イルとダイの大冒険   作:NBRK

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幕間②
マァムと『着替え』


 ロモスからの出発を明日に控えた日の夕暮れ、マァムは母への別れの挨拶を済ませ城に戻って来ていた。そして客間に戻る途中、マァムは『アラビアン服』を身に纏ったイルを見かけた。

 

 見慣れない衣装に興味が湧いたマァムは、早速イルに声をかけた。

 

 

「あらイル、珍しい格好ね。でも似合ってるわ!」

 

「ほんと?ありがとう!昔砂漠を旅してる時に貰った服なんだ。」

 

「へー、そうなのね。でもどうして急に?」

 

「実はね・・・。」

 

 

 イルは昼間に開催したショーについてマァムに話した。マァムは興味深そうにその話を聞き、素敵ね、と顔を綻ばせた。

 

 

「イルは偉いわ。戦いの後もロモスの人々を笑顔にして。私も見てみたかったわ。」

 

「うふふ、船に乗ったらマァム達にも見せてあげるね!」

 

 

 イルはマァムに褒められ、嬉しそうにそう約束した。そのまま2人は連れ立って歩き、部屋の前へと辿り着いた。

 

 マァムが扉を開けると、2人に宛てがわれた使用人の女性達が、お帰りなさいませ、と声をかけた。彼女らは2人から荷物を預かると椅子を引き、紅茶と茶菓子の準備をする。促されるままに席についたマァムは、少し居心地が悪そうな表情をした。

 

 

「この城に来て数日経つけど、未だにこの扱いには慣れないわ・・・。何だか申し訳なく感じちゃって。」

 

「あはは、確かに。ちょっと背筋が伸びちゃうよね。」

 

「でもイルは意外と慣れてそうな感じがするわよ?実際そこのところどうなのかしら?」

 

 

 そう言いながらマァムは目の前の少女を眺めた。茶菓子を見て目を輝かせる少女からは、マァムが感じているような緊張は感じられない。

 

 イルはうーん、と悩み、その問いに答えた。

 

 

「もとの世界ではお城にお呼ばれすることが時々あったから、それでかなぁ。・・・へくちっ!」

 

 

 そう話すイルの口から、可愛らしいくしゃみが出た。ぶるりと身を震わせるイルに、マァムが心配そうに声をかけた。

 

 

「大丈夫?その衣装は可愛いけど、冷えるようだったら着替えたほうがいいんじゃないかしら。」

 

「うん、そうする・・・。ちょっと待っててね。」

 

 

 イルは立ち上がり自分のカバンを持つと、手近な物陰に入っていった。女性しか居ない場とはいえ、お茶をしている人の側で着替えるというのは品がない、と使用人達は慌ててイルを止めようとする。村育ちのマァムは特に気にしていなかったが。

 

 しかし、イルはなんと数秒で着替えを済ませて物陰から出てきた。それに驚いたマァムは紅茶を吹き出しそうになる。

 

 

「けほっ。イ、イル、貴女どうやって・・・?」

 

「え?普通に着替えたよ?ああ、わたし着替え得意なんだ。」

 

「普通にって、その暖かそうなコートを数秒で!?得意とかいうレベルじゃなくないかしら・・・?」

 

 

 何食わぬ顔でテーブルに戻ったイルは、所々にファーが付いたピンク基調のコートに身を包まれていた。『モフモフコート』、雪国出身の肉屋から貰った、イルのお気に入りの衣装である。

 

 戸惑う周囲を置き去りにして、イルは再び茶菓子を楽しんでいた。しかし数分して、再びその表情が歪んだ。

 

 

「暑い・・・。」

 

「ま、まあ確かにそのコートはちょっと重装備すぎる気がするわね。」

 

「もう一回着替えてくる・・・。」

 

 

 再び物陰に移ったイル。そして数秒後、今度はシャツにネクタイ、紫で統一されたジャケットとスカートを身につけたイルが、光沢のあるブーツで足音を鳴らしながら登場した。

 

 

「どうかな、『ゴシックウェア』って言うんだ。」

 

「初めて見るファッションね・・・。ゴテゴテして見えるのに、イルが着てるとお人形さんみたいで凄く可愛らしく見えるわ。」

 

 

 マァムは自分がその服装を着ている所を想像し、心の中で首を振った。イルが着ているからあまり違和感はないが、自分が着るとどうにもしっくり来ないだろう。

 

 初めて見る種類の衣装に、使用人の女性たちも興味津々である。可愛らしい、似合っている、などと口々に褒められて気分が良くなったイルは、次々と持っている衣装を披露していった。

 

 そして最終的に、使用人に囲まれながらお茶を飲む、メイド服の少女という構図が完成した。

 

 

「どうしてこうなったのかしら。」

 

「え、マァムはあんまり好きじゃない?『おもてなしの服』。」

 

「いえ、とっても可愛いわ。でも、そうじゃないのよ・・・。」

 

「?」

 

 

 不思議そうな顔をするイルに、マァムは何でもないわ、と笑いかけた。気づけば肩の力は抜けていた。

 

 イルの服装を見てはしゃいでいるうちに、使用人の女性らとの間に感じていた壁も無くなっていた。中には戦う姿を見ていた者も居たらしく、凄くかっこよかったです、と言われたマァムは照れくさそうな顔をした。

 

 もっと早く話してみればよかったわ、とマァムは思った。そして時間を惜しむようにイル、マァムと使用人の女性達は会話に花を咲かせるのであった。




プレイヤー特技、『着替え』にちなんだお話でした。

この後マルタの国のお話を1話挟んで、3章を始めます。
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