イルとダイの大冒険   作:NBRK

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忙しく、日曜日中に投稿が間に合いませんでした。
ただ大きな予定が終わったので、ここからはまた更新を早められるよう頑張ります。


第7話 テラン王国にて

 

「あそこじゃ。あの湖の底に、竜の神を祀った神殿があると言われている。もっとも、人間でそこへ辿り着けたものは居ないがな。それでも行くのか?」

 

「はい。おれは自分の正体が知りたいんです。バランが言った言葉の意味を知らなきゃいけない・・・そんな気がしてて。」

 

 

 紋章の秘密を探るため、ダイ達は竜の神を祀る国、テラン王国を訪れていた。帯同しているメンバーはダイ、ヒュンケル、ポップ、レオナの4名である。

 

 昨日、一行はまず病床に伏す国王への謁見を行い、そして目的である『竜の騎士』についての伝承について国王に尋ねた。

 

 国王はダイ達のこれまでの活躍を聞き関心した様子を見せ、調査への協力を引き受けようとした。

 

 しかし、国王自身は体調を崩しており、テラン自体も国としての力を落としていることから、思うように支援を行えない、というのが現状であった。

 

 そこで国王は、協力者として占い師のナバラとメルルを紹介した。出稼ぎに出ていた彼女達であったが、占いに導かれて偶々テランに戻ってきていたそうだ。

 

 勇者に協力しろと言われて、ナバラは渋い顔をした。しかしメルルが乗り気になってしまったのを見て、仕方なく国王の依頼を引き受けた。

 

 こうして彼女らの案内のもと、ダイ達は竜の神を祀る『湖底の神殿』へと足を運んだのであった。湖を覗き込んだポップは、胡散臭そうなものを見る目でナバラに尋ねる。

 

 

「こっからじゃ何も見えねぇな・・・。本当にあるのかよそんな神殿?」

 

「それは分からんと言っておろうが。まあこれだけ人が居れば、溺れても死体くらいは回収できるじゃろ。」

 

「冗談じゃねえぞまったく!ダイ、無理はすんじゃねえぞ。見つからなかったらさっさと上がってこい。」

 

「わかってるよ。それじゃあ、行ってくる!」

 

 

 そう言ってダイはざぶん、と湖に飛び込んだ。ポップ達は揺れる湖面を心配そうに見つめる。

 

 

「大丈夫かしら。『空裂斬』もまだ習得できていないのにひとりで・・・。」

 

「ダイがそう望むのだから仕方があるまい。それに『空裂斬』は心の技。ダイの心の中に迷いがあるうちは習得が難しい。ならば先にその迷いを断ち切るべきだろう。」

 

 

 心配そうに呟いたレオナに対し、ヒュンケルがそう述べた。修行の途中にもかかわらずダイがテラン行きを決めたのは、ヒュンケルの提案があったためでもあった。

 

 自身の経験から、『空裂斬』の習得には精神の安定が必要ということがヒュンケルにはわかっていた。父親を名乗るバランとの邂逅に、イルとの別れ。大きな出来事が連続して起き、迷い苦しむダイの助けになれば、というヒュンケルの優しさでもあった。

 

 そうしてダイを待つこと暫く。未だに戻らないダイを心配して、レオナが湖に飛び込もうとした頃にそれは起きた。

 

 

「っ! 今の音は・・・!?」

 

「あっちの方向からです!あれは・・・ドラゴン!?」

 

 

 メルルが指差した先には、山々の隙間で羽ばたくドラゴンの姿が小さく見えていた。距離があるにもかかわらず届いたその咆哮から、強大な存在であることが窺える。皆が息を呑む中、『トベルーラ』で高い位置からそれを眺めているポップが疑問を述べた。

 

 

「ん?なんかあいつらこっちに向かって来ていないような?何かと戦っている・・・?」

 

「占ってみます。・・・これは!?」

 

 

 ポップの言葉を受け、メルルは水晶玉に魔力を込めた。そして浮かび上がった光景を見て驚きの表情を見せる。

 

