クロコダインを倒し、玉座の間への扉を開けたダイ達。そこでは、白髪の剣士とアバンが、激しく剣戟を繰り広げていた。
剣と剣が交わり、2人は互いに距離をとる。そしてアバンが剣を横合いに構え、凄まじい速度で振り抜いた。
「『海破斬』!」
しかしその後、剣士の放った技にダイ達は目を見開いた。
「フン。『海破斬』!」
「なっ、相手も海破斬を!?」
互いの剣圧がぶつかり合い、相殺される。互いに睨み合いになったその時、アバンが息を荒げて膝をついた。
「先生!大丈夫ですか!?」
「ダイくん、マァム。それにポップまで・・・!クロコダインを倒したのですね。よくやりました。」
駆け寄ったダイ達に、アバンがにこりと微笑む。疲労は濃いが、大きな傷を負っているわけでは無いらしい。そのことに安堵しつつ、ポップが尋ねた。
「先生、アイツは一体?今のは『海破斬』ですよね・・・。何で敵があの技を?」
「ポップ、あの人の胸元を見て!」
「胸元?・・・ってありゃあ、『アバンのしるし』じゃねえか!?」
黒い装束の上にキラリと映えるその首飾りは、ダイ達が持つアバンの弟子の証に違いなかった。マァムが一歩前に出て剣士に尋ねる。
「あなた、アバン先生の弟子なのよね。どうして先生と闘うの!?」
「よせマァム、どうせ偽物か何かに決まってらぁ!」
「いえ、本物ですよ。ポップ。」
息を整えたアバンが、立ち上がりつつ答えた。その視線は油断なく、かつどこか悲しげに剣士に注がれている。
「彼の名前はヒュンケル。かつて私がハドラーを打倒した後、初めて育てた弟子です。」
「そんな・・・。じゃあ貴方は先生の一番弟子ってことじゃない。それならどうして魔王軍の肩を持つのよ!」
「なに、簡単なことだ。アバンの弟子すべてが師を尊敬し、正義を愛するわけではないということよ。中には俺のようにその身を魔の道に染めた者もいる・・・正義の非力さに失望してな!!」
くわっ、と目を見開いて言い切ったヒュンケル。その迫力に息を呑むダイ達に対し、ヒュンケルは剣を向けて言った。
「俺は魔王軍が軍団長の1人、不死騎団長のヒュンケルだ!だが、今の俺の目的はアバンの命ただ1つ。邪魔をせず今すぐ立ち去るというのなら、見逃してやってもいい。」
「なにっ!?」
「だが邪魔をするというのならば・・・命は無いと思え!」
「・・・3人とも、下がっていなさい。」
前に出たアバンが、ダイ達に下がるように指示する。剣を構え直すヒュンケルに対し、アバンは大上段から力強く剣を振り下ろした。
「『大地斬』!」
「くっ!アバン、貴様・・・この期に及んでまだ本気を出さんのかぁ!」
それを正面から受け止めたヒュンケルは、力任せにアバンの剣を押し返した。そして激昂したままに斬りかかる。
「今だに師匠面で手加減か!?俺を舐めるのもいい加減にしろ!」
「違います、ヒュンケル。私は・・・!」
「何が違う!?ならば見せてみろ、俺の父の命を奪った無力な正義の力とやらを!!」
そう言ってヒュンケルは半身に構え、右手に握った剣をアバンに向けたまま、弓を引くようにして狙いを定めた。剣に黒い闘気が集まり渦を巻く。そして、気迫と共にその技が放たれた。
「『ブラッディースクライド』!」
「ぐおおお!」
「「「先生!!」」」
闘気を纏った剣で受け止めようとしたアバンであったが、耐えきれず吹き飛ばされ、壁に激しく打ち付けられた。それを見たポップとダイは決意した。
「ダイ、悩んでる場合じゃねえ!」
「わかってる!喰らえ、『アバンストラッシュ』!」
ダイの剣から放たれた斬撃がヒュンケルに襲いかかる。しかしヒュンケルは動じることなく、逆手で持った剣でその刃を軽く受け止めた。ダイの顔が驚きに染まる。
「これが『アバンストラッシュ』だと・・・?笑わせるな!一太刀でわかったぞ、お前はまだアバン流刀殺法を極めていない!すなわち第3の技、『空裂斬』をな!」
ダイの実力を見切ったヒュンケルは、逆手に持った剣をそのままに後ろへ引いた。そしてダイと同様に、その剣に輝く闘気が集まっていく。
「紛い物でよければ、俺でも撃てる。『アバンストラッシュ』!!」
放たれた闘気の刃がダイに直撃し、炸裂した。衝撃波に巻き込まれたポップ、マァムも吹き飛ばされ、ダイと同様に地に伏した。
あっという間に4人を倒してみせた新たな軍団長、ヒュンケル。クロコダインを倒したダイ達の前に、新たな壁が立ちはだかった。