イルとダイの大冒険   作:NBRK

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イルは元の世界では最強のモンスターマスターですが、今回はレベル1のスラッシュくんのみが同行です。魔王いっぱい連れてきたら5話くらいで終わっちゃいそうなので。


第2話 ダイの目覚め

「勝手に配合しないでって言ったじゃん!」

 

「いやー、スラみちゃんがオレにベタ惚れだったからつい。」

 

「別に止めるわけじゃないんだからちゃんと報告してよ・・・。どれくらいまで覚えてる?」

 

「メラとかデインくらいならいけるぜ!」

 

 

 それを聞いたイルは頭を抱えたくなった。いかにスラッシュが歴戦の魔物とはいえ、配合直後の弱体化した彼と初級呪文で魔王クラスと戦うのは不可能と言っていい。

 

 ワルぼうも魔物としては一応最上位に位置する存在ではあるが、サポート向きで直接戦闘には向かない。一応攻撃できる呪文はあるが、ピーキーすぎるものしか覚えていないのだ。

 

 普段の冒険なら『にげる』一択の場面であるが、今はそうもいかない。スラッシュのメラガイアー(?)を受けてから黙っていたハドラーが動き出した。

 

 

「フハハハハ!どうやら貴様らはオレを笑わせに来たようだな!楽しませてくれた礼に・・・一息に殺してくれるわ!」

 

「スラッシュ、『デイン』!」

 

「効かぬわ、『イオラ』!!」

 

「ワルぼう、『星のきせき』!・・・きゃっ!」

 

 

 ハドラーの動きに対しとっさに電撃呪文を指示したイルだが、ハドラーの体には傷一つ付かなかった。反撃のイオラに対し、全能力を上げるワルぼうの奥義で耐えようとしたイル。しかしその威力の前に、イル達は吹き飛ばされてしまう。

 

 宙を舞うイルを受け止めたのは、先ほどイルを止めようとした男性であった。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「は、はい。ごめんなさい、気を付けるって言ったのに。」

 

「謝らなくていいですよ。何か想定外があったのでしょう?それより、あなたが戦える人というのはわかりました。もう逃げろとは言いません。なので、一緒に戦ってくれませんか?」

 

「でもその傷じゃあ。」

 

「なに、もとより捨てるつもりだった命です。少しでもある可能性に賭けるのなら大歓迎ですよ。私の名はアバン。今は呪文は使えませんが、剣での白兵戦ならまだ可能です。どうか私も君の指揮下に入れてください。幼き『モンスターマスター』さん。」

 

 

 そう言ってアバンはニコリとイルに笑いかけた。勇者として長年戦ってきたアバンは、先ほどの短い戦闘からイルの指揮の才能を見抜いていた。そしてこの決死の状況で、自らの命運を幼き少女に預けることを決断したのである。

 

 その信頼を受け、イルは顔を引き締めてうなずいた。

 

 

「わかりました。私はイルって言います。ワルぼう、『星のきせき』をもう一回お願い!」

 

「そんな気軽に使うもんじゃねえぞ!まったく、ほらよ、アバン」

 

 

 イルの声に呼ばれ、しれっと爆発から逃れていたワルぼうが妖精の加護をアバンに与えた。瀕死だった体が軽くなったことにアバンが驚く。

 

 

「これは・・・、力がみなぎってくる!」

 

「ほぼ全ての能力が上がってるが、生命力だけは上がってねー。瀕死なのに変わりはねーから気を付けろよ、アバン。」

 

「わかりました。ありがとうございます、妖精殿。」

 

「ワルぼうでいいぜ。来るぞ!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 3人となったイルのチームは奮戦を見せた。ワルぼうの加護で力の上がったアバンを攻撃役とし、スラッシュが初級呪文や『まぶしい光』を放つことで適宜牽制を行うことで、戦いは拮抗状態に持ち込まれた。

 

 しかし、その拮抗も長くは続かなかった。拮抗が崩れたのはアバンのところからだった。ハドラーと打ち合うアバンの体から、突然力が抜けたのだった。それをハドラーが見逃すはずもなく、抉るような右の拳がアバンの腹に突き刺さった。吹き飛ばされたアバンが地面に蹲る。

 

 

「ようやく隙を見せたな!アバン!」

 

「くっ、がはっ!」

 

「アバンさん!ワルぼう、もういちど『星のきせき』を!」

 

「これ以上は無理だ!マルタから離れすぎて星の力が足りねえ!・・・って危ねえ、イル!」

 

 

 アバンを失ったイルに向かって、ハドラーがとどめとばかりにイオラを放った。ギリギリで気づいたワルぼうが間に割り込むも、威力は殺しきれなかった。イル達は気づけば、子供をかたどった鉄の像のそばにまで押し込まれていた。

 

 

「いたた・・・ワルぼう!?大丈夫!?」

 

 

 イルが声をかけるも、倒れたワルぼうから返事はない。完全に気絶してしまったようだ。遠目ではスラッシュも地面に伸びてしまっている。

 

 そして、ワルぼうをゆするイルの目の前にハドラーが立った。

 

 

「散々手こずらせおって。楽には死なせてやらんぞ、小娘。」

 

「ひっ!」

 

「アバンの使徒の目の前というのもなかなか一興。身動きの取れぬ貴様らの前で、小娘が惨たらしく殺されるのを見ているがいい、『メラゾーマ』!!」

 

 

 そう言ってハドラーは魔力を右手に集中させた。灼熱の炎が渦巻き、巨大な一つの球と化す。そしてそれが今、イルに向かって放たれようとしていた。

 

 イルは避けられぬ死を前に、ぎゅっと目をつぶった。

 

 その瞬間だった。

 

 背後の鉄像から突如として青い光が漏れだした。そして、光が収まった時、そこには一人の少年が立っていた。

 

 

「なっ、何だ!?まさか、アストロンを自力で!?」

 

「はああああああああ!!!!『ヒャダイン』!!」

 

「何っ!俺の炎を!?かくなる上はこの拳で・・・!」

 

「遅い!」

 

 

 アストロンを打ち破った少年はヒャダインでメラゾーマを相殺し、拳を構えたハドラーの腹に強烈な一撃を叩き込んだ。その威力にハドラーは後退を余儀なくされ、それを為した少年は振り返って少女に声をかけた。その額には青く光る紋章が刻まれており、少女はそれに見覚えがあった。

 

 

「(あ、あの紋章は、カギに刻まれていた・・・。)」

 

「遅くなってごめん、大丈夫?」

 

「えっ?あ、うん、大丈夫だよ。ありがとう。」

 

「ずっと見てた。イルが俺たちの代わりに戦ってくれてるところを。今度は俺の番だ!先生を、イルと仲間たちを傷つけたお前を絶対に許さない!勝負だ、ハドラー!」

 

 

 そう言ってダイは駆け出した。

 

 これが、のちに世界を救う竜の騎士とモンスターマスターの、初の出会いであった。

 




星のきせき:味方一人の攻撃、防御、すばやさ、かしこさを上げる。攻撃のみ持続ターンが短い。

次回は月曜か火曜の予定です。
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