イルとダイの大冒険   作:NBRK

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あけましておめでとうございます。4章開始です。
今年も当作品をよろしくお願いします。


4章 イルとダイの紋章の真実
第1話 目覚めるとそこは


 

「うーん、・・・ここは?」

 

 

 イルは目を覚ますと体を起こし、周囲をきょろきょろと見回した。薄暗い部屋に小さなベッド。そして隣では、ワルぼうが宙に浮いたまま器用に寝息を立てている。

 

 あの日、イルは地底魔城の崩落に巻き込まれたはずだった。まさか、死んだことで元の世界に戻ってきたのではないか、とイルは混乱しつつも考える。

 

 しかし、扉に付けられた鉄格子を見てその考えを改めた。元の世界に戻ったならば、顔の知れているイルがいきなり牢に入れられることはあり得ない。つまり、イルを救ったのは、イルを快く思わない存在である。

 

 そうなれば、答えは一つである。イルがその結論に辿り着くのを待っていたかのように、固く閉ざされていた扉ががちゃり、と音を立てて開かれた。

 

 

「目が覚めたようだな。」

 

「ミストバーン!それに・・・!」

 

 

 扉を開けてまず入って来たのはミストバーンだった。物音に反応してワルぼうも目を覚ます。そして、続いて入って来た人物を見てイルとワルぼうは目を丸くした。

 

 

「おいおい、あの流星を受けてピンピンしてやがるのか・・・。」

 

「無傷ではなかったぞ。だが私、『竜の騎士』というのは傷の治りが早いのだ。既に8割がた回復している。」

 

 

 2人目の人物は、イル達を追い詰めた敵、『竜騎将』バランだった。驚くべきことに、流星の直撃を受けたにもかかわらず、その立ち姿には僅かなブレすら見当たらない。その訳を聞いたイルは、頭に疑問符を浮かばせながら尋ねた。

 

 

「『竜の騎士』?」

 

「フン。お前達はその事も知らずにディーノと共に居たのであったな。」

 

 

 バランは呆れたようにそう言った。『竜の騎士』とはかつて神々によって作り出された究極の生命体であり、人の心、魔族の魔力、竜の力を併せ持つ存在である。そして世界のバランスを崩す種族が現れた際にそれを征伐し、均衡を維持することを使命とする。そのように説明を受けたイルは、納得したような表情を見せた。

 

 

「なるほどね。どうりで変な感覚だと思った。人でも魔物でもないなら納得だよ。」

 

「そうだ、そして・・・」

 

「ダイくんも一緒。ってことだよね?」

 

「!」

 

 

 イルはバランの言葉を遮ってそう言った。バランは少し驚きつつ返答する。

 

 

「そうだ。だが随分と素直な反応だな。ダイが人間ではないと知ればもう少し複雑な感情を抱くと思ったが。」

 

「うーん、普通の人は驚くと思うよ?でも私は知ってたから。ダイくんが人間じゃないって。」

 

 

 イルのその言葉に、今度こそバランがはっきりと驚きの表情を見せた。戸惑いを声に乗せて、再度口を開いた。

 

 

「解せんな。いくつか気になることがあるが・・・そもそもなぜ気付いた?」

 

「わたしはモンスターマスターだから、人と魔物の気配は目を閉じてても区別できるんだ。でもダイくんだけはわからなかった。だから何か事情がありそうだなって。」

 

「ふむ。なぜ気づきながら周囲に伝えなかった?それと、恐ろしいとは思わなかったのか?」

 

「気配が違う、なんて言っても伝わらないでしょ?それに誰も疑問に思ってないなら、わざわざ指摘する必要もないかなって。それで、恐ろしいと思わなかったのかって・・・逆にどうして?」

 

 

 イルは心から不思議そうな表情をしてバランを見返した。バランの顔を見つめるその目には一切の曇りもなく、純粋な感情だけがそこにあった。

 

 

