マルタの国の王子カメハとイルの兄、ルカは聖竜ミラクレアからの指示で、3匹の『異世界のぬし』を連れて来るよう指示されていた。彼らは今一体・・・?
「はぁ、はぁ。・・・よーしっ!マンモデウス、ゲットだぜ!」
「これでやっとミラクレア様に言われたモンスターが揃ったね。急いでマルタに戻ろう!」
ここは雪と氷の世界。そこでカメハとルカは、大人しくなった巨大モンスター、『マンモデウス』を前に会話していた。
行方不明になったイルとワルぼうを探すため、先日2人は聖竜ミラクレアに協力を仰いだ。そこで3匹の、異世界のぬしであるモンスター達を連れて来るよう指示されたため、ここ数日、2人は3つの世界を駆け回っていた。
そして今日、『オリハルゴン』、『リバイアさま』と並ぶ3匹目のぬしである『マンモデウス』をスカウトすることに2人は成功した。目的を達成した2人はマルタの世界に帰るため、世界を繋ぐ『ふしぎな扉のほこら』を目指して歩き始めた。
「くしゅん!あー寒い、こんな世界さっさとおさらばしようぜ、ルカ。」
「そんな格好でいたら当然でしょ?それにしても、よく3匹ともスカウトできたよね。」
「へっ、まあオレにかかればこんなもんよ!こいつらも中々やるようになってきたしな!」
そう言ってカメハは2人の後ろについて来る3匹のモンスターに視線を向けた。主からの称賛を受け、『ベロゴン』、『怒りの魔人』、『ピエロスライム』の3匹が各々喜びを見せる。
色々と問題児扱いされるカメハだが、モンスターマスターとしては中々の実力を備えている。『モンスター格闘場』で見せたイルとの激戦は、格闘場ファンの中での語り草になっている。
王子としての力を総動員してモンスターを揃えたこともあり、金で買った強さ、と揶揄されることもある。しかしモンスターからの信頼は厚く、とある世界では強大な魔物である『ムドー』を従え、『魔王様』として今でも崇拝されているほどである。
モンスター牧場の跡取り息子であるルカから見ても、カメハとモンスター達との間の絆は本物に見えた。わがままな王子ではあるが、王族に求められるカリスマ性の片鱗を持ち合わせていることは確かであった。
そんな風に話しつつ歩き、ほこらに辿り着いた2人はマルタの国へと帰還した。ふしぎな扉の前には、2人の帰りを待っていたミラクレアが立っていた。
「おお、帰ったか。ルカの父親から連絡があったぞ。マンモデウスをスカウトできたようじゃな。」
「へへっ楽勝だぜ!これでミラクレアの言ってたモンスターは揃ったな!」
「うむ、あとは異世界までの道を切り拓くだけじゃ。」
そう話しつつ、ミラクレアは2人とお供のモンスター達に回復呪文をかけた。ひと足先に『モンスター牧場』にマンモデウスが送られて来たことは、ルカの父親によってミラクレアに伝えられていた。
ミラクレアは『ルーラ』を唱え、2人を連れて『宿り木の世界』へと向かった。 天高くそびえ立つ『宿り木の塔』の中腹にある村に降り立った3人は、ミラクレアを先頭に村の奥の長老の家へ向かった。
「長老、邪魔するぞ。」
「おお、これはミラクレア様。本日はいかがなさいましたか?」
「大魔神像を使うのでそれの先触れにな。皆にも伝えておいてくれ。」
そう告げられた長老は一瞬目を丸くしたが、すぐに動揺を隠し、承知しました、と答えた。そして村の者に伝えて参ります、と外へ出ていった。
話についていけないカメハとルカはきょとんとした顔でそれを見送った。しかしそれを気にする様子もなく、ミラクレアは再び『ルーラ』を唱えた。
そして辿り着いたのは、『宿り木の塔』の頂上であった。視界に広がる果てしない雲海に、カメハとルカは興奮した表情を見せる。ミラクレアはそんな2人に向けて、下がっていろ、と伝えた。
