イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第8話 合流

 

「さあいくよ!スラッシュ、『メラガイアー』!」

 

 

 幕を開けた『竜騎衆』との戦い。先手を取ったのはイルだった。スラッシュに指示して、『メラガイアー』を放つ。しかし『竜騎衆』は、それぞれ竜の背に乗って獄炎を回避した。そして反撃とばかりに炎と氷のブレスがイル達に放たれる。

 

 

「『フバーハ』!」

 

「ワルぼうナイス!ってうわっ!?」

 

「ケケケ、どんどん行くぜ・・・。おらよっ!」

 

 

 ワルぼうの『フバーハ』でブレスを防いだ直後、上空からガルダンディーが、相棒のルードに乗ってイルに襲いかかった。

 

 慌てて回避し反撃に移ろうとするも、既にルードは上空に舞い戻ってしまっていた。ラーハルトとボラホーンも竜と連携し、クロコダイン達を翻弄している。

 

 

「くそっ、まずは竜を何とかせねば・・・!」

 

「そうだね、ここは任せて!」

 

 

 クロコダインの呟きに、イルは自信満々にそう応えた。イルは右手の指で輪を作るとそれを口に当て、ピーッ、と『くちぶえ』を鳴らした。

 

 

「何を・・・?うおっ!?」

 

 

 イルの行動に怪訝な顔をしたガルダンディーだったが、その直後、突然ルードが予想外の動きを始めた。バランスを崩したガルダンディーは宙に投げ出され、地面に着地する。

 

 顔を上げると、ラーハルトとボラホーンも同様に振り落とされていた。そして彼らの相棒の竜たちはイルのもとに集結し、我先に、とばかりに頭を擦り付けている。

 

 

「貴様、一体何をした!」

 

「よーしよし、いい子いい子。5日もお世話してたからね。その間にちょっとした芸を仕込ませてもらったよ。」

 

 

 捕まっていた期間、ただ遊んでいたように見えたイルだが、実はそれだけではなかった。遊びに紛れて少しずつ竜たちに躾を施し、指示に従うようにしていたのだ。

 

 加えてイルの『くちぶえ』は初対面のモンスターですら問答無用で呼び寄せる力を持つ。芸の合図にこれを用いることで、例え戦闘中でも本能的に反応するように仕込んだのであった。

 

 

「さあ、反撃開始だよ!クロコダインはラーハルト、スラッシュはボラホーン、バルトスはガルダンディーをお願い!」

 

「「「おうっ!」」」

 

 

 優位を失った『竜騎衆』に、イル達の反撃が襲いかかる。スラッシュの『メラガイアー』がボラホーンの『コールドブレス』を食い破り、バルトスの剣技がガルダンディーを圧倒する。

 

 『竜騎衆』は最強たるバランに選ばれた優秀な戦士である。しかし、対するは同じく最強を冠するイルに選ばれたモンスター達。それもワルぼうの『星のきせき』で強化されている状況では分が悪かった。

 

 ボラホーンは獄炎に包まれ、バルトスの6本の剣がガルダンディーを捉える。戦況は決まったかに思えたが、それに待ったをかける存在がいた。

 

 

「『ハーケンディストール』!!」

 

「なんという力・・・!ぐおおおおっ!」

 

 

 ラーハルトの神速の絶技がクロコダインに襲いかかった。凄まじい衝撃波と共にそれが直撃し、クロコダインの鎧が砕け、鮮血が飛び散る。

 

 

「クロコダイン殿!くっ!」

 

「無駄だ。俺のスピードについて来られる者はおらん!」

 

 

 とどめを刺そうとするラーハルトとクロコダインの間に、バルトスが割って入る。しかし6本の剣による連続攻撃を、ラーハルトは驚異的な反応で回避する。そして一瞬の隙を見逃さずに放たれた突きが、バルトスの胸骨に直撃した。

 

 

「ぐぉぉ!!」

 

「バルトス!しっかりして!」

 

「不覚・・・。すまぬ、イル殿・・・。」

 

 

 吹き飛ばされたバルトスは力無く座り込んだ。アンデット故に死ぬことはないものの、その体は胸骨を中心にひび割れており、戦いを続けることは不可能となっていた。

 

 バルトスの戦闘不能を確認し、ラーハルトの視線が残されたイル達に向けられる。その威圧感にじりっ、と後退りをするイル。ラーハルトはその様子を鼻で笑って言った。

 

 

「ようやく理解したか。だが今更恐れても遅い。ボラホーンとガルダンディーの借りは返させて貰うぞ。」

 

「イル、どうする?あいつは別格だ、一旦『ルーラ』で逃げるのも手だぞ・・・。」

 

「ダメだよ。ダイくん達のもとにバランとラーハルトが揃っちゃう。そうしたら勝ち目は本当にゼロになるよ。」

 

 

 ワルぼうの提案に首を振って、イルはそう言った。バラン達の出撃の目的はこの先にいるダイの確保である。それがわかっているが故に、イルはここを離れることはできない。

 

