イルとダイの大冒険   作:NBRK

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1章 イルとダイのデルムリン島の戦い
第1話 異世界からの乱入者


「(やはり歯が立たない・・・。もう、あの呪文しかないですね。)」

 

 

 アバンとポップがダイの住むデルムリン島にやって来て三日、修行に励むダイ達のもとに、突如として15年前に死んだはずのハドラーが現れた。

 

 大魔王バーンの手によって蘇ったハドラーは自身を魔軍司令と称し、強化された力でアバン達を圧倒した。

 

 15年前にハドラーを倒したアバンも、ダイへの修行で唱えたドラゴラムによる消耗が大きく苦戦し、さらに弟子たちを庇って受けたベギラマの直撃で瀕死にまで追い込まれた。

 

 そこでアバンはアストロンでダイ達を鋼鉄の塊に変え、最後の望みをかけて格闘戦に臨んだ。しかしそこでもハドラーは想像を超える力を見せ、戦いは残酷なまでに一方的な展開を見せていた。

 

 そしてついにアバンは、最後の手段を切る決断をした。

 

 

「(あとは頼みましたよ。ダイ、ポップ。)」

 

 

 決意を込めて、最期の攻勢に出ようとした、その瞬間だった。

 

 

 

 

「きゃああああ!!!」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 場違いな叫び声と共に、空から一人の少女とモンスターが降ってきたのは。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 イルは気が付くと空中にいた。

 

 地面が見える程度ではあったが、人間が落ちればただでは済まない高さ。とっさにスライムのスラッシュがクッションになっていなければ無事ではなかっただろう。

 

 瞬時の判断が間に合ったのは、旅の初めから付き添ってきたイルとスラッシュの信頼関係が成せる業であった。

 

 

「おい、大丈夫かイル。」

 

「いたた、何とか大丈夫。というかワルぼう浮けるんだから助けてよね。」

 

「悪い悪い。というか周りを見てみろ、どうにも物騒だぞ?」

 

 

 そう言われてイルは周囲を見渡した。するといかにも強力そうな魔物と、カールした髪が特徴的な、ぼろぼろの男性がイルを挟んで向かい合っていることに気づいた。どちらもぽかん、とした顔をしているが、周囲の戦いの痕跡を見る限り、かなり激しい戦いの最中であったことが伺える。

 

 

「(ど、どうしよう。というかあの魔物初めて見るなぁ・・・スカウトしてみる?)」

 

「(馬鹿かイル、どう見てもそんな状況じゃないだろーが!さっさとずらかるぞ!)」

 

 

 戦場のど真ん中でひそひそ話をするふたり。しかしもう手遅れであった。

 

 

「誰かは知らんが、邪魔をするなら小娘であろうと容赦はせんぞ、『ベギラマ』!」

 

「っ!スラッシュ、『まもりの霧』」

 

 

 魔物の放った呪文に反応し、イルはとっさに指示を出した。すると地面で伸びていたスライムが飛び起きてイルの前に立ちふさがり、神秘的な霧でベギラマを相殺した。それを見た魔物が「なっ」、と驚く。

 

 

「スライムの分際で俺のベギラマを受け止めるだと?貴様ら何者だ!」

 

「へっ、誰が答えてやるもんか。おいイル、どうやらアイツが敵でいいらしいぞ、どうせ逃げられないならやっちまえ!」

 

「それしかないね。うん、戦おう!」

 

「なっ、いけません!」

 

 

 前のめりになったイル達を止めたのは、背後にいたぼろぼろの男性だった。立っているのもやっとという様相であるが、それでも勇者は少女を守らんとしていた。

 

 

「下がってください。あれはハドラー、15年前に魔王として各地を襲った恐ろしい魔物です。あなたのような子供が敵う相手ではありません。私が時間を稼ぎますから、どうか逃げてください。」

 

 

 そうして男は剣を構えた。アストロンを唱える魔法力が残っていない以上、少女たちを巻き込む恐れのあるあの呪文は使えない。ならばせめて時間稼ぎだけでも、というのが、男の考えであった。

 

 

「そうなんだ。わかった、気を付けて戦うよ!」

 

 

 しかしその悲痛な訴えに対し、少女の反応は軽いものだった。男は言葉を重ねようとしたが、そこにふわふわと浮かぶ妖精が言葉をかけた。

 

 

「魔王ねえ。それはアイツには脅しにはならないぜカールのあんちゃん。」

 

「何を言っているのですか!?彼女を止めなくては!」

 

「魔王なんて言葉は聞き飽きてるんだよアイツは。モンスターマスターってのは魔物を育て、配合し強くして戦う。そして時には魔王や神と呼ばれる存在さえも味方にするもんだ。あいつはそんな奴らの頂点だ。」

 

「魔物を、魔王を、仲間に・・・?」

 

「そうだ。そして今いるスライムのスラッシュはイルの最初の相棒だ。そんじょそこらの魔王にゃ負けやしねえ。あんちゃんはそこで休んでな。」

 

 

 そう言って、妖精もまた少女のそばへ向かった。取り残されたアバンは、彼らの背中を見る。ありえないと思いつつも、彼らの背中からは歴戦の戦士のような頼もしさを感じた。

 

 

「行くよスラッシュ、『メラガイアー』!!」

 

 

 その声と同時に、スライムが呪文を唱えた。アバンをして初めて聞く呪文であったが、生じる強大な魔力の流れから凄まじい威力の呪文であることが感じられた。

 

 

「(まさか本当に・・・?)」

 

 

 そして魔力がピークに達した瞬間。

 

 

 

 

 ポスン、と小さな火の玉がハドラーへと飛んで行った。

 

 

 

 

「・・・。」

 

 

 ハドラーはその火の玉を避けることすらしなかった。当然、その体に当たった火の玉はなんのダメージを与えることもなく消滅した。

 

 

「ちょっ、スラッシュ!なにしてるの!?」

「そうだぞ、お前ふざけてんのか!」

 

 

 少女と妖精にとっても予想外だったのか、慌てた様子でスライムにそう問いかける。スライムはその言葉に、気まずそうな顔をして振り返って言った。

 

 

「いや、そういえばオレ昨日スラみちゃんと『新生配合』したの言うの忘れてたわ。だから強い呪文ほとんど忘れちまった。すまん。」

 

 

 そして少しの沈黙の後、少女たちの叫び声が響き渡った。

 

 

「えええええ(はああああ)!!??」

 




DQM+リスペクトで、配合などの言葉も普通に使う予定です。
あとがきや前書きで説明はしますが、わからなくても読む分には大丈夫かと思います。

配合 : 星振りのほこらで行われる、2匹のモンスターから新たなモンスターを生み出す儀式のこと。その際に両親からスキルを引き継げるが、生まれた直後は貯めてきたスキルポイントが半分になるため技の一部を忘れてしまう。

新生配合 : 種族は同じまま、より強い存在へ生まれ変わることができる配合のこと。イルがドークという魔物から譲り受けた、「しんせいの宝珠」を用いて行う特殊な手法。
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