」

 

「命令だと?何をさせる気だ?」

 

「ヒッヒッヒッ、よく聞くんじゃぞ。まず一つ、来たるべき時になったら貴様は百獣魔団を率い、真っ先に王城を落とすんじゃ。そして勇者一行を誘いだせ。」

 

 

 ザボエラがそう言うと、『あくまのめだま』にアバン、ダイ、イルの3人が映し出された。

 

 

「注意人物はこの3人、そして貴様は小僧と小娘の足止めをし、アバンを孤立させるのじゃ。」

 

「なにっ!?貴様、仮にも獣王であるこの俺に、こんな小僧共の相手をさせようと言うのか!笑わせるな!」

 

「侮るでない。先日ハドラー様に手傷を負わせた張本人がこ奴らじゃ。むしろ貴様ひとりで止め切れるか不安なくらいぞ。そこで、じゃ。」

 

 

 ザボエラの言葉と共に、あくまのめだまの触手が伸び、黒い魔法の筒をクロコダインに手渡した。

 

 

「その魔法の筒には小僧、ダイに対する切り札を入れてある。貴様が敗れそうになった場合、迷わずに使うんじゃ。言っておくが、これは命令じゃぞ?」

 

「フン。こんなものを使うことになるとは思わんがな。それで、肝心のアバンの相手は誰がするというのだ。」

 

「アバンには特別な相手を用意してある。それ、ちょうどそちらに着いたようじゃぞ?」

 

 

 何かの気配を感じ、クロコダインは顔を洞窟の入口側へ向けた。そこには、銀の鎧を身に纏った白髪の剣士が立っていた。

 

 

「ヒュンケル・・・。なぜお前がここに?」

 

「ザボエラの命令などに従うのは癪だが、奴の相手となれば話は別だ。」

 

 

 ヒュンケルの目には、恐ろしいまでの怒りが渦巻いていた。呼応するように立ち上る闘気に、クロコダインは思わず息を呑んだ。

 

 

「奴は・・・、アバンは、俺が殺す!!」

 

 

 宣言するヒュンケルのその胸には、かつての師から贈られた輝聖石のペンダント、『アバンのしるし』が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 ダイ達がロモスに到着して3日が経った。城の客間での滞在を許されたダイ達は、クロコダインとの決戦に備え特訓の日々を送っていた。

 

 特に『スペシャルハードコース』をこなすダイには、ポップとマァムと同時にこなす修行とは別に早朝の訓練が課されていた。

 

 その結果ダイの技量は更に高まり、剣術では既にアバンに迫らんとしていた。しかし一方で見えざるものを斬る技、『空裂斬』を習得することはできていない。

 

 ちなみにイルはその間別行動をしている。初日に試しにとダイ達に混ざってみたものの、イルには直接戦闘のセンスはなかったのである。

 

 身体能力は高い。しかし普段指揮ばかりしているせいか、思考が先に来て体の反応が遅れるのだ。矯正は可能だが、モンスターマスターとしての技量に影響が出るかもしれない、と判断したアバンは、イルに自由に特訓するように勧めた。

 

 イルもそう感じていたのかその勧めに素直に頷き、スラッシュとプックルを連れて魔の森へ向かった。夕食の時間には帰ってくるが、朝はダイとアバンよりも早く出ており、ほぼ一日中森の中に潜る生活を送っていた。

 

 その間、不自然なほどに魔王軍の動きは見えなかった。アバンの来訪を知るロモスの民は、勇者の威光様々だ、と喜んだ。一方、アバンや一部の冷静な者には、この停滞が嵐の前の静けさのように感じられていた。

 

 そして4日目の朝、事態は急変する。

 

 

「グォォォォォォォ!!!」

 

 

 地の底から震え上がるような獣の咆哮が、ラインリバー大陸に響き渡った。そして直後、空と大地を埋め尽くすほどの魔物の軍勢がロモス王国へ押し寄せた。

 

 軍勢は城下町には目もくれず、真っ直ぐにロモス城へ突撃した。そして鳥系の魔物により運ばれた魔物達が城壁を飛び越え、早朝の警備に出ていた兵士たちに襲いかかった。

 

 応戦する戦士達、その中に、特訓中だったダイとアバンもいた。

 

 

「やぁぁ!なんて数だ・・・キリがない!」

 

「このままでは押し切られます、何とか指揮官を叩かなければなりません!」

 

 

 しかしダイ達の周囲には負傷したロモス兵がおり、その場を離れることが出来なかった。2人が味方を庇いながらの戦いを続けていると、ズドン、と一際大きな破壊音が城を揺らした。

 

 

 何が起きたのか、と思っていると、ダイ達が戦う広場に、頭から血を流した兵士が駆け込んできた。

 

 

「はぁ、はぁ。アバン様、クロコダインです!クロコダインが直接玉座の間に!」

 

「何ですって!?」

 

「我々では歯が立たず・・・、どうか我らが王をお助けください。!」

 

「しかし、この場を離れるわけには・・・!」

 

 

 その時、アバン達が守っていた負傷兵たちがよろよろと起き上がった。そして彼らは口々に叫んだ。

 

 

「行ってください!」「ここは我らにお任せを・・・!」「死ぬ覚悟など、とっくに出来ております!」

 

「皆さん・・・!わかりました、行きましょう、ダイ君!」

 

「先生、でも!」

 

「彼らの意思を無駄にしてはいけません!今私達のするべきことは、一刻も早くクロコダインを打倒することです!」

 

 

 そう言ってアバンは駆け出した。一歩遅れてダイも走り出す。

 

 

「(ごめんなさい・・・。絶対に許さないぞ、クロコダイン!)」

 

 一度だけ振り返ったダイは、命を捨てて戦うロモス兵の姿を目に焼き付けてそう思った。




次回は明日か明後日の更新を予定しています。
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