 

「女の子・・・?赤毛の少女が魔物と共に、ドラゴンと向き合っています。これは一体・・・?」

 

「赤毛の少女だと!?他に特徴は!?」

 

「ええと、緑の装束を纏って帽子を被っています。それからふわふわの妖精?みたいなものが側で浮かんでます。」

 

「おいおい、まさかそれって・・・!」

 

 

 メルルの言葉を聞いて、ポップとヒュンケルは顔を見合わせた。まさか、と言ったポップにヒュンケルは頷きを返した。

 

 

「間違いない、イルだ。生きていたのか・・・!」

 

「ちくしょう、心配させやがって!生きてるなら早く戻って来やがれってんだ!」

 

 

 喜びを見せるポップ達。しかしその様子を見たメルルの表情は固い。少し焦ったような声でメルルはポップ達に声をかけた。

 

 

「あの、この子が仲間なら急いだ方が良いかもしれません。会話までは聞き取れませんが、あまり良い状況には見えません!」

 

「わかった。ポップ!」

 

「おうよ、任せろ!」

 

 

 ヒュンケルが呼びかけると、それに応えてポップが『トベルーラ』で件の方向へと飛んでいった。一方、ヒュンケルはレオナの方へ向き直って言った。

 

 

「レオナ姫。申し訳ないが、俺もイルの救援に向かわせて貰いたい。ここは任せても良いか?」

 

「ええ。イルさんはパプニカにとっても恩人よ。絶対に助けてあげて。」

 

「ああ。任せておけ。」

 

 

 そう言ってヒュンケルも駆け出した。取り残されたレオナは再び湖に目を落とし、その後空を見上げた。

 

 太陽の隠れた灰色の空を見て、レオナの心を不安が包み込む。

 

 

「(皆、どうか無事で・・・!)」

 

 

 そんなレオナの心を嘲笑うかのように、雲がゴロゴロと音を立てた。

 

 

 一方、その頃。

 

 

「貴様・・・!いつの間に!」

 

 

 ラーハルトが槍を、ボラホーンが錨を、ガルダンディーが剣をそれぞれ少女に向けていた。魔族達に囲まれ、あわあわとした表情をする少女を、バランが腕を組んで見つめている。

 

 

「なんでくしゃみなんてしてんだ馬鹿イル!」

 

「しょうがないじゃん!いや、どうしようかな本当に・・・。」

 

 

 ワルぼうの叱責に眉を下げたイルは、困った表情をして『魔法の筒』に手を掛けた。

 

 

「ちなみに許してくれたりは・・・。」

 

「それが通じると本当に思っているのか?」

 

「だよね・・・。仕方ない、『デルパ』!」

 

 

 イルは『魔法の筒』からスラッシュ、バルトス、クロコダインの3体のモンスターを呼び出した。戦う構えを見せたイルを見て、バランがため息をついて言った。

 

 

「ラーハルト、ここは任せた。私は先にディーノのもとへ向かわせてもらおう。一応言っておくが、この者は殺すなよ。それがバーン様の意思であり、私の意思でもあることを忘れるな。」

 

「承知しております。ご武運を。」

 

 

 主人が飛び立つのを見届けて、ラーハルトはイルに向き直った。やり取りを聞いたイルがおどけた様子でラーハルトに問いかける。

 

 

「・・・やっぱり見逃してくれない?ほら、なんでか分からないけどバランも殺すな、って言ってくれてるし。」

 

「殺すな、と言われただけで傷つけるな、とは言われておらん。今後余計な気を起こさぬ様、ほどほどに痛めつけてやろう。」

 

「まったくだ。」「キヒヒッ、楽しませてくれよ?」

 

 

 ラーハルトの返答に、ボラホーンとガルダンディーも賛同を示す。覚悟を決めたイルは、深呼吸をして口を開いた。

 

 

「行くよ、みんな!!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 こうして、戦いが始まった。

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