 覚悟を決めて、イルはラーハルトに向かって一歩踏み出した。それに応じてスラッシュとワルぼうも身構える。ラーハルトは少し意外そうな表情をするも、すぐにその表情を引き締め、油断なく槍を構えた。

 

 睨み合いが続き、いよいよ動かん、としたその時。

 

 

「『ベタン』!!」

 

「何っ!?」

 

 

 突如としてラーハルトの足元に魔法陣が浮かび、その体が地面に押し付けられた。見覚えのあるその呪文を見て、イルは辺りを見渡した。そして、杖を構えた状態で宙に浮く、緑色の装束を着た少年の姿を見つけた。

 

 

「ポップ!!」

 

「間に合ったみたいだな。まったく、心配かけさせやがって!」

 

 

 自分の名前を叫んだイルに対して、ポップはにやりと笑ってそう言った。頼もしい仲間の到着に、イル達の表情が明るくなる。

 

 

「おのれ・・・、舐めるな!!」

 

「うおっ!嘘だろ!?」

 

 

 しかし、重圧呪文を受けているはずのラーハルトは、束縛されつつも力づくで立ち上がり、ポップに向かって槍を振るった。衝撃波が放たれ、空中にいたポップは体勢を崩してしまう。その結果、ラーハルトを拘束していた『ベタン』は途切れてしまった。槍を構えつつ、ラーハルトが口を開く。

 

 

「小癪な真似を・・・。どこの誰かは知らんが、この俺に膝を突かせた借りは重いぞ。」

 

「けっ、心の狭い野郎だぜ。『メラゾーマ』!」

 

 

 怒りを露わにするラーハルトに対し、ポップは軽口を叩きつつ火球を放った。それを難なくかわしたラーハルトは槍を連続で振るう。衝撃波で再び体勢を崩したポップ目掛けてラーハルトは飛び上がり、その身体を貫かんとした。

 

 

「そうはさせん!『獣王会心撃』!!」

 

「何!?立ち上がっただと!?」

 

 

 しかし飛び上がったラーハルト目掛けて、クロコダインの必殺技が炸裂する。逃げ場を失ったラーハルトは闘気の奔流に吹き飛ばされ、切り立った崖に突き刺さった。技を放った体勢で固まるクロコダインに、ポップが近寄って尋ねた。

 

 

「おっさん!大丈夫かよ!?」

 

「ぐう・・・。なに、獣王たるもの、このくらいの傷で倒れるわけにはいかん。」

 

 

 クロコダインは痛みに顔を歪めつつも、にたり、と不敵に笑ってみせた。安堵した表情を見せたポップに対し、背後に立つイルが声をかけた。

 

 

「ポップ。来てくれたのは嬉しいけど、バランとは会わなかったの?さっき飛んで行ったんだけど。」

 

「! さっき1匹だけ飛んでいくドラゴンを見かけたぜ。まさかあそこにバランが居たのか!?」

 

「そうだよ!だから急いで行かなきゃ!」

 

 

 イルの言葉に、ポップは顔を青くして頷いた。イルは『スカイドラゴン』のルードを除いて、モンスター達を『魔法の筒』に収める。そして移動のためにルードに乗ろうとしたその時、崩れた崖からラーハルトが飛び出した。

 

 

「待て・・・!バラン様の邪魔はさせん!」

 

「おいおい、おっさんの一撃を喰らってもまだ動けるのかよ・・・!」

 

 

 全身から血を流しつつも、ラーハルトの目はぎらぎらとイル達を睨んで離さない。まさに決死の様相を見せるラーハルトに気圧されたイル達。しかしそこで、再び頼もしい声が耳に届いた。

 

 

「お前の相手は俺が務めよう。槍使い。」

 

「貴様は、不死騎団長ヒュンケル!」

 

「イル、ポップ。機動力ならお前たちの方が上だ。ここは俺に任せて、ダイのもとへ向かってくれ。」

 

「ヒュンケル・・・。わかった!行くよ!」

 

 

 向かい合うラーハルトとヒュンケルの上を、ルードに乗ったイルが通り抜けていった。ポップも空を飛んでそれに続く。ラーハルトは忌々しい、といった表情で口を開いた。

 

 

「愚かな真似を・・・。バラン様の力の前では全てが無力ということがわからんのか。」

 

「・・・そうかもしれん。イルもそれはわかっているはず。だがあいつはそれでも行くと言った。ならば俺に出来ることは、その道を切り開くことだけだ。」

 

 

 ヒュンケルは『鎧の魔剣』を身に纏い、右手を引いて構えた。迷いのない瞳がラーハルトを貫く。そして、互いの全力を込めた技が放たれた。

 

 

「『ブラッディースクライド』!!」

 

「『ハーケンディストール』!!」

 

 

 轟音が鳴り響く。それは当然、バランを追うイル達の耳にも届いた。しかしイル達は振り返らない。

 

 確かな仲間への信頼が、そこにはあった。

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