そしてミラクレアはひとり階段を降り、不自然なほど広い広場の中心で『モシャス』の呪文を解除した。そして光と共に、彼女、『聖竜ミラクレア』の本来の姿が晒される。
目の前に現れた白く荘厳な巨竜の姿に、カメハは思わず感嘆の声を漏らした。
「す、すげー。」
「この姿になるのも久しぶりじゃな。ほれ、儂の背中に乗るがよい。本番はこれからじゃ。」
2人を背に乗せ、ミラクレアは空へ飛び立った。そして塔の全容が晒される。広い大海原の中、ポツンと立つ『宿り木の塔』は、塔自体が巨大なカギの形をしていた。
ミラクレアは塔の上部に設けられたカギの持ち手の部分に降り立つと、巨大な体を光らせながら力を込めた。轟音を立てながら、塔が徐々に海に沈んでいく。
そしてそれと同時に、海から巨大な石像が姿を現した。
「なんだありゃあ!?とんでもないでかさだ!」
「儂が300年前、いずれ復活するであろう闇の王と戦う日のために作らせた決戦兵器、『大魔神像』じゃ。儂とイルはあれを使って奴らと戦ったんじゃ。」
驚くカメハに、ミラクレアは巨大な石像について説明した。同じく驚いていたルカがふと疑問を口にする。
「決戦兵器?凄いですけど、どうしてイルを探すのにこの像を使うんですか?」
「儂らが戦ったのは『狭間の闇の王』じゃ。奴は世界と世界との間の次元、『狭間』を支配し自在に出入りしていた。奴と戦う為には、同じ土俵に立たねばならん。」
「えっと、つまり?」
「あれには世界と世界を繋ぐ『狭間』を切り開く力が備わっているという事じゃ。そこまで行ければ、後は儂がイルとワルぼうの気配を追うことで居場所に辿り着けるじゃろう。」
なるほど、と納得したルカ。前に妹から大魔神像について話は聞いていたが、細かい部分を理解していなかったイルの説明は、でかい、つよい、かっこいいのような抽象的なものばかりだった。製作者本人に聞くことで、改めてこの像に秘められた力の凄さが感じられた。
「仕上げじゃ。来い!『オリハルゴン』、『リバイア』、『マンモデウス』!!」
ミラクレアのその叫びと共に、3匹の異世界のぬしが魔神像の周りに召喚された。そして彼らはその姿をそれぞれ巨大な剣、盾、鎧に変えて、大魔神像へと装備されていった。
「かっけ〜!あれで完成か?ミラクレア!」
「うむ、本来ではあれに儂が乗り移ることで完全体、『グランエスターク』が完成するのじゃが・・・、今回はここまでとしておこう。」
完全体となるために、ミラクレアは大魔神像と同化する必要がある。装備になるのとは違い、一度同化すれば元に戻ることはできない。
イルがいればまた復活されそうな気もするが、そう何度も死ぬ趣味はミラクレアにはない。完全体には程遠いが、この姿でも十分な力を発揮できるだろうとミラクレアは考えた。
「では行くとしよう。大魔神像よ!狭間への道を切り開け!!」
その号令と共に、大魔神像が右手に握った大剣を振りかぶり、力強く振り抜いた。空間が切り裂かれ、狭間の世界が顔を出す。
「行くぞ、カメハ、ルカ!」
「おう!」「はい!」
ミラクレアの背に乗って、カメハとルカは狭間の世界へと乗り込んだ。大魔神像もそれに続く。
再会の時は近い。
カメハ王子はわがままですが、所々で能力や器の大きさを見せる場面があって結構好きなキャラです。
次の更新から、3章を始めます。
『異世界のぬし』: 各世界に存在する、超ギガサイズのモンスターのこと。その正体はかつてミラクレアと共に戦った戦士達である。モンスターにその身を変え生き永らえる決意をしたミラクレアに対し、彼らは自分たちも共に生きると宣言し、同じくその身をモンスターと化した。使命を果たした彼らの魂は解放され、今いるぬし達は存在は同じでも魂は異なった『2代目』である。