ハドラーとの戦いから数日が経った。ダイ達はデルムリン島で傷を治す事に専念しており、そこにはイル達の姿もあった。
「うーん、ダメだ。やっぱりマルタとの繋がりが見つからねえ。何かに邪魔されてやがる。」
「えー。それじゃあやっぱり帰れないの?」
「その何かを倒さない限りは無理だろうな。怪しいのはこの前のヤツの親玉だろうが。」
「あーあ。結局ハドラーにも逃げられちゃったし、これからどうなるのかなぁ。」
ため息をつきながらイルは芝生の上にごろん、と寝転がった。
『ミナダンテ』の爆発の中、四肢を失ったハドラーがルーラでどこかへ消えていく姿をイルは目撃していた。戦いは終わっていない。その事実はイル達に勝利の余韻に浸ることを許さなかった。
「がうがうっ。ゴロゴロゴロ・・・。」
「あれ、いつの間に?ふふっ、ありがとう。大丈夫だよ。」
「グルルルル」
暫くの間ぼうっと空を見ていると、1匹のキラーパンサーがイルの隣に寄り添うようにして座った。その気遣いにイルは微笑んでお礼を言った。
この数日間でイルはこの島の大半のモンスターと打ち解けていた。熟練のモンスターマスターであるイルにとって、気性の穏やかなデルムリン島の魔物たちと仲良くなることは朝飯前であった。
そしてキラーパンサーに連れられるようにして、今度は青い装束を着た少年が森から飛び出してきた。
「イル!こんな所で何してるの?」
「ダイくん!ちょっと考えごとかな、ダイくんは?」
「おれはイルを探しに来たんだよ。これからイルはどうするのかなって。」
イルを探していたらしいダイは、気安い口調でそう尋ねた。年の近い2人は魔物と仲が良いという共通点もあって、この数日間よく行動を共にしていた。
「ちょうどそれを考えてたんだよね。もとの世界に帰ろうにも手がかりがなくて。ワルぼうは多分大魔王バーン?が邪魔してるんじゃないかって。」
「大魔王バーン・・・。先生も放っておけないって言ってた。たぶん今も人間の国々が襲われてるはずだって。」
「ダイくんはどうするの?」
「おれは先生たちについて行くって決めたよ。理由も何も知らないけど、罪のない人たちを傷つけるなんて許せない。・・・レオナも心配だし。」
「レオナ?あ、この前言ってたお姫様のことか。なに、ダイくんそのレオナさまのことが好きなの?」
「なっ、そんなんじゃないやい!ただ心配なだけだよ!」
「えーどうかなぁ?」
顔を赤くして否定するダイをからかうイル。楽しそうにするイルに対し、ダイはふん、と顔を逸らした。その姿を見たイルは、そっくりの仕草をするルカやカメハ王子の姿を思い浮かべた。
「ねえ、わたしも一緒に行かせてよ。」
「え?うーん、おれはイルが来てくれたら嬉しいけど、危ないよ?イルの指揮はすごいけど、仲間はほとんど置いてきちゃったんでしょ?」
「ふふ、わたしだってこれでも故郷じゃ英雄なんて呼ばれてるんだよ?スラッシュだってこの前は調子が悪かったけど、本当は強いんだから!」
「えー、本当かなぁ?」
「本当だよっ!それに、わたしはモンスターマスターだから。この世界でまた新しい仲間を見つけるよ!むしろ楽しみになってきたかも!」
気分の高まったイルは、ぱっ、と立ち上がった。そして困ったように眉根を下げるダイに向かって右手を差し出した。
「よろしくね!ダイくん!」
「よ、よろしく。大丈夫かなぁ?」
「だーいじょうぶ!行こうっ!」
流されるままにダイはその手を取った。握った手を引いて、イルが走り出す。手を引かれたダイも、戸惑う顔とは裏腹に足取りは軽い。
こうして彼らの旅は始まった。
先の見えない戦い。それでもその一歩目はどこか楽しげで、希望を感じさせる一歩となった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。これにて一章は完結です。幕間の話を数話挟んでから二章の更新を始める予定です。
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これからもイル達の旅路を見守ってもらえれば幸いです。