イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第6話 究極奥義

 

 『オーロラブレス』。それは『ブレス』のスキルを極めた者が辿り着く奥義である。

 

 『しゃくねつのほのお』と『かがやくいき』の2つを同時にぶつけるこの技に耐えるには、相反する属性の両方に耐性を持つ必要がある。しかし当然ながら、それを実現するのは難しい。もちろん、それはハドラーにも当てはまる。

 

 

「ぐっ、身体が凍っていく・・・なんだこの技は!」

 

「やっぱり炎よりは氷の方が通りが良さそうだね。『メラガイアー』を受けてもまだ息があったのはそのせいかな。」

 

 

 ハドラーによく通じたのは、氷の属性だったらしい。凍り付く身体に困惑するハドラーを見て、イルは冷静に分析を進めた。余裕ぶったその様子を見て、ハドラーが怒りを露わにする。

 

 

「こんなもの!うおおおおお!!」

 

 

 ハドラーが叫びを上げ、全身から『魔炎気』を噴出させた。その熱が『オーロラブレス』を相殺していく。そして、最後に一際大きい叫び声をハドラーが上げると、『魔炎気』がハドラーを中心に爆発し、その余波で『オーロラブレス』がかき消された。それを見たフレイザードはヒュウ、と口笛を鳴らす。

 

 

「やるねェ。じゃあこれはどうだ?『五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)』!!」

 

「ふん、温いわ!」

 

 

 フレイザードが左の指から、5つの『メラゾーマ』を同時に放つ。しかしそれをハドラーは腕で簡単に薙ぎ払い、剣を構えてフレイザードに襲い掛かる。しかし、そこに割って入ったものがいた。

 

 

「させませんぞ、ハドラー様!」

 

「バルトス・・・!貴様程度がオレを止められると思ったか!」

 

「ワシ1人では難しいでしょうな。スラッシュ殿!!」

 

「おう!『ライデイン』!!」

 

 

 ハドラーの前に立ち塞がったバルトスは、ハドラーの突きを6本の剣の全てを使って受け止めた。それでもハドラーの力の前に、ジリジリと押し込まれていく。しかしバルトスはそこでスラッシュの名を叫んだ。スラッシュがそれに応え、雷を生み出してハドラーを牽制する。

 

 

「ぐっ!小癪な・・・!」

 

「今だよ、バルトス!!」

 

 

 魔法耐性の高い『超魔生物』と言えども、相性の悪い電撃呪文を浴びては無傷ではいられない。怯んだハドラーを見て、イルが指示を飛ばす。それを受けたバルトスは力を振り絞って、鍔迫り合いの体勢からハドラーを弾き飛ばした。そして暗黒闘気を纏い、必殺の突きの構えを取る。そして切り裂くような叫びと共に、その技を放った。

 

 

「『ブラッディースクライド』!!」

 

 

 父から子へ、子から父へ。引き継がれる刺突の奥義が、ハドラーに襲い掛かる。黒い闘気の渦がハドラーの胴に直撃した。

 

 しかし、強化されたハドラーの身体を貫くには至らない。顔を歪めたハドラーが、腹に食い込んだバルトスの剣を叩き折る。そしてハドラーは反撃せん、と顔を上げるが、そこには既にバルトスはいなかった。代わりに視界に映ったのは、ニヤニヤと不気味に笑うフレイザードが呪文を唱え、再び左手の指に炎を宿す様子だった。

 

 

「馬鹿の一つ覚えか・・・効かぬと言っておろうに!」

 

「まあ焦んなよ、ハドラー様ァ。面白いのはこれからだ、ぜッ!!」

 

 

 フレイザードはそう言うと、今度は右手の五指に冷気を纏わせた。左右で合計10個の呪文の同時発動。卓越した魔法使いであってもそれに耐えられる者はいない。

 

 しかし、禁呪法で生み出された人造生命体であるフレイザードはその特性を活かし、魔法負荷への耐性を限界まで高められていた。故に実現される。禁忌を超えた、氷炎の究極奥義が。

 

 

「しっかり聞けよォ・・・!『メ』『ド』『ロ』『ー』『ア』!」

 

 

 フレイザードは両手首を身体の前で合わせ、さらに両手の指を一本一本合わせていった。各指の接点で魔力が混ざり合い、金色の光が生じていく。

 

 15年前、大魔導士マトリフがハドラーとの決戦に備え生み出したその呪文は、炎と氷の魔力の対消滅現象を利用した禁忌の技であり、触れたもの全てを消滅させる力を持つ。しかしあまりの制御の難しさに、それを習得した者は彼とその唯一の弟子のみであった。

 

 だが、存在そのものが炎と氷の融合体であるフレイザードに、その理屈は通用しない。5つの極大消滅魔法の同時発動。常識を覆したその技を前にして、遂にハドラーの表情が明確に変わった。

 

 

「信じられん、貴様はどこまで・・・イル!!」

 

「どこまでも、だよ!フレイザード!!」

 

「『五指消滅閃(フィンガーカオスレイズ)』!!!」

 

 

 5つの光の矢が、拡散しつつハドラーに襲い掛かる。ハドラーは飛び上がってそれを躱すも、光の矢はカクン、と方向を変え、宙に舞うハドラーに再度襲い掛かった。

 

 

「チェックメイトだよ、ハドラー。」

 

「おのれ・・・!イルッッッッ!!!」

 

 

 光の矢がハドラーの下半身を消し飛ばし、そのまま天井をも消滅させて天に登っていった。厚い雲すら全てを消し去り、『死の大地』に初めて太陽が差し込む。

 

 どさり、と地面に落ちたハドラーは、上半身のみになった身体を懸命に捩り、勝者の姿を仰ぎ見た。太陽に照らされた彼女はどこか神秘的で、まるで天が勝者を祝福するかのように見えた。

 

 少女は曇りなき目で、地面に伏すハドラーを見下ろしている。そして、ハドラーは理解した。

 

 

「(オレの、負けか・・・。いや、オレだけではない。あの老いぼれすら、今のこやつには敵うかどうか・・・。)」

 

 

 ハドラーはバーンと対面したことのある数少ない存在である。かつてはその威圧感に恐れ慄いたが、そこに理を超えた畏怖はなかった。しかし今、ハドラーはそれを感じている。

 

 理を超えた器で魔物を率い、圧倒的な『力』で全てを支配する。人はそんな存在をこう呼ぶ。

 

 

「(『大魔王』・・・。此奴こそ、それに相応しい器であったか・・・。)」

 

 

 その思考を最後に、ハドラーの意識は途絶えた。




次回は2/24(火)の予定です。
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