イルとダイの大冒険   作:NBRK

42 / 75
短めです。
ここから4章が本格的に始まります。


第5話 たのしい捕虜生活

 

「ごはんだよ〜!ちっちゃい子からね!おっきい子は後でだよ、割り込んじゃダメ!」

 

 

 イルの声に、広場にいたモンスター達が集まってくる。イルは真っ先に飛んできた『ドラゴンキッズ』に『ほねつきにく』を与えながら、他を押し退けて近付こうとする『ドラゴン』に注意をする。

 

 注意された『ドラゴン』は小さく火を吹き不満を露わにする。しかしイルが怯まずに大きな声で注意を繰り返すと、しゅんとして引き下がった。

 

 

「ほーう。『ドラゴン』が言うことを聞いてやがる。人間のくせに生意気じゃねーか。」

 

 

 そんなイルのもとに、『スカイドラゴン』に乗った1人の魔族がやってきた。上から聞こえたその声に反応してイルは空を見上げた。

 

 

「ガルダンディー?どうしたの・・・ってルード!つまみ食いしないでよ!ガルダンディーもちゃんと止めてよね!」

 

「ケッケッケッ、いいだろーがそれくらい。ほれ、止めねーと無くなっちまうぞ?」

 

 

 ルード、と呼ばれた『スカイドラゴン』はイルの後ろに積まれた肉の山を掴み上空へと昇って行った。怒るイルを他所に、ルードは再度つまみ食いを敢行しようとする。

 

 かちんと来たイルは、懐から『魔法の筒』を取り出して叫んだ。

 

 

「『デルパ』!・・・スラッシュ!お仕置きだよ!『メラガイアー』!」

 

「おい、何だその呪文は!?やべぇ、避けろルード!」

 

「『ハーケンディストール』!」

 

 

 突如襲いかかった獄炎に焦るガルダンディー。しかし直撃する寸前、凄まじい速度でやってきた別の魔族が槍を振り抜き、『メラガイアー』を切り裂いた。

 

 

「遊びにしては度が過ぎるぞ。自分の立場を弁えろ、イル。」

 

「うっ・・・。ごめんなさい、ラーハルト。」

 

「お前もだ、ガルダンディー。品位に欠ける行動は控えろ。バラン様の名を汚すことになるぞ。」

 

「ちっ。お高く止まりやがって。あばよ!」

 

 

 ラーハルトに注意され、イルは肩を落とし、ガルダンディーは悪態をついて去っていった。ため息をつくラーハルトにイルは礼を言った。

 

 

「えっと、ありがとう。助かったよ。」

 

「フン、勘違いするな。貴様の面倒を見るようバラン様に指示されているが故に仕方なくだ。分かったら大人しくしておけ。」

 

「あはは・・・。」

 

 

 ぺこり、と頭を下げたイルにラーハルトは辛辣な返しをする。イルは苦笑いを浮かべて元の作業へと戻っていった。

 

 バーンへの謁見から数日が経っていた。

 

 あの後イルは痺れを切らしたミストバーンによって抱えられ、元の牢へと戻された。

 

 今後に不安を抱えつつも、精神的な疲労からイルとワルぼうはぐっすりと眠りについた。そして翌日、目を覚ましたイル達の前に再びバランが姿を現した。

 

 

「お前達の身柄は、私が預かることとなった。」

 

「え・・・?どうして?」

 

「・・・それを教える義理はない。言っておくが、逃げようなどとは思わないことだ。」

 

 

 こうしてイルは訳も分からぬままに、バランのもとに身を寄せることになった。一応捕虜、ということもあり、始めはイルも大人しく牢の中にいた。

 

 しかしすぐに退屈に負け、何かやることはないかとバランに繰り返し尋ねた。その結果、ラーハルトの監視付きでモンスターの世話役として働くことになったのである。

 

 当然ながらイルにとってその役目は天職である。しかもドラゴン系のモンスターの世話となればさらにやる気が出るというもの。基本的にどんなモンスターでも好きなイルだが、それでも好みというものはある。

 

 つよい、でかい、かっこいい。イルの好みは子供らしいこの3つの言葉に集約される。これを体現するドラゴン系のモンスターに囲まれる生活は、イルにとっては天国のような時間であった。

 

 食事を済ませて満足げな様子の『ドラゴン』がイルに向けて首を下げる。イルは上機嫌にその頭を撫で、ぴょん、と首元に飛び乗った。イルの乗った首を持ち上げ、『ドラゴン』が歩き出す。

 

 ズシン、ズシン、と響く揺れに身を任せつつ、イルは空を見上げた。雲ひとつない青空に、イルを拒むものはない。

 

 

「(『ルーラ』を使えるのバレてないからなぁ。一応いつでも逃げられるけど・・・。)」

 

 

 そう思いつつ、イルはちらりと後ろを振り返った。目が合ったラーハルトが何の用だ、とばかりにイルを小さく睨む。何でもない、と手を振ろうとしたイルは掴んでいた『ドラゴン』の角から手を離し、そしてバランスを崩した。

 

 うわっ、と声を上げて、イルは地面に転がり落ちた。突然重さを感じなくなった『ドラゴン』が何をしているのか、と疑問符を浮かべつつ振り返る。遠くでラーハルトも手で顔を覆っていた。

 

 そんな視線を受けつつ、イルは仰向けに寝転んだまま大きく息を吸い込んだ。モンスター達のやや癖のある匂いが心地よい。

 

 

「(みんなには悪いけど、もう少しのんびりしちゃおうかな。)」

 

 

 僅かな罪悪感を抱えつつ、イルはマイペースに捕虜としての生活を楽しむのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。