イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第14話 最深部へ

 

 スラッシュの『メラガイアー』を受けたハドラーは、今だに煮えたぎる地面の上に仰向けに倒れていた。

 

 その指がピクリと動く。それに反応したヒュンケルが焦ったように立ち上がった。

 

 

「まだ息が!?」

 

「待ってヒュンケル。たぶん大丈夫だよ。」

 

 

 イルはそれを静止し、じっとハドラーを観察する。動いたハドラーの指は炭化しており、すぐにポロポロと崩れ去った。それを皮切りに、ハドラーの体が末端から崩れていく。

 

 イルはハドラーに歩み寄った。そしてその後に取った行動が、安心しきっていた一同を再び驚かせた。

 

 

「えっと、まだあったはず・・・。あった!『イルイル』!」

 

「おい馬鹿!何やってんだイル!」

 

 

 イルは『ふくろ』から余っていた『魔法の筒』を取り出し、なんと死にかけのハドラーを収納したのだ。それを見たワルぼうが慌てて近寄り、イルの小さな頭をぴしっ、と叩いて言った。イルは涙目になってワルぼうに抗議する。

 

 

「何するの!もう!」

 

「そりゃこっちの台詞だ!んなもん捕まえてどうするつもりだ!」

 

「どうって、いつも通りわたしのモンスターにするけど・・・?あ、よしよし、プックルありがとね。」

 

 

 きょとん、として返すイル。さらにいつの間に指示していたのか、フレイザードの欠片をプックルがせっせと集めてイルに渡した。頭が痛いとばかりにワルぼうが叫ぶ。

 

 

「いつもとは事情が違うだろーが!それに連れて帰ってもどう紹介するんだそんな奴!」

 

「俺もそれには同意だ。クロコダインと同様と言うわけにもいかんだろう。それを言うならば、俺とて同じことではあるが・・・。」

 

「あ、ヒュンケルについては先にアバン先生が説得する、って作戦会議で宣言してたから、多分大丈夫だと思うよ!」

 

 

 何でもないことかのようにイルはそう言って、にっこりと笑った。それ聞いてヒュンケルは、やはりあの師には敵わない、と苦笑した。それに、と言ってイルが続ける。

 

 

「真面目な話、もし聞き出せるなら情報を引き出した方がいいよ。軍団長を纏める立場にあったハドラーなら、大魔王バーンについても色々知ってるんじゃないかな?」

 

「言われてみればそれもそうか。悪かったなイル、叩いちまって。」

 

「そしたらさっき盾にしたのはチャラね!」

 

「それとこれとは話が別だ!無茶苦茶しやがってこの!」

 

 

 再びきゃっ、きゃっ、とじゃれ合うイルとワルぼう。勝利を確信したがゆえの油断。ヒュンケルとバルトスも、そのやりとりを温かく見守っていた。

 

 しかし突然鳴り響いた轟音が、その時間を遮った。

 

 

「何の音!?」

 

「地下の方からだ・・・、ダイ達か!」

 

 

 異変を感じたイル達は慌てて準備をした。魔力切れのスラッシュと傷ついたバルトスを『魔法の筒』に入れ、残りのメンバーで地下を目指す。

 

 ダイ達が駆け抜けたにも拘わらず、道中には戦闘の痕跡はなかった。嫌な予感がして、イル達は先を急いだ。

 

 そして、ある階段に差し掛かった所で、見覚えのあるモンスターと遭遇した。

 

 

「モルグ!どうしたのその怪我!?」

 

「おお、イル殿にヒュンケル様、よくぞご無事で・・・。」

 

 

 姿を現したのは、イル達を案内してくれた『くさったしたい』のモルグだった。しかしその姿は痛ましく、右腕は欠損し、顔の左半分が潰れていた。アンデットでなければ間違いなく死んでいる傷だ。

 

 心配するイル達に、モルグは首を振って訴えた。

 

 

「私のことはどうでもよいのです。ダイ殿が危ない・・・!恐れるべきはハドラーだけではなかったのです・・・!」

 

「モルグ、しっかりして、モルグ!」

 

「どうか、どうか・・・。」

 

 

 そう言って、モルグはパタリと倒れた。イルは倒れたモルグの側に跪き、いくつか調べた後『魔法の筒』を取り出した。

 

 

「よかった、気を失っただけみたい。あとで身体を修復して、魔力を渡せば大丈夫そう。」

 

「そうか。しかしモルグのこの様子、それほどなのか、『竜騎将』バランは・・・!」

 

 

 会話しつつモルグを『魔法の筒』に収納する。すると再び、地底魔城が揺れ動いた。

 

 

「またか・・・。イル、大丈夫か?しっかりしろ!」

 

「うっ、この気配・・・!想定外だよ・・・!」

 

 

 ヒュンケルの隣に立つイルが、突然口を抑えて震え始める。ハドラーとは比べ物にならない、まさに別次元とも言える存在感。想定外の敵の出現に、イルの声に焦りの色が生じる。

 

 イルは両手で自らの頬をパン、と叩き、震えを抑え込んだ。そして再びプックルに乗り、前を見据えて言った。

 

 

「急ごう、手遅れにならないうちに。」

 

 

 そして駆けること暫く。遂にイル達はその場所に辿り着いた。かつてバルトスが守った、魔王の間への唯一の通用口、『地獄門』の前にそれは立っていた。

 

 

「ほう、確かイルとか言う・・・。ハドラー殿を倒してきたのか、大したものだ。」

 

 

 イル達の姿を視界に収めて、その男はイル達を称賛した。『竜騎将』バランからの称賛。滅多に耳にできないものであるそれは、目の前の光景にかき消された。

 

 

「ダイくん、みんな!!」

 

 

 バランの前には、イルが先に行かせた4人が、傷だらけで倒れていた。

 

 戦いは終わらない。

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