「どうして、か。前にも言ったが、人間は醜い生き物だ。自分と違う存在を恐れ迫害する。それが強大な力を持つ者ならば尚更だ。」

 

「・・・確かにそうかもね。でもわたしはそういうの嫌いなんだ。人間も魔物も竜の騎士も大差ないよ。悪いことをしたら悪い。いいことをしたらいい。それじゃあ駄目なのかな?」

 

 

 イルは少し悲しげな顔をして、バランの問いにそう答えた。その表情を見てばつが悪い思いを抱いたバランは、返事をすることなくイルに背を向ける。そしてその後ろ姿に、ミストバーンが声をかけた。

 

 

「もういいのか、バラン。」

 

「ああ。約束通りに頼む。」

 

「わかった。だが、全てはバーン様の意思次第だということを忘れるな。」

 

「わかっている。」

 

 

 こうして、バランは部屋を後にした。そして残されたミストバーンが、イルの方を向いて声を発した。

 

 

「さて、私の方の用事だが・・・。まず今の状況について教えてやろう。あの戦いから2日が経った。」

 

「えっ、そんなに・・・!?」

 

「そうだぞ、オレが世話してやってたんだから感謝しろよ。」

 

 

 ミストバーンの言葉に驚愕するイル。ワルぼうもそれを肯定し、イルは恥ずかしそうな顔をしてありがとう、と小さく言った。

 

 

「あの日、異変を感じた私はハドラーとバランを探しに最深部へ向かっていた。重傷のバランを見つけ、あとはハドラー、というところで取り残されたお前達を見つけたのだ。」

 

「なるほどね。それで、どうして敵のわたしたちを助けたの?」

 

「勘違いするな。ハドラーの手がかりを得るためであってお前達のためではない。まさか『魔法の筒』に捕えられていたとは思わなかったがな。」

 

 

 そう言われてイルは慌てた様子で周囲を見回し、『ふくろ』を探した。その様子を見て、ワルぼうが申し訳なさそうに言った。

 

 

「悪いイル。オレが渡しちまった。この状況で逆らうのも難しいと思ってな。」

 

「ううん、仕方ないよ。でも・・・クロコダインは無事なんだよね?」

 

 

 イルは声を低くしてミストバーンに尋ねる。その問いにミストバーンは不本意そうに答えた。

 

 

「今は蘇生液に漬けてある。私は裏切り者などさっさと処分してしまいたい所だが・・・奴のことだ、残念ながら回復するだろう。」

 

「そっか・・・よかった。」

 

「だがその命も、この後のお前達次第だ。」

 

 

 安心するイルに、ミストバーンが雰囲気を変えて言った。ピリピリとした空気を感じたイル達は、固唾を飲んで続く言葉を待つ。そしてミストバーンが告げた。

 

 

「大魔王バーン様がお前達に興味を示している。ゆえにお前達をこの後、バーン様の前に連れていく。その結果次第で、お前達の処遇は決定される。」

 

「なるほどな、こりゃあ大変なことになってきたぜ・・・。」

 

 

 ワルぼうの言葉にイルも頷いた。当然ながら拒否権などない。唐突に決まった敵の親玉との対談に、イル達は冷や汗をかいた。

 

 そして早速とばかりにミストバーンは扉を開け、イル達に外に出るよう促した。しかし、そこでイルがおずおずと手を挙げ、申し訳なさそうにミストバーンに頼み込んだ。

 

 

「あの、申し訳ないんだけどお風呂入らせてもらえないかな・・・。2日も気絶してたしちょっと気持ち悪いの。あとお腹も空いちゃった。」

 

「・・・その豪胆さには驚きだ。まあ、バーン様の前に不潔な姿で出すのも失礼かもしれんな・・・。」

 

 

 こうして、敵陣の中でイルはゆっくりと湯浴みに興じるのであった。それを呆れた様子で待つミストバーンとワルぼう。敵対するもの同士、心中が一致する貴重な時間であった。




以前も書いた通り1月中は更新ペースが落ちますが、気長にお待ちいただければ幸いです。
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