ポップと別れたマァムは、クロコダインの居る玉座の間を目指していた。そしてその途中で、同じく玉座の間へ急ぐアバンとダイを見つけた。
「先生、ダイ!」
「マァム!無事だったんだね。ポップは?」
「・・・知らないわ、あんな奴。」
「?」
マァムの様子に首を傾げるダイだったが、急ぐ道中、深く追求はしなかった。事情を察したアバンも、そこに触れることはなかった。
3人は立ち塞がる敵をなぎ倒し、玉座の間へとたどり着く。そして扉の先には、魔物に押さえつけられるロモス王、倒れ伏す兵士、そして腕を組んでダイ達を待ち受ける、屈強な魔物の戦士がいた。
「来たか。勇者アバンとその弟子たちよ。」
「貴方が獣王クロコダインですか。」
「いかにも!我こそが魔王軍が六軍団長のひとり、百獣魔団長のクロコダインだ!」
アバンの問いに、クロコダインは威風堂々と答えた。そしてふむ、と呟いて言った。
「どうやらイルとかいう小娘はおらんようだな。ちと物足りんが、まあ仕方あるまい。」
「何だと!」
「ダイくん、挑発に乗ってはいけません。相手はひとり。まずは私が先行しますから、2人は援護を。」
その言葉にダイとマァムはこくん、と頷いて武器を構えた。そして、アバンがクロコダインに向かって駆け出した。
「はぁぁ!」
「ふむ、かの勇者と一戦交えたいのは山々だが・・・お前の相手はオレではない。」
「何を・・・くっ!」
「「先生っ!?」」
クロコダインがそう言った瞬間、突如として飛び出してきた人影がアバンに斬りかかった。何とか剣で防いだアバンだったが、鍔迫り合いの末に押し負け、大きく体勢を崩してしまう。
そしてその隙に、クロコダインが立ちつくすダイとマァムに襲いかかった。クロコダインは斧をダイ達に向け、そこに秘められた真空の力を解き放った。
「喰らえ、『真空の斧』!」
「うわっ!」「きゃあ!」
「アバンの相手は任せたぞ、ヒュンケル!」
斧から放たれた『バギ』の呪文が、ダイとマァムを吹き飛ばし玉座の間から追いやった。それを追うようにして歩くクロコダインは、ヒュンケルと呼ばれた剣士とアバンを残し、玉座の間への扉を固く閉ざした。
「大丈夫!?ダイ?」
「うん、平気だよ。それよりも先生が!」
「ほう、このオレを前にして他人の心配とは随分と舐めてくれるな、ダイ!」
そして激しい戦いが始まった。剛力と『真空の斧』で攻めるクロコダインの攻撃を、ダイは小柄さを活かして紙一重でかわしていく。短剣を使うダイが不利に思えたが、その差をマァムの『魔弾銃』が補った。
クロコダインの振り上げた腕に、マァムの撃った『ヒャダイン』が直撃し、その動きを止める。生まれた隙に、跳躍したダイが突っ込んだ。
「甘いわ!カァーー!」
反応したクロコダインは、ダイに向かってオレンジ色の息吹を吹きかけた。『ヒートブレス』、あるいは『やけつくいき』と呼ばれるクロコダインの奥の手であった。
その息を浴びたものは体がしびれて動けなくなる。手応えを感じたクロコダインは一瞬気を緩めた。それが分かれ目であった。
「ダイ、今よ!『キアリク』!」
「!? 何だと!」
「はぁぁぁ!!」
間髪入れずに放たれたマァムの『キアリク』が、その痺れを取り払った。そして立ち直ったダイが振るった短剣が、クロコダインの左目を縦に切り裂いた。
ダイ達はこの数日イルによって、自然系の魔物が操るとくぎを頭に叩き込まれていた。それが生かされた瞬間であった。
「ぐぉぉぉ、このオレの顔に、いや誇りに傷を・・・!」
クロコダインは左目の痛みと、小さな少年に傷を負わされたことに対する怒りに声を振るわせた。その時、戦いを見守っていた『あくまのめだま』から声が発せられた。
「キッヒッヒッ、無様じゃのう、クロコダイン。誇りなどさっさと捨てて、あれを使え。」
「ザボエラ!お前は引っ込んでいろ!」
「フン、ワシの言葉はハドラー様の命令と同義と言ったことを忘れたか。」
「ぬぐっ!だが、しかしそれは・・・。」
「命令じゃ!やれい、クロコダイン!」
そうして再び『あくまのめだま』は沈黙した。そしてクロコダインは先ほどまでの怒りを忘れたかのような苦い表情で、懐から黒い『魔法の筒』を取り出した。
「命令だ。許せ、ダイよ。『デルパ』!」
「じ、じいちゃん!?」
「グォォォ!『メラミ』!!」
そこからは一瞬であった。
魔法の筒から現れたのはダイの育ての父、ブラスであった。魔王の瘴気に当てられ正気を失ったブラスには、涙目で呼びかけるダイの声は届かなかった。
たったひとりの家族であるブラスを攻撃できないダイ。ついにダイは、その家族の放った『メラミ』によって地に伏してしまった。
助けようとしたマァムもまた『あくまのめだま』の触手に絡めとられ、まさに絶体絶命となった。
そして不本意な顔をしたクロコダインがダイに斧を振り下ろさんとする、まさにその時だった。
「ダイ、マァム!!」
息を切らしたポップが、戦いの場に辿り着いた。
なんだ貴様は、とばかりにギロリと睨むクロコダイン。その恐ろしさに背筋が伸びそうになったポップだったが、歯を食いしばってそれを耐えた。
「俺が相手だ!このワニ野郎が!!」
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