突然頭の中に響いたカメハ王子の声に驚くイル。それに続いて、これまた彼女にとって身近な者たちの声が届いた。
「(イル、大丈夫?心配したよ。)」
「(全くじゃ。随分と手をかけさせおって。)」
「お兄ちゃん、ミラクレア様まで・・・!」
イルからこぼれた言葉に、ダイ達が驚きの表情を見せた。異世界から来たと話していたイル。その家族が、今イルに語りかけているというのだ。
嬉しそうな声色で話すイルは、周囲を見て状況を思い出し、焦った様にカギへ語りかけた。
「ごめん!嬉しいけど、今大変な状況なんだ!また後でお願い!」
「(む、しかしこちらも力が足りなくてな。何とか声は届けたが、もう一度繋げるにはまた暫く時間が掛かるのじゃが・・・。)」
「うっ。・・・それでもごめんなさい!」
「(わかった。緊急事態なのじゃな。ならばせめてこれだけでも受け取っていけ。)」
その瞬間、隣に居たワルぼうの体が光に包まれた。それが収まると同時に、ミラクレア達の声が遠くなっていく。
「(ワルぼうに儂の力を少し送った。今ならば、『星降り』の力を使えるじゃろう。回数は限られるがな。)」
「ミラクレア様・・・。」
「(お主がその世界に居るのは恐らく偶然ではない。敵か味方か、必ず何者かの意思が存在するはずじゃ。用心せよ。)」
「(気をつけろよ、イル!)」「(早く帰って来てね!)」
脳内に響いていた声は完全に消え、イルの手元のカギも光を失った。その場の全員が、何が起きたかわからずイルの事を黙って見つめていた。
その静寂を、イルが破る。懐から2本の『魔法の筒』を取り出し、『デルパ』、と呟いた。筒から出て来たのは、2体の『しりょうのきし』だった。
「マァム、その貝殻を渡してくれる?」
「ええ、わかったわ。・・・イル、何をするつもりなの?」
「決まってるよ。この不毛な戦いを終わらせる!クロコダイン、ヒュンケルさんを抑えてて!」
「わかった!行くぞ、ヒュンケル!」
イルの声に従い、ヒュンケルに迫るクロコダイン。ヒュンケルは抵抗するも、ボロボロの体では長続きせず、クロコダインの右手によって地面に押さえつけられた。うめき声を上げるヒュンケルを見て、ポップがまさか、と呟いた。
「イルのやつ、ヒュンケルをここで殺す気なんじゃねーか・・・!?」
「そんなっ!待って、イル!」
マァムの静止の声も聞かず、イルは受け取った『魂の貝殻』をワルぼうに渡した。そして宙に浮くワルぼうの前に、2体の『しりょうのきし』が並び立った。
「ワルぼう、お願い。」
「あんまりこの仕事は得意じゃねーんだがな。お前ら2体も後悔はねーか?もう元には戻れねーぞ?」
ワルぼうが、『しりょうのきし』達に問いかける。片方は、この大陸でイルが初めてモンスターと会った時の個体である。2体はそれにカタカタと骨を鳴らして答えた。ワルぼうはその反応を見て、満足そうに笑った。
「へっ、軍団長様のためなら何も怖くないってか。見上げた忠誠心だぜ。その願い、確かにこのオレが聞き遂げた!さあ行くぞ、精霊の名の下に、勇敢なる魂を束ね、今新たな命を作り出さん!」
ワルぼうが口上と共に『星降り』の力を解放した。2匹の『しりょうのきし』と、『魂の貝殻』が輝き始め、遂には完全にその姿を光へと変えた。光と化した2匹の魂が、貝殻であった光に順番に吸い込まれていく。そしてまばゆい光が放たれ、ポップ達の視界を覆った。
「すげぇ光だ、一体何が・・・!?」
「あれは・・・モンスター!?」
光の中心で、新たな存在がその形を創り上げられていく。細めた目でその様子を見たイルは、ニヤリと口角を上げた。
「『配合』、成功だね。」
「業の深いこった全く。神に目をつけられても知らねーからな。」
イルの隣に戻って来たワルぼうは、その呟きに対し呆れた様にそう言って、ため息をついた。光が収まり、遂にそのモンスターの姿が明らかになる。それを見たヒュンケルの目がくわっ、と見開かれた。
「その姿・・・まさか。そんな馬鹿な!ありえない!」
「ありえないかどうか、自分で話してみるといいよ、ヒュンケルさん。」
ヒュンケルにそう告げて、イルはそのモンスターの体をポン、と叩いた。魔力が供給され、真っ暗だった瞳に光が差す。そしてそのモンスターは、恐る恐る、と言った様子で口を開いた。
「ここは?ワシは一体・・・?そこに居るのはまさか、ヒュンケル、なのか・・・?」
「父さん!!」
『星振り』の力により、2体のモンスターは束ねられ、新たな力を得た。本来ではただの『がいこつけんし』となる筈の配合。しかし、『魂の貝殻』に残った魂の情報が、とある『じごくのきし』の心をその器へと導いた。
その名を、『バルトス』と呼ぶ。
本作初の『配合』でした。かなり見せ方に悩みましたが、この様な表現に落ち着きました。
次回は火曜か水曜日の予定です。